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春の訪れを感じさせるような快晴に包まれたどこにでもあるような街
その街の川沿いの土手に一人の男がいた、名前をAといった
Aは高校生3年生
小・中学校ともに良くも悪くもない成績、スポーツもそこそこでき、何の特徴も無く過ごしてきた。
それは彼が平穏を望んでいたからでもある。
彼は人より抜け出る様な事が面倒臭かった。
人は何かが抜け出ると羨望、嫉妬その両方を、本人が望まずとも、受ける。
そういった他人の感情に板挟みにされる事が鬱陶しかった。
だから、そこそこに勉強をし、そこそこに運動をし、そして他人には関わらず生きてきた。
だが彼は唯一、同じクラスのBという女の子に対して、ある感情を抱いていた。
最初はその彼自身もよくわからない感情を否定しようとした。
でも、できなかった。
3年間彼はその感情を他人には打ち明けず、一人抱えこんでいた。
好き、という感情を―――
だが、何か行動を起こすわけではなく、ただ漠然と抱えこんでいるだけだった。
何の取り柄も無い、ちっぽけな自分に何が出来るのか解らなかったから。

そんな彼は土手である小箱が落ちている事に気が付いた。
普段なら気にもとめなかっただろう。
だが、何故かその小箱に惹き付けられた。
Aは小箱拾い上げ、蓋を開けた。
中には変なマークが書かれているだけで特に何も変わりはなかった。
蓋を閉め、顔を上げると、黒色のロングコートを着た男が立ってこっちを見ていた。
「僕に、何か?」
「その箱を探していたんだ、返してもらえないかな?」
「あなたのだったんですか、すいませんでした」
小箱をロングコートの男に手渡した
「いや、良いんだ」
ロングコートの男は小箱を受け取るとカバンの中にしまいこんだ
「君に何か、この箱を拾ってくれたお礼をしよう」
「あ、いや、いいですよ」
ロングコートの男はAの言葉を無視するかのように続けた
「そうだ、君に時間を30秒間止める力をあげよう」
それは突拍子もない言葉だった
「はい?」
「私は、そうだな、君達の世界では悪魔と呼ばれている存在だ」
男の口からは次々と意味不明な言葉が出てきた
「そして、君が拾った小箱、これは人の魂を入れておく為の小箱なんだ」
男は続ける

「その箱を拾ってくれたお礼として私の力の一部をあげよう、という事だ」
「但し、力を使う代わりに君の寿命は2年縮むがね。ちなみに君の寿命は……」
そうゆうと男はAの心臓辺りに指先を当て言った
「あと60年だね、どうする?」
Aは少し考えた後、言った
「その力、もらえますか?」
「わかった……力を使える様にしておいた」
「ありがとうございます」
「ところで君はこの力を何に使うつもりだね?」
「ある人の為に使おうと思ってます」
「君は自分の寿命を他人の為に使うのか?」
「はい、力の使い方、こんな事ぐらいしか思いつかないんで」
「まあ、君が良いならそれで良いさ、それじゃあ。」
そう言うと男は煙の様に消えた


その日、力を得た日からAはBの為に、だけどBには気付かれないように力を使い続けた。
些細な、ほんの些細な事にも
Bの笑顔が絶える事の無い様に、何度も、何度も力を使い続けた
そして、卒業の2週間前、Aは
死んだ――
そして、Bと一緒に写るはずだったクラスの卒業写真には右上に小さく、でも、とても穏やかな表情のAの写真が貼ってあった
誰にも気付かれる事の無かった一人の男の小さな、純粋すぎた恋の話