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*9  幼いころから、愛しんできた故郷の町は、見るも無残に赤く染まり、町中悲鳴が響いていた。ここをこの世の地獄と呼ぶのだと、遠のきそうになる意識の中でグレーズは悟った。  隣家の窓枠から、黒焦げになった隣人の上半身が垂れ下がっていた。その横で、遺族が狂気に満ちた声で叫び続けている。村の中央部にある広場では、親の腕だけを持った子供が、訳も分からず呆然と立っていた。火は次々と村の住居を燃やしていった。  暫く茫然自失の体で立ち尽くしていたグレーズは、背後の自宅の耳を劈くような爆発音で我に返った。咄嗟に彼女は、青ざめた顔を後ろへ向けた。 ――!!!     彼女がそこで見たものは、屋根を突き破り吹き飛ばされてたった今自分が出てきた窓の下に横たわる幼い娘と、その下敷きになった夫が燃えていく様子だった。火は二人の体を巻き込んで炎を上げ、空高く上っていった。火の粉が容赦なくグレーズの体に当たり、その一つが彼女の右目を直撃した。  グレーズは、燃えるような目の痛みと、体が捩れる様な恐怖を、ほぼ時を同じくして感じ。口から悲鳴とも絶叫とも形容できる音が発せられる。 「ああ……あなた!クロエ!ああ……あ…っ…ああああああああああああ!!!!!!」  燃えゆく小さな村の悲鳴が、また一段と大きくなった。 [[小説置き場]] [[戻る>8]]
*9  幼いころから、愛しんできた故郷の町は、見るも無残に赤く染まり、町中悲鳴が響いていた。ここをこの世の地獄と呼ぶのだと、遠のきそうになる意識の中でグレーズは悟った。  隣家の窓枠から、黒焦げになった隣人の上半身が垂れ下がっていた。その横で、遺族が狂気に満ちた声で叫び続けている。村の中央部にある広場では、親の腕だけを持った子供が、訳も分からず呆然と立っていた。火は次々と村の住居を燃やしていった。  暫く茫然自失の体で立ち尽くしていたグレーズは、背後の自宅からの、耳を劈くような爆発音で我に返った。咄嗟に彼女は、青ざめた顔を後ろへ向けた。 ――!!!     彼女がそこで見たものは、屋根を突き破り吹き飛ばされて、たった今自分が出てきた窓の下に横たわる幼い娘と、その下敷きになった夫が燃えていく様子だった。火は二人の体を巻き込んで炎を上げ、空高く上っていった。火の粉が容赦なくグレーズの体に当たり、その一つが彼女の右目を直撃した。  グレーズは、燃えるような目の痛みと、体が捩れる様な恐怖を、ほぼ時を同じくして感じ、口からは悲鳴とも絶叫とも形容できる音が発せられた。 「ああ……あなた!クロエ!ああ……あ…っ…ああああああああああああ!!!!!!」  燃えゆく小さな村の悲鳴が、また一段と大きくなった。 [[小説置き場]] [[戻る>8]]

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