沙耶


「今日の晩御飯、はっけ~ん!」

ニトロプラスのPCゲーム『沙耶の唄』のヒロイン…そこ、幼女とか言わない。そうだけど。
担当声優は川村みどり女史(名義は違うがアンナと同じ人)。

ニトロプラス・アクションシリーズでお馴染みの虚淵玄&中央東口の両氏が、今回は得意とする
アクション活劇路線はあえてとらず、男女の恋愛物語、そしてアダルトゲームとしてのHCGの
充実など、新しい作風へとチャレンジした意欲作となっている。

医科大学に籍を置く男女4人の恋物語。そして、ある日とつぜん郁紀の家へと転がり込んでくる
謎の少女・沙耶。人知れず悩みを抱えた一人の青年が、様々な人々との出会いと別れを経験し、
ついには自分なりの人生を切り開いていこうと歩み出す……。

(発売前の広告より)

うん、嘘はついてない。
+ 本当はこんな話
事故の後遺症で五感全てが狂ってしまった主人公、匂坂郁紀(さきさか ふみのり)の前に現れた、
「ただ一人普通の人間に見える」少女。二人はやがて孤独の中で惹かれ合う…。
+ 狂った世界で普通に見えるという事は…?(原作ネタバレ含む)
その正体は他種の文化や知識を乗っ取る異次元の生命体である。
所謂インベーダー(異星人)というわけではなく、クトゥルフ神話*1「異形のもの」がモデルとされる)。
標的に接触する事でその組織を解析・改造し、増殖するという本能・能力を持っており、
その能力を行使する事で到達世界を侵略していく、という種族のようである。
彼女曰く「花から遠く離れた砂漠へと飛ばされた種子」であるとの事。
人類にとっては醜い怪物にしか見えないものの、同胞種族同士では美しく見えるようだ。*2
性格に関しては見た目通り子供っぽい少女のそれで、他人に嫉妬する姿や寂しさから間違いを起こすなど、
とても人間らしい。
郁紀の前では甘えているのか自分の事を「沙耶」と名前で呼ぶが、基本的には「わたし」。
また知識を吸収するために必要なとてつもなく優秀な知能を持っている。
人間でない事に劣等感を覚え、そこからくる嫉妬深い一面も見せた。

沙耶はオカルトを研究していた某大学教授によって地球に召喚され、
当初は彼の元で人類の文化について学習を重ねていたのだが、教授の与えた高等数学の書物を全て読破し、
人類が扱っている数学は簡単すぎて飽きたから他の物が欲しいと言う。
しかしその知識を吸収する過程で恋愛小説などに触れ、自分の性別が人類における「女性」であると認識。
更には人類の恋愛感情を学習してしまった事で、侵略にとって邪魔なものでしかない「恋」を繁殖に不可欠なプロセスと判断。
少女としての自我を形成してしまった沙耶は、やがて「恋」に憧れるようになってしまった。
人間を学習するうちに人間と変わらない精神構造を持ってしまったのである。
特に理由はないはずなのに郁紀と出会う前から人間を食べていなかった事からも分かる。
だが当然、彼女のような異形の存在を愛してくれる人物など存在する訳もなく、
長い年月を孤独のままに過ごしていたのだが……。

なお、本作には沙耶が残した子供達により世界が侵略されてしまうというEDもある。
一見バッドエンディングに思え、或いは郁紀を騙して侵略したようにも見えるが、実際はそうではない。
恋に憧れながらも自分の姿が異形にしか見えない世界を彷徨っていた中で、
自分を唯一心から愛してくれた郁紀を沙耶もまた愛しており、あるEDでは、事切れる間際まで既に自決した郁紀のそばに寄り添い、
また別のEDでは日常に帰りたい都紀を元に戻す際に、彼の幸せを案じると共に嫌われたくないからと都紀の元を去るなど、
基本的なメンタルは「恋に恋する少女」、それもフィクションのラブロマンスに出てくるような少女のそれに近い。
なお、本作は全部で3つのEDルートがあるが、いずれも完成度が高くそこが本作の人気たる所以でもある。

作中でも障害を負った郁紀を気遣い、ストレスの無い生活を送る事ができるように献身的な努力をしている。
沙耶にとっては理解できない人間の料理を作り、郁紀が落ち着く色合いに家屋を塗装し
(人間にはペンキをぶちまけた様にしか見えない)、なんとか狂った世界でも生きていこうとする郁紀のため、
彼の障害の治療方法を確立さえしてしまうのだ。
郁紀の障害が完治すれば当然ながら五感は正常に戻るので、沙耶の姿も化物にしか見えなくなってしまうのに……だ。
実際、沙耶が郁紀と暮らし始めた当初の目的は彼の障害を治す事であり、
前述の通りルートによっては自ら身を引き、郁紀を治療して去ってゆく。
また別のルートによってはその愛を受け入れ、共に人外の道を歩む事になるわけだが、
郁紀を愛しているが故に彼に人の道を踏み外してほしくない、とも沙耶は思っていたようである。

『沙耶の唄』は「ホラーアドベンチャー」と銘打たれているが、実際にプレイした人々はみな口を揃えて「純愛ゲー」と言う。
ニトロの作品は表向き公言しているジャンルと本質が違っているものが多い気がする。

……まぁ、人類から見れば狂人とエイリアンのカップルが人類を滅亡させているようにしか見えないのが
またシュールな所でもあるが。実際2人の行為の多くは正義の味方達を敵に回す事であるのは間違いない。
尤も、より正確に言うならば滅亡ではなく生まれ変わり、と言った方が正しい。
沙耶から拡散した種子によって全人類が沙耶の同胞となり、同胞にとって互いの姿は美しく見えるのだから。
世界が認めないのなら、認められる世界を作り出そうという、キャッチコピーの「それは、世界を侵す恋。」の通りである。
沙耶は決して人間を憎んでいる訳ではなく、初めは人間を食べずに小動物を捕食していた事や、
隣人の脳を弄って沙耶自身を“正常”と認めてもらおうとした事からも、それは明らかである。
ただ沙耶達の行為は、罪の無い人間を傷付けてしまい、どう言い訳しても許される事ではないのもまた事実なのだ。

本編中に見せるあまりに健気な姿や、人類の敵でもそれは種族が違うからであって、沙耶の行為は不可抗力な点もある事から、
人類の滅亡よりも沙耶を応援してしまう脳を弄られてしまった不幸なプレイヤーも少なくない。
無論、自分達の世界を守るために戦う人間側もまた、間違ってはいないし至極当然の行動をしているだけであり、
実際恋するドラゴンからは貴様の愛は侵略行為ッ!!とバッサリ一刀両断されている。

なお、「奉仕」と言ってもメイドさんな種族という訳では無い。
他の生物によって創造された生命ないし種族を指すクトゥルー用語である
(とはいえ現在の創作で題材にされる際は、やはりと言うべきかメイド的なキャラ付けがされる事も)。
一般的に創造主の種族に仕えるが、一部の種族は反乱して下克上したり、
そもそも意図して創造されなかった故に創造主を知らない種もある。

+ 旦那の郁紀について。ネタバレだらけ

「僕は狂ってなんかいない」

沙耶というキャラクターを語る上で彼を外す事はできない。
医大生である事から頭脳明晰である事が窺える一方、親友をはじめとする友人達にも慕われており、
彼に一目惚れしていた遥が、沙耶に勝るとも劣らない健気な良い子である事から、人格面も良かったと思われる。
しかし交通事故で家族を一遍に失い、彼自身も助かったのが奇跡と言われる程の重傷を負ってしまった。
その上、事故による脳障害が原因で重度の知覚障害を負った結果──他の人間全てが化物に見えるようになってしまった。
やがて視覚全てが異形のものに埋め尽くされていき、それに引きずられ味覚、聴覚、嗅覚、その全てが変転してしまう。
彼にとって世界は「おぞましい化物の猥雑な鳴き声と汚臭に埋め尽くされた腐肉の塊」に過ぎないのだ。
そして、そんな彼が狂気に陥らずに済んだ理由が──たった一人、まともな人間に見える少女、沙耶だった。

やがて彼は沙耶を愛し、その後ルートによっては彼女と共に生きていくため、彼女と共に人を殺し、喰らって生きていく事を選択する。
沙耶のために狂気を受け入れ人間である事を止めてしまったのだ。

「もう、言ってもいいよね?沙耶、君のこと──愛してる」

これだけ聞くと、ただ愛に狂ったサイコキラーにしか見えないのだが、
沙耶と郁紀が人間を殺して食べるのは、実は郁紀の方にやむにやまれぬ事情があるからなのである。
障害のせいで食べ物さえ正常には見えず、味覚も狂ってしまった郁紀が、
唯一何の抵抗も無く口にできた物が人肉だったのである。
その事実に到達するまで、沙耶は郁紀のために様々な料理を作り、
郁紀もまた味覚が狂っていても沙耶が作った料理だけは残さず食べていた。
沙耶もまた人間を食べる事が悪い事であるとの認識は持っており、基本的には野良猫や野良犬で我慢していた。

重ねて言うが、郁紀も沙耶に愛されるだけあって、実にいい男(Not性的&性的両面で)なのだ。
行動が狂気じみて見えるものの、彼の事情を鑑みれば当然で、思考能力や判断力はまともに残っており、
道徳心も持ち合わせている。彼が人を殺せるのは、人間が化物にしか見えないからなのだ。
沙耶を召喚した某教授も正常な知覚能力を持った上で「娘として」沙耶を愛し、その幸せを願っていたのだが、
郁紀もまた沙耶の正体を知った上で、更にルートによっては正常な知覚能力が戻った状態で
「愛してる」と告白する本物の漢である。

世界の全てが生理的嫌悪を催す地獄である中、家には自分を出迎えてくれる人がいる。
そこは彼にとって唯一安らげる場所なのだ。

「おかえり」

+ 元ネタ?
余談になってしまうが、事故の後遺症で人間が化け物に見えるようになり、
逆に沙耶が普通の人間に見える…というシチュエーションには元ネタが推測できる。
というか、劇中で郁紀が沙耶に告白する際、それとなく口にしている。

ズバリ、漫画の神様・手塚治虫の作品『火の鳥 復活編』である。
25世紀の世界に生きる主人公レオナ(念のため書くがである。こっちではない)は、事故で重傷を負いながら奇跡的に回復するものの、
後遺症によって人間(というか生き物全て)が岩でも金属でもない無機物のように見えるようになってしまう
(時間が経つにつれ、少しマシにはなっている)。
逆にロボットの方が人間に見え、彼は「チヒロ」というロボットと恋に落ちる
(実際には人型ではあるものの、虫のような見た目の作業用ロボットだが、彼には美しい少女に見えた)。
やがて人間の手によってチヒロは壊されてしまい、
絶望しながらもレオナは自分の精神をチヒロの人工頭脳に移植してもらう事を決意する。
これが後に「叛乱」を起こして『火の鳥』世界全体を揺るがす事になる、家事用ロボット「ロビタ」第一号誕生の瞬間だった。

……「ロボット」を「異形のもの」に置き換えれば、郁紀の出来上がりというわけである。
ついでに言えばニトロワの沙耶の位格「小型の奉仕種族」は、クトゥルフ神話TRPGにおけるクリーチャーの区分であるが、
そういった存在との恋愛、という事を考えると、同じく『火の鳥』に登場する「ムーピー」と言う種族が元ネタではないかと思われる。
どんな厳しい環境にも耐え得る生命力と変身能力、そして望むままの夢を見せる能力を持つ不定形生物で、
あらゆる種族と子を残せる(実際に『火の鳥 望郷編』で人間とムーピーの間に生まれた新種族が登場している)のだが、
『火の鳥 未来編』では、主人公のマサトとムーピーの少女との悲恋が描かれているのだ。
こちらにおいても主人公マサトは紆余曲折を経て肉体無き別種の存在となり、長い歳月の果てに恋人と再会を果たしている。

余談だが、かつて週刊少年ジャンプで連載されていた『アウターゾーン』という漫画がある。
これは時事ネタや古い名作映画や漫画をモチーフにした明らかに子供向けではない基本バッドエンド仕立ての短編ホラーなのだが、
この中に『火の鳥』をモチーフにしたと見られる話があり、
こちらは現代の画家が事故により目を負傷した結果、人間が化け物に見えるようになるのだが、
その中で一人だけ美しい容姿の女性と出会う話となっている。
無論、それは正体不明の"何か"なのだが、画家はその女性と共に生きる事を選ぶ。
『沙耶の唄』とは色々と被っている部分が多く、こちらのアレンジを参考にした可能性もある。

沙耶の設定は『グリーン・レクイエム』という小説をモチーフにしたとも言われており、このようにモチーフ元は複数存在する。

「さっきの漫画の話だとね、人でないものを愛した男は、
 最後に自分が人間であることを辞めて、恋を成就させるんだ。
 ハッピーエンドだよ。だろう?」

担当声優は氷河流氏。三文字で「ひかる」と読む。
ニトロの他のゲームでは『デモンベイン』のマスターテリオン役も演じている。
他メーカーの作品だと『リトルバスターズ!エクスタシー』の棗恭介役が有名か。

『あ』、もう一度『あ、い』
『さ、し』、『た、ち、つ、て』、『ら、り、る』。
変換、確定。

原作宣伝動画

また、アメコミ版『沙耶の唄』も発売された。
ニトロプラス十周年を記念したアーティストライブで現地の作家の作画が公開された時はあまりのイメージの差に、
「本当に大丈夫なのか」とファンを騒然とさせ、ニトロプラス社長も唖然とした表情を見せた。
事前に確認しろよ……と言っても難しかったのかもしれないが
そんなファンとニトロ社員の心配をよそに日本で発売されると(日本語訳は無し)、
「これはこれであり」という評価を得る事になった(譲歩と妥協がないわけではないが)。
アメリカ人向けにリメイクされていて、どこか儚げだった二人もガチムチ尻顎セクシー悪女に大変身である。
+ ネタバレ
まあ、向こうの人にとっては日本人的萌えキャラは幼すぎたる印象を与えるため「ヒロイン(恋愛対象)」として見づらく、
イケメンキャラも細腕過ぎて骨折れそうゲイみたいなファッションとの事で、
この辺りはそれぞれの美的感覚の違い故、仕方ない面が多分に大きい。

アメコミ版では沙耶の本当の姿が出てくる。未知の化け物というより悪魔という感じの姿にされていた。
まあ、ちゃんとおぞましさは伝わってくるし、そのままじゃ現地の人には分かりにくかっただろうから、
まあまあ許容されている。見た目的には『ガメラ』のレギオンイリスっぽい感じである。
+ アメコミ版『沙耶の唄』での沙耶の正体。ネタバレ注意

現地で映画化するための足がかりにしたいとの事だったので映像化が期待される。
どうせなら日本でアニメ化してほしいものである。規制さえなければ……

ネタでこんなものもあったりする。
+ ガチムチネタ注意
歪みねぇな

ちなみに、コレが投下されてから『沙耶の唄』原作が200本以上売れたそうな。
…発売から数年たってからこの売上は正直普通ではない。

その他、『魔法少女まどか☆マギカ』の公式コミカライズで『沙耶の唄』のパロディをやっちゃったりしている。…いいのかそれで。
それが理由というわけではないだろうが、『まどマギ』の放送からリメイク版『鬼哭街』発売までの半年足らずで、
『沙耶の唄』が新作ゲーム一本分ほどの稼ぎを叩き出したらしい。
低価格作品のさらに廉価版でこれである。果たしてどれだけの人間が沙耶に脳みそを弄くられたのだろうか。

+ ニコニコ動画における沙耶の唄及び沙耶の扱い
プレイ動画が削除対象な事もあって、「沙耶の唄」のタグが付けられる動画といえば、
音声にノイズが混じったり意図的に加工された動画か、グロテスクな描写が多々含まれる動画のどちらかである。
また、ライアーソフトのゲーム『腐り姫』のヒロイン蔵女(くらめ)とコンビを組んでグロキュアなるアイドルユニットを結成し、
歌ったり踊ったり午前4時になっても寝ない悪い子の脳を弄ったりしている。
動画もいくつか投稿されている。


『ニトロ+ロワイヤル』での性能

クリックで拡大

同じくNITROPLUS製作の『ニトロ+ロワイヤル』にも出演。
肉塊による(色んな意味で)エグい攻撃はここでも健在。
原作の驚異的な生命力の再現からか見た目によらず(?)防御力が抜群に高く(通常の1.25倍)、
おまけに通常投げで体力を回復できるので非常に打たれ強い。
設置技や肉塊攻撃を駆使して、中距離で立ち回るタイプ。

爆発物を包んだ肉塊による攻撃は、ニトロワオリジナル。
作中では体を切り離せるというような記述は無い、というか出てくる情報を考えると不可能と思われる。
所謂「格ゲー補正」を存分に受けているキャラなのだ。
後、他のヒロインに沙耶の姿が普通に見えているのも格ゲー補正だと思われる。
もしくは画面上のビジュアルとは異なり、ちゃんと沙耶の正体を目視できていると解釈すべきか。
少なくとも全員沙耶に脳を弄くられた訳ではないと信じたい。
+ 補正と言えばもう一つ
原作『沙耶の唄』における沙耶は、上記のように子供っぽい所はあるものの基本的に知的で落ち着いた性格である。
MUGENの(というかニトロワの)沙耶だけを見ると所謂「天然系」のキャラであるような印象を受けがちだが、
原作での沙耶にはそのような要素はほぼ無いので勘違いしないようにしよう
(少なくとも「ふしゅるー、ふしゅるー」とか効果音を口に出してのたまうようなキャラではない)。
恐らくだが、ニトロワにおける沙耶のキャラ設定は殺し屋だったりエロかったり無数に居たり
色んな意味で個性の強い他の参戦キャラに埋没してしまわないようにというニトロスタッフの計らいだと思われる。

リーブアタック(旦那を呼ぶ超必殺技)の「耕司の嘆き・郁紀の狂気」は、
突如井戸から現れた耕司*3が相手を掴み、郁紀が斧でカチ割る技。
発動ボイスは「ふみのりー!」なのに率先して飛び出すのは耕司。しかも外すと郁紀は出てこない。薄情な夫である。
さらに何故か出てくる郁紀は耕司の夢の中に出てきた、顔面が割れた姿である
(マイルドな表現として顔全体が赤く塗られるだけに留められている)。
通称「いどまじん」「郁紀の旦那!」。
空中にいる相手には外れてしまうが、発生が早く、ガード不能である。
その上威力も高く、相手を空高く吹き飛ばせるので追撃も可能。
ただし、ロックする位置の融通があまり利かず、間合いをしっかり計らないと当たらない。
掴み判定が遠い場所にある投げのようなもの。

参考動画


MUGENにおける沙耶

+ kayui uma氏製作
  • kayui uma氏製作
2017年2月のJ:COMのWebSpace終了によるサイト消滅で長らく入手不可だったが、現在ははいうぇい氏によって代理公開されている。
『ニトロワ』再現仕様だがおまけ要素として黒と金の特殊カラーが搭載されている。ミッドナイトブリス対応。
『ニトロワ』で登場するキャラにはもちろん美味しそうな相手に対して特殊イントロがあり、
おつかい氏の美樹さやか側には沙耶の招待が見えているような専用のイントロがある。
2011年12月31日に更新され、ニトロゲージと投げ抜けが追加された。

マリア・トレイターを製作したマリ夫氏によりドット改変パッチも製作されている。

AIは天照π氏、ARL氏(現在入手不可)及びNS氏によるものが存在する。
これらの内、最新版に対応しているのはNS氏のもののみ。
ARL氏のものは、投げからのループ回数も自由に設定できる(デフォルト設定では2回)、設定によっては永久ループも可能である(お勧めはしないが)。
またAIレベルHARD時のみ特定条件下で発狂スイッチが入るようになっている。
スイッチが入るとどこぞの尖兵のように無敵移動を多用するようになり、凶悪キャラを倒す事も…。
NS氏のAIは2012年10月8日に公開されたもので、マリ夫氏の改変パッチにも対応している。
プレイヤー操作(4:51~)

+ 大会ネタバレ
MUGEN祭 大盛りシングルトーナメントにおいては、初戦でジョブチェンジ七夜のフライングをチャンスメイクで防ぎ
その後2ラウンドを続けてほぼパーフェクトで奪い視聴者を驚かせた。
その後も順調にコマを進め、ギル&カイタイラントといった優勝候補と目された強敵達を立て続けに撃破。
3000キャラ以上が出場する同大会において見事準優勝に輝いた。ただ決勝戦では試合内容よりこいつの立場が目立ってた訳だが

原作再現の雪との戦いでは沙耶の超必の「沙耶の唄」に雪の暗黒雷光拳がことごとく潰され、その度に「暗黒雷光拳!」のボイスだけが響いたため、
しまいには沙耶の唄が暗黒雷光拳と呼ばれるようになってしまった
VS原作再現の雪(9:50~)

+ 嘘=美談氏製作
  • 嘘=美談氏製作
+ 若干グロ注意
通称「グロ沙耶」
2016年4月のフリーティケットシアター終了に伴い、氏のサイトも消滅したため入手不可能。
シュマゴラスを改変した原作再現(ニトロワではなく『沙耶の唄』的な意味で)の沙耶。
可愛い沙耶のイメージを壊したくない人にはお薦めできません。これでも可愛く見えたら…ある意味勝ちかもしれない。
更新により一撃必殺が搭載されており、決まった後の演出が結構長いので、CMと言いたくなる事請け合い。
攻撃方法は他に沙耶イコクラッシャーや、旦那の召喚(井戸無し)など。
『ニトロワ』の沙耶のものを加工したボイス特殊イントロが追加され、イントロでは何所かで見たような首飛び出す事も。
IX氏によるAIパッチが公開されている。
プレイヤー操作

+ ヴェールヌイ氏製作
  • ヴェールヌイ氏製作
kayui uma氏の沙耶を改変したもので、2018年7月7日に公開された。
基本性能は『ニトロワ』準拠だが、ステップがダッシュになっている、ジャンプが相手を追尾するなど、一部に独自のアレンジが施されている。
AIは未搭載。


「ふしゅるふしゅるー♪」

出場大会

+ 一覧
+ 沙耶
シングル
タッグ
チーム
その他
更新停止中
凍結
削除済み
非表示
+ グロ沙耶
【グロ沙耶】
更新停止中
削除済み

出演ストーリー

+ 一覧
A to M
DIOの喫茶店
ELEVEN~小心者リーダーと見た目お嬢様~
F.K.B. ~炎とナイフとバーグマンの事情~
Over Spilt Milk
Transfer Avengers(ニトロワ版、シュマ改編両方)
アリスさん姉妹
ウドン13(東風谷沙那。本編では故人。File-Xでは肉食系ロリ妻
鬼妹日記
温泉女王と温泉に
この世界の片隅で(ニトロワ版、シュマ改編両方)
志貴と無限市物語
時報少女
大闘領 -Sengoku Legend of the Gainers-
隣の沙耶ちゃん家!
ナイトメア・ハンターズ(not肉塊。ちと親父臭い
彼岸日和(クランゲ)
ヒナナイの剣
ブロリーとMUGEN町の人々(父親は
まったりCafe「鬼神」
もえるく。
幽香の農業王国物語
ユウ☆キ☆オウ
有刺美花
ロック・魔理沙のキノコに釣られておいでませ夢幻想郷

プレイヤー操作

アルで沙耶の唄 (kayui uma氏及び嘘=美談氏製)


*1
クトゥルフ神話とはアメリカ合衆国の小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが作り出した小説世界を、
彼の友人の作家達が共有する事で作り上げた架空の神話体系。
ちなみにラヴクラフト自身は『クトゥルフ神話』と言った事はなく、
このカテゴリは彼の友人であり弟子でもあったオーガスト・ダーレスがラヴクラフトの没後、
師の代表作である『クトゥルフの呼び声』にちなんで呼称したものだとか(神格のクトゥルフ由来ではない)。
作品自体を語るとなると膨大な文章になってしまうので、もし興味を持たれた方がいれば、
ニコニコ大百科の項目を始めとする各種ネットでの紹介、関連書籍などに直接触れる事を推奨する。

この神話体系の特徴として挙げられる要素として、
  • 各作品の主人公は恐ろしい事実の片鱗を見たにすぎない
  • 人類のまともな精神では理解する事もできない科学、魔術が存在する
  • 異次元の宇宙から怪物が地球に来ている
  • 政府等の機関はそれを隠蔽している
  • アインシュタイン(相対性理論などの我々の宇宙観を形成するもの)は実は間違っている
  • 狂気
  • 怪物は大低人類より遥かに優秀な種族である
  • 最後の希望、正気を保つための道具として自殺用の拳銃がよく使われる
  • 怪物は海の生物の特徴を持っているものが多い
などといったものが挙げられる。
『沙耶の唄』がクトゥルフものだと言われるのも、これらの要素と匂わせるワードが出てくるためである。
作中では明言されておらず、作者の虚淵氏も『沙耶の唄』がクトゥルフ神話だとは言わず、
ラヴクラフトの意向を守っている。しかしニトロの作家はクトゥルフ大好きだなあ。
TRGPの『クトゥルフの呼び声』で遊んでいた世代らしい。日本にクトゥルフを広めた偉大なゲームである。

こんなものが真実であるというのなら、私は真実など知りたくはなかった。

*2
沙耶の姿を見た人物は皆正気ではいられなくなり、「見た人間」と「見ていない人間」では決定的な差がある。
……と目撃した本人達が語るほどに、沙耶の姿は怖ろしく尋常ではないらしい。
所謂「絵にも描けないおぞましさ」というもので、もちろんそんなものを「見ていない人間」に描ける訳が無く、
もし描けたとしてもポケモンフラッシュどころじゃないレベルの騒ぎになって発禁確実であろう。
原作で最後まで姿が出てくる事が無いのはこのため。クトゥルフにおける「知ってはいけない真実」。

余談だが、ステータス画面にある「正気度ロール 1D3/1D20」はTRPG『クトゥルフの呼び声』が元ネタ。
数値の内訳は「チェックに成功した場合に減少する正気度/チェックに失敗した場合に減少する正気度」となっている。
数字の意味は「1D3」だと「3面のダイス(D3の部分)を1回(1の部分)振って出た目」という意味
(3面のダイスなんて無い…事もないのだが、使いにくいため6面のダイスを振って2で割って端数を切り上げるのが一般的)。
一般人の正気度(通称「SAN値」)が50~60程度である事を鑑みると、沙耶の数値はチェックに失敗した場合、
5点減少でなる「一時的狂気」どころか2割減少の「不定の狂気」(精神病院での治療が必要。後遺症として精神疾患が残る可能性もある)
に一発でなる可能性が十分有り得るレベルで、非常に危険。死体、または人体の一部だけ(腕とか内臓とか)を発見した場合が0/1D3、
ごく普通のゾンビやミイラ男が1/1D8なのだから、どれだけおぞましい外見なのか理解できるという物だろう。

ちなみにショゴス(アル・アジフが連れ歩いているスライム)が1D6/1D20。アル本体(「ネクロノミコン」アラビア語原書)を読むと1D10/2D10。
ガタノソアシュブ・ニグラスが1D10/1D100……あれ、実はそんなに怖くない?まぁ比較対象が悪すぎるだけだが
(奉仕種族な沙耶に対しガタノソア、シュブ・ニグラス等は主人(邪神)レベル、
 アルは読む事により知らない方が良い事を知ってしまうからであり、表紙を見ただけで減る訳ではない)。

しかしながら、そのおぞましい外見とは裏腹に、沙耶には戦闘能力は無い
ニトロワでも一番化け物しているキャラなので意外かもしれないが、原作においては一般の成人男性に襲われ、為す術なく性的暴行を受けるシーンもある。
如何に人外の種族とはいえ、見た目相応(郁紀にとって)の少女程度の力しか持っていないらしい。
奇襲をかければ、その特異な肉体で腸を切り裂くなど恐怖映画の怪物のように攻撃可能だが、
それでも武器を持った人間の方が強いらしく、正面からの戦闘に陥ったルートにて沙耶は敗北している。
とはいえ生命力は非常に高く、最終的には液体窒素を浴びせショットガンで撃つ事でようやく致命傷を負った。
それでも即死はせず、既に事切れている郁紀の傍まで這いより、彼の遺体を愛しげに撫でてから死亡したのだが、
その最期の踏ん張りを怪物じみた生命力と見るか、愛の力だと見るかは……。

余談ながら、『機神咆哮デモンベイン』の公式サイトに掲載されている短編小説『悠久たる孤独は我を蝕む』では、
沙耶と同族の別個体(と思しき怪物)がアル・アジフの駆る鬼械神アイオーンと交戦し、
アルは撃退に成功したものの代償として当時のマスターを失っている。
こちらは少なくとも戦えるだけの力があったようであるが、サイズからして全長200mと沙耶とは桁違い。
というよりも沙耶の母体の一つであり、完全に成長し切った沙耶ならばこの程度の戦闘能力はある、という事か。

*3
+ いどまじん
本名は戸尾耕司。郁紀の大学の友人であり、仲間内でのムードメーカーのような存在。
ガタイも良く、凶器を持ってマジで殺しにかかってくる郁紀をあしらう程度にはケンカ慣れしている。
非常に仲間想いな性格であり、悩む友人の相談に乗ったり、親友の郁紀が事故の後から
急によそよそしくなったのを気に掛けている。
要するにとても良いヤツなのではあるが、作中ではこれでもかと酷い目に遭う
郁紀と沙耶に殺されたり、生き残っても幻覚とトラウマに悩まされたり、
さらにどのルートでも恋人を殺されるのが確定していたり、とロクな目に遭わない。

何故いどまじんと呼ばれるかと言うと、作中で郁紀に騙されて井戸に突き落とされる羽目になるからである
(名前の由来は『ドラゴンクエスト』の同名のモンスターから)。
その時の、驚愕と絶望が入り混じったとても良い表情が一部でネタにされ、いどまじんネタが定着してしまった。
公式でも「すっかりネタキャラと化してしまった」と苦笑交じりで言われ、
『ニトロ+ロワイヤル』の沙耶EDでもとても良い表情で冷蔵庫の中に収められている。
+ とても良い表情
                          __
                    , - ''" ̄    `ヽ、
                   /  i ヽヽ ヽ ミ、ヽヽ\、
                 ノ  ル ミ、、ミト、 トリリ} }  ミ、
                 イ//ハ ヾトゝ   ヽノVVVレ! ミド
                彳ノ/バ::`  __,,-イ'  ンー-、_ トハ`
                 イノノ彡:::.'",ィ;;・ユ  ( ゙ミ・ヽ:|
                 レ^ヾ/::::::. !j  "  _ 〉 ゙  |
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ちなみにMUGENだと金カラーの場合この技を食らったら即死である。斧で切られると人は死ぬ

最後まで郁紀の事を救いたいと思っていたようであるが、どう転んでもその思いが報われる事は無かった。
どこまで行っても不幸な男、それが耕司である。
ちなみに彼に限らず、『沙耶の唄』のサブ登場人物はほぼ全員が酷い目に遭う。SAN値に自信があれば原作をどうぞ。
6:47から。グロ注意

なお、前述したクトゥルフ神話基準だと、よくある主人公のポジションは郁紀ではなく耕司だったりする。
クトゥルフ神話は主に主人公の手記という形を取っており、その手記が読者の手元に届く頃には既に発狂しているか死んでいるのがお約束。
態々「あぁ、窓に窓に」なんて書いている暇があったら逃げろよ、と読者に突っ込まれるのもお約束
そして上の方でも述べたが、郁紀の立場は邪神降臨のために主人公と対立する邪教徒(正気度0の狂人)枠である。

+ 耕司生存ルートを、耕司の視点から書いてみる
大学生である私は、恋人、親友、そして恋人の友人で親友の彼女という仲間達に囲まれて平穏な日々を過ごしていた。
しかし親友は大きな事故に巻き込まれて家族を一遍に亡くしてしまって以来、自分達によそよそしくなってしまった。
最初は事故のショックから立ち直れていないだけだと思っていた。
ところがそんな親友の状態を心配し、あるいは訝しみ、彼に会いに行った仲間達は二度と戻ってくる事はなかった。

そんなある日、私は親友から失踪した大学教授について調べていると相談を持ちかけられ、不安を覚えながら教授別荘の探索に同行した。
しかしその最中、行方不明となった友人から電話がかかってくる。それは自身が腐っていく様を泣きながら訴える異常な内容であった。
さらに電話に気を取られた私自身もまた親友に涸れ井戸に突き落とされ、そこから親友と親友に関わる事の真実を知ってしまう。
親友は事故を契機に得体の知れない"何か"に取り憑かれて正気を失い、仲間達を殺して喰っていたのだ。

命の危機に陥った私を救ったのは、親友の治療を担当している女医であった。
かつて"何か"と相対した事のある女医は、親友の様子から"何か"の気配を感じ取り、独自に調査をしていたのだ。
"何か"とは女医の恩師である大学教授が、失踪する直前に別世界から呼び込んでしまった存在であるという。
私は女医から教授の手記を渡されるが、その内容のあまりの荒唐無稽さに困惑するばかりであった。

だが私は親友との決着をつけねばならない。私は女医と協力して、親友と"何か"が拠点とする廃墟へと踏み込んだ。
しかしそれはあまりにも軽率であった。廃屋の奥に潜む、"それ"が現れたのだ。
"それ"は私を襲うかと思ったが、鼻をつん裂く悪臭と聞くに耐えない蠢きを発すのみで、慈悲を乞う様に縋るばかりだった。
私はけたたましい叫びを出すばかりで無抵抗な"それ"を発作的に幾度も叩き潰し、"それ"はやがて静かになったが、
物言わぬその"それ"の亡骸を見返した時、私は改めて日常に二度と戻れない事を悟った。
私は"それ"が、親友と"何か"によって作り変えられた、かつての仲間の変わり果てた姿だと直感的に理解したのだ。

やがて親友と親友に寄生する"何か"と対峙した私は、そこで見てはいけない“その姿”を見てしまう。
私の知った真実など、深淵のほんの始まりにすぎなかったのだ。為す術もない私を救ったのは、やはり女医であった。
私は"何か"に女医から託された液体窒素を浴びせ、女医は親友に斧で殺されながらも"何か"に致命傷を与える事に成功する。
そしてもはや"何か"が助からない事を悟った親友は茫然自失の状態に陥り、私の目の前で自害してしまう。
必死に正気を保った私は、親友に這い寄る"何か"を必死に殴り付けて食い止めようとするが、それは叶わなかった。
親友と"何か"は最後まで結び付いたまま離れる事はなく、私は親友を、その魂さえも救う事はできなかった。

その後、親友は連続猟奇殺人犯として指名手配された。親友は仲間たちだけでなく、隣人一家をも殺害して食していたのだ。
だが事件は迷宮入りするだろう。廃墟の裏庭に親友の死体が埋まっているという真相を知る者は、私だけだ。
そして一人取り残された私は毎夜友人たちが狂った会話を繰り広げる悪夢を見て、惨殺されたまま平然と喋る女医の幻覚と会話する。
"何か"の存在について述べた教授の手記は戯言ではなかった。
戯言なのは人類の英知だの勇気だのという手記以外のすべてで、それこそが私を侵す真実という名の毒だった。
かつて女医は言っていた。どれほど世界が狂っても、自分には悲鳴を上げて逃げ回る以外の手段がある、と。
ただ一発の弾丸が装填された拳銃は、洗面所の鏡の裏で、いつでも私に救済を保証してくれている……。

正にクトゥルフ(ry


「ただ一粒だけの種でも、もしかしたら、頑張ろうって思うようになるかもしれない。
 頑張って育って増えて、いつかこの土地が一面のタンポポ畑になるまで頑張ろうって、
 そう思うかもしれない。
 そんな風にタンポポの種が心を決めるとしたら、どんなときだと思う?」
「それはね、その砂漠に──たった一人だけでも──
 花を愛してくれる人がいるって知ったとき」


最終更新:2024年03月20日 18:33