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俺の名前は富樫輝(とがし てる)普通の高校三年生だ。 いや、だったと言うべきか。 おれが『それ』に出会ったのは一週間前のことだ・・・・ 一週間前・・・・ 俺は部活が終わってから一人で歩いて帰っていた、 外にはけっこうな雪がつもっている。俺がT字路の角を曲がった所に『それ』はあった、雪の中で青白く光っている何かが見えた。 走って近づいて拾い上げてみた。銀色の青いバックライトの時計だった、しかしそれはただの時計ではなさそうだった、なぜならその時計の文字盤は全てバラバラに配置されていたからだ。俺は家に時計を持ち帰って調べ始めた。 時計の特徴は3つあった 一つ 時計からは機械音がしない事(カチコチとか) 二つ 時間調整つまみがあるところにそれはなく銀色の小さなボタンがあること。 三つ そのボタンを押すと自分の周りの音が消えて時計から音がし始める。時間は30秒。 次の日・・・・ 俺はその不思議な時計を友達に自慢するために学校に持っていった、 友達にも不思議な体験をさせようとボタンを押した時、音が自分の周りから消えた。しかし、俺の目の前にいる友達が止まっていた、友達だけではなく周りの奴らも止まっていた。 俺はもしかして物凄い時計を拾ってしまったのかもしれない。 友達には教えずに俺だけの秘密にした、こんな事を教えるのはもったいない。 一週間の間、俺はこの時計をどんな風に使おうか悩んだ、 一番最初に浮かんだのは『金』だ。コンビニから金を奪うのも悪くはない。 でも、俺にはどうしてもできなかった。これは理由・・・いや言い訳か。 俺にはとても優しくしてくれていた祖母がいた、祖母は元気だった。 ある日、祖母は入院した。『癌』らしい、しかも末期だった 。祖母は俺にいつも言っていた『人様の物を盗るのは、やめてくれお金やるから。』 子供心に俺はその約束をずっと覚えていて俺はその約束をずっと守っていた、 でもある日、友達が万引きするのを見逃してその分け前を貰った。 その日、祖母は死んだ。 次に俺が考えたのは『女』だった。俺にはずっと好きな女子がいた。髪は背中までの長さ、肌は浅黒く、目は大きく、そして誰にでも優しかった。 俺は去年の夏、告白した。彼女の答えは『ずっと友達でいたいから・・・』だった、つまりふられたのだ。 俺には彼女には手を出すことができなかった。 俺は時間を止めた、周りの音が消えた代わりに時計から音がし始める。 俺は彼女の笑顔を見ていた。このままずっと時が止まっていればいいのに・・・時間は動きはじめた。 何に使うか悩んだまま一週間が過ぎた。 俺はあの時計を拾った時のように部活が終わった後、一人で歩いていた。20メートルほど前に誰かが歩いている、一人だ・・・・女か。 俺は別に気にかける事もなく歩き続けていた。女は交差点に向かって歩いていた、あれ?今、赤だぞ。気づいてないのか? 女は何を血迷ったかそのまま交差点に入っていった、 トラックが走って来ている! 俺は時計のボタンを押して時間を止めた。 走った、足は遅い俺だが30秒もあればギリギリで間に合うと思っていた。 あと20秒・・・ あと少し・・・ あと10秒・・・ 女の顔が見える・・・彼女だった。 あと5秒・・・ トラックが意外と近くに迫っていることに気づいた。彼女を安全な所にうつすには時間がない! 俺は彼女を突き飛ばした・・・ 音が戻った・・・時間が動き始める。 俺の目の前にはトラックのナンバープレートが迫っていた。

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