昭和シリーズ
1954年、太平洋で原因不明の連続船舶沈没事故が発生、
沈没地点に近い「大戸島」へ調査へ向かった人間達の前に身長50メートルほどの巨大な怪獣が姿を現した。
この怪獣こそ沈没事故の張本人であり、島の伝説に伝わる怪物の名を取り「ゴジラ(呉爾羅)」と名付けられた。
やがてゴジラは二度に渡り東京に上陸し、 自衛隊の攻撃をものともせず蹂躙。破壊の限りを尽くして人々を恐怖に陥れた。
しかしその後、芹沢博士が開発した水中酸素破壊剤「オキシジェン・デストロイヤー」によって絶命した
(ちなみに芹沢博士役の平田昭彦氏は後に『 ウルトラマン』で ゼットンを倒した無重力弾を開発する岩本博士を演じている ・・・・すごい漢だ。)。
昭和シリーズはこの第1作から幾つかの分岐によって物語が形成されている。
尚、この段階では突然変異などではなく、水爆実験で海底の棲家を追われただけ、という設定になっている。素の体格でこれか。
その為 人類の身勝手によって目覚めさせられ、身勝手に葬られる悲劇的存在でもあった。
作中においても「何故ゴジラを殺す事ばかり考えるんだ」と嘆く人物も存在している。
……まぁ、単にゴジラを哀れむというよりもゴジラの生命力に着目して「貴重な研究対象として生かしておくべき」という、後の 悲劇にも繋がる思想なのだが。
翌年作られた第2作目『ゴジラの逆襲』では2体目のゴジラが現れ、
同じく放射能の影響で恐竜から変異した怪獣 アンギラスとの死闘を大阪で繰り広げた。
それ以降はゴジラと他の怪獣との戦いを描いたものが主流になり、
アメリカの キングコング(円谷英二は1933年の『キング・コング』に影響され、特撮監督を志した)との戦いを初めとして、
蛾の怪獣 モスラや翼竜プテラノドンの怪獣 ラドンといった、かつてゴジラと同様に単独作品で登場した怪獣とも対決したり、
これ以降も3つ首の宇宙超怪獣 キングギドラ、サイボーグ怪獣 ガイガン、
ゴジラを模した怪獣ロボット・ メカゴジラなどといった個性豊かなライバル怪獣達が登場した。
またこの頃に『ウルトラマン』では 「えりまき恐竜ジラース」として ウルトラマンとの密かな共演を果たしていたりする。
…………まあウルトラマンは容赦なく襟巻きを引剥がしたけどな!
初期の頃こそ「人類の脅威たる存在」というイメージだったが
『三大怪獣 地球最大の決戦』では人間から攻撃されている事に愚痴をこぼす、
(といっても小美人が鳴き声を翻訳したもので、実際に喋ってはいない)
『怪獣大戦争』では当時流行っていた『おそ松くん』のイヤミの「シェー」を真似たり…
といった人間じみた仕草を見せた事も。
ゴジラの子供 ミニラもこの頃に登場した。
そして恐ろしい怪物であったゴジラは、一つのキャラクターとして支持されていく事となり
映画の中でも「ゴジラと人類の対立」以上に「新たな敵の怪獣と、それに立ち向かうゴジラ」という構図が強くなっていく。
その事もあって『ゴジラ対 ヘドラ』以降は人類と対決する場面が減り、やがて完全な善玉怪獣となっていくのだが
「ゴジラが人類への怒りを体現した存在という点を無視している」「ストーリーが子供向けになりすぎている」
などといった理由からこの頃の作品を嫌うファンも少なくない。
特に酷評されているものとして『オール怪獣大進撃』『ゴジラ対 メガロ』(予算やスケジュールの都合が悪かったとはいえ)などがある。
とはいえ、この「正義のゴジラ」と戦った怪獣には正義に対する悪役の魅力のある怪獣も多く、
今なお人気のあるメカゴジラやガイガン、ヘドラなどが生まれたのがこの時期であるのもまた事実である。
またゴジラのヒーロー化には当時の観客から、
「人間のせいで暴れているゴジラが一方的に悪者としてやられるのはあまりにも可哀想だ」という意見が多数寄せられていた事や、
第一作にて被害者であるゴジラをオキシジェンデストロイヤーで残酷に殺してしまった事への後悔を、スタッフ達の側も抱えていたのも影響していたとの事。
また、東宝が製作した巨大ヒーローもの特撮番組『流星人間ゾーン』では、
正義の怪獣として主役ヒーローのゾーンファイターと共に敵の怪獣と戦っている。
この時期のゴジラは割と軽快な動きが多く、跳ねるようなステップで連続パンチなどといった技も披露している。
1970年代半ばからはオイルショックの影響により特撮作品全般が大きな打撃を受けた事や、
怪獣よりヒーロー系のキャラクターに人気が集中していた事もあって、他の怪獣映画と同様に観客動員数は次第に減少傾向に。
1975年『メカゴジラの逆襲』を最後にゴジラはスクリーンからしばらく姿を消す事となり、昭和シリーズの終焉を迎えた。
平成VSシリーズ
それから9年後の1984年、『ゴジラ(1984年版)』が公開される。
この作品も第1作目の直接の続編だが、それから30年間の昭和シリーズの出来事は起こっていないという設定。
ビルの高層化が進んだため、本作のゴジラは身長80m、体重5万トンにスケールアップ。
「人々にとっての恐怖の存在」への回帰が図られている。東京を蹂躙したが、ラストでは誘導電波によって三原山に落下。
その後を描いた『ゴジラVSビオランテ』では三原山から復活したゴジラと
ゴジラとバラ(と 沢口靖子)の細胞が融合した事で生まれたバイオ怪獣・ ビオランテとの戦いが繰り広げられた。
ここから再び怪獣対決ものを展開した事で「平成VSシリーズ」が始まり、
キングギドラ、モスラ、メカゴジラ、ラドン、 モゲラといった過去の人気怪獣も復活。
他にもモスラの因縁の宿敵 バトラ、宇宙へ散ったG細胞と結晶生物が融合して生まれた スペースゴジラ、
オキシジェンデストロイヤーの影響で復活した古代生物 デストロイアといったオリジナル怪獣も今尚高い人気を持つ。
シリーズ7作目にあたる『ゴジラVSデストロイア』では体内の核エネルギーが暴走し、身体を赤く光らせた姿で登場、
この作品では常に赤い放射熱線を吐いており、クライマックスにいたっては放射と同時に背びれから強烈な閃光が放たれ、
熱線が直撃しなかった周囲でさえ激しく燃え上がるという演出は、VS世代の諸兄の記憶に大きく残るものとなった。
敵怪獣のデストロイアとの死闘を繰り広げ、そしてついに起こった メルトダウンで自ら溶解していき、最期を迎えたのだった。
このシリーズ以降のゴジラは「火炎」の印象だった熱線が完全に「光線」となっており、昭和期より多用する傾向がある。
また、強化版として「ウラニウムハイパー熱線」「バーンスパイラル熱線」といったバリエーションが登場した他、
放射熱線を体内に逆流させて全身からエネルギーを発する「体内放射」という技をもっており、
巻き付いたビオランテの触手を焼き切る、キングギドラやモスラを吹き飛ばすなどといった威力の高さを見せ付けている。
ゴジラ以外も光線技のイメージが強くなりがちなVSシリーズだが、肉弾戦が苦手なわけでもなく、
キングギドラ、バトラ幼虫、メカゴジラ、デストロイア戦で格闘能力の高さも垣間見られる。
また、1996年学研の教育用ビデオ『すすめ!ゴジランド』の実写パートでは
坂東尚樹
氏、幼少の頃のアニメパートでは
三田ゆう子
女史が声を担当している。
ミレニアムシリーズ
1999年には『 ゴジラ2000ミレニアム』で復活。
以降ミレニアムシリーズと呼ばれる形で基本的に一作完結のスタンスで展開された。通称「ミレゴジ」。
この中の一作である『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』においては、
「たとえ恐竜が放射能で突然変異したとしても、現代兵器の攻撃で殺せないわけがない」という 現実的な考えに基づき、
「ゴジラは太平洋戦争の犠牲者の怨念の集合体であり、一切の物理攻撃が通用しない」という存在になっている。
他にも放射熱線一発で巨大な キノコ雲を発生させる(それを見た登場人物が「原爆」と表現している)等、
ゴジラの生まれた経緯と存在意義を最も体現したとして高い評価を受けた。
この作品のみ平成『 ガメラ』シリーズを手がけたスタッフによって製作されており、その面目躍如と言った所だろうか。
このシリーズでは放射熱線が「ゴジラの奥の手」のように扱われているのが特徴で、溜めが長くなっている他、長距離からの攻撃がよく見られる。
また、接近戦ではボディプレスを使った事も。
『FINAL WARS』においてはプロポーションが以前よりスリムになっており、ジャンプなどの素早い動きを頻繁に見せる。
以前のシリーズに比べてマニア向けの色が強くなった時期だったが、
娯楽が多様化して以前ほど子供が怪獣映画を求めなくなった事もあり、
VSシリーズほど興業的に振るう事はなかった。
そして第1作から丁度50年後の2004年を節目とし、『ゴジラ FINAL WARS』をもってそのシリーズに一旦の終止符を打った。
その後、映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の冒頭にてフルCGのゴジラが僅かな時間だが登場。
昭和の町並みを尻尾で吹き飛ばし、熱線を吐いて東京タワーを倒壊させた。
劇中では呼称されないが東宝が公認した正真正銘の「ゴジラ」とされている。
また2005年には『 ウルトラマンマックス』で、 アントラー登場回において、
玩具ではあるが 「ゴジラvsガメラ」という、夢の対決が実現している。
ただし、本放送時のみという前提なのか、DVD等では削除されているが。
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