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 昼の都心。人通りがそこそこ多い。
 「あなたの初めての仕事はあの人です」と天使は、20mほど後ろから歩いてきた神経質
そうな青年を指差す。「あと10分ぐらいで時間を止める能力に目覚める可能性が高いですね」
 「で、どうすればいいんだ?」俺は天使に尋ねる。
 「知りません、自分で考えてください。私の下僕」
 「………ラ・ヨダソウ・スティアーナ」

 あの事件の後(まとめサイト:『ループする男、天使』参照のこと)俺の時間停止能力は消え
去る…と思われたが未だ消えていない。原因は不明。おかげで悪いことし放題!…と思いきや、
この天使さんが許してくれないわけで。もっぱらこのちび天使に悪戯目的で使用している。
 時間を止めてポケットに入れてあった洗濯ばさみを取り出す。天使の服をめくって胸の先端に
洗濯ばさみをパチンパチン、と。うむ、お仕置き完了。時間が動き出す。

 「いっ!」天使が顔を真っ赤にして胸を抑え、しゃがみこむ。「な…何するんですか!」
 「うむ。一度主従関係をはっきりさせておこうと思って」
 周囲から変な目で見られるが、俺は気にしない。やたらと恥ずかしそうな天使。
 天使は洗濯ばさみを放り投げて、俺に言う。「…やはり地獄行きにして欲しいようですね」
 「ふっ…こいつを入れて欲しいようだな?」ピンクローターをチラッと天使に見せる。
 「ひっ」おびえる天使。この前入れてみたら10秒もたなかったな、こいつ。
 「分かったか。つまりお互いの力は拮抗している。対等な関係を望むぞ、俺は」
 「無理矢理私の処女、奪ったくせに」
 「ゴメンナサイ、調子コキマシタ…」その点に関しては頭が上がらん俺。
 「分かればよろしい。それじゃ、何とかしてきて下さい。そこのドトールにいますからね」
 がー、と自動ドアを開けて普通にドトールに入っていく天使。残された俺。

 「…さて、どうすりゃいいのだろか」

 神経質そうな男の後ろをついていく。同時に歩きながら考えてみる。
 能力を発動させないよう監視、または悪用させないようにするのが俺(および天使)の
仕事。具体的にはどうすればいいのか。…うむ、わからん。

 男は道を曲がっていく。俺も距離を置いて道を曲がr
 「僕の後を付けているようですが、何か用ですか?」
 「うむ、君があと2時間後に時間を止める能力に目覚めるみたいだからさ、何とかして
  止めないといけないんだ。どうすればいいと思う?」
 「へぇ、そうなんですか。ならば今のは失言じゃないでしょうか?」
 「あはは、そうだね。俺ミスったか」

 それから、事件が大量に発生。
 その後に報告されただけで軽傷5名。うち裸に剥かれた女性4名。器物損壊3件。盗難7件。
 あの神経質そうな男、やりおるな。

 神経質男とのネゴシエートに失敗した俺は、ドトールカフェに戻る。
 報告すると、「やってくれましたね、このゴミ屑野郎」とおよそ天使らしくないセリフを
紫煙とともに吐く、目の前の天使少女。
 「まぁ、しゃ~ないじゃ~ん?先輩の指導ミスってやつだ」
 「…何でそんなに事態を軽く見てるんですか?」
 「だって、どうせ時間を戻せるんだろ、あのステッキで」
 「…あのですね、相手は時間を止められるんですよ?どうやってぶっ叩くつもりですか?
  あなた顔見られちゃってるし」
 「まぁ、俺も時間を止められる。それに時間を止める能力が切れた所を叩けばいいんじゃ?」
 「能力がない人を叩いても時間は戻らないの。この意味わかります?」
 「…」事態の悪さを把握する俺。「てへ」舌を出してごまかしてみる。
 「ふー」煙を吹きかけられた。

 くたくたになって家に戻る。
 「おい天使、集めてきたぞ」俺は書類の入ったトートバッグを差し出す。
 「お腹すいたからご飯作って」煙草を咥えながらだらーっとソファーに寝転がっている天使。
 「………お疲れ様とかさ、ただいまとかさ、飯を用意しておくとかさ、ないの?」
 「全面的にあなたが悪いんじゃないですか」
 「部分的に指導ミスもあると思うな」
 「無能」
 「…」
 お仕置き決定。

 キッチンに立つ。冷蔵庫を開けてみる。鶏肉があるな、親子丼にしよう。
 10分で完成。だてに一人暮らし暦4年じゃない、飲食店でバイト経験もあるのだ。
 「親子丼ですか~」ふらふらと匂いに誘われてやってくる天使。
 「まぁまぁ、テーブルに着きたまえ」
 「は~い」さっきとは態度が全然違うな、おい。

 「いただきま~す」「いただきま――ラ・ヨダソウ・スティアーナ」
 時間を止める。と同時に天使の分の親子丼を全力で掻っ込む。ががががが。
 26秒で完食。うしっ。中身が空っぽになった丼を天使の前におく。

 「う~ん、おいしそ…ってアレ?」中身の消えた丼を前にして佇む天使。
 「うぷ」
 「………私の食べました?時間止めました?」
 「ごっそさん」
 「そっちの親子丼を要求します」
 無視。掻っ込む。ががががが。
 「ああぁ!!!」悲鳴を上げる天使。全力で食べる俺。しかしまぁ、流石に二杯はきつかった。
 「むっ、半分残ってしまった」
 「あぁ…」悲しそうな目をする天使。「ゆ、許さない!」
 「まぁまぁ、あげるから」パクパクと親子丼を口に含む俺。「ふぉい」口移し。
 「…いいから、普通によこしやがって下さい」変な敬語を使い出す天使。空腹でイラついてるな。
 「分かった分かった、ほら、あ~ん」口移しは不可っぽいので、あ~んさせてみる。
 「…だから普通に」
 「あ~ん」
 「…」
 「あ~ん」
 「…くぅっ」
 空腹に勝てなかったか、俺の差し出したはしの先の親子丼にかぶりつく天使。餌を与えている
ようだ。俺ご主人様、こいつペット。

 「美味いかね?ほらほら、あ~ん」
 「くっ!」
 勝った。俺は勝った。

 食後のコーヒーを入れて、天使と作戦会議。
 「とりあえず今日の事件はこれだけだった」時間を止めて交番でコピーしてきた書類を差し出す。
 「うん」
 「軽傷5名。うち裸に剥かれた女性4名。器物損壊3件。盗難7件」
 「うん」
 「で、これから分かる容疑者神経質男の行動範囲はこの辺り」住所で言うと南二条西一丁目あたり。
 「うん」
 「このとらのあな・アニメイト辺りを中心に活動してるね。盗難品もゲーム・アニメ関連が多かった」
 「うん」
 「…あの、話聞いてますか?」
 「聞いてますよ」天使はこちらを見る。「そして素直に感心してるんですよ、やれば出来るん
  じゃないですか。犯人像を分析してから帰ってきて下さいって言っただけなのに、よくここまで」
 「ふふん」得意になる俺。「それじゃ今夜はサービスしておくれ」
 「調子に乗らない」小突かれた。

 次の日の昼、俺はとらのあなの隣、モスバーガーで待機。
 「あれ食べてみたいです」とソレを指差す天使。
 「…バーガー1つで1000円だとぅ!馬鹿な!」匠味十段。一日限定30食。単品1000円。セットにして
1320円なり。「だめだめ、こっちのテリヤキチキンにしなさい」
 「そんな、私、昨日の夜また犯さ…」
 「すいません、匠味十段セットで2つ。オニポテとサラダで。ドリンクはジンジャーとコーヒーで」
 人がたくさん並んでいるレジでなんてことを言うんだ、この子は。

 2階の喫煙席、窓際の席へ。通りを見下ろす。
 「さて、奴が来るのを待ちましょうか」
 「昨日アレだけやったのに、今日もきますかねえ」
 「間違いなく、来る。能力もちの俺が言うんだから間違いない」
 「説得力は非常にありますけど、それ悪用したらほんとうに地獄に落としますからね」
 「ああ、今で満足してるから問題ない」
 「…?」

 約10分後、匠味十段なるバーガーが運ばれてきた。
 二人してでかいバーガーに挑む。流石1000円、というスペックだった。金に余裕があったらまた食おう。


 「さて、食ったし帰るか」
 「本来の目的忘れてませんか」
 「あ」

 食後の一服をする天使。100円ライターでセーラムライトに火をつける。
 「来ないですね~…」
 時刻はすでに午後3時半。なんかもう面倒になってきた。
 「まぁ、今回は仕方なかったってことで、諦めよう」
 「ふー」また煙を吹きかけられる。「私の査定が下がってしまうんですから、ちゃんと協力してください」
 「うむ。仕方のない奴じゃのう」
 「分かればいいのです」
 張り込みは続く。

 そして4時。でかいボストンバッグを抱えた男が通るのを目撃。
 「奴だ」俺は言う。
 「え?あんな人でしたっけ?」
 「変装しているに決まっているだろう、あのバッグの中身は宝の山だろう」
 「それじゃ、はい」ステッキを渡される。
 「おう、行ってくるぜ!」
 俺は店を出て、男を追いかける。


 「さてと…すみません、匠味十段2つ。オニポテセットとサラダセットで。
  飲み物はう~ん…オレンジジュースとアイスココアでお願いします」

 俺は羽根のついた可愛らしいステッキを手に、男を追いかける。
 距離あと10。
 「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」
 時間停止。一気に接近。ステッキを振り上げる。
 「青年、いい夢見れたか?」
 時間が動き出す。
 その無防備な頭にステッキをぶち込んだ。

 昼の都心。人通りがそこそこ多い。
 モスバーガーの袋を抱えた天使が俺に言う。
 「さて、私は思ったのですが、あなたが接触しなければ彼は能力に目覚めないと思うんですよ」
 「うむ」
 「前のループで今から10分後に何があったか、というとあなたと接触したわけですから」
 「うむ」
 「よってあなたの初仕事ですが、多分もう、終ってしまいました」
 「うむ。さようか」
 「それじゃ、帰りましょうか」
 「ところで、その袋は何かね?」
 「ああ、ちゃんとあなたの分も買ってありますから。それじゃ大通り公園で食べましょうか」
 「うむ、悪くない」

 公園のベンチに座って、俺達はまたでかいバーガーにかぶりついた。