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5


 徐々に食堂にいる人数が多くなってきた。
「ここでは騒がしくて話し合いなどできん。ましてやトルエンに関する事項は極秘中の極秘だ。そろそろ部屋へ戻った方が良いと思うが?」
 先ほどまで白く柔らかいパンがのっていた皿には、パンくずのみがあった。グレーズはその皿を持ちながら、腰を上げた。
「時間は無い。われらがこうしてゆったりと朝餉など食っている間に、トルエンがフロイアの地に帰るかも知れん。その役目はレン、お前が担うべきものだ。」
 グレーズの言葉に、レンは黙ってうなずいた。

 食堂を後にした二人は、2階にある宿泊している部屋へ戻った。立て付けの悪いドアは、開閉の動作を行うたびにぎしぎしと蝶番が危うげな音を立てた。
 二人は、各自のベッドに腰掛けた。
「早ければ明日にも出発したい。この部屋とも今日でお別れになりそうだね。」
 レンが、サイドテーブルに置かれている観葉植物の葉を弄りながら言った。グレーズは先ほどの民族衣装を脱ぎ、下に来ていた白いタンクトップの上に、紅いスーツを着込んだ。
「9年ぶりに祖国へ戻るのか?」
「うん。もう私の育った城は……無いけれど。」
 もうレンには、迎えてくれる家族もいない。彼女の思考は、悪夢の9年前へと遡っていった…………
………
……