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「止まれ!」
砂時計が回転し、砂が静かに落ち始める・・・。

俺は喪雄。IT系企業に勤める28歳。
根っからの喪男である俺は当然彼女居ない暦=年齢。
俺がこの不思議な能力を身に付けたのは先週の日曜日。
この日から俺の人生が大きく変わり始めた。

その日は近所の公園でフリーマッケットが行われていた。
このフリーマーケットは割と有名らしく、参加者も多い。
客足もかなりの数である。
別段フリーマーケットが好きと言う訳でもないが、休日だと言うのにやることもない
俺は、宛ても無くフリーマーケットをぶらついていた。

突然現れた奇妙な光景に、俺はふと足を止める。
普通フリーマーケットの商品は色々な物が所狭しと並べられているが、
そこには風呂敷の上に砂時計が一つだけしか置かれていないのだ。
店番の人も居ない。
別に砂時計が好きな訳ではないのだが何かが気になり、砂時計を手に取る。
その瞬間、急に視界が真っ白になる。
真っ白な視界に何かが浮かび上がってくる。
「砂時計?」
風呂敷の上に置かれていた砂時計だった。
何者かが俺の意識に囁きかけてくる。

「砂時計の落ちる時間は30秒。その間だけ時を止める事ができる」
男の声。
「使い方は『止まれ』と念じればいい」
女の声。
「一日に何度使ってもいいけど、それなりの代償は貰うよ」
子供の声。
「代償とはお前さんの一日分の寿命」
老人の声。


「ちょっと、あなた、大丈夫? 顔色が真っ青よ」
中年の女性が心配そうに俺に声を掛けている。
どうやら白昼夢でも観たらしい。

「だ、大丈夫です。ちょっと立ちくらみがしただけですので・・・」
俺はふらつきながらその場を後にした。

六畳一間の自宅アパートに帰った俺は体に起こった異変に気付く。
「あざ?」
右手の甲に今まで無かった痣があった。
心なしか痣の形が砂時計の形に見える。

「まさかな。関係ないか」
独り言を言いながら手に出来た痣を見つめる。

ピンポーン。
ドアの呼び鈴が鳴った。

カチャ。
ドアを開けると、そこには見知らぬ親子が立っていた。
母親らしき女性は20代後半、ストレートヘアーのスリムというか、げっそりした感じの女性。
化粧っ気がないからか、やつれて見えるが、顔の作りは悪くはない。
子供の方は小学生低学年位か。ツインテールに上がり目のせいか、小生意気な感じがする。
見覚えの無い親子連れの登場で困惑している俺に、母親らしき女性が話し掛けてくる。

「あなたのために祈らせて下さい」
何だ、宗教かよ。まぁ、喪男の俺んとこに来る女なんて、宗教関係か、マルチの勧誘位だが。
「立ち話も何なので、上がらせてもらって・・・」
勝手に上がりこんでくる親子。
「ちょ、ちょっと、何勝手に上がりこんでるんだよ!」

俺の言うことなど意に介さず、奥に進んで行く母親。
「一人暮らしですか? やっぱり男性の一人暮らしは散らかってますねぇ〜」
放っておけよ! って、何かってに座り込んでるんだよ!
この女勝手にコタツの上のものをベッドに移動しやがった。
うわ、エロ本摘み上げるんじゃねぇよ!

「ちょっと、勝手に人のものを触らないでくれませんか?って、そうじゃなくて、
何上がりこんでるんですか!」
慌ててコタツの前に行き、お気に入りのエロ本を母親の手から奪う。

「そんな所に立ってないで、遠慮なさらずに座ったらいかがですか?」
まるで自分の部屋のように振舞う母親。
「遠慮して立ってる訳じゃないし!」
「ママー、ジュース飲んでいい?」
いつの間にか冷蔵庫から買い置きのペプシを持ってくる娘。

「あら、まぁ、すいません。お兄さんにちゃんとお礼を言うのよ」
俺はあげてねぇよ! 何勝手に冷蔵庫開けてペプシ持ってきてんだよ!
「お兄ちゃん、コップ持ってきて〜」
勝手に冷蔵庫から持ってきた挙句に、コップまでねだるか、このガキは!

脱力した俺はキッチンまでコップを取りに行く。
コタツの上には母親が所狭しと広げた怪しげなパンフレット。
「はい、コップ」
奥歯をかみ締め、憎々しげに子供の前にコップを置く。

俺は親子の対面どかっと座った。
「で、何なんですか? あなたたちは」
母親はカタログを広げ終わったらしく、こちらを向く。
その横で娘がコップにペプシを注いでいる。
シュワシュワシュワ。
コップに注がれて行くペプシ。

「ところで、喪雄さん。あなた最近良くない事が多くないですか?」
俺の質問をまったく無視し、母親が話し始めた。
「何で、俺の名前を?」
見ず知らずの女性に俺の名前を呼ばれ、不思議そうな顔で問いただす。

「表に書いてあった」
玄関の方を指差した娘が言った。
シュワシュワシュワ。更に注がれるペプシ。
あぁ、そうか、表札掛けてあるしなって、おい、溢れる、溢れる!
そう思った瞬間、コップからペプシが溢れた。
「あらあら、大変」
そう言いながら母親はこぼれたペプシをコタツ布団で拭き始める。

「うわ、ちょっと、今雑巾持ってきますから!」
慌てて雑巾を取りに行く俺。
「大丈夫ですよ。大した事ありませんから」
そう言いながらパンフレットまでコタツ布団で拭き始める母親。

いや、お前が大したことなくても、俺に取っては大したことあるから!
ってか、それ、俺のコタツ布団だから!
急いで雑巾を持って行くが、時既に遅し。溢れ出したペプシはことごとく
コタツ布団が吸い取っていた。
コタツ布団に黒い大きなしみ。
俺は脱力して座り込んだ。

「喪雄さん。あなた最近良くない事が多くないですか?」
何事も無かったかのように話を始める母親。

在ったよ。たった今起こったよ。ってか、起こってるよ。
お前らだよ! お前ら親子が来た事が良くない事だよ!

「在りますよ!」
力いっぱい相槌を打つ。
「そこで、我が幸福の連絡会では喪雄さんを幸福にするために〜(略)」
うわ、説明始めたよ、この女。
つーか、帰ってくれよ・・・。今の俺にはそれが一番の幸福だよ・・・。

母親が鞄から何か取り出す。
うわ、壷かよ。宗教と壷のダブルパンチかよ!
「この壷に毎日お祈りすれば〜(略)」

「そういうのはいりませんから」
俺は話を拒絶する意味で、手を前に出す。
それと同時に(偶然か?)母親が壷を俺の前に出した。
俺の手が壷に当たり、壷が母親の手からこぼれ落ちる。

やばい! この女のことだから、割れたりしたら弁償させられる!
うわ、と、止まれ! 俺は慌てて壷を掴もうと手を伸ばす。

何とか壷をキャッチ!
やれやれ、一安心。壷をコタツの上に置く。
その時、俺は右手の異変に気付いた。
右手の甲に砂時計が乗っているのである。

サラサラ・・・。
砂時計の砂は少しずつ落ちて行く。

「な、なんだ? 何で俺の右手に砂時計?」
俺は視線を砂時計から母親の方に移した。
ん? 何か変だ。視線の先には壷を落とした時のポーズで固まっている母親。
その横でペプシを飲み続ける娘。

「どうしました?」
母親の顔の前で手をヒラヒラさせてみる。
無反応な母親。
母親の頬をツネってみる。
やはり無反応。
娘からコップを取り上げ、逆さにしてみるがペプシはこぼれない。
ちなみに、コップを逆さにしたのは娘の頭の上だ。

俺はさっき観た白昼夢を思い出した。
時が止まったのか・・・?

そして時が動き出した。
「あ、壷が! あい痛たたたたたっ」
頬を抑え、痛がりながら慌てる母親。
バシャ。ゴツン。
頭からコップが直撃し、娘がペプシまみれになる。

「壷が割れ・・て・・・無い?」
頬を抑えながら、コタツの上に置かれた壷を見付け、あっけに取られる母親。
頭にコップがぶつかった痛さからか、娘が泣き始めた。

俺は我に返り、右手を見る。
右手に乗っていた砂時計は、今はもう無い。

「あの、今壷が落ちて、あれ? 壷が壷で・・・」
何が起こったか判らずにうろたえる母親。

そんな親子をよそに、俺は考え事を始める。
割れずにコタツの上に置かれている壷。
飲んでいたはずのコップが、頭上から落下して泣き始めた娘。

時間が止まるのは本当のことだったのか。
あれは白昼夢なんかじゃ無かったのか。
俺はあの時観た白昼夢の内容を必死に思い出す。

確か、止まれと念じれば30秒間時間が止まるんだよな。
1回に尽き寿命がうんぬん言ってたけど、なんだっけ? まぁ、いいか。
母親が頬を痛がってるってことは、時間が止まってる間に行ったことでも、
時間が動き出すと影響があるが、何が起こっているかは判らないってことか・・・。
などと冷静に分析しつつ、考え事を続ける。

「コップが頭で、ペプシに〜」
未だに状況が飲み込めずに泣きじゃくる娘。
「静かにしなさい! 喪雄さん、聞いていますか?」
いつの間にか母親は冷静さを取り戻し、説明を再開していたらしい。

「あ、え?」

「あなたの幸運に関わる大切なことですよ? ちゃんと聞いて下さい。
兎に角ですね、毎日この壷に祈っていれば・・・」
話を元に戻そうとする母親。めげないと言うか、なんというか・・・。

「コップが頭で、ペプシに〜」
未だに状況が飲み込めずに泣きじゃくる娘。
「静かにしなさい! 喪雄さん、聞いていますか?」
いつの間にか母親は冷静さを取り戻し、説明を再開していたらしい。

「あ、え?」

「あなたの幸運に関わる大切なことですよ? ちゃんと聞いて下さい。
兎に角ですね、毎日この壷に祈っていれば・・・」
話を元に戻そうとする母親。めげないと言うか、なんというか・・・。

そういえば、この能力は何度でも使えるって言ってたよな。
もう一度使ってみるか。
止まれ! 俺は心の中で念じる。
口を開いたままで固まる母親。辺りに静寂が訪れる。
時間は止まったようだ。
俺は右手を見る。右手の上には砂時計が乗っていた。
どうやら砂時計は、時間が止まっている時に現れるものらしい。
俺は立ち上がり、壷をゴミ箱に捨ててくる。

砂時計を見ると半分以上残っている。
まだ止まってる時間は残ってるみたいだな。

俺の中のちょっぴりの欲望とイタズラ心が湧き上がる。
ワシッ
母親の胸を鷲掴みする。
モミモミモミ。
痩せている割にはこの女、結構胸があるななどと考えつつ、横に座っている娘に目を向ける。
目に涙を溜めた状態で下を向いている。
どうやら母親に叱られて泣くのを我慢している状態で止まったようだ。

「このガキ、よくも好き勝手やりやがって」
この娘の暴虐武人ぶりを思い出し、一発小突いてやろうと考えるが、思いとどまる。
「幼児虐待は良くないよな・・・」
しかし、腹の虫は収まらない。
「ま、まぁ、俺が直接やらないならいいか・・・」
などと、勝手な解釈の元、娘の頭上に再びコップをセットし、元の位置に戻る。

そして、時が動き出す。

「壷からエネルギーが、きゃっ」
ゴチ。
胸を両手で抑えながら、母親は体を仰け反らせた。
「うわぁぁん」
再び頭にコップが落ち、その衝撃で泣き始める娘。

「どの壷ですか?」
俺はとぼけて母親に聞き返す。
「この胸・・・じゃなく、この壷・・・壷、壷? あれ? 壷はどこ?」
突然消えた壷を探し始める母親。

「この壷がですね。え〜と壷が・・・」などと言いながらコタツの布団を捲り上げたりしている。
「うぇぇん。コップが、コップがぁ」娘は相変わらず泣いている。

「そう、このテーブルの上にコップが・・・」
「コップ?」さりげなく突っ込みを入れる。

「そう、コップじゃなく・・・ちょっとうるさい!」
ベチン。
母親が泣きじゃくる娘の頭を叩く。

あ、幼児虐待だ。い〜けないんだ、いけないんだ〜などと心の中で歌いつつ、親子を観察する。

壷を諦めたのか、母親は探すのを止め、再び鞄の中から何かを取り出した。
「えーと、壷ではなく、この数珠を身につけて毎日お祈りをすれば・・・」
どうやら壷を諦め、数珠を売るつもりらしい。
娘の方は頭上を警戒して天井の方を見つめている。

俺は再び時を止める。
とりあえず、娘の頭上にコップを配置。
母親の手から数珠を取り上げ、ゴミ箱にポイッ。
変わりに雑巾を握らせる。
残り時間はまだある。
再度母親の胸を揉み始める。
モミモミモミ。
「ただ、揉んでるだけじゃつまらないな」
そう考えた俺は、服の中に手を入れ、直接触ってみる。
「うわ、柔らけえ。このポッチリは・・・」
砂時計の砂が残り少なくなる。
名残惜しかったが、服から手を抜き、元の位置に座った。

時が動き出す。

何か違和感を感じたのか、母親の体がビクっと震え、雑巾を握り締めた。
娘の方は、頭上に現れたコップに気付き、受け止めようとするが、人間、そんな一瞬で行動できる
ものではない。
娘のおでこにコップが直撃する。
ちなみに、このコップ、強化プラスティック製品なので割れる事は無い。
点灯防止用の錘が底に仕込まれているタイプなのでそこそこ重かったりもする。
「うぇぇん」

「雑巾は身に付けるものじゃないし、第一、それうちの雑巾ですよ?」
俺は雑巾を指差し、母親に話し掛ける。

「え? 雑巾?」
母親は、俺の言葉に我を取り戻し、しっかりと握っている雑巾に目をやった。
「あれ? 数珠が雑巾で、雑巾が数珠で・・・」
訳の判らないことをしゃべりながら、母親は雑巾を放り投げ、数珠を探し始めた。
娘の方に目をやると、どうやらコップに気付いてからでは受け取れないこと学習したらしく、
ベッドに放り投げられた週刊誌で、頭をガードしてい。なかなかやるな! 小学生!

ついに数珠を諦めた母親が、違う話を切り出してくる。
「最近、この辺りも物騒になってきてますよね? 火事も多いですし。
私たち幸福の科学会では、火事に備えて携帯用消火器を・・・」
今度は消火器の販売に切り替えるらしい。母親はそう言いながら鞄から消火器を取り出そうとする。
ちなみに、鞄は母親の後ろに置いてある。物を取り出すときはこちらにお尻を向ける形で取り出すのである。

母親が消火器を取り出そうとした瞬間に時を止める。
ちょっと鞄の中を覗く。

携帯用消火器、ハンカチ、ラベルを貼り替えた怪しげな水、その他etc・・・。
某アニメの四次元ポケット並に、色々入れられている。
さすがにこれを全部出されたら、厄介だ。俺は鞄の中身を全部ゴミ箱の中に捨ててくる。
とりあえず、娘が頭をガードしている週刊誌を除けて、コップを頭上にセット。
時間は後15秒位残っている。
お尻を向けて四つんばいになっている女性が目の前に居たら、当然触ってみたくなるのが
男と言うものである。
母親のスカートを捲り上げる。以外にも猫さんプリントのパンツが目の前に現れる。
俺は母親のお尻を撫でまわし始めた。

「暖かい・・・」手がちょうど股の部分に触れた時、俺はそう呟きながら手を止めた。
「ちょっと、中を見てみようかな」俺の心臓はすでに早鐘のごとく、バクバク脈打っている。
母親のパンツを膝まで下ろす。目の前のお尻から、女性器があらわになる。
触ろうと手を伸ばした時に、砂時計の砂が残り少ない事に気付いき、慌ててスカートを戻し、
元の場所に座り直した。

そして時が動き出す。

ゴッ
頭を週刊誌でガードしていた安心感からか、ものの見事にコップは娘の頭に直撃。
ガードしていた週刊誌が無くなっていることに気付き、口を尖らせ半泣き状態になる娘。
「あれ? 変ね。中身が無いわ。他の鞄と間違えたのかしら?」

中身が入っていない事に気付いた母親がこちらに向き直る。
「すみません、ちょっと鞄間違えたみたいで・・・。すぐに持ってきますね」
言うや否や、母親は立ち上がろうとした。

「あ、パンツ戻し忘れた」俺がそう考えた瞬間。
ズルッ。ブチッ。ズサー。
頭からものの見事にスライディングをする母親。
スカートが捲れ上がり、お尻丸出し状態である。

痛さからか、恥ずかしさからか、立ち上がれずにピクピクしている母親。
「お母さん、お尻丸出し〜」

「いやぁん」
娘の言葉に、自分がどういう状態か把握出来たようだ。
慌てて立ち上がろうとするが、ゴムの切れたパンツに再び足を取られ、またまた勢い良く
スライディングをする母親。
ズルッ。ブチッ。ズサー。ごちーん・・・。
どうやら冷蔵庫に頭をぶつけたらしい。

「もう、いやぁぁぁぁぁ」半泣き状態でドアから出て行く母親。
娘も、慌ててそれに付いて走って行く。
嵐のような宗教親子が出て行った後には、床に転がった猫さんプリントのパンツ。

「宗教グッズどしよう・・・。次の燃えないゴミは何曜日だったっけかなぁ」
などと考えつつ、俺はドアに鍵を掛けた。

宗教親子を追い返した俺は、今日起こった出来事を、思い返してみる。

どうやら、フリーマーケットで起こった出来事は、白昼夢では無かったようだ。
その証拠に、ゴミ箱には怪しげな宗教グッズが捨てられている。

「俺は、マジに時間を止める力を身につけたのか! すげー、俺、SUGEEEE!!!」
「30秒か。ちょっと短いけど、工夫次第では色々できるよな!?
うわぁ、ちょっと、マジ、すげー。何やろうかな?」
時間を止められる、という能力に有頂天になった俺は、猫さんプリントのパンツを握り締め、
ベッドに腰掛けて色々思案を始める。

「銀行でも襲って金奪うか? いや、30秒じゃ無理だよな。
輸送中に襲う? 上手くやれば可能だろうけど、ちょっと計画が面倒だよなぁ」
「まぁ、今はそれほど金に困ってる訳じゃないし、やっぱり、エッチな事に使いたいよな!」
「30秒じゃ、本番は無理だし、うーん・・・。考えてみると結構難しいな・・・」
ベッドの上で、もんどりうって考えているうちに、夜は深けて行く。

ピピッ ピピピピッ
翌朝、目覚し時計の電子音が鳴り、俺は目を覚ました。
枕元に転がる猫さんプリントのパンツが、昨日の出来事が夢ではない事を、物語っている。
何を隠そう、昨夜はこのパンツで2回ほど抜いた。

「夢じゃなかったんだ!」
俺は枕元からパンツを拾い上げる。
ニチャ。
「!?」
どうやら、昨夜の俺汁が、パンツにこびり付いていたようだ。
俺は、慌ててパンツをゴミ箱に放り込み、手を洗いに行く。

昨夜の考えで、30秒は短いが、痴漢位なら可能、と言う結論が出ている。
朝の通勤電車で試してみることにした俺は、はやる気持ちを抑え、身支度もそこそこに出勤した。

ガタン ガタン。
ぎゅ、ぎゅー・・・。
言い忘れていたが、俺の乗る通勤電車は、都内随一の乗車率を誇り、ラッシュも半端じゃない。
痴漢どころか、腕一本、まともに動かすことができない状態である。
「こ、これじゃ、時間を止めても意味が・・・」
俺は、朝のラッシュを諦め、帰りのラッシュに、期待することにした。

俺の勤務する会社は、社員50人ほどの中小企業。
IT系のSEと言えば、聞こえはいいが、実際にやっていることと言えば、社長専属のパソコン指導員
みたいなことである。

朝のチャイムと同時に会社に滑り込む。
ギリギリセーフ。
自分の席に座った俺は、机に置かれたメモを発見する。
庶務担当の佐藤亜紀が、書いたメモである。
亜紀は、うちの課唯一の女性社員で、電話番や交通費の清算など、庶務一般を担当している。
年齢は、今年短大を卒業したばかりの21歳。
ぱっと見、菅野美穂に似ており、天然入っているが、まぁまぁ、可愛いほうである。

内容を確認してみると、丸っこい文字で、こう書かれていた。
「10時に社長室へ行って下さい」

またヅラ社長のお呼び出しである。
本当にヅラなのかは、誰も確認した訳ではないが、毎日変わらぬ髪型、生命感の無い髪質、
やたら頭部を気にするところをみると、本当のことなのであろう。
いつもの呼び出しならば、時間指定などすることはなく、すぐ来いの一言なのだが、
今回の呼び出しには、時間指定がしてある。
いつもの呼び出しとは違うのだろうか? 多少気にはなったものの、帰りの電車のことで頭が一杯の俺は、
大して気にせずに妄想の世界に入り込んだ。

「喪雄さん、10時になりますよ〜」
うちの課には、俺と同じ苗字がもう一人居るので、それぞれ下の名前で呼ばれる。
亜紀の間延びした声により、妄想世界から現実世界に引き戻される。
いつの間にかに、10時になっていたようだ。
俺は社長室に向かう。

社長室の中は、それほど広くは無いものの、高そうな応接セットが置いてある。
奥の社長机には、誰も座っておらず、一人掛けのソファに社長、その向かい側の3人掛けソファには、
女性が座っていた。

「社長、お呼びでしょうか?」
俺は、社長には目もくれず、3人掛けソファに座る女性を見る。
年齢は30歳前後。髪はアップにしているが、下ろせばロングだろう。
PTAのオバサンのような眼鏡を掛けているため、顔の印象はキツメだが、美人である。
チャコールグレーのパンツスーツを着ており、白いブラウスの胸元から覗く胸が、
彼女が巨乳だと言うことを物語っている。

名刺交換を済ませ、俺は、社長の横のソファに腰を掛ける。
名刺から、彼女の名前は荻原久美子と言うことが判る。
某外資系IT企業のマネージャー職のようだ。
外資系とは言え、30歳未満でマネージャー職である。かなり優秀な人材なのであろう。
そんな優秀な人材が、俺みたいな社壊人やってるようなやつに、用があるとは思えないのだが・・・。

話の概要はこうである。
今後うちの社は、今度荻原久美子の勤務する会社と業務提携を結ぶ。
そこで、うちの社から久美子の会社へ出向する人材として、取り立てて仕事もない俺に、
白羽の矢が刺さった、と言う訳である。
今のポジションが気に入っている俺に取っては、迷惑な話だ。

出向した後に行う業務や、出向する時期、その他詳細についての話になる。
俺に拒否権は無いようだ。
コンコン。ドアをノックする音が聞こえる。

亜紀がトレイにコーヒーを乗せて入ってくる。
何を隠そう、亜紀は天然入ってるだけではなく、俗に言うドジっ娘でもある。
給湯室の湯沸し器を壊したり、コピー機を壊したり、何も無い平地で普通に
コケたりするのである。

ズルッ
そんな亜紀を目線で追っていると案の定、何も無い所でコケた。
しかも、コーヒーの乗ったトレイを持ったままである!

「止まれ!」
俺は時を止めた。空中で止まるコーヒーの載ったトレイ。
ウルトラマンが空を飛ぶようなポーズで、静止する亜紀。

「やれやれ。やっぱり、やったか」
俺は立ち上がり、空中で止まったコーヒーカップを、テーブルの上に移動する。
砂時計の砂は十分に残っている。

「とりあえず、これはコーヒーをこぼさずに済んだ、お礼だ」
俺は、亜紀の胸を揉む。揉みごたえが無い。やはり、貧乳だった。
亜紀の胸を揉みながら、俺はふと、社長の頭を見る。
「これは、確認するしか無いでしょう!」

日頃からの欲望が、この時、一気に爆発した。
俺は社長の頭部に手を置き、髪の毛を触ってみる。
何か硬い金属のような感触が、手に伝わる。
少し力を込めて金属部分を押してみる
パチン、と何かが外れる音がした。
どうやら、金属のピンで留めるタイプのカツラのようだ。
俺はカツラを持ち上げ、社長の頭部を観察する。
頭頂部が見事なまでに禿げ上がっている。河童禿げのような状態である。
「うお、ザビエル!」俺は、思わずそんな事を口走る。

ちなみに、この社長は、今年45歳、独身。
砂時計を見ると残り僅か。
俺は急いでカツラを元の位置に戻そうとするが、何せ、一度も身に付けたことも、
触ったこともない代物である。
そう簡単に装着などできる訳はない。
焦る俺を余所に、砂時計の砂は、どんどん減って行く。
間に合わない! そう悟った俺は、亜紀の手からトレイを取り上げ、社長の頭上にセットする。
そう、トレイがぶつかって、カツラが外れた事にするのだ!
「亜紀、スマン。これでコーヒーの件は無かった事にするから!」
先ほど亜紀の胸を揉んだことなど、すっかり無かった事にして、素早く元のソファに座る。

そして、時が動き出す。

くわぁぁぁん・・・。
「ぐが!」
ズサササー。

亜紀は、見事なスライディングで滑り込んだ。
捲れあがったスカートの中から、熊さんプリントのパンツが丸見え状態で、亜紀がぴくぴくしている。
俺は社長に目線を移す。
トレイの衝撃からか、社長の焦点は定まっていない。
再び視線を動かし、久美子の方を見る。
半分口が開いた状態で、久美子は固まっていた。

「な、何だ?」
今ひとつ状況が理解できていない社長の一言により、一同は我を取り戻した。

「す、すみませんでした!」
亜紀は慌てて立ち上がり、こちらを向いて謝る。お辞儀の途中で動きが止まる。
社長の言葉に、我を取り戻した久美子が、社長の方を向き、視線が頭部で止まる。

「いたたた・・・」
ようやく、トレイがぶつかった痛みを感じたのか、社長の手が頭を抑える。
社長の手が止まる。
しばし、気不味い沈黙。

宙を泳ぐ、社長の視線。
どうやら、カツラを探しているようだ。
社長の視線が久美子を見たところ止まった。
一同が、社長の視線の先を確認する。
偶然にもカツラは、トレイのぶつかった衝撃で、久美子の胸元に飛んでいたのである。
慌てて、久美子の胸元にあるカツラを掴む社長。

むぎゅ。
慌てすぎていたためか、はたまた故意なのか。
カツラと一緒に、久美子の胸まで掴んでしまったらしい。

「きゃぁぁぁぁぁ」
バチーン
バタン
タッタッタタタタタ・・・
久美子が走り去って行く。

突然の出来事に、硬直している、俺と亜紀。
社長の手は、カツラを握り締めたまま、止まっている。

「社長、セクハラです・・・」亜紀がぼそっと呟く。
「わざとじゃないんだ・・・わざとじゃないんだ・・・」カツラを握り締めたまま、社長が呟く。
「事故・・・と、言うことにしておきましょう・・・」それだけ答える俺。

「頼む・・・」
肩を落とし、顔に赤い手形をつけた社長を尻目に、俺と亜紀は社長室を後にする。
この業務提携の話は無かったことになる、かも知れない・・・。

今、俺と亜紀は、社長の奢りで、イタリアンレストランのランチコース料理を食べている。
社長の奢りと言っても、この場に社長が居る訳ではなく、社長から、口封じ?のために頂いた
お金で食事をしているのである。

あの後、冷静さを取り戻した久美子が、荷物を取りに戻ってきた。
社長と、なぜか俺まで土下座させられ、二人で謝ることで、何とか事態は収拾した。
この事は、貸しと言う形になってしまったが。
今後、この事で、俺がどんなとばっちりに合うことやら・・・。

「社長、やっぱり、カツラでしたね〜!」
幸せそうに、パスタを頬張りながら亜紀が話始めた。

「お前さんは、この奢りのランチの意味が判ってるのか?」
「誰も聞いてませんよ〜。多分」ちゅるると音をさせ、パスタをすすりながら、亜紀が話し続ける。
「それに、公然の秘密ってやつじゃないですか〜。今更、みんなにバラしたからって、
誰も驚きませんよ〜」

「お前、もしかしてカツラのことを、みんなにメールで送るつもりじゃないだろうな?」
俺の問いかけに、フォークを持つ亜紀の手が止まる。

「え? い、いやだなぁ、そ、そんなことシマセンよ〜。あはは〜」
亜紀の態度から、明らかに送ろうとしていたことが判る。

「お前なぁ、いくら公然の秘密だからって、人には知られたくないことだってあるだろ・・・。
お前だって、熊さんパンツのこと、とか言われたくないだろ?」

「違います! ぽーさんパンツです!」
亜紀の口から勢い良くパスタが飛び出し、俺の顔に付着する。
ぽーさんとは、ネズッキーアイランドのマスコットキャラで、モチーフが熊のアニメのことである。

「似たようなもんだろ・・・」俺は、顔に付着したパスタを取りながら言う。

「まったく違います! ぽーさんはですね!」
この後、亜紀のぽーさん談義が30分ほど続き、デーザートを食べ終わる頃に、ようやく開放された。

社長も、午前中のことを気にしてか、午後は呼び出しもなく、俺は定時に帰宅することが出来た。
夕方の通勤ラッシュは、午前中ほどではないにしろ、そこそこの混雑具合である。
俺は午後いっぱい、練りに練った作戦を実行すべく、ターゲットの選定を行う。
扉が開き、チャコールグレーのパンツスーツを着たグラマーな女性が乗車してくる。
「今日のターゲットはあの女性に決定!」
俺は心の中で呟きつつ、パンツスーツの女性へと向かう。
混雑により、なかなか身動きが取れなかったが、何とか彼女の斜め後ろに張り付くことに成功。

パンツスーツの女性を少し観察してみる。
髪は黒のロング。俺の位置からは顔は見えないが、眼鏡を掛けているようだ。
新聞を読んでおり(しかも英字新聞)、どこかで嗅いだことがあるような、香水の匂いが微かに漂う。
パンツスーツのヒップラインのお尻から、ボリュームはあるものの、形が良いのが判る。
なかなか色っぽいお尻である。
そんな俺の気配を感じてか、彼女が振り返る。
しばし、見詰め合う俺と彼女。

「お、荻原さん・・・。こ、これから帰宅ですか?」
「あなたは・・・。いいえ、一度帰社しようと思いまして・・・」
そう、彼女は午前中出会った荻原久美子であった。
久美子の勤務する会社と、うちの会社は同じ沿線にある。
とは言え、ラッシュ時間帯に同じ車両に乗り合わせるとは、偶然を通り越し、
運命の出会いと言えるだろう。多分。

「これからご帰宅ですか?」
「はい、今日は珍しく定時に開放されたもので」
悪戯を見破られた子供のように、どぎまぎしながら、当り障りの無い会話を続ける、俺。

キキー
電車の急制動の音が響き渡る。
後ろを向いてる久美子の体制が崩れ、俺の方へ倒れ掛かる。

ぐりっ!
「ふぎゃっ!」俺は久美子のヒールに、足を踏まれ、奇声をあげながら、うずくまった。
久美子は、俺の足を踏んだ事に気付いたのか、慌てて足を戻すが、その反動でバランスを崩し、俺の方に
倒れ込んだ。

むぎゅ〜。
うずくまった俺の顔に、圧力が圧し掛かる。どうやら、うずくまった俺の顔目掛けて、久美子の形の良いお尻が、
乗りかかってきたようだ。
顔面騎乗のような体制の俺と久美子。

「す、すみません」
久美子が慌てて、立ち上がろうとするが、再びバランスを崩し、俺の腹部に久美子が倒れ込んだ。

「ふげへ!」再び奇声を上げる俺。
この時、すでに周りの目は、俺らに釘付けである。

「すみません、すみません」
明らかに動揺している久美子。再び立ち上がろうとするが、またしても、バランス崩す。

「止まれ!」
周りの喧騒が消え、久美子が空中で静止する。
さすがに、何度も圧し掛かられては、堪らない。
久美子を回避しようと、俺は時間を止め、立ち上がろうとした。

ズキッ
久美子に踏まれたつま先に、激痛が走り、俺はバランスを崩し、倒れ込みそうになる。
慌てて、目の前のイケメンのベルトを捕まえ、体制を整えた。

目の前には、宙に浮いた状態で止まっている久美子。ヒールの踵が転がっている。
どうやら、俺の足を踏んだ拍子に、踵が取れてしまい、バランスが取れなかったようだ。

「痛ぅ〜、まったく、何度も倒れ込みやがって。 この尻が!!」
俺は八つ当たりに、久美子のお尻を思いっきり叩く。

ぽよん。
何とも心地よい弾力が、俺の手に伝わる。

ぽよん、ぽよん。
あまりの感触の良さに、俺は、何度も久美子のお尻を叩いたり、撫でたりし始める。
さわさわさわさわ。もみもみもみ。
調子に乗り、胸まで揉む。

お尻の触り心地も良いが、巨乳の胸の揉み応えも、堪らなく良い。
俺は、久美子のシャツ胸元から、そっと手を入れ、胸を直接触り始める。
手が小さな突起物に触れる。久美子は巨乳の割には、乳首は小さい方らしい。
指先で転がしていると、乳首が段々と硬くなってくるのが判る。
どうやら、時間が止まっている間でも、体の反応はあるらしい。
俺は、我を忘れ、乳首を転がし続け、気付くと、砂時計の砂がほとんど無くなっていた。
慌てて胸から手を抜いた瞬間に時が動き出す。

どんっ。
後ろから胸を揉んでいたため、久美子が俺に抱きかかえれるように倒れ込んでくる。

「すみません、何度も・・・。すぐに立ち上がりますので」
「あ、ちょっと、待って」俺は久美子が立ち上がろうとするのを制止した。

周りも、ようやく事態を把握したのか、一人の男性が声を掛けてくる。
先ほど、俺がベルトを掴んだイケメンである。
なるほど、イケメンは行動までイケメンなのである。俺が、このような状況に出くわしたら、恐らく、
影で笑ってるだけで、手など貸しはしないだろう。

「大丈夫ですか?」
俺と久美子は同時にイケメンの方に振り向き、イケメンが手を出してきた。

ズルッ
イケメンが手を出したと同時に、イケメンのズボンとパンツが膝までずり落ちる。

「き、きゃぁぁぁぁぁ!」久美子が俺の方を向き、抱きついてくる。
久美子のむにっとした巨乳の感触が堪らない。

久美子の悲鳴にきょとんとしているイケメン君。
周りの視線が、久美子からイケメン君の下半身に移る。
イケメン君も視線の先を追い、自分の下半身に目を移す。

「うわわわ、いや、これは違うんです! ご、誤解です!」などとシドロモドロに言い訳をしながら、
久美子の方へ近づいてくる。

「いやぁぁぁぁぁ」近づいてくるイケメンを見て、更に力いっぱい、久美子が俺に抱きついてくる。
「おま、ちょ、ちょっと、近づくな!」ようやく我に返った俺が、久美子を庇うような体制を取る。

「痴漢か?」
「こいつ、チンコ出してるぞ!」
「変態だ!」
「駅員に突き出してやる!」
哀れ、フルチン状態のイケメン君は、他の乗客に取り押さえられ、扉の方へ連行される。

ようやく落ち着きを取り戻した久美子に、ヒールの踵が取れていることを伝える。
何とか立ち上がることは出来たが、このままでは、歩行は困難であろう。
俺は、次の駅で下車し、俺がサンダルか何かを買ってくることを提案した。

電車を下りる時に、俺が久美子を背負うことに遠慮したのか、久美子が断ってくるが、
現状どうしようもないと納得し、提案を受け入れた。

俺は次の駅で久美子を背負い、下車する。
背中に伝わる、胸の感触が何とも心地良い。
名残惜しかったが、俺は、久美子をベンチに座らせる。

フルチンイケメン君が、駅員に連れられ、久美子に事情を説明。
何とか、事故という事で許してもらい、フルチン事件は一件落着したかに見えたが、
イケメン君がお辞儀をした瞬間に、再びズボンがずり落ち、再び久美子の悲鳴が、
駅に木霊する。
結局イケメン君は駅員室に連れさられることになったようだ。

事故の原因が俺とは言え、久美子も良く事故に遭う人である。
この先、久美子は何度事故に遭うことになるのだろうか?

俺は、サンダルを買いに駅ビルへ向かった・・・。

俺は、先ほどの提案通りにサンダルを購入し、久美子の元へ戻る。
購入したサンダルは、ヒールの踵が折れたことと、久美子の服装を
教え、店員が選んだものなので、趣味は悪くないはずだ。

俺がホームに戻ると、久美子はベンチに座り電話をしていた。

「ちょっとしたトラブルがありまして。
はい、大丈夫です。今日は直帰と言う事でお願いします。
はい。その件に関しましては・・・」
どうやら、久美子は帰社せず、直帰にしたらしい。

久美子が電話を終えるまで待ち、購入した店で、ヒールの修理も行っている
事を伝え、サンダルを渡す。

「ご迷惑をお掛けしました。今度何かお礼をさせて下さい」
「いえいえ。これから、仕事仲間になることですし、お気になさらずに」
「それでは、こちらの気がすみませんので、また後日にでも」
今までの態度を見る限り、久美子は借りを作らないタイプの人のようである。
俺は次の電車を待つべくホームに残り、久美子は駅ビルの方へ向かい歩き始めた。

改札へ向かう久美子のお尻からピンク色の下地の上にネズミのプリントが顔を覗かせている。
どうやら、先ほど転んだ拍子に、ズボンのお尻が破けたらしい。
ネズミさんプリントのパンツとは、年齢の割には可愛らしいパンツだ。

俺は、慌てて久美子に走りよる。
俺の走り寄る気配を感じてか、久美子が振り向き、怪訝そうな顔をする。
俺はそっと、小声で久美子に話し掛ける。

「あ、あの、ズボンの後ろ、破けてます」
俺の言葉に、久美子はお尻に手を当てたまま、耳まで赤く染める。
久美子は見た目よりも、純情なのかも知れない。
俺は上着を脱ぎ、上着を腰に巻くように進める。
久美子は自分の上着を巻くと言ったが、ここは俺も引かず、駅ビルも近いので一緒に行く、
ということで久美子も折れた。

俺たちは婦人服売り場に到着し、久美子は品定めに入る。
俺は普段見ないような彩りに目を奪われ、辺りをキョロキョロとしていると、
店員と視線が合った。
喪男の俺が居るだけで迷惑、と言ったような目で見られる。

久美子は、似たような色のサイドプリーツのスカートが見つかったらしく、試着室へと向かう。
ズボンとは違い、すぐに履いて帰れるように、裾直しの無いスカートを選んだようだ。
恋人同士ならば、彼氏も試着室の前に行き、似合うだの、似合わないだの話し合うところ
だろうが、残念ながら俺と久美子は、そういった間柄ではない。

ズボンから、スカートに履き替えるのか・・・などと、考えながら、久美子が試着室に入るの見て
いると、ある事に気付く。

着替えると言う事は、一時的にでもパンツ1枚になり、電車で悪戯するよりも、ひと手間省ける。
ひと手間省けると言う事は、その分悪戯する時間が長くなるのである。
そのことに気付いた俺は、さりげない仕草で試着室の方へ向かうが、傍から見ればかなり挙動が
怪しかったかも知れない。
俺は、試着室の傍に立ち、聞き耳を立てた。

シュルル カチャ。
何かをハンガーに掛けた音だ。恐らく、俺の上着だろう。ちゃんとハンガーに掛ける辺りが、
久美子の几帳面な性格を物語っている。

カチャカチャ・・・。
ベルトを外す音。

ヂー・・・。
チャックを下げる音だ。
音だけと言うのは、何とも想像力を掻き立てるものがある。
俺の息子が硬くなり始める。

シュルルル カサカサ。
どうやら、ズボンを脱いだようだ・・・。
時間を止めるなら今しかない!
俺は心の中で念じる。

「止まれ!」