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 どの位走ったか分からない。背後で赤く燃えてゆく城を度々振り返って見ながら、王女はひたすら走った。
 母があの炎の中で絶命したことを少女は知っていた。幼い王女にも、あの状況下の中生き残る可能性など1パーセントもない事位は悟ることができた。


 10年前のフロイア王国は、王国最大の危機に瀕していた。隣国カルティーユが徐々に力をつけ始め、フロイア王国侵略の機会を伺っていたからである。
 カルティーユ帝国はそもそもフロイア王国と同等の規模の王国であったが、土地名産の鉄を使った武器の製造で資金と軍力を蓄えていった。一方フロイア王国は、農業によってその国力を維持していたため、隣国の成長の勢いには敵わず、元々険悪だった両国の関係は更に悪化の一途を辿り、9年前の夏、カルティーユ帝国によるフロイア王国奇襲作戦が敢行された。
 カルティーユ軍は次々臨時に派遣されたフロイア軍を破り、国の中心部にある町・ブライドシティーへ進攻した。ブライドシティーには、王の住居・アモネスラ宮殿が聳え立っていた。フロイア軍の抵抗むなしく、8月19日未明、約500年にわたり富み栄えたフロイア王国は、王と王妃を巻き添えに燃え尽きたアモネスラ宮殿とともに、闇に葬り去られた。

 そのフロイア王国最後の王の娘が、フランドル・アルエ・レンという偽名で暮らす、フロイア・アルエ・ヴェルハーレンであった。