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 心に嵐が吹き荒れるように、美玖は自分が汚い人間になっていくのをただ傍観していた。

 あの日以来、莉奈の発する一言一言に、美玖は苛立ちを感じていた。勘のいい瑞穂はそれを敏感に感じ取っているような風は見えたものの、もとより鈍感で他人の気持ちには然程興味を示さない莉奈は、そんな美玖の内面の感情など知る由も無かった。それが尚、美玖を苛立たせるのだった。

 ――もう気にするまい、元々莉奈の性質は知り尽くしていたではないか。

 美玖は心の葛藤に苦しんだ。そして、些細なことで腹を立て、それを発散することのできない自分をなお責め、莉奈に当たる日々が続いた。そのころは中3にあがったばかりで勉強も忙しくなっており、美玖にとってはただでさえ精神的につらかった時期であった。加えて、6月に控えた試合に向けてのテニスの練習も激しさを増しており、部活動内では先輩との関係に苦しんでいた。美玖が近くにいる人に当たらずにはいられなかった理由は、数えればきりが無い。

 出口の見えない苛立ちの中、春が過ぎ去っていった。気付けば美玖は、今まで一番傍にいた瑞穂のいない生活にも、莉奈と会話をしない朝にも慣れていた。