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刹那 「桜」」(2007/11/15 (木) 16:09:15) の最新版変更点

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天界、それは俺が暮らしている場所である 俺の名前は月本陽(つきもとよう) 天界にはいろいろな神が暮らしている しかし、俺は残念なことに神ではなく、ただの人だ 俺は今、天界で散ることのない桜の木に背を掛け、腰を下ろしている この桜の木はとても大きく、腕をまわしても届かないほどだ 俺の反対側で桜に背を掛けている男の名前は迅京介(じんきょうすけ)俺の親友で そして、風の神である 神と人が仲良くなることはない、だが俺たちは仲がいい 迅が風の神だから気まぐれとか、そういうわけではない ただ単に気が合うだけだ  「なあ、月本」  「なんだ?」  「酒が飲みたいな」  「ああ、そうだな、でも残念なことに酒はない」  「知ってるよ、だから取りに行かないか?」  「どこに」  「山爺の所に行けばもらえると思う」 山爺とは山の神でとても酒好きな爺さんだ  「山爺なら持っていそうだな、さあ、行こうか」 俺と迅は山爺の所に向かう  「そこ気をつけろよ、落ちたら地上界行きだぞ」  「ああ、わかっている」 天界には大きな穴が開いている あれは地上界と繋がっている あんな大穴落ちるほうがおかしい、そう思っていたら 足を滑らせ、不覚にも俺は落ちてしまった  「つかまれ」 手を伸ばすが、もう時すでに遅し  「間に合わないな・・・」 俺はどうする事も出来ずに、落ちていった 俺はもう地上界についている さて、どうしたらいいのかと悩んでると、迅の声が聞こえてきた  「大丈夫か?」  「まあ、着地もうまくいったし、大丈夫だ   で、どうやれば戻れる?」  「確か、満月の日に天界への階段を出せるようになるから   それで戻れるはずだ、場所は海岸、満月の日は3日後だ」  「3日後まで何しよう」  「これをやろう」 すると空から何か落ちてきた  「それは時を止めるストップウォッチだ、30秒止められるはずだ   3回しか使えないが役に立つはずだ」  「なんで迅が持ってるんだよ、これ時の神の所有物だろ」  「お前のために借りたんだよ」  「ああ、悪い」  「あとで一緒に謝りに行こうな」  「盗んだんですか・・・」 まあいい、とりあえずこんな何もないところから離れよう  「ちょっと待て」 俺が歩こうとしたら、迅が話しかけてきた  「どうしたんだ?いきなり」  「そこ地雷原だから、気をつけろよ」  「最悪・・・」 どうやら、早速これを使わなければいけないようだ 俺はストップウォッチを押す そして、全速力で走る どうやら地雷原を抜けたようだ 30秒がたち俺が踏んだ地雷が次々と爆発していく 俺は地雷原から抜けているため、安心していた しかし、不運な事に俺の真後ろで地雷が爆発し 俺は吹き飛ばされ、気を失った 俺は目覚めた時、どこか分からない場所にいた 俺は体を起こす、体がズキズキした  「まだ起きては駄目ですよ」 俺の目の前には綺麗な女性がいた  「あなたは?」  「私の名前は氷室唯(ひむろゆい)、ここで修道女をしている者です」 では、ここは教会か・・・  「君が助けてくれたのか?」  「ええ、そうです   それより早く寝てください」  「いや、迷惑がかかる・・・」  「では、寝ていてください、起きていたらかえって迷惑ですからね」  「・・・ありがとう」 俺はそういうと再び眠りについた 1日目 俺の怪我は結構良くなっていた まあ、ただの打撲だから、そんな大袈裟にすることでもない  「昨日、お名前を聞いてませんでしたね」  「月本陽」  「月本さんですか、どこに住んでいるんですか?」 俺は周りを見渡し、誰もいない事を確認する  「何から説明すればいいかな・・・」 俺は自分が天界人であること、天界から落ちた事、 時間を止めて地雷原を抜けた事、でも吹っ飛ばされた事 それらを話した、さて、信じてもらえるのだろうか?  「えっと、今話した事、信じてくれる?」  「ええ、私の仕事は信じる事ですので」 俺は神を信じる仕事に感謝した  「では、住居にお困りでしょう、ここで数日過ごしてみては?」  「えっ?いいの?」  「ええ構いませんよ、でも働いてもらいますからね」  「俺で役に立てるなら、何でもやるよ」 そういって俺はここに数日、寝泊りする事になった その日の朝  「助かります、やはり女性は力仕事にむいていないので」 俺は大量の本を運んでいた  「役に立てたようでよかったよ」 彼女は笑いながら言う  「でも、まだありますから無理なさらないでくださいね」  「大丈夫だよ、もう怪我も治ったし」  「強がりは駄目ですよ」 そのような会話をしながらやっていたら、昼になっていた  「どこいくの?」  「外のお花に水をやりに」 そういえば、ここに来てからまだ外に出てなかったな そう思い俺は彼女についていく事にした  「へ〜綺麗だな」  「ちゃんとお手入れしていますから」 彼女はうれしそうに言う  「ここらへんって戦争してるんだろ   そういう所でも、花は咲くんだな」  「ここはまだ安全ですから」  「桜・・・」  「桜がどうしたのですか?」  「あっ、えっ?」 俺はどうやら無意識に桜と言っていたようだ  「桜がどうしたのですか?」 彼女はもう一度聞いてくる  「俺、桜が好きだから、無意識に言ってたみたい」  「そんなに好きなんですか?」  「ああ、天界には散る事のない桜があって   俺はそれを毎日のように見てて   でも今日は見てないから無意識に言ったのかも」  「そんなに綺麗なんですか?」  「ああ綺麗だ、見た事ないの?」  「はい、一度も」  「見れるといいな、桜」  「そうですね・・・」 そうして、昼は終わった その夜、迅が声を掛けてきた  「どうやら、大丈夫だった見たいだな」  「まあ、おかげさまで」  「もしかして、今暇か?」  「まあ、暇といえば暇になるな」  「昔話でもするか?」  「別に構わないぞ」 俺達は二人が出会ったときの話をした  「お前も俺もおかしい奴だったよな」  「ああ、そうだな」  「6歳にもならない奴が、桜に腰を掛けて風情を嗜むとはどういうことだ?」  「そりゃお互い様だろ   大体な6歳にもならない奴が夜桜見ながら酒飲むのはおかしいだろ」  「月本、お前も飲んだろ」  「俺は一杯だけだ、お前は一升瓶だから、量が違う」  「細かいな〜、こういうのは五十歩百歩って言うらしいぞ」 という会話をしていたら夜が更けていき、俺は寝る事にした 2日目 今日は昨日と違って聖堂の掃除、表の庭掃きを彼女とした  「氷室さん、どうしてここで働いてるの?」  「・・・母が私を生んでくれる時に亡くなってしまって   それからずっといますから   働いてると言うより住んでいるほうが正しいと思います」  「ごめん、変な事聞いてしまって」  「いいんですよ、それほど気にしていませんから」 とてもすまない事を聞いたと思った  「月本さんのお母様は?」  「えっと、似たようなものかな   俺を生んだ後にすぐに死んでしまったから」  「すいません、私も変な事を聞いてしまって」  「お互い様という事で気にしない事にしよう」  「そうですね」 俺はさらに気になったので聞いてみた  「ところで、ここには誰か他の人はいないの?」  「さっき話したように、母が死んでしまい   それから、こちらの方に引き取ってもらったのですが   3年ほど前に、なくなってしまって・・・」 俺は何て事を聞いてんだ、今日2度目だぞ  「ごめん、また変な事聞いたみたいだね」  「大丈夫ですよ、もう立ち直りましたから」  「なら、いいんだけど・・・」  「では、今度はこちらから聞いてもいいですか?」  「どうぞ」  「昨夜、誰とお話していたのですか?」 どうやら昨夜の話を聞かれたようだ 酒の話し聞かれたのかな?  「天界にいる、迅ってやつで俺の親友   で、俺が天界に戻るのを手伝ってくれてる神   今日の夜にまた話してくると思うから、その時に来てくれれば   話が出来ると思うよ」  「そうですか、ではそちらに伺わせていただきますね   では、そろそろ時間ですので」 彼女はそういうとお祈りを始めた 教会の窓から入る光が彼女を照らす それは、まるで天界にいる女神のようだった 今日の昼 彼女は街のほうに買い出しに行くようだ 俺は彼女についていく事にした 彼女はすれ違う人々に挨拶していた  「ずいぶんと忙しそうだね」  「そうですか?私はそうは思いませんが・・・」 町に着くと、町の人たちほとんどが彼女に挨拶をする 彼女もそれに答え、挨拶を返す 多分、他人から見れば忙しく見えるだろう 彼女にとっては、それが日常でもあるから さほど忙しいわけでもないのだろう 彼女に1人の男が近づいてきた  「いつもは1人なのに今日は男連れですか?」  「・・・・・」 彼女に突っ掛かる人はいないと思っていたが、それは間違いだったようだ  「俺の相手はしてくれないのに」  「この人は怪我をしてますし、いろいろと困られてます」  「そんな事言ったら俺も困ってる事になるな、君に相手にされない」 どうやら男は彼女に興味があるようだ  「ですから、前から言っているように」  「もう聞き飽きましたよ、それは」 男から邪悪な気配が漂ってきた 俺は話に割り込み、止める  「もう何を言っても無駄だ、ここは俺が引き受ける」  「だめです、力による解決は何も生みません」  「大丈夫、手は出さない」 俺はそういい、あるものを取り出す これは忘却玉、以前、記憶の神に貰ったものだ これをぶつけた相手は忘れてしまう、都合の良い事を 俺は忘却玉を投げ、男にぶつける 男を煙が取り囲む  「何をしてるんですか?」  「見てればわかる」 煙が晴れていき、男がこちらに近づいてくる  「こんにちは」 そういい、男は去っていった  「見ていてもわからないのですが」  「今投げたのは忘却玉、相手の都合の良い記憶を忘れさせる道具だよ」  「そうなんですか、助けてもらったお礼をしないといけませんね」  「気にしなくていいよ」 俺はそういうと歩き出す、それについてくる彼女  「でも、大切なものだったのでは?」  「いや、大丈夫、だから気を使わなくていいよ」  「・・・では、いつかお返しを」 そういうと、彼女は俺を置いていってしまった 俺はそれを追いかけた・・・ 今日の夜 俺と迅はまた昔話をしていた  「しかし、あの賭けはありえなかったな」 あの賭けとは、かつて俺たちと地の神がけんかをしたときにした賭けである  「お前が変な条件出したんだろ、大体じゃんけんで負けたほうは   天界一周なんて実際ありえないだろ」  「でも地の神は一周してきたぞ、5年掛けてな」 そう、勝ったのは俺たちだった、しかし一歩間違えれば俺たちがしていたのだ ドアを叩く音がした  「どうぞ」 彼女が入ってきた  「迅、俺のお世話になってる人だ」  「氷室唯です」  「俺は迅京介よろしく、月本が世話になってるようで、すまない」  「いえ、お気になさらずに」 その後、3人で話しをしていた 主に俺たちの昔話であった 3日目 今日が満月の日だ 朝、迅が話しかけてきた  「いい物が手に入ったぞ」  「なんだ?」  「今送る」 そして、空から何か降ってくる  「これは?」  「閃光玉だ、太陽神から貰った特注品だぞ」  「また盗んだんじゃないだろうな」  「今度は貰ったんだよ、目晦ましにも使えるし   夜だったら周りが見えるようになるぞ」  「どうかしたんですか?」  「いやなんでもない、さあ仕事に戻ろうか」  「はい、そうですね」 多分使う事はないが俺は貰っておく事にした 昼、彼女とともに花の世話をする 彼女はとてもうれしそうだ  「本当に花が好きなんだな」  「ええ、ちゃんとお手入れをすれば、綺麗に咲いてくれますからね」  「ずっと育ててると疲れたりしない」  「そんな事はありませんよ、お花が枯れた時はとても悲しいですけど   綺麗に咲いてくれれば、元気を分けてもらえますから」  「そうなんだ・・・」 彼女にとって花は、おそらく彼女を支えてくれるものなのだろう 母がいなくても、引き取ってもらった人が死んでしまっても 彼女は、この花がある限り大丈夫だろう きっと強く生きていける・・・ 夜、そろそろ行くかと思ったとき教会に大きな振動が・・・  「なんだ?」 窓から外を見てみる、暗くて見えないな  「どうしたんですか?」  「いや、わからない」 向こうのほうで何かが光った、次の瞬間、また振動が来た まさかと思い、俺は迅に貰った閃光玉を取り出す 使う事になるとな、運命とはわからないものだ 早速それを光の見えたほうに投げる 辺り一帯が瞬く間に明るくなった そして光が見えた所にあったものは軍隊だった  「ここら辺は、まだ安全じゃなかったのか?」  「えっ?」 彼女は外を見る  「こんなところまで来てるとは思いませんでした」  「早く逃げよう」  「でも・・・」 また軍隊のほうから光が見えた おそらく戦車の砲弾であろう 俺は彼女の言葉を聞かずに時間を止め 彼女を抱え、走る 教会を出ると、目の前には戦車の砲弾があった 間一髪だったようだ、俺は急いで走り 森のほうに入り隠れる それと同時に後ろから爆発音がした 俺は彼女を下ろし、教会の方を見る 教会には大きな穴が開いていた、庭にある花はもう後もない  「お花が・・・」 彼女は泣いていた そう、花のために泣いていたのだ そんな人、俺は見た事もなかった でも、今俺の目の前にはいるのだ 彼女に掛ける言葉が見つからない・・・ だが、そうしているうちに、刻一刻と迫ってくる軍隊  「元気を出して・・・俺が桜を見させてやる   一緒に天界に行こう」  「えっ?」  「きっと桜を見れば元気になるから」  「いいのですか?」  「ああ」 俺はそういい、彼女の手を引っ張り海岸に向かう 海岸に着くまで無言だった 海岸に着くころには満月が見えていたが、まだ階段は現れていないようだ  「本当に私なんかが天界に行ってよろしいのですか?」  「君がよければ」  「どうして、そんな事をしてくださるのですか?」  「氷室さんには助けてもらったお礼も泊めてもらったお礼もしてない   それに・・・元気がない氷室さんをおいてはいけない」  「でも・・・」  「地上に戻りたかったら、いつでも戻れる・・・   でも、もし良かったらだけど、天界にずっと居てくれればうれしい・・・」  「・・・私でよろしいんですか?」  「君で無ければ駄目だ」  「・・・私でよろしければ」 天界へ続く階段が現れる、階段の終わりには天界への扉が見える そして迅の声が聞こえてくる  「早くしろ、階段が消えるぞ!」 俺は彼女の手を握り、走り出す 階段を駆け上る、段々と階段が消えていく このままだと、間に合わないな・・・ 俺はストップウォッチを取り出す それと同時に彼女の足元の階段が消える 俺はストップウォッチを押す しかし押したと同時に俺の足元の階段も消える 俺は落ちる寸前で階段を掴む 右手で階段を掴み、左手で彼女の手を掴む こんな状態ではとてもじゃないけど上がれない あきらめるしかないのか、と思っていたら声が聞こえてきた  「なにやってんだよ」 それは迅だった  「なんで動けるんだ?」  「天界と地上じゃ時間の流れが違う   今、お前が時間を止めてるのは地上の時間だ   さっきまで天界にいた俺には影響は出ない」 階段の先の扉を見てみると、扉が開いていた 迅は俺たちを引き上げると、扉にむかって走って行った  「いそげ、あと5秒切ったぞ」 俺は急いで彼女を抱き上げ 扉にむかって走る 時間の流れが正常になり、階段が消えていく あと少し、だが俺達はすぐにも階段に追いつかれてしまいそうだった 俺は寸前のところで扉に飛び込んだ 先について待っていた、迅にぶつかる どうやら間に合ったようだ  「大丈夫?」  「はい、私は大丈夫です」  「まずは俺の心配をしろ、そして俺の上から降りろ」 俺達は迅の協力により無事に天界に戻る事が出来たようだ 天界について俺達はすぐに桜の木を見に行った  「綺麗ですね・・・」  「元気でたかな?」  「はい、とても・・・」  「ここは俺も月本も気に入ってるからな」  「ああそうだな」  「ずっと見ていても良いのですか?」  「ああ・・・ずっと」 その後 桜の木に背を掛ける俺の横には彼女の姿があり 木を隔てた反対側にはあいつの姿があった・・・

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