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「グレーズ、朝だよ、グレーズ!!」
 とある国とある町とある宿屋。濃いブラウン色の髪をショートヘアにしている小柄な少女は、同じ部屋で眠る隻眼で長身の若い女の名を、彼女の体を揺らしつつ呼んだ。サイドテーブルに置かれている時計の針は、午前6時半を指している。
「ああ……。もう朝なのかい、レン……?」
 グレーズと呼ばれた女は、徐に体を起こし、ストレートでシルバーの髪を素早くポニーテールに結った。
 少女はため息を付きながら、悪戯に笑って言う。
「見れば分かるでしょう?外ではもう小鳥がさえずってるし、此処の口うるさいおばさんも起きて掃除してる。」
 グレーズがはは、と笑った。と同時に、この宿屋をひとりで切り盛りする婦人の声が宿屋全体に響き渡る。
「お客様方!もう朝ですだ!早く起きなさらんとお部屋に入って掃除しますだよ!」
 彼女の独特の訛りは、何処と無く潔さを感じさせる。婦人はこの土地で生まれ、そしてこの土地で死んでゆくのだろう。
「グレーズ、食堂に朝ごはん食べに行こうよ。私お腹空いちゃった。」
 既に白いブラウスに着替えたレンは、駄々をこねる幼子の様に、グレーズの寝巻きのすそを引っ張った。レンの身長は145にようやく届いた位で、とても15歳には見えない。だが時々見せる憂いの表情は、過酷な状況の中15年間を生き抜いてきた物にしか出せない表情であった。 
 裾を引っ張られたグレーズは、未だ正常には機能していない脳を奮い立たせ、仕方なくベッドから立ち上がった。彼女はこの土地の民族衣装に着替え、洗面所で顔を洗った。水飛沫が太陽の光に反射してきらきらと光った。
「っしゃ、行くか、飯に。」
 ここのおばさんの作る飯は美味しいからな、と言うグレーズを、レンは微笑みつつ見詰めた。