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アンコウの表情も硬かった。彼は恐らく女たちからの媚びる目線に離れているのだろう。冷ややかにその下品な女を一瞥し、目をそらした。
 あたしはその視線がもし自分に向けられたら、と思うと背筋も凍る思いだった。人からそんな風に卑下されるのは耐え難い。ましてやアンコウにならば。


 アンコウの身なりは確かに見苦しく、汚いかもしれない。だけれどあたしにとってはそんな事はどうでもよかった。見ず知らずの女の子に安くても精一杯の謝罪を送る、彼の誇り高き精神を尊敬せずにはいられなかったから。

 不図アンコウとあたしの目が合った。彼の形のいい唇が開く。
「えっと……。バッグ、ごめんな。それが今回の言いたかったこと。」
「そんなこと分かってるって。大丈夫、そんなに染みにはなってないから。」
 あたしの白いバッグは布製だから、本当は小さな染みが残ってはいたけれど、これ以上アンコウにすまない思いをさせたくなかった。






 だって彼は何だか、自分が此処にいることさえもすまなく感じているような、そんな目をしていたから。