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 今日は月曜日、 外では雨が降っている。

大学をサボった俺は、ダラダラと畳の上に寝転がりながらTVを見る。
俺の隣には、あの変なヤツ『クリスチーナ・フォン・ブロウクンハート・伊藤』が、
昼飯のためにとっておいたインスタントカレーを食っている。一言なんか言ってから食えよ。居候め。

 昨日の出来事の後、俺はバイトを辞めた。不思議なくらいあっさり辞めきれた。
「辞めます」「おkwwwwww」みたいな。どうせ元々俺など必要なかったのだろう。
人を人として扱わない店長と、イヤミしか言わない先輩バイト生。連中の笑う顔が浮かぶ。

      • まぁいいさ、俺の手元にはバイト5ヵ月分ほどの現金と、
それを一瞬にして手に入れる力があるのだから。
そう、時間を止める力をもった謎の女クリス・・・結局いまだにこいつの正体はわからない。

 喪谷「なぁ。お前って正直何なんだ?」

クリス「ダカーラ、前にも行った通り。遥か遠くアメリカンからジャパニーズ喪男を救うためn」

アメリカから来た救世主が、段ボール箱に入って登場か。ひどい設定だ・・・。

 クリス「喪谷!暇だ!どっかいこーヨー せっかく金があるのにヨー」 

 飯を食い終えたクリスは、数枚の万札をバサッと上に放り投げる。ヒラヒラと舞い降りる金。
あぁ?まだ午前9時だ。大学をサボった良い子はダラダラ過ごす時間なんだ。

 喪谷「どっかっても、どこ行く?それに雨降ってる。マンドクセ」

 クリス「うまいもん食いに行こう!究極の味を探しに行くんダ!アンキモ!アンキモ!」

さっき朝飯食べたばかりじゃねーか。お前の舌じゃ至高の味には勝てんよ山岡。

 喪谷「居候の分際で家の主人に指図するなど100年早いわ。
    居候は居候らしく少しは料理でも出来・・・っ!?」


 俺が文句を言い終わる前に、突然見ていた景色が変わる。
気が付けば玄関の外で寝そべる俺。コンクリートの床が冷たくて気持ちイ・・・・・・寒い!
この野郎・・・時間を止めやがったな。

 クリス「家の中で寝てばかりだと、喪男からヒッキーに転職してしまうゾ!
     転職したらLV1からやり直しダ!LV上げメンドクセー!」  

腕をぶんぶん振り回しながら騒ぐクリス。
      • わかったよ。行くよ。とにかく近所迷惑だから騒ぐのやめろ。
なんでこいつ朝からテンション高いの?正直・・・参るわぁ〜。

 喪谷「とにかく着替えくらいさせろよ。な!」

 クリス「雨♪雨♪降れ 降れ かあさんが〜」

 喪谷「・・・蛇の目でお迎えうれしいな〜」


平日の朝、雨が降っているせいか、人通りはまったくない。
しとしとと降る雨の中、二人で傘を差して歩く。
地面に貯まった水を叩く、雨の音が心地いい。クリスは楽しそうに歌っている。


 クリス「ビッチ!ビッチ!Shit!Shit!バン♪バン♪バン♪(銃を発砲する音)」

それ何てギャング映画?さすが自称アメリカ育ちは違うぜ。
発音はうまい・・・。顔は思いっきり日本人だが。
もしかしてこいつスラム街生まれ?たしかにこんな変人いそうだなぁ。
『ヘイ兄ちゃん 新しいヤクが手に入ったぜ。混ざりナシの上等もんだ(英語で)』
とか言ってたりして・・・。
今だに謎の多いコイツの事をいろいろ妄想してみる。  


 クリス「ソウダ喪谷!面白い物を見せてヤルゾ!」

 喪谷「うおっ!ななななななんだ急に!」

突然にぐいっと腕を引っ張られ、顔と顔が近付く。
一瞬ドキッとするが・・・・・いや、何も別にこんなヤツなんか。
お、俺はネコミミロリ貧乳にしか興味ねーんだよ!ただの黒髪ロング天然系貧乳はすっこんでろ!! 

そう思う俺とは別に、心臓の鼓動は早まり、自分の顔が赤くなっているのを感じた。なんてこった・・・。
クリスは俺の手をぎゅっと握り、瞳は遥か遠くを見ながら、楽しそうな笑みを浮かべている。
俺はその表情を横目でじっと見つめていた。

 クリス「雨が空中で止まったら、どう見えるか喪谷は考えたことがあるカネ?」 

 喪谷「え?」

 クリスの言葉と同時に、心地よかった雨の音が一瞬にして止まる。

線のように見えていた雨は、空中で突然止まり・・・キラキラと輝く水滴が空中を漂っていた。
それは何十・何万ものイルミネーションとなって遥か遠くまで輝き、俺とクリスを取り囲む。

 喪谷「すげ・・・マジですごいわコレ。」

うまくこの風景を言葉に表すことが出来ず、俺はただビックリするだけであった。
クリスマスにツリーに飾られるライトやツリーよりも、夏の終わり頃に打ち上げられる花火よりも、
それはとても自然で美しく、ぐっと心に響く感動があった。

 クリス「・・・綺麗ダロー。雨の日はコレを見ないと落ち着かないんダ。
     ワタシが初めて時間を止めきれると気付いたとき、最初に試してみたのがコレなのダヨ」

 意外にもこいつロマンチストなんだな・・・。
俺に時間を止める力があったとしても、雨を止めてみるなんて考えなど浮かばなかっただろう。
だから朝からテンション高かったのか。納得した。
うっとりと目を細めるクリスの表情を見て、俺はただ純粋に、ずっとこの顔を見ていたいと思った。

それから30秒間、二人でこの景色の中、ゆっくりと歩いた。

 ーそんな俺達を遠くから見ている奴がいた。俺はまだその事に気が付いていなかったー


傘をさし、赤いスーツに身を包んだ女が俺とクリスを遠巻きに見ている。女は携帯を取り出した。

 謎の女「・・・博士、『TMS-0012』発見しました。」

 博士「『0012』?あぁクリスチーナか。番号で呼んでやるなよ。私も分からなくなるからな。」

その女は、少しイライラした表情で言葉を返す。

 謎の女「・・・スミマセン。クリスチーナ発見しました。さっそく捕まえましょうか?」

 博士「う〜ん。アメリカから帰って来たばかりだというのに、脱走なんて世話を焼かしてくれるなぁ。
    ・・・いや今日はどこを隠れ家にしてるかを突き止めるだけでいい。」

女は眉間に皺をよせる。明らかに切れる寸前のようだ。だが話し方は落ち着いてる。

 謎の女「お言葉ですが博士?あれをそのまま放っておいては危険です。
     博士の研究が外に漏れてしまうかもしれませんよ ?それに次の実験にも遅れが・・・」

やれやれ、と言った口調で博士は切り返す。

 博士「まぁ落ち着け。あそこでの実験は少し物足りなかったからな。もう少し泳がせておこう。
    1週間かそのくらい。それで変化がなければ捕まえよう。わかったな?」 

 謎の女「・・・了解しました。失礼します。」


女はフゥ・・・とため息をつき、携帯を閉じた。もう一度クリスと俺を見て、憎々しげに呟いた。

 謎の女「どうしてあんな失敗作ばかり博士は・・・。
     少しは私の事を見てくださってもいいのに。・・・止まれ。」

止まれ の合図とともに、女は雨の中に忽然と消えていった・・・。


 近所のデパートに到着。
「うまいもんが食いたい」というクリスの言葉で思い付いたのがここだ。
俺は入り口近くにあったMAPを見る事にする。

『1階・食品売り場』『2階・衣料品』『3階・電化製品』、
『4階・書店、ゲームコーナー』・・・・と。
これか、『5階・お食事処』。
しかし、時計を見ればまだ朝の10時だ。昼飯には早すぎるな。

 喪谷「と、いうわけで。昼まで盗ったり遊んだりするわけだが。」

となると、ここはやはり『電化製品』か『書店』だろうな。
まだ読んでいない漫画もある、パソコンもそろそろ新調しないといけないし・・・。
コンビニで手に入れた金は使わないのかって?当たり前だ。
あれは食費、電気・ガス・水道代として使うに決まっているだろ!

 クリス「となると、行くべき所は食品売り場ダナ!」

      • だから俺は腹減ってないって。お前は食うことしか考えてないのか?

とりあえず、何も考えないでブラブラとデパートの中を徘徊する。  
平日の朝な為か。デパート内には暇を持て余す老人や昼飯の買い出し主婦しかいない。
店員もどこかのんびりとした様子だ。
2階にあがった所で、クリスが「うわぉ」と声をあげる。

フムフムなるほど、あたりを見回せば『イケメンモテ系?』ブランド服の店が並んでいる。
ユニクロしか縁のない俺にとって、そこは異形の空間にも思えた。
自慢じゃないが、俺はあまりファッションには気を使わない。
世の中のセンスがよくわからんというか・・・金がモッタイネ。

まぁ俺の事はどうでもいいとして、
一方クリスの方は物珍しそうにキョロキョロと落ち着かないようだ。
なんだお前?やっぱり女の子ってかー?年頃の女の子はファッションになんたらってヤツだな。
まぁ、ワンピース一枚しかないってのアレだし。ここは先を見通して・・・

 喪谷「よしクリス。昼飯時間まで少しお前の服でも揃えるとするか。」

クリス「マジカ!本気カ!嘘ナシカ!」

 喪谷「おうよ。気に入った奴があったら・・・盗んでこい!」

 クリス「買うんじゃネーノカーヨ・・・」

当たり前だ。服に金なんかもったいないからな!  

さて、今回の盗みの作戦はかなり単純明快だ。
まず、あらかじめ盗む物を選んでき、通り過ぎる。
そして通り過ぎたら時間を止め、商品を盗んで戻ってくる・・・これで完璧だ。
監視カメラには、商品がひとりでに消えた様にしか見えないだろう。
何故通り過ぎるのか?それは、『商品が消えた→商品の近くに誰か立ってる→そいつが何かやった』
と、疑われる危険があるからだ。あいにく俺は完璧主義者なんでね。

 クリス「喪谷!コレなんかドーダ?こりゃ萌えるゾ!」

ああ?まぁいいんじゃね?クリスは黒いコートを選んだようだ。
アンティークボタンメルトンショートコート?なげぇ名前だな。

『メルトン素材のアンティークボタンコート☆
 アンティーク調のボタンが旬なデザインのコートは袖の切替、
 ウエスト切替などしっかりとしたデザインでハーフパンツなど
 とのコーディネートにもぴったりです♪ベーシックなカラー(ry』

長い説明だが、簡単にいうとハーフパンツと合うよ!という事らしい。

 喪谷「おーし。じゃぁ通り過ぎるぞ。あくまで自然に、だ。」

 クリス「うぇーい」

俺とクリスは、「見てるだけ」という素振りで通り過ぎる。
店員もさほど気にしていない様子だ。暇そうにあくびをしている。     
3〜4mほど、コートから離れたところで俺はクリスに合図した。

 喪谷「ここまで行けば大丈夫だな。クリス、いってこい」

 クリス「うぇい。任せてオケ!」

クリスの返事とほぼ同時に、俺のリュックが少し重くなる。
ヤツは俺の隣に、さっきと同じように立ったままだ。
顔がニヤニヤ笑っている。よーしよし、どうやらちゃんと盗んでこれたようだな。
この調子でいけば・・・。

~数時間経過~

 クリス「これも」

 喪谷「お」

 クリス「うーんこれもナカナカ」

 喪谷「ちょ ま」

 クリス「いやーこれはイイ仕事してマスネ!」

 喪谷「ちょwwwwwクリスさんwwwwwwそろそろ限界なんですがwwwwww]

ブランド品のブースを2・3件まわった所で、俺は弱々しい悲鳴をあげた。
背中のリュックはパンパンに膨らみ、両手にはいつの間にか紙袋が。お・・・重い・・・。
紙袋にはブーツやらシューズやら下着やら・・・いつの間にこんな大量に?

 クリス「まぁマテマテ。まだ見てない店があるゾ!次はあそこダ!」

ダーッと走って行くクリス。ぉおーい・・・待っておくれよ。
俺はヘロヘロと重い足取りで、なんとか追い付こうとする。

まったく、こんな事ならさっさと飯でも食って帰ればよかった。
いや、そもそも今日は家でのんびり過ごしていた方が・・・。
ネガティブな後悔が俺の頭の中を駆け巡る。


と・・・その時だった。
のんびりとしたデパートの雰囲気に、機械的なアナウンスが響き渡る。

『1階、エスカレーター・エレベーター付近で、火災が発生しました。
 お客様は落ち着いて、店員に従い、非常階段へと向かってください。』

?・・・火災?何いってんの?バカじゃね? 

『1階、エスカレーター・エレベーター付近で、火災が発生しました。
 お客様は落ち着いて、店員に従い、非常階段へと向かってください。』

あるあ・・・ねーよwwwwwってか。・・・いや、マジでシャレにならんな!?

 喪谷「おいクリス!火事だってよ!火事!さっさと逃げるぞ!」

 クリス「おー火事カ。そりゃ大変ダ。で、コレなんかどうダ?萌えるカ?」

慌て騒ぐ俺とは正反対に、平然とした態度で服を選ぶクリス。
萌えるというか、このままじゃ燃えますよ!?燃えまくりですね☆
ててて、店員!どこだ!?非常階段はどこよ!?

      • ついさっきまで見かけた店員達は・・・いつのまにか消えている。
むしろ、この階(2F)には・・・俺とクリスしかいない。ようだ?


いや、一人だけ。ゆっくりとした足取りで、俺達の方へ向かって来る奴が一人・・・いた。
赤いスーツに、黒いショートの髪。そしてツンツンした(?)メガネをかけた、女だ。
クリスの様子がおかしい。あいつも女に気が付いたみたいだ。
持っていた服を、ドサッと、力なく床へ落とす。

 クリス「・・・・メリア・・・?」

明らかに脅えた口調で、その女の名前?を言う。知り合いなのか?
女は俺達とは距離をとって、立ち止まる。そして不気味な笑みを浮かべ、口を開いた。

 女「やぁっと見つけましたわ。『0012』・・・いいえ、クリスチーナ?」

火災の警報が鳴るデパートの中、俺とクリスは謎の女と対峙した。