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楔 第二作目 「もしも時間を30秒止めれたら~俺の場合~」 打ち切り」(2007/04/07 (土) 09:47:31) の最新版変更点

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~もしも時間を30秒止めれたら~  俺の場合 1日目 俺こと深山は今この瞬間に一日に一回だけ30秒止められる能力を持つ男になった。 何で止められるの?と聞かれると困るんだが、とにかく妄想の世界なら何でもありなのだ。 俺が心の中で『止まれ!』と念じれば世界は30秒間だけ俺の物となる。素晴らしい… さぁて…まずはどんな事に使おうか…俺は内心とてもウキウキした気持ちで会社へと向かう。 まず俺のターゲットは事務所をやってる真由美さんだ。 真由美さんは見た目は可愛いというより綺麗といった方がしっくりくる感じの、とても素敵な女性である。 真由美さんの体型は痩せ型だが制服の上からでもハッキリとわかる程の胸の膨らみ、やや小ぶりな可愛いお尻、そして制服のスカートから覗く2本の素敵な足… パーフェクトだ。何故、俺がまず最初に真由美さんを選んだのはこの上記に書いた理由も勿論含まれるのだが もっと違う、これだ!!といった理由がちゃんとある。 それは匂いだ。真由美さんが事務所を担当で居る時は部屋全体に物凄く石鹸の匂いのような、甘いような心地良いような、もう何と説明して どんな例えで表現すれば一番正しいのか分からないくらい、とても甘美な匂いが事務所一帯に充満する。 俺の働いてる会社の事務所はこぢんまりとしており、真由美さんが事務所で仕事してる時に事務所に入ると もう頭がクラクラしておかしくなってしまうんじゃないかと思うくらい危うい状態になる。 あの匂いで何度抜いたことか…想像するだけで、ちんちんがおっきおっきしてしまう。 『今日は真由美さんが事務所だったっけ。』ボソッとそんな事をひとり呟きながら事務所へと入っていく。 事務所にしかパソコンやプリンター等の電子機器が無いので僕も事務所には自分の仕事上、頻繁に事務所に訪れる事になる。 事務所に入ると真由美さんは淡々と自分の仕事をこなしていた。ドアを開けると、またあの素敵な匂いで全ての感覚が麻痺してしまいそうになる ドアの空ける音と部屋に入る音で俺の存在に気付いたらしく、俺なんかにわざわざ笑顔でにっこりと挨拶をしてくれる。 『あら、深山君おはよう』 『ぁ…どうも…おはようございます。』 俺はまともに目を合わす事が出来ず伏し目がちに挨拶。 俺は真由美さんに恋をしていた。正統的な美人で、職場に男が20人いたら、そのうちの6人くらいが恋をしてしまうような素敵な女性だった。 自分が綺麗だという事を知っていて、それでも自意識に捕らわれず自然体でいられるような女性だった。 俺は一目見て好きになり、そしたら二度と直視することが出来なくなってしまった。恋なんてそんなもんだろう? 俺はいつもの様にパソコンの前に座りいつもの決まった動作で決まった業務をこなしていく。 真由美さんの方は、というと立ち仕事で電卓を叩いたり金庫の中をチェックしたりと忙しそうだった。 俺は俺で真由美さんの香りに酔いしれながら自分の仕事をやる。真由美さんが動く度に、ふわっと俺の方に真由美さんの香りがかかる。 ぐぁ…やば……い…。 心の中でそう呻きながら俺のちんぽは硬度を増していった…。そこで、ふとある事を思い出す。 そうだ!俺には時間を止める能力があるんだった!今はこうして事務所には俺と真由美さんだけ使うなら今が絶好のチャンスじゃないか!! 能力発動するならば                      今   し   か   な   い   !! やってやる!やってやるぞおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!ここでやらなきゃお前は男じゃないぞ!!? 未だかつて使った事のない能力だったので正直、不安もあった。能力発動してから何をしようかもサッパリ考えてもいなかった。 だがやってみる価値はあるしものは試しと言ったものだ。そんなの発動してから考えればいい。 大丈夫、お前ならきっと上手くやれる。 自分を自分で鼓舞しながら、心の中で大きく息を吸い込む。さてやるか…。時間よ止まれ!! そう心の中で強く念じた。その瞬間、パッと一面が光で覆われた刹那…さっきまで慌しく動いてた真由美さんの動きがピタリと止まった。 そう……本当に俺だけの時間が始まったのだ…。 俺は腕時計の秒針の針を素早くチェックした。よし!この時間までが俺だけの時間か。 や、やるぞ…!真由美さんは金庫に向かい合わせの直立の状態で停止していた。 俺は時間が停止してるにも関わらずおそるおそると真由美さんに近づき間近で真由美さんを見た。 今度は俺が停止する番だった。 『ぐはぁ…や、やばい…あまりにも素敵過ぎて…見てるだけでイキそうだ………。』 好きな人をこんな至近距離から見てしまった!!こんなまぢまぢと見たのはこれで2度目。 停止してても綺麗だ…あああぁぁぁぁ…しかも至近距離からの匂いは神レベル……GJ!!最高だぜ…… 一人悶えながら30秒の事を思い出す。 『しまった!今のでだいぶ時間を消費してしまったかもしれない!』 俺は勢いよく腕時計の針の秒針を見る。秒針の針はすでに17秒を刻んでいた。 やばいよやばいよやばいよやばいよやばいよおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!…(ry 後13秒しかない!!ってこんなこと考えてる間にも時間は悲しくも経過していくわけで…。 どうする俺?やはり2、3秒はストックしとかないとバレる!! あああああ神よ!!!ヘタレのこの私にどうか神のご加護を……OTL 俺が天を仰いでみるも虚しく時間は30秒を経過してしまった。 再び時が動き出す。俺はOTL←この体勢を思いっきり真由美さんに見られて恥を掻いて俺のへタレな1日は幕を閉じた… 勿論、家に帰って脳内フィルムに焼き付けた真由美さんの顔で抜いたってことは内緒だ。 二日目 『ふわああああ……あああぁ、よく寝た。』布団の中からのろのろと起き上がり携帯で時刻を確認する。 時刻はちょうど12時を刻んでいた。今日は仕事が休みなのでいつもより遅い起床。気だるい頭を抱え昨日のことを思い返してみる。 昨日はそっか…能力は発動させたものの結局、真由美さんの顔をまじまじと至近距離から見ただけで逝っちゃいそうになって それで終わっちゃったんだよな…。まったく本当に俺はヘタレだよなぁ。こんな行為DQNやイケメンからしてみれば朝勃起並のナチュラルな行為だぜ? まったく…俺はどんだけ純情少年なんだよ?とっくのとうに思春期は過ぎたっつうの!! 仮にこの能力が1回ポッキリしか使えない能力だったら間違いなく俺は一生悔やむことになってただろうな。危ない危ない… でもまぁこの時間を止める能力は毎日1日1回使えるわけだし除々に慣らしていくとするか。 そう、これから頑張っていけばいいのだ。 何とか自分の気持ちに整理が付いた所で、今日の予定を考える。 やはりこの能力を有意義に使うならば外出した方が間違いなくいいよな。 そう考えた俺は今度は今日の行き先を考える。といっても数通りのパターンしかないのだが… 『うーん…そうだな。今は観たい映画もないし欲しいエロゲもこれといってない。となると後は…そうカラオケだな。最近全然唄ってないし調度いい。』 行き先を決めた俺は早速カラオケに向かう。 俺の行き付けのカラオケは家から自転車で10分で行ける位置にあり、店の内装や部屋の方はお世辞でも綺麗とは言えないが良心的な料金で 俺は学生の頃からお世話になってる。学生の頃は友達と行ったもんだが社会人になってからは専らヒトカラマイブームだ。 といってもそんなに頻繁に行くわけじゃない。たま~に無性に唄いたくなる時があるのでその時行くだけ。 それにしても…今日は異常なくらいDQNや学生、カップルが多いな。ああそうか!今の時期は冬休みだったけか? 『まぁ俺には関係ないな。』もちろんうざい事には変わりないんだが。 そんな事を呟きながら受付でリモコンとマイクと部屋の番号のチップ見たいなのを貰い指定された番号の部屋へと入っていく。 部屋に入った俺は上着を脱ぎ捨て歌の台本をパラパラとページを捲りながら唄う曲を選んでいく。 『さぁ~てと何を唄いますかね。今日は気分的にハイになりたいから、アニソンとギャルゲソングの大熱唱と行きますか!!』 曲を一気に9曲まとめて入れる。おk!!準備完了!! それからの俺はというもの、とにかく唄って唄って唄いまくった!! ちょうど数十曲ほど唄い倒した辺りで少し、ゆったりした曲が唄いたくなったので俺はTo HeartのOP『Feeling heart』と心を込めて唄った。            ~偶然がいくつも重なり合って、あなたと出会って恋に落ちた。                     聞こえそうな鼓動が恥ずかしいよ。どうして私らしくはないの?~ まるで俺のことを書いてるような歌詞だな。素晴らしいGJGJ!!! そして曲はサビの方に差し掛かり俺のボルテージもMAXに差し掛かってきたちょうどそのときに ゲラゲラと笑い声のようものがドアの直ぐ向こう側から聞こえたので俺は恐る恐るドアの方に振り返った。 ドアの向こう側には男の人影が2つ、女の人影が1ついた。今まで曲の演奏とかで、よく聞こえなかったが多分俺の事を馬鹿にしてるんだろう。 説明が遅れたが、ここのカラオケのドアミラーはスモークガラスになっていて遠目からでは中の様子が見えないのだが このスモークガラスがドア全体に覆われてるわけではなく真ん中に大きく長方形で覆われてるだけで、その周りを囲うのはただのガラス張りになので 近くから中を覗けば中の様子がありありと窺えるようになってる。本当に厄介だ…。 テンションが一気に落ちた俺は演奏を即停止。 さっきまでノリノリだった俺の心は胸が悪くなるような醜さと、心を萎えさせる剥きだしの悪意に支配されようとしていた。 まったく迷惑極まりない連中だぜ…俺は演奏を止め、椅子にドカッと座り深い不快な溜め息を吐く… もう一度ドアの方をチラ見してみる…しつこい奴等だ…まだいやがる。 複数のDQN共は外から暴言や罵声を俺に浴びせてくる。 更にはドアノブをガチャガチャといじったりドアを軽く蹴飛ばしてきたりととてもうざい…。さあてどうしたもんか… ここで店員を呼べば事は治まり解決するだろうがそれでは今ひとつ面白くない。 今、俺には時を止める能力がある。 こんなつまらん連中に使うのは、とても勿体ないが今の俺は最高に気分が悪い。 少し思い知らせてやるか…。にやりと薄く笑い、立ち上がる。 そして俺はドアへと歩みを進めていく…。 時を止める能力は持っていたが内心ではDQNとまともに対峙するのは怖くもあった。 相手は3人か、俺の精神力がどこまで持つか…。 いや、あまり深く考えない方がいいか。 もっと心を凍りかせろ…冷静さを失ったら負けだ。相手のつまらない言動に俺が左右される必要はないんだ。 俺は強くそう自分に言い聞かせながらドアノブを回しドアを開けた。 そこにはDQN共がニヤニヤしながら俺を見ていた。俺が出てくるなりDQN共は DQN男1『ぎゃははははwwwwこいつ出てきたよ!』 DQN男2『だっせえ!独りで寂しくカラオケですかwお前寂しくないの?』 DQN女『超きーもーい♪』 DQN2『コイツさ彼女もいない上に友達も一人もいないからこうして独り寂しくカラオケで唄ってるんじゃね?』 DQN1『うわっそれヤバくねえ?彼女もいないうえに友達もいないなんて人生終わってんなwwwww』 DQN女『それ言えてるwwwそのうえ童貞だったりしてw』 DQN女のその一言で3人は大爆笑。 俺は無表情の顔のまま何とか、やり過ごす。 DQN男1『彼女いないからこうして何かアニメみたいな歌を唄って喜んでるんじゃね?』 DQN男2『ああ!あの今、流行の萌えとかそんな奴か?お前さぁ~現実にいない女で欲情してんじゃねえよ!』 DQN女『2人とも!あんまし苛めるとコイツ泣いちゃうよw』 DQN男1『何だよ、お前偉く優しいじゃねえか。もしかしてコイツに惚れたか?なんなら童貞でも奪ってやれよ。』 DQN女『うーんそうだな~前々から童貞君とのHにも興味あったし私はいいよぉ~。』 DQN男2『ったく、この女ほんとヤリマン女だなwおい!お前!この女がヤラしてくれるってよ!良かったなw』 ふ…しょせんはこの程度の煽り文句か、さぁて…どうゆう反応をしてやるか。 まず煽り言葉を拳銃の弾丸と例えよう。そして対象者は勿論、俺。 弾丸が俺に目掛けて真っ直ぐ飛んでくる。だが俺はその弾丸をまともに受けようが、かわそうが俺の自由だ。 相手は自分の攻撃が成功したかどうかを確かめたくて仕方がない。まぁ無理もないな 俺がここで怒ったり傷付いたり怯えたりすれば相手は『やったやった俺の攻撃は大成功!』とばりに大喜びするだろう そう俺の反応次第で相手を喜ばせるのも失望させるのも俺が全て決定権を握っている。 俺は攻撃側に達成感を味あわせるのは大嫌いでな。出鼻でもくじいてやるか。 ニヤリと酷薄の笑みを浮かべると 俺はわざとらしく何も聞いてないようなきょとんとした顔で相手を見据える。 深山『え?今なんの話しをしてたんでしたっけ?今ままでずっと今日の夕飯のおかずは何かな~? って事ばかり考えてあまり話しを聞いてませんでした。確か~あなた達が何かで馬鹿笑いしてるとこまでは覚えてたんですが… ええと何でしたっけ?すいませんもう一回話して下さい。今度はちゃんと聞きますんで。』 そう言うとDQN達は少し切れ気味になりながら DQN1『あのさぁ、お前なめてんのか!?』と声を荒げてきた。 俺はさっきと変わらない態度で相手と対峙する。 深山『なめてるって何をでしょうか?出来れば俺でもわかるように説明して頂けると助かるんですが…』 俺はわからないフリを徹底する。 DQN1の声に伝染したDQN2も怒りを露わにしてくる。 DQN2『こいつまじ締めるか!』 と言いながら俺の胸倉に掴みかかってきた。 DQN1『お前さぁ~あんましわけわかんねえ事言ってとボコるぞコラ!!』 そう言いながらDQN1は横の壁を思い切り殴り俺を威嚇してきた。 それを見てたDQN女が得意気になりながら 『あーあ。あんた2人を怒らせちゃったね。2人とも格闘技やってるからあんた下手したら死ぬよ。』 俺は罰が悪そうな顔をしながらこう答えた。 深山『ごめん!悪いけど死ぬのはお前等だから…。』 そう言った後、DQN2人のリミッターは解除され俺の顔面に向けて思い切り拳を振り上げた。 俺はそこで能力発動!!合言葉は時間よ止まれ!そう強く心に念じた。 そして時は止まる。ただし時間は30秒までだ、相手は3人、一人辺りに8秒間が限度か…1秒たりとも無駄には出来ない。 俺は間髪入れずまず目の前のDQN2の顔面を殴り飛ばす。リノリウムに打ち付け仰向けになったDQN2のチンコを情け容赦なく踏み潰し 使い物にならなくしてやる。ここで5秒まだ後3秒あるな。 俺は最後にDQN2の腹も渾身の右ストレートで殴った後、今度はDQN1に飛び掛る。 こいつのチンコも使い物にならなくしてやるか…そう思ったが吉日。 俺はDQN1の下半身を蹴り上げる。ぐしゃっという鈍い音と共に膝から落ちうつ伏せに倒れ込んだ。 後17秒!何が出来るか?ぱっと閃いた瞬間、俺は隣の部屋へと直ぐさま駆け込んだ。 ドアを開けると、そこもDQNの巣窟だった。 『チッ!いつからここのカラオケはDQN共ばかりになったんだ!?』 一人舌打ちをしながら目的のブツを?ぎ取りさっきの場所へと戻る。 戻った俺はまずDQN1のズボンを脱がし尻の穴にマイクの唄う部分の逆部分つまり持つ所の先端を突っ込む。 メリメリと何かが破れる音がしたが構わず突っ込める所まで突っ込む! 時間が危ういので調度マイクの取っ手の半分の位置くらいの所までで止めておく。 最後は肉便器だ!俺は迷わず肉便器のスカートと下着を剥ぎ取りマイクの頭部をマンコにあてがう。 『ヤリマン女にはこっちがお似合いだぜ!!』 そう言いながらマイクの頭部を思いっきりマンコの中へと挿入させていく。 ズブズブと音を立てながらマイクの先端は女のマンコの中へ軽々と飲み込んでいった。 『さすがヤリマン女だぜ!いとも簡単に飲み込んでやがる!どうせなら全部入れちまうか?』 半分まで刺さったマイクの取っ手に狙いを定め思い切り下から蹴り上げる。マイクは女のマンコの中に完全に飲み込まれた そろそろ時間か…俺は素早く自分の部屋へ戻った所で30秒が経過した。 タイムアウトした後、DQN共が悲鳴や金切り声の断末魔が上がった。 俺はそそくさと帰り支度を済ませ何事もなかったように受付で手続きをしカラオケから出た。 俺は胸が気持ち悪くなる様な気分を抱えたままカラオケを出て行った。 俺はDQNの様に弱い人間を簡単に傷付けたり苛めたり、はたまたそれを喜んでやったりする連中が昔から大嫌いだった。 自分が優位に立っている、責任を感じなくてもいいところにいる、責任を取らなくてもいいということがわかったうえで、 人を傷付けようとする人は、一番許せない。そういった人を見る度に俺の心は凍りつく。 多分、俺が弱い人間の立場だからそう思うのかもしれない。 もう、よそう…こんな事考えるのは…… 俺は気を取り直していつもの喫茶店に行く事にした。 俺がよく行く喫茶店は、いつも人がまばらで訪れる人の客の年齢層も20代後半から上くらいの感じの客が多く店内はシーンとまではいかないが 静かな感じの空間を醸し出す、俺にとってはとても寛ぎやすい喫茶店なので読書したい時なんかはよくここの喫茶店に訪れる。 俺はいつものようにカフェラテを注文し、いつもの席(一番隅っこの端の席)に着きバッグから単行本を取り出し暫しの間 コーヒーを啜りながら読書に集中する。 幾分か時間が立った頃、俺はふいに横から女の人に声を掛けられた。 何か聞き覚えのある声だなぁ…と考えながら顔上げ横を振り向いた先には何と真由美さんが立っていた。 真由美『あら深山君?こんにちわ。』 あまりも唐突だったので俺は一瞬だけ目を合わせてみたものの直ぐに俺の目は、あっち見たりこっち見たりとせわしなく泳ぎだし 自分でも馬鹿かと思うくらいキョドってしまった。我ながら恥ずかしい… 深山「ぁぁあ…ど、どうもこんにちわ。」 こんな挨拶が今の俺には精一杯だった。 誰だって、いきなり目の前で唐突に好きな人から満面の笑みで挨拶されたらキョドるのはしょうがないだろう? ちなみに真由美さんの服装は全体的に(ごめん俺あんま服に詳しくないの)彼女に似つかわしい柔らかで控えめな装いだった。 真由美さんは俺より3つ年上の24歳なんだけど誰にでも律儀に敬語で話す綺麗で優しくて思いやりがあって、包容力もある素敵な女性だ。 俺は頭が軽く混乱しながらもこの微妙にぎこちない空気を何とかする為に何か言わなきゃ…と変な汗をかきながらも 足りない頭の中の引き出しをあちこち開けたり閉めたりと話題を一生懸命考えていた。 すると真由美さんの方から話し掛けてきてくれた。 真由美『あのごめんなさい…もしかして読書の邪魔をしちゃいましたか?』 深山「いえいえいえいえいえ邪魔だなんてとんでもないです!!」俺は必死にかぶりを振って否定した。 真由美『ならいいんですが…それより深山君はよくここに訪れるんですか?』 深山「そうですね…本読んだり色々と考え事するにはもってこいの喫茶店だからね。わりとちょくちょく利用させてもらってますけど。」 と答える。 こうして真由美さんと会話する機会など仕事場ではほぼ皆無に等しかったので今までは挨拶だけでも度々緊張するばかりだったが こうして少しでも喋ってみると、自分の中で渦巻いていた、ぎこちない空気が少しだけゆるみ始めた気がした。 でもまだ目は見て喋れない自分がいるわけで…。 真由美『そうなんですか~実はそれ私もなんですよ。』 とにっこりと笑う彼女。やばい可愛い…。 真由美『あっそういえば!もう一つ聞いてもいいでしょうか?』 深山「どうぞどうぞ…」 真由美『私が話し掛けるまで熱心に読書してましたけど、どんな本を読んでいたんですか?』 という疑問を投げかけてくる。 深山「これはね最近、古本屋で見付けた本なんだけど主人公が1日に一度だけ時間を30秒止められるって能力があって…」 と言い掛けたところである事に気付く。真由美さんコーヒーのトレイを持ったまま俺の座席の前で立ちっ放しだった… 俺の馬鹿、もっと早く気付けよ! 深山「あああ…すいません配慮が足りなくて…OTL もしよかったら前の席に座ります?」 さり気なく聞いたつもりだったが内心、緊張したせいか最後の方で声が上擦ってしまった。 真由美『深山君が良ければ…それじゃあ、お言葉に甘えて』 と俺の正面の座席にちょこんと座る彼女。このポジションはどうも緊張するなぁ…ひとりドキドキしてたら彼女が尋ねてきた。 真由美『それで主人公が1日に1度だけ30秒止められるって能力を持ってるんですよね?』 深山「そうそう!今その冒頭まで読んでて俺なら何に使うかなって、さっきからずっと考えてたんだ。(実際には2度使用したんだけど…) 真由美さんだったらどんな事に使いたいな~って思いますか?」と、ここであえて真由美さんに聞いてみる。 彼女は視線をコーヒーカップの方へと降ろし、真剣な顔で彼女は考えている。それから、小首を傾げながら答えた。 真由美『うーん…難しい質問ですね。ゆっくり考えてみないと』 俺「そうだね。確かにこの質問は、人によっては難しい質問だったりするんだ。」 真由美『なんででしょうか?』 俺「気になる?真由美さんはこうゆう抽象的な話しは好き?」 真由美『はい大好きです!是非教えてくれませんか?』 そう、はにかむように笑顔を浮かべる彼女の顔を直視出来ない俺は、彼女の熱い視線を首筋辺りに感じながらも俺はゆっくりと説明を語り始める… 俺「まず【もしも~なんとかだったら貴方は何をしますか?】ってフレーズってよく何かで見たり聞いたりする事ってない? これがお金がいくらあったら~でもいいし自分が男または女だったら~とかでも何でもいいんだけどさ。」 しばらく考え込むような仕草を見せた後、彼女はパッとひらめいたかの様に答えた。 真由美『あっ!もしかして心理テストですか??』 俺「そう!さすが真由美さん鋭いね。」 そう言うと真由美さんは照れたように、えへへ、と笑った。そんな笑い方を見たのは初めてだったので、何だかすごく不思議な気がした。 今になって気付いたが俺と真由美さんは昔の友人同士のようにくつろいで言葉を交し合っていた。 それもまた自分の中でとても不思議な気持ちだった。 俺「そう!心理テストなんだよ。それじゃあ話しを振り出しに戻そうか。まず【もしも~なんとかだったら貴方は何をしますか?】って問い この解答を【夢】って言葉に置き換えようか。みんなそれぞれ夢って持ってるよね?こんな事したい…あんな事したい…って夢。 この【夢】の根底にあるものは今の自分が叶わぬ夢であって、それは抱いてる現実への不満の現れでもあるんだ。 だから最初に真由美さんに質問した時間が30秒止められたら何がしたい?って質問の解答で真由美さんが直ぐ思いつかなかったのは 真由美さんが今の現実を受け入れて生きてるからなんだよ。 一方、俺の様にポップコーンがちっこい豆粒からポンポンと弾けるかの如くたくさんの夢が思い浮かびあがってくる俺は筋金入りの夢想家って事さ♪」 の 真由美『そんな…(///)私だって悩みや不満に思う事だってありますし夢だってありますよ。たださっきのは唐突に聞かれたから 思い浮かばなかっただけでして…。』 あうあうと赤面しながら必死に否定する真由美さん…素敵だ…。 真由美さんを3語で説明せよなんて問題が出たら間違いなく俺はこう答えるだろう 彼女は小さくて、柔らかくて、愛らしいと。 今の俺は最高に幸せだった。こうして好きな人と同じ時間を共に共有出来ること……これ程の幸せほかにあるだろうか? そんな夢見心地に考えてるとき 真由美『そ、そういう…深山君の方は夢がたくさんあるそうですけど、どんな夢があるんですか?』 未だ顔を赤らめながらも俺の方を見上げ訊ねてきた。 俺「俺の夢?そいつは秘密だ。確かに30秒止まった後の世界でやりたい事はたくさんあるけどさ、でも一番の夢って言ったらそりゃあ… (真由美さんと両思いになってお付き合い出来る様になりたいに決まってるじゃないか)」 真由美『そりゃあ…???』 俺「そ、そりゃあ秘密に決まってるだろ!でもいつか気が向いた時にでも話すよ。」 はぁ…こんな遠回しな言い方しか出来ない自分が忌々しい… 真由美『そっか残念だなぁ。でもいつか気が向いた時、私に聞かせて下さいね。』 深山「オーケー!じゃあ真由美さんの方も能力をどんな事に使いたいか思い付いた時は俺に教えてね。」 真由美『はいvわかりました。それにしても深山君とこうして喋ったのって初めてな気がする。』 深山「確かにそうだね。俺なんか女の人とこうやって面と向かって喋ること自体初めてだよw」 そう言いながら俺は意味もなく笑ってみせた。 真由美『深山君はどこか他の男の人と違うような気がする。』 と真由美さんは言った。 深山「そうかな?」 真由美さんは小さく頷きそれから『うん』と言った。 その言い方には良い方にとっていいのやら悪い方にとっていいのやらに戸惑ったが取りあえず俺の中で良い方の意味で取っておくことにした。 深山「ところでさ…真由美さんは今日なんでこの喫茶店に??」 あまりの偶然だったので尋ねてみた。 真由美『あれ…そういえば、まだ言ってませんでしたっけ?私今日ここで彼氏との待ち合わせをしてたんですよ。私待ち合わせの時は一時間くらい早めに…(ry』 ~まで読んだ。でもあるように俺は彼氏…以降の話しはまったく聞いてなかった。 えっ………???今なんて言った??彼氏?カレシ…??かれし……??? 一瞬、真由美さんが何を言ってるのやらと理解に苦しんだが ただそれは俺の頭が理解するのを拒否しようとしただけであり俺はそのあまりにも残酷な現実を受け止めるしかなかった。 ついさっきまで抱いてた夢の幻想は粉々に砕け散りそして俺の中で小さく小さくほのかに光っていた希望の光も完全なる闇と化し 今まで見つめていた真由美さんと俺のこれからの淡い将来や期待、願望も全て遠くの彼方へと消し飛んだ。 真由美さんの口から出たこの『彼氏』という単語で俺の心は夢の世界から一気に奈落の底まで叩き落とされた気分だった。 あ、あはははははは……そうだよな。こんな素敵な女性に彼氏いないわけないじゃないか……?なに俺は勘違いしてんだよ。 今までの会話は全て真由美さんの社交辞令に決まってるじゃないか!社交辞令!!なんで俺はそんな事にも気付かないんだ?? 馬鹿だよな俺って…本当に大馬鹿野郎だ。だから万年童貞なんだよ…。 真由美『あの深山君?』 心配そうに俺を見つめる真由美さん 頼むからそんな目で俺を見ないでくれ…余計に自分が惨めな気持ちになるじゃないか…!! 俺は一刻も早く、この場から逃げたかった。そうでもしないと自分の精神状態や心がどうにかなってしまいそうで怖かった。 俺は今にも崩れ落ちそうな心を何とか奮い立たせながら座席から立ち上がった。 深山「あ、あのごめんちょっとさ…おれ用事…思い出した。それじゃあ!!」 そのまま喫茶店を飛び出す俺。 背後から真由美さんの待って!という声が聞こえた気がしたが俺はそれでも構わず走った。 畜生っ!!そう大声で叫び出したかったが小心な俺にはそんなこと出来るわけもなく、ただ暗澹たる空気が心の中に立ち込めた。 でも完全に真由美さんの口からキモい!とか死ね!とか拒否られるよりは、まだこんなの生易しい方だよな… 不意にそんな考えもよぎったが、それは直ぐに消え失せ俺の胸辺りに毒素を含んだ黒い雲が全身至る所へと加速的に広がっていた。 家に着き俺は真っ直ぐに自分の部屋へと向かい勢いよく『バタンッ!!!』とドアを閉めた。 そしてベタベタの展開ではあるが某エロゲの主人公のように思いきり部屋の壁を殴り突ける。 ゴンッ!!!という鈍い音と共に壁にヒビが入ってしまった。が…まあいい。 俺はそのままベッドに寝っ転がり全ての思考という思考をシャットアウトしベッドの中で泣いた。 今まで堪えてたものがドバッと溢れ出したかのように涙はとめどなく溢れ出てきた。 泣きながらも思い出される回想は真由美さんの顔や声ばかりで逆にそれが俺をさらに一層悲しくさせた。 こんな感情になるのは生まれて初めてだった。 苦しい…自分というものが壊れそうだ。これは失恋なのだろうか??いやまだ告白はしてない。でも彼氏がいる。 結局は失恋と同じだ…チクショウ!!あああああぁぁぁ!!!失恋がこんなにも苦しいなんて…思わなかった。 涙は未だ止まる事を知らず、俺は布団で声を殺しながら泣きじゃくった。 少し吐き気もしてきた。吐いた方が楽になるかな?そんなことを考えてるうちに俺はいつの間にか泣きながらも眠りに付いた。 こうして深山の怒涛の2日目は静かにも(?)幕を閉じた…。

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