原作再現



原作を持つ作品全般における「原作再現」

原作のある作品(MUGENも含む)において、その原作のワンシーン、技、設定などをゲーム内で再現する事。
なお、ここで言う「原作」の中には普通ならそう呼ばないものも多く含まれているので、
「ネタ元」という言葉に置き換えて認識しておく方が分かりやすいかも知れない。

北斗の拳』『ジョジョの奇妙な冒険』などでは「らしさ」を出すために、
特殊イントロや特殊KOなど試合前後の演出などはもちろんの事、
可能な限り原作で使用した奥義や技を使うのであるが、例えば、
など、キャラによって特殊な仕様になる技がある。
「見る限りでは残悔拳で押す秘孔は左右対称だからサウザーにも効く気がする」「じゃあ同じく秘孔を突く技のはずの百裂拳はいいのかよ」
とは多数のAC北斗勢談。

後者に関してはMUGENにおいては「一部北斗キャラ相手の時のみ「原作における決まり手」も一撃として出せるように」として再現を試みている方もいるが、
今の所「サウザー相手のテーレッテーは(原作での決まり手である)北斗有情猛翔破も使用可能」なケンシロウは確認されていない模様?

別に原作の無いゲームでも処理さえ組めば可能だが、キャラによって性能が変わるのはあまりよろしくなく、
ファンの思い入れに訴えかける手法なので、原作の無いゲームでわざわざこのような要素を盛り込む事はまず無い。
また、格ゲーキャラをMUGEN入りさせる際に「原作の原作」内の細かな設定、技、演出を追加する場合があり、
1の意味ではアレンジという事になるのだが「(原作の)原作を再現する行為」となるために、これもまた原作再現と呼ばれる事がある。
例えばUnknownの「えいえんのめいやく」は、演出と時限即死という性質共に『ONE~輝く季節へ~』の「えいえんのせかい」で再現した技であるし、
ニート運送氏作の毛利元就は『戦国BASARA』で元就を含む一部キャラが味方を殴れる仕様を再現し、全ての攻撃が「味方殺し技」になっている。
なお、トキ北斗有情破顔拳がタッグ時に2人に同時に当たるなど、
「特に大きなアレンジも加えていないのに勝手に原作再現になってしまった」というようなものも中にはある。

通常は格ゲー以外の媒体が先にあるもので行われるが、格闘ゲームとして作られたものでも、
ゲーム中の登場演出として見せていた動作が後に実際の使用技になった瞬獄殺
公式コミカライズ作品からゲームに逆輸入された真・昇龍拳のように技として追加される例もある。

また、
など、「どこというわけではないが原作を反映したような相性や展開になっている」ケースもある。

原作再現と格ゲー補正

原作の設定の中には、
これらのような格ゲーで再現しづらい、或いは再現すると都合が悪いものが含まれている場合があり、
ゲーム性のためにあえてこれらを再現しない(緩和したり完全に無視したりする)事を俗に「格ゲー補正」と呼ぶ*3
中でも特に、原作との差異に何も説明がなされておらず、「ゲームのお約束」とでも解釈するよりないようなものを指して言う事が多い。
その最たる例が銃で撃たれたり刀剣で斬られたりしても大してダメージにならない」現象であろう。

しかし、ゲームバランスを崩さない範囲ではもちろんの事、
時には少々バランスを犠牲にしてでも原作を再現した方がファンに喜ばれるという場合もある。
そのように原作再現とゲームバランスが相反する時には、格ゲー補正の度合いを上手く加減する事が重要なわけである。
例を上げると、本来ならばサウザーには北斗神拳の秘孔技の大半が通用しないはずなので、
北斗残悔拳だけが通用しないという仕様は「ある程度原作を再現しつつ、ある程度の格ゲー補正もかけた形」であると言える。
一方で、時にはゲームバランスの為に原作再現を完全に犠牲にしてやらねばならない場合もあり、
例えば「燃え盛る炎ですら拳王の肉体を焼く事は出来ない」を再現してしまうと、ジャギ一撃必殺奥義が効かなくなってしまうため、
これはゲームには微塵も反映されていない。マッチ投げくらいは効かなくてもよかったんじゃないだろうか

ちなみにトキは原作でサウザーの体の秘密を看破していたのでいいが、問題なのはそうではなかったラオウである。
サウザーの謎を自力では見抜けなかった原作とは矛盾してしまうが、
「貴様の体の謎などとうに知っておるわ!」と言い放つ専用イントロを敢えて用意する事で、技が通用する事の説明がなされている。
しかし、ここで負けた時の台詞は「貴様の体の謎がわからぬ…」どっちだ

また、原作付き作品ではミスター・サタンマミヤのような、
「人気は高いものの、本来なら他のキャラと戦っても万に一つも勝ち目は無い」ようなキャラが登場する事があるが、
大抵はこのような場合も対戦形式のゲームとして成り立たせるべく、その格差を原作ほどではなくする形で調整が付けられる。
こういった調整もまた格ゲー補正の一つであるとされる。
なお、「格ゲー補正」という語が広まってからは元々の意味と無関係な使われ方をする事も増加しているようだ。


MUGENにおける「原作再現」

クローンゲームとしての側面も持つMUGENにおいて、意図的な変更*1を行わず、
原作ゲームの仕様をそのまま再現しようとする事。あるいはそのように作られたキャラの事。
しかし作品によってはそれが非常に困難であったり、根本的に無理であったりする。

例を挙げれば、どのような相手とでも戦わなければならないため、専用のやられモーションが必要な技の再現も難しい。
p2Nameなどの方法で一応は対応できるが、他のゲームのキャラに対しては、
必須スプライト内の他のモーションで代用する事になる。
多くの場合はやや不自然に見える程度で済むのだが、たまにギャグになってしまう場合もある。
しかし「ミッドナイトブリス」「甘くないのもありますよ」のように、
相手に専用グラフィックを用意しなければ技自体が成り立たないというようなものもあり、この場合は未対応キャラに対する演出の変更が必要になる
(もっとも前者はあまりにもロマンがあるため、対応キャラは多いようであるが)。
また、性能的に「絶対に気絶しない」「無敵状態の相手にも命中する」「ブロッキング不可」など、
無理に再現するとバグが出る恐れがあるものもある。

また異なるキャラ同士のすり合わせも殆どされていない上、原作では有り得ないようなワケの分からないモノが多数参戦しているため、
キャラサイズの関係で絶命奥義体が切れなかったりありもしない骨格が出てきたりする場合や、
本来キャラ本体であるものをヘルパーで動かしているキャラにフェイタリティを仕掛けると違うものが身代りになる事もある。
また、設定上のすり合わせもされていないため機械から吸血したり、p2Nameで思わぬ人違いをしたり、
俺の名を言ってみろ」『知ってるが お前の態度が 気に入らない』「ぬぁぜだぁ~」なんて珍事態が起こる事もあれば、
その力私が取り込んでくれよう」といった無駄に噛み合った掛け合いになる事もある。

もう一つの問題として、原作のゲーム自体の仕様を「どう解釈するか」「どう再現するか」という事がある。
現在割と良く見られる例は以下のようなもの。

+ 空中ガードの有無
全ての格闘ゲームは『ストリートファイターII』などの「空中ガードが無い作品」と、「空中ガードが有る作品」に分ける事ができる
(なお後者はさらに『ヴァンパイア』シリーズや、
 一時期の『THE KING OF FIGHTERS』などの「空中ガード可能な技・不可能な技が混在する作品」と、
 『X-MEN Children of The Atom』などの「全ての技が空中ガード可能な作品」に分かれる)。

後者の作品のキャラを再現したい時に解釈に迷う余地はまず無いが、前者のキャラを再現しようとすると、
  1. 本人は空中ガードができず、敵はこちらの攻撃を空中ガードできる
  2. 本人は空中ガードができず、敵もこちらの攻撃を空中ガードできない
  3. 本人は空中ガードができ、敵はこちらの攻撃を空中ガードできない
という3通りの解釈ができてしまう(システム的に1 < 2 < 3の順に強くなる)が、
同じ方式のキャラ同士の対戦の場合には双方に空中ガードが無いという点で全く同じである。
そして、1の方式のキャラと3の方式のキャラがぶつかると、同作品の原作再現同士でも原作と全く違う挙動になる。
なお、空中ガードの可能・不可能を一律にせず、技の種類に応じて振り分ける事で、
「1と2の間を取る」という選択も可能である。特に決まりがある訳ではないが、大まかな傾向として、
このようにすると、上で言う「空中ガード可能な技・不可能な技が混在する作品」からのキャラとの戦闘において、
相手側もある程度原作に近い立ち回りができるようになる(以下、便宜的に1.5と呼ぶ)。

ストリートファイターZERO3』のISMや『CAPCOM VS. SNK2』のグルーヴなど、
メーカー自らが「最近のシステムと過去のシステムを戦わせたらこうなる」という例を見せてくれた作品も有り、
これにならってか1あるいは1.5の方式を取るキャラも少なくない。
しかし、「敢えて2や3の方式を取り、原作で得意だったトリカゴ戦法を再現する」という選択もMUGENにはあり、
それはそれで「原作再現」なのである。

ちなみに、空中ではブロッキング直前ガードなどのハイリスクな防御法しかとれないタイプの作品からのキャラでは、
「自分も相手も空中ガードできない」という、上で言う2の方式が選択されるケースも多く見られる。

+ 餓狼伝説』シリーズのラインバトルシステム
虻蜂氏のクラウザーやNHK氏のリックなど、ライン移動を再現したキャラが登場しているが、
他シリーズのキャラや同シリーズからであってもライン移動を持たないキャラ相手に有利すぎる場合がある。
これは原作の「別ラインの敵には当たる攻撃が限定される」という仕様を、
「ラインバトル非対応な仕様のキャラの攻撃は別ラインの敵に一切当たらない事にする」という、
割り切った方法を取る事で再現しているためである。

全てのキャラの全ての攻撃をp2Nameとステートの監視により判別し対応させるなどというのは、
コンプリートゲームでもない限り実現不可能なので仕方が無い事ではあるが、全画面判定の技などは、
とてもじゃないがちょっと横にどいた程度で回避できるようには見えないものが多いので、
見栄えの点から言うと少々相性がよろしくない。

+ 東方Project』作品のグレイズシステム
原作の「ダッシュで相手の飛び道具をグレイズできる」と言う仕様を、
  1. 東方キャラはダッシュで相手の飛び道具をグレイズできる
  2. 東方キャラの飛び道具は敵にダッシュされると(それがどんなキャラのダッシュであろうと)グレイズされる
  3. その両方
のどれと見るかによって、他作品のキャラを相手にした際の挙動や強さが大きく変わる。
ただ、狂キャラでもない限り東方の弾幕はグレイズで回避しないとどう足掻いても無理ゲーにしかならないので、
2か3が採用されている事が多い。
しかし、どれを採用しても元の作品にダッシュが無いキャラに対してはどうしようもないという問題もある。
と言うか、専用AIを持っていないと飛び道具に対してダッシュするわけが無いので、所謂AI殺しになっている。

ちなみに黄昏フロンティア系の「受け身可能時間中は攻撃が当たらない」という仕様なども、
その解釈や再現方法によって有利不利が大きく異なる。

一般には、製作者が想定したキャラの強さに合わせて他の格闘ゲームとすり合わせで決めている場合が多いようである。

他にも、根性値気絶ガードクラッシュなどの処理は「自分がする」キャラと「相手にさせる」キャラとがおり、
双方が同じ処理法であれば五分五分になるが、異なるキャラでの対戦ではシステムが二重になってしまい、
その結果として著しい有利不利が発生する場合があるし、
一口に再現系キャラと言っても解釈・方法は千差万別で、往々にしてそれらが強さ・勝率にも大きく影響してしまう。

この意味での「原作再現」とは「アレンジ」の語がほぼ対義語の関係にあり*2
意図して大きな変更を行ったキャラは「アレンジ系」「アレンジキャラ」などと呼ばれる。


その他の「原作再現」

エス氏製作のが、初公開時に作者が「原作再現の雪」と主張した事で、
実態はあまりにも原作とかけ離れたものであったにも拘らず「原作再現の雪姉さん」と呼ばれている。
この呼び方が定着していたために、後に同氏が公開したより原作に近い方の雪が「原作再現じゃない方」と呼ばれる事となった。
なお、氏曰く、十傑集のみたいなものとの事なので、「衝撃のアルベルト」や「素晴らしきヒィッツカラルド」のように、
「原作再現の雪姉さん」と一まとまりの名詞として考えるべきであろう。
またkmym氏突然外人になって曰く「原作再現の響さん」の場合は「ゲントアーク・ツァーゲイト(色々な方面にごめんなさいしないとね)」の空耳らしい……。


*1
どんなにシンプルな作品であってもMUGENで完全に再現するというのはまず不可能で、必ずどこかに違いはある。
そのため原作再現かどうかの判断では作者の意図も重視され、「MUGENでは再現不能」という理由で、
仕方なく再現していないような部分(例として、厳密な解析が難しい北斗の拳の蓄積バグなど)があっても、
原作再現と呼んで構わないとするのが普通だろう。

*2
しかし「再現度が低い」と評されるキャラの中には、出来の悪さでそう判断されるものもあるので、あくまで「ほぼ」である。

*3
この「格ゲー補正」も「原作再現」とほぼ対義語の関係にあるが、*2と同様に再現しなかった場合の全てがこれに当てはまるわけでもない。


最終更新:2023年07月15日 23:49