用語集

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アノード (anode)
負極を表す.燃料電池においては,電子が飛び出す側,つまり水素側となる.

イオン伝導度 (ion conductivity)
言葉の通り,イオンの伝わりやすさ.当然高いほうが望ましい.陽イオン交換膜のイオン伝導度は,含水量によって左右される.含水量を高く保つために,ガスを加湿して外部から水分を供給する必要がある.

か行


開回路電圧 (open circuit voltage OCV)
負荷をかけていない状態(電流を流していない状態)の電池電圧.乾電池で言えば,1.5V.開回路電圧は,水素と酸素が反応して水になる際の,エンタルピー変化からエントロピー損失分を差し引いたもの(これをギプスの自由エネルギーという)を電圧に変換した値.燃料電池では,理論的には1.23V(HHV換算,20℃)であるが,実際は良くて1.02Vぐらい.また,触媒の性能が落ちてくるとOCVも下がる

改質 (reforming)
ここでは,燃料電池の燃料である水素を作り出す技術.メタノール改質,ガソリン改質,天然ガス改質などが研究されており,排出されるCOの減少,起動速度,運転温度などの課題がある.


カソード (cathode)
正極を表す.燃料電池では,電子を受け取る側,つまり酸素(空気)側である.

拡散層 (backing layer)
陽イオン交換膜とセパレータの間にある,ガスを膜上に均一に拡散させるためのもの.カーボンクロス,カーボンペーパなどが使用されている.


過電圧 (over voltage)
負荷をかけたときに電圧を下げる抵抗の総称.過電圧には,活性化過電圧,濃度過電圧,抵抗過電圧の3種類がある.過電圧を下げることが,燃料電池の性能を上げるポイントとなる.

活性化過電圧 (activation over voltage)
過電圧の1つ.水素がアノード触媒で,水素イオンとなる際にはエネルギーが必要となる(これを活性化エネルギーいう)が,このエネルギーが損失分となって,電圧を下げてしまう.活性化過電圧の増大・減少は,活性化エネルギーを下げる働きをもつ触媒の性能がカギを握る.

逆電圧 (reverse voltage)
OCVより過電圧のほうが大きくなってしまう現象.この現象が起こると,触媒層の白金がカーボンから剥離し,性能が下がる.そのため,十分に気をつける必要がある.


逆拡散 (back diffusion)
カソードからアノードへ水分が移動すること.つまり,電気浸透抗力の逆.よって,アノードからカソードへの正味の水分移動は,(電気浸透抗力による水分移動)-(逆拡散による水分移動)により決まる.

吸着 (absorption)
ガス原子が触媒にくっつくこと.これが起こることで,初めて反応が起こる.

クロスオーバー (cross over)
ガスが触媒層で反応することなく,膜を透過してしまう現象.これが起こると性能は低下する.クロスオーバーは,膜の厚さが薄いほど,また,アノード,カソードに圧力差があると起こりやすい.




陽イオン交換膜 (proton exchange membrane PEM)
固体高分子型燃料電池の心臓部である固体高分子膜を表す.言葉の通り,陽イオンを透過させる(燃料電池の場合は,水素イオン).PEFCのことをPEMFCと呼ぶこともある.現在は,スルホン酸系のものが使用されており,弱酸性である.

セパレータ (separator)
ガスを流すための流路が刻まれた導電性を持つ板.カーボン製,金属製があるが,本研究室では膜が弱酸性であるため,耐腐食性を考慮して,カーボン製のものを使用している.

触媒層 (catalyst layer)
陽イオン交換膜表面に触媒が塗布されている層.主流となっているのは,カーボン粒子に白金(Pt)を担持したもの.しかし,白金が高価であり,コスト増大の原因となっているため,白金担持量の減少,白金以外の触媒の研究,などの課題がある(と思われる).



MEA (membrane electrode assembly)
陽イオン交換膜と触媒層が一体となったもの.本研究室ではこれを使用している.

単セル (single cell)
1枚の膜を使用した燃料電池.

スタック (stack)
複数のセルを積層したもの.乾電池を直列に複数つなげたようなものと考えれば良い.実際のシステムでは100~200セルを積層したスタックを用いている.本研究室で計画している燃料電池システムでは,10セルのスタックを2つ使用することを想定している.

電流密度 (current density)
単位面積あたりに流れる電流(電流/面積).例えば,電流密度1A/cm2,反応面積100cm2のとき,実際に流れる電流は100Aとなる.


抵抗過電圧 (resistance over voltage)
過電圧の1つ.電池が持っている内部抵抗により,電圧が下がる現象.電池の内部抵抗は,電池の部材(セパレータなど)の接触抵抗が大きく影響するため,電池組み立ての際は十分注意を要する.

濃度過電圧 (concentration over voltage)
過電圧の1つ.電極における反応物質および反応生成物の補給・除去が遅く,電極反応が阻害されるため,電圧が下がる現象.




電気浸透抗力 (electro osmotic drag)
水素イオンがアノード側からカソード側に移動する力.厳密に言うと,水素イオンは膜中の水分と水和して移動するので,その水分が移動する力.


フラッディング (flooding)
膜付近での水分が過多となり,ガスの拡散を阻害することで,電池の性能を下げてしまう現象.

ドライアウト (dry out)
膜に供給される水分が不足し,イオン伝導度が下がることで,電池の性能が下がる現象.


CO被毒 (CO poisoning)
ガスの吸着には順位があり,燃料電池の燃料である水素よりも吸着しやすいものがCOつまり一酸化炭素である.このCOが水素より先に触媒に吸着し,反応をまたげる現象をCO被毒という.燃料の改質では,改質に際にCOが出てしまうが,これを少なくすることが課題の一つである.

利用率 (utilization)
反応に対して,どれだけガスが使われているかを示す割合.例えば,利用率アノード80%,カソード40%の場合,流したガスに対して,水素80%,酸素40%が反応に使われている,ということ.

直交流 (cross flow)
反応面でアノードガスとカソードガスがクロス(交差)するようにガスを流すこと.反応面内で温度差が生じやすく,温度・水分管理が難しい.

並行流 (co-flow)
アノードガスとカソードガスが並行するようにガスを流すこと.ガス流路上流側と下流側で温度差ができやすい.電池の構造上,反応面内すべての部分で並行流とするのは難しい.

対向流 (counter flow)
アノードガスとカソードガスが向かい合うようにガスを流すこと.反応面内での温度差が最もできにくく,有利であるが,並行流と同様に,すべての面内で対向流とすることは難しい.

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最終更新:2008年01月21日 12:20