「第3話:」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

第3話:」(2007/04/30 (月) 03:09:34) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

 俺は川のせせらぎを聞きながら女の子と夜の散歩中である。「これがなきゃパーフェクトな シチュなんだがな」ゴミ袋四袋分にもなったヲタグッズを両手にぶら下げながら。そろそろ重 たさに手がしびれてきている。  家の裏手に位置する川に来ていた。  住宅街の真ん中を流れる川だけあって、両側には立派な堤防がある。 「私、夜のお散歩って好きです」 「ほぅ、お前もか」  橋の袂に来た。  小学校のころから鬱々していた時にはよくここに来て漫画を読んでいた。  人生の1%ぐらいの時間はここですごしたかもしれない。  俺の、第二の家。  100円ライターとセブンスターを取り出す。咥えて火をつける。ここで吸う最後の一服に なるだろうな。  灰皿代わりにしてあるパイナップルの缶詰。もう吸殻が入らないからそろそろ捨てなきゃ。 「ひみつきち……みたいですね」 「ああ……でも、この秘密基地とももうお別れだ」  座布団の代わりにしてあるダンボール。雨が降ったら取り替えるのが面倒なんだ。 「わたしにもありましたよ……ひみつきち」 「へぇ、うちよりも綺麗か?」  虫除けの蚊取り線香。結構効果はあるんだぜ。 「うーん……もうちょっとだけ綺麗です」 「へぇ、良かったら今度招待してくれよ」  藪だらけの草むら。小学校の頃座るところだけ頑張って一人で刈ったっけ。  水の流れる音は好きだった。  蚊がうるさくぶんぶんと飛び交うのは嫌いだった。  虫の綺麗な声は好きだった。  コンクリートの橋の上を暴走族がけたたましく走っていくのは嫌いだった。  川の匂いや雑草の香りが混じった澄んだ空気は好きだった。  トラックの排気ガスは嫌いだった。  人がいないのは好きだった。  誰にも何も言われない自由が大好きだった。  でももう、この景色ともお別れ。  最後の紫煙を吐き出し、吸殻を缶詰に突っ込む。  しばらく煙が立っていたが、やがてそれも消えた。 「じゃあな」  俺は川にゴミ袋を流す。 「お世話になりました」  見慣れた光景に別れを告げる。  横で彼女もぺこりと頭を下げてくれる。  しばらく二人でそうしていた。  少しぐらい、泣いたっていいだろう?  さて、死ぬ支度は整ったものの、残りの人生の時間をどうすごすか俺はかなり悩んでいた。 「あと何分だっけ?」 「えと……10分もないです」  残り10分。何ができるかな。  部屋を見渡すと、時間を止めるストップウォッチがまだ8個あった。 「これは返すよ」  俺はストップウォッチを彼女に返す。 「え……あの、いいんですか?」 「ああ、どうせもう使わないし」  彼女をあんなに泣かせてしまったんだ。もうしないと心に誓ったしな。 「あ、でも」俺は少し考え直す。「すまん、お守り代わりに一つだけもらってもいいか?」 「あ、はい。いいですよ」  そういってストップウォッチを一つ俺に渡してくれた。未遂とは言え、あんなことしてし まったのに疑いもなく。……いかん、なんか彼女のいい子っぷりに俺ったら感動してる! 「あ、でもあの……」 「ん?」なんだ? 「……え、えっちなこと……してもいいんですよ?」  ズキューン  いかん、罪の意識が吹っ飛びそうになった。ついでに生きることに未練が沸いてきてしまっ た。あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーー! 「だめだめだめだめ! 大体あんなに嫌がってただろうに!」 「あ、あの……もう大丈夫です、我慢できます……無理やりじゃないなら……」  な゙ーーー!!!  俺は理性を総動員して欲望を鎮圧する。滅っ! 滅べっ! ついでに静まれ、俺の息子っ! ほら、嫌がってるんだよ、だから我慢するんだよ! わかるか! ここでやったらレイプだ ぞ!? ほらほら、あきらめろあきらめろいやちょっとぐらいだめだめあきらめろあきらめろ 心頭滅却心頭滅却……。 「ふぅ……おっし、とりあえず落ち着いた」 「……?」  だめだ、この子、本気で何を考えているのか分からなくなる。あんなに泣いて嫌がったのに 今度は大丈夫だって言う。  まったく、女は謎の生き物だなおい。  死ぬ準備は整っていた。 「ところでさ、俺ってどうやって死ぬんだ?」 「えと……あの……ひ、秘密です」  まさかこの子が鎌を持ち出してグサッと……やるわけないか。  人生最後の煙草になるだろうな。  カチンと煙草に火をつけた。 「ふぅ……」いかんな。「吸いすぎか、俺」  なんだかそわそわして落ち着かない。  まぁでも、大丈夫だろう。  今はどうやって死ぬにしても後悔はない。  こんな女の子に死に際に出会えたんだから。  自分の生涯に決別も付けられた。  俺の人生に思い残すことは何も、ない。  今なら安らかに死ねる――  ――そう思っていた。  母親が鈍く光るそれ――包丁を持って俺の部屋に来るまでは。 ★次回予告!  「次回! ミステリアス魔法使い天使ちゃん!第二話!」  「語呂が悪いな」  「ついに現れた悪の魔法使いデス! 彼女は古代禁術第八番を発動させて世界征服を宣言する!」  「第二話でもう佳境だな」  「正義の鉄槌くーだせー! まじかるステッキ撲殺剣ー!」  「それは鉄槌なのか杖なのか刃物なのか」  「爆発に巻き込まれた私にご飯をくれる男ことループ男は生きているのか!」  「え、俺生死不明?」  「そんな中、ついに女魔王デスは古の超破壊神雄山を召喚するっ!」  「やべぇ、それやべぇって」  「次回! 新世紀マジカルウィッチ天使ちゃん第九話! 『瞬間、心、重ねて』お楽しみに!」  「突込みどころ多すぎ」  「この次も、さーびすさーびすぅ!」  「どうでもいいがお前キャラ変わりすぎな」  「う、うるさいですよ!」  「大体シリアスな展開だったのに台無しだし」  「あ……ご、ごめんなさい……」  「帰っておしおきだな。ラ・ヨダソウ・スティアーナ」  「あっ、や、やだ! また時間止めて……ひやぁん!」  「あ、どうもすいませんお二方、うちのアホ天使がご迷惑おかけしました」  「やぁぁぁ、抜いて抜いて抜いてーーー……」  謎の二人組みは去っていく。  「……」  「……」  俺達はどうすることも出来なかった。 ※尚、次回予告の内容は確実に次回に出てくるわけがありません。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: