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3


「今日はお客さん、ほれ、手紙が一通来てますだ。」
 宿屋の店主であるマダム・セラフィーは、食堂で朝食を食べているレンの姿を確認すると、クリーム色のエプロンのポケットから白い封筒を取り出した。
「お前様のお名前はフランドル・アルエ・レンでよかったですだね?」
「ええ、そうです。どうもありがとうございます。」
 レンはスープを飲む手を止め、手紙を受け取った。ほのかにバラの香が広がった。
 受け取った手紙は少し重量感があり、中の手紙の重さを感じさせた。送り主の欄にはただ、“アナトア”と書かれている。
「レン、その手紙はゾナタス伯爵からか?」
 レンの横でパンを頬張っていたグレーズが、レンの手紙を覗き込むようにしながら尋ねた。パンくずが少し落ちた。
「うん、そうみたい。この間、この宿屋名義で手紙を送っておいたから、それの返事だと思う……。アナトアは心配性だからこまめに手紙を送らないと気になって夜も眠れなくなっちゃうからね。」
 レンはくすっと笑った。
「中には何が書いてある?やはりレンへの愛の言葉か?」
 冷やかし口調でグレーズは言う。レンは恥ずかしそうに頬を紅く染めた。
「そんなんじゃないって!きっとまた、ご飯はちゃんと食べてるかとか、ベッドのシーツは清潔か、とかそんなくだらない事だよ。肝心のトルエンに関する情報は書いてないくせに……。」
「トルエンの情報が無いのは仕方あるまい。実際に無いものは無いのだから伯爵だって書きようが無いだろう?」
「まあそれはそうだけど……。」
 そうは思ったとおりに事は進まん、というグレーズの呟きを聞きながら、レンは手紙の枚数を数えた。14枚あった。