気付いたら私は 父が唯一残していった 小さな家で

母と2人 慎ましい暮らしをしていた 

それが私の望みでなくても 母の望みでなくても

そうやって生きていくしかなくて






4年生まで住んでいた場所に帰りたかった

新しい家の建つ土地は 寂しくて 私の性には合わなくて

母も勿論 嫌がっていたのに



「父さんのにおいがするの、この家。」



父の面影に囚われて動けない

私はその小さな家に 高校を卒業するまで住んでいた

途中で たった一人になってしまったけれど

その家は大好きな父と 大嫌いな母の匂いが残っていたから



















結局私は 母の子だ

本質は変わらない 変われない










そして小学校を卒業する少し前

私はある人を好きになり

想いも告げずに 卒業してしまった

それが私の初めての恋

一番愛おしい恋だったのかもしれない

























母さんも こんな初恋を経験したのかな

今となっては もう聞けないけれど

私が寿命を全うして 向こうに行けた時には

聞いてみる事にしよう

それは何時になるんだろう

明日?それとも今日?それとも50年後?








中学校に入った私は 今までどおり 普通の女の子だった

特に変わったところもない ただの 目立たない 女の子

そんな私を見て 母はいつも 哀しそうな目をした





「私があなたくらいの時は、もっと毎日輝いていたわ。青春を謳歌してたのよ。」






私が青春を謳歌していなかったわけではない

だけど青春が何なのか 分からなくて 謳歌していた気分になっていただけだったのかもしれない

















でも 誰だってそうでしょう?

意味も分からないのに 闇雲に青春を追いかける

それが無駄な事とはいえないけれど

最終更新:2007年06月23日 19:52