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男が息を大きく乱しながら寂れた深夜の道を走っていた。
アケミは男の肩に抱えられながら揺れていた。
男の呼吸音・足音だけが辺りに響き、月は黒い空に貼りついていた。
誰にも見られることのない30秒間を、男は全力で駆けた。
月が深く差し込むその場所から一刻も早く逃げれるように。
やがて、虫の静かな囀りが甦る。男が来た道を振り返ると、アケミがいた場所はもう闇の中だった。

男はアケミを家に連れ込むと、すぐにアケミを犯した。アケミは何も抵抗しなかった。
アケミの容姿は計算され尽くしたかのように均整がとれていた。アケミの姿は完全に男の心を捉えた。
故に、男は路上でアケミを見かけた時、我慢できずに家まで連れ込んだのだった。
その日から男は、家に帰ると飯を食べてから、アケミを犯して寝るようになった。
家に帰ると、アケミの傍で飯を食べてから、アケミを犯して寝るようになった。
外出の際にはアケミを犯し、帰宅の際にもアケミを犯し、寝る前にアケミを犯すようになった。
一日中アケミを犯すようになった。

アケミを連れ込んでから1ヵ月後のことだった。
男は険しい表情で家へと帰ってきた。ドアは強く開かれて、家全体が揺れた。
部屋へ入るなり、男はアケミを強く蹴った。髪の毛を掴んで引きずり回し、強く床に叩きつけた。
「お前のせいで! お前のせいで!」
と、男が叫ぶ。アケミはなにも言わず、抵抗せず、何度も跳ねた。

男が一通り暴れ終わると、部屋は大いに荒れた。
ベッドのシーツはぐちゃぐちゃになり、ティッシュの箱はボロボロになった。
椅子・机はひっくり返り、皿は割れて、部屋は細かい粉・埃にまみれた。
アケミは力なく横たわっている。うつ伏せの状態。
スカートは捲れ挙がって太ももが露になっている。
内股は軽く開かれ、腰は滑らかな曲線を描いていた。
男はもう一度アケミを蹴ると、ベッドの上に転がっている潤滑油を手に取った。
アケミの口腔に舌をねじ込む。アケミは何の反応も示さない。
男は唾液を注入しながら、自分のズボンを下ろした。
ズボンを脱ぎパンツを下ろすと、そこにはイボのようなものが点在し、赤くただれたペニスがあった。
見た目とは裏腹に痛みこそ感じないものの、妙な不快感を感じる。
その禍々しいモノを見ると、男のアケミの対する憎しみは余計に強くなった。
しかしアケミの――痛めつけられながらも――洗練されたその姿は、やはり男の心を離さなかった。
何か魔力じみた気味の悪いものを感じながらも、男はアケミを抱くことにした。抱かずにはいられなかった。
ただ心の中では、今日限りでこいつを処分してしまおう、という思いがあった。

アケミの股間の部分に潤滑油を塗る。そして男は自分のペニスを入れた。
アケミの体はやけに冷たかった。部屋にはぴちゃぴちゃと油が鳴らす音だけが響いた。
それには何の感動も無く、ただ腰の動きは激しかった。
やがておとずれる射精。それとともに、極めて深い脱力感・虚無感を感じ、
部屋の荒れた光景がそれをさらに深くさせた。

射精後、冷静になった男の頭に在るのは葛藤。
今日限りでどこかへやってしまおうと決めたのに、アケミを見ると気持ちがゆらぐ。
「お前みたいな奴は金さえ出せば買えるんだよ!」
と叫び、男は台所から包丁を取り出して、横たわるアケミの傍に立った。
焦点をもたず、宙を見上げたアケミの瞳はどこかもの悲しげで、その瞳を見ると
男は手にした包丁を、アケミの体に突き立てることができなかった。
その端整な容姿を損なわせるのは忍びなかったのだ。
せめて自分の目の前にいる間は、そのままの姿でおいておきたかったのだろう。

やがて男はアケミを肩に担ぎ、ゆっくりと窓の方へと向かっていった。
窓を開けると、月がやけに近くに見えて、深く、アスファルトに光が差し込んでいた。

どこからか聞こえてくる足音は、男が時間を止めると聞こえなくなった。

男は最後にもう一度だけアケミをその目に焼き付けると、アケミの背中に手をまわして栓を開く。
時間が止まったその世界では、栓が開かれたアケミの体はしぼむことなく男の胸に抱かれていた。
男はアケミを勢いよく窓の外に放り投げた。そして、男はぞっとした。
男の腕から放たれたアケミはその場で停止し、深黒の瞳は男に向いていた。
「アナタを放さない」
男はその瞳を見ると、おかしくなりそうだった。
すぐに窓を閉じる。月に照らされたアケミの影が鮮明に窓に刻まれる。
男は目を背け、その場にうずくまった。
全ての感覚を押さえつけるかのように、その目は強く閉じられて両耳は掌で押さえられ、
男は呼吸さえもしなかった。
厭に長い30秒を、男は耐え忍んだ。

30秒が経った。窓の向こう側からは、なにか空気の抜けるような音がする。
そして家の傍で、ぱさっと何かが地面に落ちた。恐らくアケミだろう。
男はしばらく動くことができず、その場にうずくまっていた。
目を開くことに対して、ひどい恐怖を感じた。
目を開くと目の前にアケミがいるような気がして、開くことができなかった。
「なんてことはない。アイツは人形じゃないか」
男は何度も自分に言い聞かせた。しかし、そうすればそうするほど、恐怖は募っていく。
しばらくそうするうちに、恐らくさっきから微かに聞こえていた足音だろう、それが家のほうへ近づいてきた。
その足音は家の傍で一旦止んで、やがて、地面を強く打った。
その音を聴くと、男は飛び跳ねるように起き上がり、窓の方を見ないようにして
一目散にベッドに潜りこんだ。ベッドへ駆け込む途中、割れた皿で足の裏を大きく切った。
切り口から流れ出る液体は妙に温かく、その温かみを感じると妙に安堵した。
それと同時に、少し冷たいものが体を走った。


終わり



あとがき

ダッチワイフを道端から拾ってきた男の話。
さらに補足すると、チンコのイボは性病です。アケミにうつされたのです。
アケミが性病持ちということは、以前のアケミの持ち主も性病。
「男」も性病。足音の主(次の持ち主)も性病