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時間――不変の流れ
遡る事も、故意に進める事も、まして止めることもできない絶対のモノ
その時間を『止める』力が俺、喪原 拓にはある。
それは、雪が降る日だった…


深々と降り積もる雪、冷たい風が頬を撫でる。
シンとした空気が心地良い。
「おーい!喪原!」
呼ばれて振り向くと走ってくるやつがいる。
「今帰りか?一緒に帰ろうぜ」
少し息を切らしながらソイツは言う。
東 輝樹(あずまてるき)中学からの親友だ。
ふとしたきっかけから友達になり高校になるまでいつも一緒につるんでいる。

実はこいつには時間を止めるという力がある。
まるで漫画のような話だが輝樹の家系に伝わる力らしい。
ただ輝樹はその『力』をあまり良く思っていない。
幼い頃この『力』が原因で気味悪がって誰も近寄らなかったらしい。
俺は別にそんな『力』なんて興味が無かった。
『力』があろうが無かろうが輝樹は輝樹だから。
輝樹は高校に入る前に両親を亡くし、独り暮らしで良く家に遊びに来ていた。
俺の母もよく家に来る輝樹を自分の子供の様に接してきた。
「今日さ、夜お前ん家に遊び行っていいか?」
「ああ、良いよ」
俺の父親は俺が小さいときに亡くなり、今は母親と俺だけだ。
俺の母親は病院に勤めていた。
確か今日は母親は夜勤だったはずだ
「来るついでに弁当買って来てくれよ」
「げ、パシリかよ!」
「人ん家来るんだから文句言わない」
「へぇへぇ分かりました」

そう言うと輝樹は
「じゃあ俺こっちだから」
「ああ、じゃあまた夜な」
「おう!」
と言い輝樹は元気良く走って行った

家に帰るとテーブルの上には書き置きがあった。

今日は夜勤なのでコレでご飯食べてね

紙と一緒に千円札が置いてあった。
俺はとりあえず自分の部屋へ行きおもむろにベッドに横になった
ふぅとため息をつく。

……………


プルルルルル

静寂を切り裂いて電話の呼び出し音がなり響く。
どうやら横になってる内に眠っていたらしい、外はすっかり暗くなっていた。
眠い目を擦りながら電話に出る。
「はい、喪原です」
「あ、拓!?」
受話器の向こうからは母親の声がした。
かなり急いでる様子だった
「どうしたの?」
「輝樹君がさっき運ばれて来たのよ!」
「!?本当か!?」

「どうやらバイクが雪道でスリップして横転したらしいのよ」
「今緊急治療室で手術をうけてるわ!」
「わかった、今すぐ行く!」
慌てて家を飛び出る。
何でだよ!アイツは時を止める『力』があるじゃないか!
何で事故なんか!

手術室の前には母がいた。
「拓!」
「母さん、輝樹は!?」
「今手術中よ…」
母の心配そうな顔は自分の子供に向けるソレと同等であった。

どれくらいの時間がたっただろうか
フッと手術中のランプが消え中から医者が出てきた
「輝樹は!輝樹は大丈夫なんですか!?」
掴みかかるようにして聞いた
心臓の鼓動が早くなっているのが自分でも分かる。胸が締め付けられる。

――頼む!――


医者はうつ向き、首を横に振った。
「そんな…輝樹…。」
頭の中が真っ白になる
何で―――

涙は出なかった。悲しいはずなのに…。
頭がまだ現実を理解していなかった。
心のどこかでコレは夢だと思っていたのかもしれない。
母と医者が話をしている。
「拓、とりあえず今日は遅いし帰りなさい…」
時計を見ると夜の二時をまわっていた。
俺は輝樹の顔も見ずに家に帰った。
輝樹の顔をみたらアイツが死んでしまったのを認めなくてはいけない。
俺は…認めたくなかった…。

家に着いても眠る事が出来ずに部屋中暗いままベッドに寄りかかっていた
何が起きたのか分からなかった
一瞬にして親友が消えたんだ
そんなこと信じられるか!
拳を強く床に打ち付けた。
そのまま俺はボケっと窓を眺めていた。

「…く……た…く……拓」
ハッとして俺は振り向いたこの声は…

輝樹だ!
そこには輝樹が立っていた。

「輝樹…お前…」
「ごめんな、遊びに行けなくて…」
輝樹の顔は悲しそうだった
「輝樹…お前何で事故なんか…」
「俺…あの時『力』を使えなかったんだ…」
「昔あの『力』が原因で誰も俺の側に近寄らなかった…、それがトラウマになって一瞬使うのが怖くなったんだ…。」
「だから使えなかった…」
そう言って輝樹はうつ向いた
「でも…でも、死んじまったら意味ねーじゃねーかよ!」
俺は叫んだ。
「だよな…ごめんな、拓」
涙で視界がボヤける。
さっきまで出なかったはずの涙で。
涙が、止まらなかった。

しばらくの沈黙の後輝樹が言った
「拓、俺この『力』が怖くて使えなかった、と言うより、俺の『過去』が怖かったんだ。本当はこの『力』は大切な人を悲しませない為に使う『力』…」
「でも、今の俺には何も出来ない…」


「拓、この『力』をお前にやるよ」
「え…?でも輝樹、『力』って言ったって…」
「この『力』は1日30秒だけ使うことが出来るんだ」
「お前ならきっとこの『力』をうまく使ってくれると信じてる…、俺はお前と友達になれて良かったよ…」
そう言って輝樹は微笑んで、消えた…
「輝樹…」


「俺もだよ…」
俺の呟いた言葉は冬の夜に溶けていった。
外は雪が降っていた。
かけがえのない親友と出会ったあの時と同じ雪が…