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都心の郊外にある古めかしいアパートで1人の青年が寝返りをうった。彼の名は法臥修兵(ほうが しゅうへい)。

薄暗く散らかった狭い部屋に電子音が響いた。
「ウゥ、ウルサイ。」

青年はそう呟くと枕元で耳障りな音を発している時計を掴むとスイッチを切った。

「なぜに毎朝こんなにも苦しく起きなきゃならないんだ。」

青年はブツブツと呟きながらのそりと体を起こすと身支度を始めた。彼の住んでいるアパートはお世辞にも綺麗とは言い難く、失礼ながら『オンボロアパート』という名前が一番当てはまりそうだ。

「今月の生活費がヤバいなぁ、最近仕事してないしなぁ。」
彼の言う仕事とは飲食店やコンビニなどのバイトなどではない。
彼は国際的な傭兵企業A.L.Oのエージェントだった、A.L.Oは傭兵企業として名高いが、変人の集まりとも言われていた。
それもその筈でA.L.Oには普通の人間はほとんど所属していなく、特殊な技能を持った人間だけが所属を許されていた。
法臥修兵はA.L.Oの中でも特に珍しい能力を持っているエージェントで、彼はわずかではあるが時間を停止させたり遅延させる事が可能だった。

法臥が歯を磨き終わり着替えようとしてクローゼットを開けようとした時に彼の携帯電話が振動し始めた。

「はい、もしもし。」
「朝早くにスマンな、俺だ。」
「あっ!神月さん…………もしかして……仕事ですか?」
「なんだ、察しがいいな。なら話が早い、これから支社に来てくれ。」
「あの〜、俺、今日はバイトが入ってて……」
「それじゃ!待ってるからな!」

電話が切れると法臥が溜め息をついて携帯電話をしまい、急いで服を着替え始めた。

「良く来てくれたな。」
「そりゃあ、神月さんが一方的に切っちゃったから……」
法臥の前には上等なスーツを着こなしている中年男が椅子に体を沈めていた。
彼の名は神月大輝(こうづき たいき)。法臥の上司でA.L.O東京支社の支社長である。

「それで……仕事ってなんです?」
「今回は潜入任務だ、お前にうってつけだろう?内容はK国の海洋研究センターへ潜入し、あるデータを持ち出すことだ。」
「任務は俺1人だけですか?」
「いいや、お前だけじゃ不安なんでもう1人ついてもらう。オイ、入れ!」

神月がそう言うと法臥の背後にあるドアからスーツを着た欧米人らしき男が入って来た。

「彼の名前はジャック・バンガード。様々な火器について熟知している。まぁ、戦闘のエキスパートだな。よろしくやってくれ。」
「はぁ、エキスパートですか。」

法臥は自分の左に立っている男を見た、スーツを着こなして見た目ではやり手のビジネスマンにしか見えない。

「あ、あの、宜しくお願いします。っていうか日本語通じるんですかね?」
法臥が戸惑っているとジャックが流暢な日本語で喋り始めた。
「日本語は大丈夫ですよ、こちらこそ宜しく。」

ジャックは手を差し出した、法臥はためらいながらも手を差し握手した。

「ふむ、神月サン。彼は本当にエージェントなのですか?私にはそうは見えないが。」

法臥と握手をし終わったジャックは法臥に体を向け、横目で神月を見ながら尋ねた。

「あまり人を見た目で判断すると痛い目を見るぞ、ジャック。法臥、ちょっと見せてやれ。」

神月は法臥へ目配せをしながらそう言った。

次の瞬間、法臥はジャックの背後に立っていた。

「ほぅ、これは変わった能力ですね。先程の非礼を詫びます。法臥、宜しくお願いします」
ジャックは満足そうにまた手を差し出した。



2人はその後、K国へ飛び立った。

K国

「さて……法臥。機内で資料は見ましたね?」
「ま、まぁ読みましたけど。」
「なら大丈夫だ。おそらく施設はそれほど強固な警備態勢ではないと考えられます。さっそく今夜、実行しよう。」
「今は昼ですよね?夜までは何をするんです?」
「市内のホテルで休もうか、我々には休息が必要だ。」



p.m23:30

海洋研究センターは鉄条網が巻かれたフェンスの中にあった。

2人は既に施設の内部への潜入に成功していた。

「またセンサーがあるようだ、ここは通れないな。どこかにこれらを管理している部屋があるはずだ、それを捜そう。」
2人は身を低くしながら通路を進んでいった。

突き当たりの通路の右側から所員らしき人間が現れた。
法臥はジャックが行動を起こすより早く時間を止め、所員の元に駆け出した。走りながら法臥はスティックタイプの麻酔銃を取り出した。
それを所員の首へ当て上部を押し込んだ。圧縮空気が抜ける音と同時に麻酔針が所員に撃ち込まれた。

時間が動き出したと同時に所員は膝をついて倒れた、法臥は所員が頭を床にうつ前に抱きかかえた。

「っと!危ない危ない。」
「彼はその辺の壁にもたれかけさせておこう。」

追い付いたジャックが法臥に言った。

2人はそれからも幾人の所員に遭遇したがジャックの麻酔銃や法臥の麻酔針で次々と眠らせていった。

「ここのようだな。」
ドアの上方のプレートを見ながらジャックは法臥に目配せをした。

法臥はジャックと目を合わせてから時間を止め、ドアを開けて中へ入った。中には3人の警備員がいた、2人は談笑をしている状態で停止し、1人はコーヒーを飲んでいる状態で停止していた。

法臥は談笑をしている2人に麻酔針を注射した、そして、警備員が持っているカップを奪ってから注射をした。

最後の警備員を眠らせてからジャックが後ろ手で鍵を閉めて部屋へ入って来た。
「さぁ、ここからが僕の仕事だ。」

ジャックはそう言うと手近にあった椅子を引き寄せてキーボードを凄まじい速度で叩き始めた。

瞬く間に施設内の図面が引き出され、セキュリティーを解除された、更に要所要所に隔壁が降ろされた。

「これで我々を邪魔する者はいない筈だ。行こう。」

2人は画面に映し出された図面の中央に位置する金庫室を目指して走り出した。

金庫室までの廊下には警備員も所員もいなく、法臥には逆にそれが不気味に思えた。
だが、ジャックは自信満々なようで突き進んでいた。


2人が角を曲がるとそこには銀色で円形の分厚い扉がはまっており、その脇には暗証装置が備え付けられている。

「またまた僕の出番だ。」

そう言うとジャックは腰の辺りからコードを引き出すと暗唱装置の後ろにある扉を開けて繋ぎ始めた。

そして、右腕に備え付けられている端末をいじり始めた、法臥はこの間に警備員が来ないか周りを見回す。

「よし、開いたぞ。」
ジャックがコードを装置から外しながら法臥に言う。かなりの重量がある鋼鉄製の扉を開き中へ入ると、25m四方の部屋の中に所狭しとコンピューターのサーバーや書類棚が置かれている。

「うわぁ、この中から捜すのか。」
法臥が嫌悪感を示しながらジャックに尋ねる。
「いや、おそらく目的の物はサーバーの中にあるだろう。法臥が入り口を警戒しててくれ。」

ジャックはそう言うとサーバーに向かって歩を進めた。法臥は周りの書類棚に気を取られながらも金庫室の入り口とその奥の空間を見ていた。

「なぁ、ジャック。まだ見つからないのか?」
右腕の端末をいじっているジャックに法臥が尋ねた。
「なかなか見つからないものでね、何しろデータ量が大きい……っ!!」
「ん?どうした?」
「あった!あったぞ!」

ジャックが端末の画面を見て喜んでいる時、金庫室の外の廊下には武装した警備員が近付いて来ていた。

「ジャック……喜んでいる時間はなさそうだ。警備員が来た……」
「何!それじゃあ、さっさと撤収しようか。」

2人はお互いの顔を見合わせ。

フェイスマスク被り、勢いよく金庫室を飛び出し、通路の奥にいる警備員に飛びかかって行く。

突然の攻撃に驚いた警備員は発砲も出来ずに2人に当て身を喰らわされ意識を失っていく。
法臥は細切りに時間を止めたり遅れさせる事で相手のみぞおちや顎を正確に狙う
一方、ジャックは素早い身のこなしとどこから出したのか、トンファーで警備員殴打し気絶させていく。

警報も鳴らされる事なく2人は施設の外へ脱出した。

日本

「ご苦労だったな、君らが持ち帰ったデータは近海の海底の地形データだ。これで依頼人も安心するだろう。」
神月が満足そうに2人に言った。
「今回の報酬は口座に振り込んでおいた………修兵は手渡しだったな。」

神月はそう言うと法臥に封筒を手渡した

「あの………なんだか中味がとても貧相な気がするんですけど……」
「お前はジャックと違って装備品から武器まで全てがウチのもんだからな、損耗した分の経費は引かせて貰った。」

法臥は神月の無情な宣告を耳にしながらも封筒の中味を覗く。

「まぁ、何とか今月は生きていけそうです。」

法臥は嬉しいとも悲しいともとれない笑いを漏らした。


end