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昼、PCを弄ってると、
「失礼。あなた、あと2時間で死ぬんだけど…」
壁から部屋に入ってきた、ツンとした雰囲気の美少女はそう言った。
「…あ、そう。で、君は?」
瞬間的に、僕は美少女の言葉を全面的に信じた。
「ちょ、ちょっと、もう少し驚きなさいよ!」
「大丈夫、こういったイベントに遭遇した時に慌てないよう、頭の中は妄想で一杯にしてある。君みたいな子が部屋にやってきて、“あと2時間で死ぬ”なんてのは想定の範囲

内なんだ。だからこんなに落ち着いている、ところで君の名前は?」
「…はぁ、理解が早いのは非常に助かるけど……まぁいいわ。私は死神。名前なんてものは無いわ。好きに呼んで。とりあえず、あなたはあと2時間で死ぬの。何か質問は?」
「わかった、考えるから少し待って」

頭の中で彼女への質問を考える。
2時間しかない、時間は限られているのだ。

―――(以下思考)―――
この場合なぜ死ぬのかはどうでもいい。死ぬことは決定しているみたいだ。彼女の正体は何か?死神と自分で名乗っていた。壁からすり抜けてきたのも死神の性質だろう。そ

んなことがわかっても死ぬのなら何の意味も無い。だとすると問題はひとつ、“なぜ彼女は僕の前に現れたのか”のひとつだろう。それにしても彼女は可愛い。人間離れした

美しさ、だろうか。たとえるなら二次元キャラのそれに近い。服装は 全部黒色のどこかお嬢様学校の制服みたいなの+黒のミニスカート+黒のニーソ+黒髪ツインテール 

で、全身黒だが、それでいて似合っている。ゴスロリみたいな不自然さがまったく無い。常にツンとした雰囲気を漂わせている。絶対にツンデレ属性もちだろう。これで彼女

がツンデレじゃなかったらツンデレラーの僕は、腹を切ってもいい。これが漫画やゲーム、アニメでしか見たことの無いツンデレか、その存在は現存しないと…(以下脳内ツ

ンデレ講義)
―――(5分後:思考終了)―――

「とりあえず君の事は、仮にデスと呼ぼう」
「…あなたが何考えて何食べて何して生きてるのか非常に気になるわ」
僕の布団の上に腰掛けて、部屋を眺めていたデス(仮)は、完全にあきれていた。

「“僕があと2時間で死ぬ”ということは分かった。正確には受け入れた、だけれど。しかしそれならば“なぜデスが僕の前に現れたのか”、が分からない」
「へぇ、あなた意外にいい所を突いてくるのね」
どこから取り出したのか、デス(仮)は手にストップウォッチを持っていた。
「これは時間を止めることが出来るストップウォッチなの」
「…あ、そう」
「本当に理解が早くて助かるのだけれど…なんか腹立つわね」
「それじゃ、君はうそを言ってるのかな?」
「ち、ちがうわよ!私は嘘をつかない死神として、死神界じゃ結構有名なんだからね!」
「わかった、話を続けて」

こほん、と咳払いしてデスは話を続ける。「やりにくい相手だわ」なんて呟きが聞こえたが、聞こえない振りをした。

「いい?まず、このストップウォッチは、一つで30秒時間を止めることが出来るの」
「………すばらしい」
「…あのねぇ、普通の人間はここで“たった30秒かよ!”ってキレる所なの。そして私たち死神は“これを10個プレゼントする”で何とか説得するの。それをあなたは“…す

ばらしい”ですって!?ふざけるんじゃないわよ!今までの私の苦労は何だったのよ!いままで何千年も続けてこの仕事してるけどね、あんたみたいに言ってくれる人間なん

て一人もいなかったのよ!それにね!」
「わかった、とりあえず落ち着こう」
机の引き出しから甘いもの(チョコ、飴など)を取り出して彼女に与える。
「くっ…おやつで釣るんじゃない!でも折角だから貰うわ!」
怒ってるのだろうか、よくわからない。

「話を整理しよう。僕は途方も無くすごい死に方をする代償として、そのストップウォッチを10個貰える。そして君は“僕が世界に多大な影響を与えない限り、使用を許す”というんだね?」
「そうよ、ボケッとしてるように見えて、なかなか頭がいいじゃない」
のり煎餅を齧り、緑茶をすすりながらデス(仮)は、優秀な生徒を誉める先生のように言った。
「わかった、とりあえず一つ貸して貰えるかな?」
「…」
少し間があった。
「わ、わかったわよ、ほら」
ストップウォッチを受け取る。
しばらく眺めてみる。タイマー設定になっている、表示が30秒になっている、ボタンは右上に一つしかない、が主な特徴だろうか。
「ためしに使ってみていいかな?」
「い、いいわよ、あなたのなんだから、人間らしく好きに使いなさい」
ペンたてから一つ、ペンを持ち出し、落とす。ペンが床につく前に押してみる。瞬間、世界から音が消えた。

完全な静寂。
聞こえるのは自分の心音、自分の筋肉が動く音のみ。
ペンは虚空で静止している。
デス(仮)を見る。時計の針を見る。部屋を見渡す。窓を開けて外を眺める。
世界は完全に止まっている。

「…あなた、なにしてるの?」
「…すばらしい」
ストップウォッチは、最初からそこに無かったかのように消えていた。

「そのストップウォッチを使ってね、まず世界の観察をした人は稀にいたけどね…」
「うん…うん…」
「普通は2個目3個目続けて貸せって言ってきてね…」
「うん…うん…」
「わ、わたしの体を…その……………って、話聞いてる?」
「うん、すばらしい」
呼ばれた気がして、デス(仮)の方を向く。なぜか顔を赤らめている。
「え?どうかした?」
「やっぱり人の話を聞いてないじゃない!」
怒られた。
「ごめん、あんまり聞いてなかったみたいだ」
「くっ、なんなのよ、あなたは…」
「でもごめん、少し考えさせて」
「え、う、うん、わかったわ。時間はあと1時間40分あるわ」

少し考えることにする。「この人、性欲って言うものが無いのかしら…」なんて聞こえた。
今はそれどころではない。これさえ使えばなんでも出来る。
「ねぇ、ごめん、もう一つ…いや、二つ貸して貰えるかな?」
「え…ふ、ふん!どうせあなたも人間だったのね!はい!どうぞ!お好きにしてください!」
少しヒステリーに、ストップウォッチを僕に2つ投げつけて、デス(仮)は布団に倒れこんだ。
生理か。まぁいい、とにかく実験だ。
僕は一つ目のストップウォッチを押してから、すぐにもう一つのストップウォッチを押した。

時間軸のある点を30秒に大きくする。そしてもう一度、さらに延びた時間を30秒分、大きくする。
ストップウォッチを二つ同時に使い、止まった時間が60秒で終われば大したことが無かったが、時間はもう3分以上止まっている。
ストップウォッチの表示を眺める。
一つが30秒をカウントすると、もう一つのカウントがやっと1カウント減る。
つまり二つ使えば30*30=900秒の時間を止められる。ただいま210秒。
急に世界を支配したような、ドス黒い感情が胸の奥から広がる感じがした。

ベッドの上に横たわるデス(仮)が目に入る。彼女は美しい。僕は欲情している。犯したい。
デス(仮)に近づく。少しスカートをめくってみる。綺麗な絶対領域。その奥。パンツは白だ。興奮する。
デス(仮)の上に覆いかぶさる。【何かが頭の中でフラッシュバックする。】
上から顔を眺める。いい眺めだ。【何か前にこんなことが…】
存分に眺める。時間をかけて味わう。【何だ…】
唇を見つめる。可愛い唇。キスしてみたい。【あれは…】
唇を重ね【マウントを取り、上から殴るのは、さぞ気持ちよかっただろうか】



「ねぇ、どうしてキスしなかったの?」
「え」

「普通の人には教えないけどね、私は体は動かすことが出来なくても、何されたのかぐらいは、なんとな~く分かるの」
「ごめん」
「いいわ、気にしないで、ああするのが普通なんだから」
「でも」
「あのね、いいって言ってるでしょう?それにね、私を襲って途中でやめるのは、貴方が始めてよ」
「ごめん」
「だから本当にいいってば、私たちは犯されるためにいるようなものだし」
「それは…ひどすぎるんじゃないかな」
「まぁ、いいわ、あなたが謝りたいなら、私は許す。それでいい?」
「うん、わかった、ごめん」

少し間。

「で、あとストップウォッチは7個あるけど?」
「それについては考えがあるんだ。ところでデス、君は今暇かな?」
デス(仮)に 何だこの痴呆爺は みたいな顔で見られた。

「へぇ、そんな使い方があるんだ…」
「だから残りの7個を同時に使えば30の7乗秒、止められると思うんだ。」
「30の7乗秒って…え~っと…」
「関数電卓によると…21870000000秒。253125日。693年と半分ぐらいだね」
「あなた…あと一時間で死ぬのに、693年生きられるのね」
「ここで問題が2つ」
「問題?」
「1つ目は693年は人間が一人で生きるには長すぎる時間だ、ということ」
「ふ~ん?」
「つまり、時間の止まった世界でも、たとえば二人なら大丈夫な気がするんだ」
「そう」
「そして2つ目の問題、誰かと一緒に止まった時間を共有したいのだけれど、そういう機能はこれにはあるのかな?」
「それなら大丈夫。手をつなぐなり抱き合ったりして、ストップウォッチを使う人に接していれば、ね」
「よかった、それじゃあ、デス、一つ目の問題なんだけど」
「うん?」
「693年間の暇つぶしに、付き合ってくれないかな?」
「そうね、ちょうど夏休みが欲しかったところだし」

「名前はデスでいいわ、少しの間よろしくね」
デス(確定)と手をつないで、ストップウォッチを押していった。