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ゲームが始まった。
今から僕は世界中を逃げ回らなきゃいけない。
敵に視認されたら即、死だ。それはこのゲームのルールである。
もちろん、敵に視認は即死という術があるなら、こちらにも術は用意されている。
30秒間時間を止める能力。一度使ったら一時間は使えない。
この力を有効に活用する。それができなければ僕の命は無い。
僕はまだ死にたくない。まだ生きていたい。やりたいことだってたくさんある。
そのために……。
ここでじっとしていてもただ死を待つだけだろう。行こう。
僕はドアを開けた。

ビルとビルの間の狭い通路。近くから雑踏が聞こえる。
僕は目をつむる。まぶたの裏に周辺の地図が映し出された。
赤く点滅している丸が敵。丸から飛び出した角は敵の顔の向いている方向。
敵の位置は現在地からはまだ遠い。逃げるなら今だ。
僕は目を開いて通路を出る。通路の外は賑やかな繁華街だ。
人の流れに沿うと敵に近付くことになる。必然的に流れに歯向かわなくてはいけない。
道行く人々から白い目で見られるが、こちらは自分の命がかかっている。
繁華街を抜けると駅前の広場に出た。
僕は、すぐ脇にあった公衆トイレの個室に入ると目を閉じて地図を開く。
駅の改札に敵が一人いる。きっとプレイヤーが電車に乗りに来たところを狙うつもりだろう。
電車に乗らずに逃げ回るか、電車に乗って別の地域へ行くか……。
僕は、電車に乗ることに決めた。
近くに敵がいないことを確認して公衆トイレを出る。敵はやはり改札前に止まったままだ。
時間を止めよう。
30秒でどこまで行ける?
最低でも改札は抜けなければならない。ここから改札まではざっと200メートル。
全力で走ればなんとか行けるかもしれない。ただ、転んだり、人にぶつかったりすればゲームオーバー。
考え直した方がいいかもしれない。
また地図を開く。
かなり近くに敵の反応。少し考える時間が長かったみたいだ。
地図を見ながら思案する。この人込みの中を遠くに逃げるのは難しい。なら、いっそ……。
僕は覚悟を固めた。
時間を止める。周囲の人々がピタッと動くのをやめる。
僕は駅へ向かって走りだした。
9、8、7、6、5、4、3、2、1……。時間が何ごともなかったかのように、また動き出す。
僕はギリギリで改札を抜けた。
肺がたまらなく痛いがそれは僕がまだ生きている証拠だ。
急いで柱の影に隠れて地図を開く。敵は駅の外を向いている。僕には気付いてないようだ。
駅の中には敵はいない。僕は静かにその場を離れる。
ホームに電車がやって来る。電車の中にも敵の反応はない。
僕は電車に飛び乗った。