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都内のある私立大学の講義室では沢山の学生が教壇に立っている教授の講義を聞いていた。

「…であるからして生産関数というものはx=f(L)で表され……」
「おい!法臥!起きろって。」
「んぁ?」
「『んぁ?』じゃなくってさ、さっきからハゲがお前を睨んでるぜ。」
法臥は講義室の机に突っ伏して爆睡しているところを友人の井上に起こされた。
「うぅ、暇すぎる……」
「だよなぁ、何が悲しくて90分もオカマみたいなハゲた教授の話を……」

井上がそこまで言いかけた時、教授が2人の方角を睨んだ。

「うぉ!あいつ地獄耳か?」
「妖怪だろ?」

囁きあっていた法臥たちは驚きながらもふざけあっている。


そうこうしている内に講義が終わり学生たちは連れ立って講義室から出て行った。
「お前、今日はバイト入ってるか?」
井上が法臥に尋ねた
「ん?たしか入ってないハズ。」
「なら駅前のカラオケにいかねぇか?俺、割引券持ってるんだ。」
「いいねぇ、じゃあこれ終わったら行こうぜ。………ん?」
「電話か?」
「そうみたいだけど、この番号は……」
法臥はそういいながらも通話ボタンを押した。

「よぉ、久し振り。俺だ!」
「久し振りっていうかこの前に会ったばっかりですよ。」
「そうか?」
「もしかして………」
「仕事だ、1時間以内にA.L.Oビルまで来い。」
「えぇ!でも俺、今日は用事がある…」
「じゃ、必ず来いよ。」

神月は一方的に電話をきった。法臥は電話を持ったままうなだれている。

「もしかしてバイトが入ったのか?」
「悪い。」

残念そうにしている井上を残して法臥は急いでA.L.Oビルに向かった。

A.L.Oビル


「よし、1時間以内に着いたな。」
神月が汗だくの法臥を前にして涼しい顔で言った。
「無茶すぎますよ、学校からここまで1時間だなんて……」
「でも間に合ったじゃないか。」
「それはそうですけど……」
「フッ、まぁこの話はここまでだ。今日頼みたい仕事について話そう。」

神月は机に置かれている書類を片手に話始める。

「今回、お前にはO製薬の依頼で新薬のデータを研究所からO製薬の本社へ無事に送り届けるのが仕事だ。そこでお前にはもう1人エージェントをつける。」
神月は法臥に1人の女性の顔写真を見せる。

「彼女の名前は如月歩美、ドライバーだ。」
「あぁ、運転手ですか。」
「只の運転手だと思って甘く見るなよ。」
神月は法臥をかるく笑いながら応えた
「えっ?それってどうゆう意味……」
「彼女は下のホールでお前を待っている、さっさと行ってこい。」

法臥が神月に尋ねようとした言葉は途中で神月の言葉に遮られ、どうしようもなくなった法臥はしぶしぶ部屋を出て行った。


法臥はエレベーターに乗りながら如月という女の子が一体どんな人間なのか考えていた。


「甘く見るなよって言われてもなぁ、どんな子なんだろ?」


暫くすると法臥が乗った鉄の箱は一階に到着し、扉が開いた。法臥はホールに歩み出ると今回の仕事の相棒になる人間を探した。


「ここよ、法臥修兵。」
「うわぉ!びっくりしたぁ。」
突然、法臥の後ろから声がしたかと思い、法臥が振り向くとそこには自分より少し背の低い女の子が立っていた。

格好は今時の女の子といった感じでお洒落に決めている、今日の天気が良いせいなのか露出が多い。

「初対面の女の子を前にいきなり驚くなんて失礼ね、ともかく今回は宜しくね。」
「あ、あぁ。よろしく。」

ぎこちなく2人は握手をした。

18:30

O製薬研究所


空に浮いている雲がオレンジ色に染まり、周囲はのどかな空気に包まれいた。


「これが新薬のデータとサンプルです、確実に本社に届けて下さい。お願いします。」

白衣を着た研究員らしき男が法臥にジェラルミン製の小さな手持ち鞄を手渡した。


「分かりました。」

法臥は鞄を掴むと、横に停車しているジープの助手席に乗り込んだ。運転席には既に如月が乗っている。


「じゃ、さっさと行くわよ。」
「あぁ。」

2人は短く話した後、車をゆっくりと発進させた。



何事もなく市街地を抜け、有料道路にジープは進む。


日は既に沈み、徐々に空は夜の暗さに浸食されていく。


「ねぇ………ねぇ!ちょっと聞いてる?」
「ウェ?」
「ちょっと!今、寝てたでしょ!」
「うむぅ、寝てない。断じて寝てない。」
「ちゃんと起きててよね。」
「だって暇なんだも…」
「ねぇ、あのトラック、イヤな感じがする。」

如月が前方を走っている二台のトラックを顎で差しながら法臥へ言う。


「ん〜、三車線の両側を走ってるなんて怪し過ぎるぞ。」
「どうする?」

如月が法臥の方を見つめる。

「何も起きない事に越した事はないんだけどなぁ………二台の間を抜けよう。」
「えぇ!何か起きたらどうするのよ?」
「そんときゃそんときだ!レッツゴォー!」


如月は不安な表情もしながらもジープの速度を増し、二台のトラックの間を抜けようとした。

ジープがトラックの中ほどまで進むとトラックの影からワゴン車が前方に現れた、更に後方からは別のワゴン車が退路を塞いだ。


「罠………」
如月が潤む目で法臥を睨んだ。
「ハハハ」


ジープの前を走っているワゴン車のサンルーフが開いて、全身を黒のボディスーツで包んだ人間が現れた。


法臥はジープの扉を開けてジープの上によじ登った。敵はナイフを片手にジープに飛び移ろうとしている。


法臥はジープの上で軽く飛び跳ねると時間を止めた、時間を止めた空間ではジープもトラックもワゴン車を運動を停止し、法臥は慣性の法則に従って空中を飛び、ワゴン車に乗り移った。


ワゴン車に飛び移ると男の手からナイフをもぎ取り、捨てた。ここまで法臥が動いたところで時間が動き出した。


「なっ!なんだぁ!こいつは!」

敵の男が突然現れた法臥に驚き喚いた。法臥は腰のホルスターから銀色のハンドガンを取り出した、突然の奇襲と銃を見せられた驚きで男は動けずにいた。そんな男を法臥はサンルーフから車内へ戻らせた。
すかさず法臥は車内に入りと先程の男と車内に乗っている他の男に銃を撃った、胸に当たった弾丸は鈍い音をたてた。
男は短く呻くと気を失ったらしく、だらしなく座り込んだ。
ワゴン車を運動している男は何かを無線に叫んでいるようだったがそれも途中で中断させられた。




「さすがA級エージェントね、見直したわ。さっきの男、殺したの?」
「殺すはずないだろ?あれは軟弾頭だから死なない。」
「フーン」

トラックとワゴン車の包囲網から抜け出した法臥たちは無事に料金所に差し掛かろうとしている。


「あっ!」

如月が突然驚いた声を漏らした。

「ん?」
「あの料金所の職員……」
「へっ?」
「私達を拘束するつもりだわ。」
「俺達なんかしたか?」
「多分、さっきの襲撃してきた企業の工作ね………しっかり掴まっててよ。」

如月はそう言うとアクセルペダルを踏みつけ、ジープを急加速させる。


ジープは料金所に設置されているバーを弾き飛ばし、料金所を通過する。

O製薬本社


「確かに……新薬のデータとサンプルですね。ご苦労様でした。」

社員に鞄を渡し終わった2人は帰り道につく。


「そういえば、さっきの料金所の……」
「あぁ、あれね。私、読唇術もってるの?」
「読唇術?」
「そう、相手の唇を見て何を言っているかわかるの。」
「で、でもあの時、料金所は何十mも前だったけど。」
「フフフ、私の視力を甘く見ないでね。」
如月が法臥の方を向き不敵に笑う。

法臥は窓の外を見ながら静かに呟いた
「この会社って怖いなぁ」

「時間を止められるアンタの方がよっぽど怖いわよ。」

如月の鋭い突っ込みが法臥の後ろから聞こえた。



end