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■以外にもまだ続いていた天使の話

 昼ご飯の後、眠気を誘う気持ちのよい日光が降り注ぐ。
 特にすることがないので、だらだらとテレビを見ていた俺と天使。
 ちなみに大学は今日もサボっている。

 「この男が今回の覚醒者だそうです」

 ふと思い出したかのように、ぺらっと一枚の写真を取り出す天使。
ワイシャツを着た若いお兄さんが写っている。
 ちなみに覚醒者とは、近々時間を止める力に目覚める予定の人のことである。
 俺と天使はその覚醒者さんが時間を止める前に阻止するのが仕事。

 「で、誰だ?」
 「さあ?この街にいるらしいのですが」

 …写真一枚でこの人を探せというのか。

 「あー、奥様ドラマ劇場の時間だ。愛人の子供をめぐる女性たち
  の口論バトルでもみて和もうぜ」
 「いや、ぜんぜん和めませんって…。まぁいいけど」

 そうして、テレビを見ながらだらだらと夜中まで過ごした。

 気がつくと晩御飯の時間。天使様曰く。
 「シーフード系のパスタが食べたいです」
 ふむ、こいつがいると献立を考える手間が省けてよいね。味噌汁に
入れる予定だったアサリを、急遽パスタにぶち込むことにする。

 オリーブオイルを敷いたフライパンを弱火で軽く熱する。潰した
にんにく投下。しばし煮る。続いて鷹の爪を投入。軽くフライパンを
あぶる。味噌汁に入る予定だったアサリを投下。火にかけながらころ
ころと炒めて、強火にして白ワインをぶち込む。蓋をして蒸す。

 「んー、にんにくのにおいがしますねー。ペペロンチーノですか?
  いいですねー」
 「…」
 シーフード系のパスタって自分で言った記憶はもう跳んでいらっしゃ
るようです。たまに頭弱いな、この子は。ちなみにペペロンチーノとは
にんにくと鷹の爪とオリーブオイルだけの超シンプルパスタである。

 パスタを3.5人前茹でる。俺2、天使1.5。さて、その間にソース
を完成させるか。
 蓋を開けるといい感じに開いたアサリたち。んー、いい香りだ。
弱火に戻してオリーブオイルをさらに加え、フライパンを揺する。
全体が白っぽくなってきたらソース完成。
 ふむ、ちょうどパスタも茹で上がった。パスタをフライパンに移し、
ソースに絡める。塩コショウで味を調える。皿を出して盛り付ける。
パセリを軽く散らす。
 ボンゴレビアンコ、爆誕。

 「へぃ、ボンゴレビアンコおまち」
 「わー」
 いただきます、とフォークとスプーンで器用にパスタを召し上がる
天使。俺はフォーク一本で食う。漢だから。
 「うーん。シェフ、おいしいですよー」
 「ふむ、今回の料理の肝はあれだ、にんにくを焦がさないことだな。
  焦がすと苦味が出てすべてパーだ。火加減に注意されたし」
 「アサリもおいしいー」
 聞いちゃいねぇ。

 で、深夜。

 「さて、宿泊費を体で払ってもらうとするか、ぐへへへへ」
 「ほんっとうに毎日ですね。たまには寝させてくれてもいいじゃない
  ですかー」
 「却下」
 天使に襲い掛かる俺。最近抵抗してくれない天使。

 「ふむ、初々しさが足らんな。これ天使や、もう少し抵抗してみぃ」
 「…馬鹿ですか、あなた?あなた、馬鹿ですか?」
 「ひ、ひどい!二度も言った!親父にも言われたことないのに!」
 「はいはい、寝転がってますから、お好きにどうぞー」

 そう言ってうつ伏せで雑誌を読み始める天使。私は雑誌読んでるから
体のほうは御自由にどうぞ、ということか。…なんだろう、この敗北感。
くそぅ、絶対声上げさせてやる!ということで天使のパジャマを剥ぐ!
パンツも取る!指を添えて始動!ふ、俺の超絶テクで悶絶するがいい!

 「へたくそ」

 チョコ玉向井先生…、EDに…、なりそうです。

 就寝の時間。
 どう見ても一人用の狭いベッドに俺と天使二人。ラブラブなんだか倦怠期
なんだか、自分でもわからん。

 「それであのー、今回の覚醒者のことですが」
 「…ああ、いかん、忘れるところだった」

 作者が無駄に日常描写を入れたもんだから、すっかり忘れてたじゃないか。
 っていうか上3レス分って必要なのか?サービスか?趣味か?

 「ふむ、手がかりはあの写真一枚だけか?」
 「うーん、上司から何か言われたような気がしたんですけど…えーと…」
 「おいこら、手がかり少ないんだから気合入れて思い出せ」
 「いえ、ちゃんと覚えてます、今のは冗談です。“苗字は宮田。リュックを
  よく背負っている。”だそうです」
 「…」

 “苗字は宮田。リュックをよく背負っている。”
 何かの暗号か、これは。

 横で天使は寝息を立てている。
 お約束どおり頬をつついてみると、やはりお約束どおり寝ていた。
 ちなみにこの行為に特に意味はない。

 写真を見る。
 どこかのビルの玄関だろうか。立派な“赤の大理石の壁”
 ワイシャツを着ている。何の変哲もない“ワイシャツ”
 そして先の、天使の上司からの謎の暗号。“苗字は宮田。リュック
をよく背負っている”

 「…ふむ、割と絞り込めたかな」
 明日どう調査するか軽く考え、天使の寝顔を観察しつつ、枕に頭を預けた。

 次の日、俺は街にある馬鹿でかい大学に来ている。
 ちなみに、俺の在籍中の大学。

 「さて、今日の調査方針を発表しよう」
 「はーい」
 「赤い建物を探せ!以上!」
 「…え、それだけですか?」

 馬鹿でかい大学とはいえ、俺の大学。大体の地理感覚はある。限られた広さ
の中、しかも外観だけである。さくさく調査がすすむ。
 そして調査は1時間で終わった。

 赤い建物は、なかった。

 「なぜだ…なぜ、ないんだ」
 「ところで、どうして大学だと思ったんですか?」
 「ああ、“ワイシャツ”を着ていることから少なくとも肉体労働じゃない。
  “リュックをよく背負っている”これは持ち歩く書類やなんかが多いっ
  てこと。“赤い大理石の壁”だから金のある企業か、立派な建物。で、
  至った答えが『大学教授』」
 「うーん…そうですかねぇ…」
 「ん?」
 「こんなお若いのに教授なんですか?」
 「ああ、大学には教授じゃなくても講師とかで……………あ」
 「?」
 「わかった、宮田のいる場所」
 「え?」

 大学を出て、俺はその建物に向かった。

 大学を出て、10分ほど歩く。

 俺としたことが“若い”というキーワードを考慮に入れていなかった。
 そう、もう一つ“ワイシャツ”、“リュック”、“赤い大理石の壁”という
条件を満たし、かつ“若い”があてはまる場所があるじゃないか!

 到着。
 俺と天使はその建物の前に建つ。
 壁は赤い大理石。
 リュックを背負った人、多数。
 ワイシャツを着た人、あまりいない。
 しかし、“ここ”以外ないのだ。

 待っていろ、宮田とやら。今行くぞ、ふははははははぁぁああ!

 「佐々木ゼミナール?」
 「そう、予備校。奴はここの講師だろう」

 宮田の場所を突き止める。
 ロビーで予備校の時間割を入手。
 宮田の名を調べる。すぐさま発見。
 顔写真まである。見比べるまでもなく一致。
 どうやら、結構売れっ子の先生らしい。

 「よし、教室前に行くぞ」
 「え?え?」
 「うむ、こっちだ」
 「え、あぁー」
 天使を引きずって宮田の講義がある教室へ向かう。

 数年ぶりに聞いたチャイムの音とともに、宮田が教室に向かってきた。
 「どうぞ」
 「ああ」
 天使からステッキを借りる。ものすごくファンシーで、俺にはとてつも
なく似合わない。今からこいつを宮田の顔面にぶち込むのだ。

 「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」
 俺の時間停止呪文を発動させる。
 さらば宮田。夢を見ることなく終わったか。
 俺は天使のステッキを振りかぶった。

 ………
 ……
 …

 …
 ……
 ………

 日付は昨日の朝まで戻っていた。

 「うーん、今日もまたボンゴレが食えるな」
 冷蔵庫の中身も戻っていた。
 「今日は和食がいいです」
 「…さいで」

 朝ごはんを食べた後、俺は大学に行く準備をしていた。
 「あれ?大学に行くんですかー?」
 「ああ、予備校に行ったときに、何故かやる気が戻ってきたんでな」
 「お昼ごはんはどうなるんでしょう」
 「一番目の心配が飯かね。まぁ安心しな。昼まで受けたら帰ってくる。
  腹をすかせて待っていろ。んじゃ、行ってくる」
 「はーい、いってらっしゃーい」

――――天使

 私は、今の生活がとても気に入っていた。
 私が何もしなくてもおいしいご飯が出てくる、仕事が片付く、服や下着が
洗濯されている。
 仕事の効率が悪くて先輩に怒られることがなくなった。今や超高速で仕事
を片付ける天使エリートに数えられるに至った。私は何もしていないのに。
 あの男にはいくら感謝してもしきれない。どんな難しい問題でもあの分析
力、行動力ですぐに解決してくれる。変態っぽいところが少し難だけど。
 「ふふん」
 気分がよかった。こんなにゆったりとした時間をすごすのはいつ振りだろ
う。今回の仕事も一日で片付いた。仕事に追われて睡眠時間を削ることもな
くなった。煙草を吸う本数も減ってきた。
 彼への感謝の気持ちをこめて、部屋の掃除でもしてあげよう。窓を開けて
掃除機をかける。ゆったりふわふわとした春の日差しが心地よい。
 ああ、私は今、かなり満足しています。

――――――――終わり