ねっとりと絡みつくように私を撫でる
母の手
家事をしていなかったから 彼女の手は 綺麗なままだった
父は 主婦業を全うしない母を 責めるような事はしなかった
その代わり 私が小学校5年生の時
つまり 家を買って一年後 家から出て行った
「新しい女の人と暮らすんですって。酷いわね、父さん。」
母は 大して傷付いていないみたいに言った
だけど私は 十分傷付いていた
ようするにこれは ドラマや漫画でよく出てくる
離婚……。
あとで知ったことなのだけれど 母と父は入籍していなかった
私は私生児で 戸籍にはただ “女”と記載されているだけ
「そんなこと 気にしたってしょうがないわ。父さんと母さんは一時期愛し合っていた それだけ。その事実が戸籍になくても、それは事実なのよ。分かるでしょう?また人を好きになってそして戸籍に残す そんなことしてたらキリないわ。」
分からないよ、母さん。
何でそんなに人を好きになるの?
一人の人を命を賭けて 生涯をかけて愛する事が 何故
母さんには出来ないの?
普通の人は 普通の母さんは ちゃんと 家事もやるし
子供に寂しい思いなんて させてない
寂しいよ 母さん
施設に入ったほうが 幸せかもしれないよ
母さん分かってよ
私と貴方は 違う人。
最終更新:2007年05月04日 11:54