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276 蛮×夏実」(2007/04/04 (水) 04:45:44) の最新版変更点

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「あっ、あっ! や、だめぇんっ、そこぉっ!」 長い黒髪を振り乱し、わずか十五歳の少女が乱れる。 壁に両腕をつけて体を支え、そこに備え付けられた大きな鏡に頬をすり合わせながら、 足は快楽に打ち震え、立つ事もままならない。 本当なら床に座り込んでしまいたくなる程に全神経を痙攣させる彼女が、 それでも何とか立ち続けているのは、彼女の後ろにいる少年のせいだった。 少年は立った状態で背後から少女の膣に挿入を繰り返していた。 「へっ、どうよ夏実……後ろからだと、余計に気持ち良いだろうが?」 「は、あぁん、きもひ良いよぉっ……蛮ひゃぁん……」 たまらず突き出された舌で鏡を汚しながら、夏実は正面に映る自分の恍惚とした表情を見つめた。 これが、私……? それが、彼女の率直な感想だった。 今までに見た事も無い程、自分以外の誰かとしか思えない表情。 淫靡で、卑猥で、みっともない。 今まで自分は、こんな顔をして彼に抱かれていたのかと思うと、情けなさすら感じる。 「や、もうらめ、も、らめぇえっ! あぁ~~っ……」 上と下の口から涎を垂らしながら、夏実は蛮の精液を胎内に受け止めて果てた。 ここは、水城家の邸宅の一室。 幼くして母親を亡くし、つい先日父親をも失った水城夏実にとって、広すぎる一人暮らしの住まいだった。 陸揚げされた魚のようにピクピクと痙攣する夏実の股間を、蛮は丁寧に拭いてやった。 そうして、両腕で抱きかかえられ、自室まで運ばれる。 夏実と蛮は、仕事の関係で知り合って以来、たまに体を重ねあう関係になっていた。 話は、数週間前に遡る。 ある晴れた日の夕暮れ。 裏新宿に居を構える喫茶店『ホンキートンク』は、 目立って繁盛こそしないものの、毎日常連がちらほらと来店していた。 マスターである王波児にとって幸いだったのは、この店に常連客が多かった事だ。 もし熱心なリピーターを獲得出来ていなければ、その日の売り上げは散々な結果になっていただろう。 何故ならば、店の顔でもある入り口のドアが、両面ともベニヤ板を打ち付けられていたからだ。 壊れた部分をありあわせの材木で補強したため、継ぎ目が丸分かりの不恰好なドアになっていた。 「……マスター、これどうしたんですか?」 その日は、朝から皆同じ質問を波児に投げかけていた。 こんな、あからさまに怪しいとしか言い様の無いドアをくぐって来てくれるのは、常連だけだ。 波児は今日何度目か知れないため息をつきながら、事情を説明した。 「お客さんの一人が、誤ってドアのガラス部分を割っちまったんですよ……」 これは、かなり言葉を選んだ回答だ。 何故ならば、ドアを破壊したのは美堂蛮だったからだ。 例えば「最近ウチに入り浸ってる若いのが、キレて壊したんです」などと答えたら、どうなるだろうか? いくら波児に親しんでいる常連客とは言え、危険人物が入り浸るようになった店には、 そう頻繁に通いたいとは思わなくなるだろう。 「キレて壊した」ではなく「誤ってガラス部分を~」と説明したのも、同様の理由だ。 あくまで客の一人が、つまづいた拍子か何かでガラスを割った事にしておきたかった。 乱暴な若者が激昂して、ドアごと破壊するつもりで蹴破ったとは、とても言えない。 波児は客にコーヒーを差し出しながら、修繕費をいつ支払ってもらえるのか、そればかり気にしていた。 ホンキートンクのドアを破壊した張本人である蛮は、 相棒の天野銀次を伴って、歌舞伎町で客引きをしていた。 「皆様のお口の恋人、心の友! 奪還屋でぇございまぁす!」 「……奪られたら奪り還せ、が信条の、GetBackersでぇ~す。  どんな些細なものでも構いません、必ず俺達が取り返してみせまぁす……」 恥を忍んで大声を張り上げる蛮とは対照的に、銀次は気なるべく通行人に聞こえないように なるべく小さな声で売り込みを続けた。 正直言って、十六歳にもなってこんな道化な真似をするのは度胸がいる。 その点、開き直る事が得意な蛮にとっては、大した苦ではないのだろう。 「くぉら銀次! お前ももっと声出せやぁっ! 何ボソボソ喋ってんだ!」 「うっさいなぁ……大体蛮ちゃんが、競馬で負けたぐらいで  波児さんの店のドアに八つ当たりしてぶっ壊したりするから、こんな事に……」 せっかく夏実からの依頼を遂行する事で得た高額の報酬は、数日で浪費された。 元々ちょっとしたブルジョア住宅に住んでいた事からわかる通り、夏実の父親の遺産は結構な額だった。 加えて、父親の生命保険が下りた事で、夏実は女子高生としてはあり得ない額の資産を手に入れた。 大学を卒業するまでに必要と思われる分の金額を差し引いても、まだ十分余裕がある。 夏実は、数千万円に及ぶその金銭的余裕の中から、百万円程GetBackersに支払った。 だが、その百万もの金額を、蛮は数日で使い切ってしまったのだ。 調子にのって豪遊したせいで、一晩で十万近くが無くなり、それが三日日程続いた。 更にはホンキートンクでも一番高いコーヒーを無駄に注文し続け、寿司まで頼んだ。 車の修理や改造にもいくらか使ったし、そこへきてトドメの、ホンキートンク入り口破壊事件である。 「金ならいくらでもあるんだ、ヨユーで払ってやらぁ!」 そう言って気前良く現金の束を波児に差し出した蛮だったが、 あまりに使い込んでしまっていたため、ドアの修繕費に十万程足りない事にまでは気付いていなかった。 結局ツケを抱え込む事になり、蛮は銀次を引き連れて歌舞伎町に向かったのだ。 「私が支払った百万円、もう使い込んじゃったんですかぁ?」 たまたま学校帰りに通りかかった夏実は、蛮に呆れて大きな声をあげてしまった。 まだ夏実とGetBackersは出会って間もないが、 どうせ金遣いが荒いのは銀次より蛮の方だろうと、夏実は確信していた。 隣にいる銀次ではなく、明らかに蛮一人に非難の目を集中させている。 「んだよ、貰った金をどう使おうが俺等の自由だろうが」 「蛮ちゃん蛮ちゃん、俺等のっていうより、蛮ちゃん一人の自由になっちゃってるよ?  だって俺、寿司以外で殆どお金使って……いだっ!」 言い終える前に、銀次の頭に鉄拳が舞い降りた。 「るっせぇんだよ銀次ぃ。酒だって飲ませてやったろうが、覚えてねぇのか?」 「あれは蛮ちゃんが無理矢理飲ませただけじゃ……あたっ!」 再び、拳が銀次の頭頂部を穿つ。 これ以上反論しても仕方ないと悟った銀次は、大人しく黙る事にした。 夏実は翻ると二人に挨拶してその場を立ち去ろうとした。 「どこ行くんだ、嬢ちゃん?」 「これからバイトですよ、バ・イ・ト!」 夏実はにっこり微笑むと、実に楽しそうな表情でホンキートンクを目指して歩いて行った。 バイトが楽しいと言い放つ学生が稀にいるが、正直蛮には理解出来なかった。 第一、しこたま金を持っている彼女が、何故バイトしたがるのかが飲み込めない。 まぁ、それ程バイトが楽しくて仕方ないのだろう。 まだミスばかりで頼りない少女のようだが、波児が甘やかしているせいで、 泣き出したくなる程の厳しさなど、まるで感じていない様子だ。 ふと、蛮は気付いた。 いとも簡単に、大金を儲ける方法があったのだと。 去り行く夏実の背中を眺めながら、蛮は頭の中でシミュレートを開始した。 その日の夜。 閉店時間を過ぎて、波児は夏実を駅まで送って行った。 本当ならバイトの人間を近くの駅まで送る事などしないのだろうが、ここは裏新宿だ。 暗い時間に女子高生を一人で出歩かせて、万一の事があってはならない。 もっともその理屈で言えば、彼は夏実を自宅まで送るべきなのだが、 さすがにそれは限度を超えている。 夏実の家は新宿駅から電車で数分のところにあり、一方の波児の家はホンキートンクの二階だ。 いちいち毎回電車に乗って夏実を家まで送って、またホンキートンクに帰って来なければならない事になる。 それは明らかに非合理的だし、第一甘やかし過ぎである。 波児としては、ホンキートンク二階の空いている部屋を夏実に貸してやっても良いのだが、 犬の世話もあるので、彼女は波児と一緒に住む気は無いようだ。 それに、保護者の許可も得ずに未成年と同居する事は、社会的に許されない。 そんな事を考えながら、波児は夏実を新宿駅まで送って行った。 「それじゃ、マスター。お休みなさい」 「あぁ、お休み。次のバイトは明後日だから、よろしくな」 波児は少しだけ手を振って、来た道を引き返して行った。 「よ、嬢ちゃん。奇遇だな?」 改札を通ろうとした夏実の肩に、突然誰かの手が置かれた。 彼女が振りかえると、そこに立っていたのは蛮その人だった。 「あっ、こんばんわ蛮さん! お一人ですか?」 夏実は、彼の相棒である筈の銀次が見当たらない事に気付いた。 「あぁ、あいつは一足先に車ん中で寝てんじゃねぇかな。よく眠る奴だからよ」 蛮は、シミュレートした通りに作戦を運ぶために、銀次は不要と思って切り捨てた。 それに蛮の計画を成功させるためには、作戦に加わる男は自分一人でなければならない。 蛮はなけなしの小銭をはたいて、自分の切符を購入した。 「散歩ついでだ、家まで送ってやるよ」 その言葉に、夏実は何の疑いも持たずに喜んだ。 十数分後。 最寄の駅で下車した二人は、夜道をとぼとぼと歩いて、水城邸へとたどり着いていた。 入り口の門を開けて、夏実は蛮を中に入るように促す。 「せっかくここまで来たんですから、上がって行って下さいよ。お茶ぐらいならありますから」 シミュレーション通りの展開だ。 わざわざ電車代を支払ってまでついてきてくれた男を、そのまま手ぶらで帰す女などいない。 まずは彼女の家に上がりこむ事が、蛮の計画の第一段階だった。 仮に彼女が蛮を家に上げるつもりが無くても、何か理由をつけて上がりこむ気ではあった。 ウィルスから解放された犬の予後が気になる、とでも言えば良い。 しかし、念の為に用意していた言い訳を使わずに済んだのは、蛮にとって幸先が良かった。 「悪いな。お言葉に甘えて……」 表面上は遠慮する素振りを匂わせながら、何一つ遠慮する事無く、 蛮は夏実の家の敷居をまたいだ。 ダイニングに通された蛮は、そこにあったテーブルに着席した。 超高級品というわけではないが、そこそこ上等なテーブルのようだ。 どうやら夏実の両親は、金持ちをひけらかす程ではないが、 それでもちゃんと質の良い物を選んで愛用するタイプの人間だったらしい。 嫌味くさい金持ちも世の中には山ほどいるが、水城家はそういう家風でないようだ。 程なくして、荷物を部屋に置いてきた夏実が、階段を降りて来た。 「お待たせしましたっ! これから、夏実ちゃん特製コーヒーを淹れて差し上げます!」 彼女はそう言うと、エプロンを取り出し、手際よくそれを身に纏った。 バイトの時と違って白いエプロンで、どちらかと言うと割烹着に近い。 「おいおい、コーヒーって……大丈夫なんだろうな?」 蛮は、夏実の淹れるコーヒーの味に不安を覚えた。 つい先頃、地獄の底の溶岩ようなコーヒーを飲まされた経験もあって、警戒心が働いてしまう。 「ご心配無く! うちには市販のドリップセットしかありませんから」 確かに、一般家庭に喫茶店並のコーヒーメーカーやポットなどが揃っているわけはない。 水城家ではひょっとすると在り得るかも、と思っていたが、 どうやら亡き両親も、自作のブレンドを嗜む趣味は無かったようだ。 夏実はポットに水を入れ、コンロにかけた。 摘みを捻り、火をつける。 ここで、蛮の作戦の第二段階。 「なぁ、嬢ちゃん……」 振り向きかけた夏実の体を、蛮は背後からおもむろに抱きしめた。 レイプと間違われて叫ばれても困るので、出来るだけ優しく肩を抱き寄せる。 元々性的な警戒心が薄いのか、貞操観念が人並みに備わっていないのか。 それとも蛮を信用しきっているのか、夏実は少し目を見開きこそすれ、拒絶の態度は示さなかった。 「やだ、蛮さん……スキンシップですかぁ?」 彼女にしては珍しい事に、少し顔を赤らめながら、夏実は蛮に問いかけた。 だが、蛮は一言も言葉を発さなかった。 ただ黙って彼女を抱きしめ続け、悪戯に時間を経過させていく。 こうして、自分には無理矢理夏実を襲おうとしう意思が無い事を印象づける。 「ねぇ、ちょっと……火、危ないですよ……」 手は塞がれていないので、湯が沸騰してもすぐに消せる。 しかし、何か理由をこじつけて、手を離して欲しいと、夏実は思っていた。 蛮にハグされる事が、嫌なわけではない。 クラスの女友達と冗談半分で抱き合ったりするくらいなら、小学生の時から慣れている。 だが、二人きりの時にいきなり、しかも年の近い男性に、 無言で抱きしめられては流石に困惑してしまう。 もっとも、そうして彼女の冷静を奪うのが、蛮の作戦でもあった。 しゅんしゅんと音を立てて蒸気を吐くポットが、静寂を貫通する。 蛮は夏実を抱きしめる片手を伸ばして、コンロの火をとめた。 もう片方の腕は相変わらず夏実を抱きしめたままだ。 そのまま、伸ばした手を下ろし、手持ち無沙汰で下がっている夏実の片手の甲に添える。 優しく柔らかく、蛮の掌が夏実の手を包んだ。 「夏実ちゃ……聞いて、くれるか?」 蛮は、敢えて夏実を下の名で呼んだ。 それまで「嬢ちゃん」としか呼んだ事が無かったのに。 作戦は功を奏したのは、夏実は彼の声に、不覚にも一瞬鼓動が高鳴った。 「俺、さ……  夏実ちゃんの事、好きなんだ……」 蛮は夏実の耳元で、小さく愛の言葉を呟いた。 衣服とエプロンを挟んで尚、夏実の内側で脈打つ心臓の音が、 蛮の腕に響いてくるようだった。 「そ、あの、そんなっ、事……急に、言われてもぉ……」 夏実は俯き、もじもじし始めた。 顔は良いが、性格が幼すぎた彼女の事だ。 男好きするタイプではあったが、不思議と今まで誰かに告白された事は無かった。 それは蛮の知るところではなかったが、どの道不都合な要素ではない。 相手の免疫が低ければ低い程、彼にとっては好都合だった。 逆・玉の輿。 大量の有価証券、もしくは日本銀行券、或いは動産・不動産を問わ ず何らかの貨幣価値を有する資産を持つ女性と婚姻関係を結ぶ事で 労せずして大金を得る、男にとっては一種の夢。 蛮の作戦は、まさにそれだった。 奪還屋としてのプライドを持つ彼にとって、奪還以外の仕事で儲けを得るのはご法度だったが、 逆玉の輿は仕事でも何でもない、ただの恋愛関係の行き着く先、対人関係の結果論だ。 逆玉の輿は本来、結婚する相手の両親との立場上、肩身の狭い思いをせねばならないのが常だ。 だが、夏実の両親は既に死亡していて、肩身も糞も無い。 夏実の顔自体は非常に可愛らしいし、一人の人間として性格は良い。 結婚して損は無い。むしろ、得な事ばかりだ。 となれば、いかにして彼女と婚姻関係を結ぶかが焦点となる。 そのために蛮は、夏実に嘘の告白を行い、手玉にとろうと考えたのだ。 女は、言い訳の生き物だと言われる。 女は、お願いされる立場でなければ素直になれないと言う。 つまり、同意の上で関係を結ぶ時でさえ、男は女に言い訳を用意させねばならないのだ。 例えば今の蛮のように、夏実を背後から抱きしめ、逃げられない状況に追い込む。 更に、夏実の方から蛮を求めるのではなく、あくまで蛮が夏実を求めるように振舞う。 こうする事で、夏実としては「だって断りようが無かったしぃ」と、後で言い訳が立つ。 と同時に、お願いされる立場だと認識される事で、ちょっとしたお姫様扱いにもなる。 蛮は夏実の頬に手を添えて、首だけ自分の方に振り向かせるようにした。 そのまま自らも顔を前に突き出すようにする事で、至近距離で夏実と見詰め合う事が出来る。 今、夏実は、息すらもかかる程の距離で、蛮の瞳を覗き込んでいた。 いっその事邪眼の見せる夢だったら、こんなに困らなくて済むのに……と思う反面、 このひと時が夢や幻であってほしくない、とも思い始めていた。 「キス……して良いか?」 蛮の問いかけに、夏実の心は震えた。 彼女のすぐ目の前で、目つきは悪いが顔立ちの整った美少年が、 儚げな瞳で見つめ返してくる。 これを断れる程、夏実は蛮を異性として見ていないわけではなかった。 一言も答えず、しかし瞼をそっと閉じる。 それを合図にするかのように、蛮は夏実の唇に自らの唇を優しく重ねた。 初めては、ちゃんとしたホテルかどこかのベッドの上で…… そう考えている女性が殆どだろう。少なくともキッチンで初体験をしたいと思う娘はいない。 当然夏実も、どうせやるのなら、出来れば自分の部屋で、と思った。 だが、蛮は遠慮なくその場で彼女の胸をまさぐった。 彼女の頭を、一瞬たりとも冷静にさせたくなかった。 冷める隙も与えず、勢いで行為に及ぶのが、彼の作戦の一環だった。 下手に考える隙を与えるのは、得策ではない。 更に、拒絶の言葉も吐けないよう、キスで念入りに唇を塞ぐ。 夏実には強く抵抗する意思は無いらしく、蛮のなすがままとなっている。 蛮はエプロンとブラウスの隙間に差し込んだ手を、尚も動かし続けた。 ブラジャーと制服に、生の感触が阻まれているのが少し惜しい。 蛮は一旦彼女から唇を離すと、エプロンの紐を解いてやった。 ぱさ、と音を立てて、白い布地が床の上に崩れる。 ブラウスの胸元は、蛮に揉みしだかれたために少し皺が出来ていた。 はしたないとは思う。 けれど、不思議と拒絶出来ない。拒絶しようとも思わない。 目の前の男に対して恋愛感情など持っていなかった筈なのに、何故か自然と受け入れられる。 夏実はそう思いながら、テーブルクロスの上に腰を下ろした。 そうしたのは、蛮が彼女を抱き上げて、そこに座らせたからだ。 だが、下りようという気にはならなかった。抵抗も感じなかった。 かつて父と囲んだこの食卓の上で乱れる事になろうとも、一片の罪悪感すら覚えそうに無い。 やはり自分には貞操観念が薄いのだろうなと、夏実は思った。 でなければ、まだ脱いでもいないスカートの中に蛮の首を迎え入れる事など、出来ようも無い。 「ふっ……く……」 溜息とも吐息ともつかない呼吸が漏れそうになるのを、懸命に堪える。 だが、スカートの中の蛮の責めは、おさまる気配を見せない。 パンティ越しに、温く湿った舌が大事な部分に触れ、頭がおかしくなりそうになる。 生温かい感触は、処女の夏実にはとても気持ち良いとは思えない。 だが、何故か声が漏れそうになる。苦痛や吐き気などとは違う、今まで感じた事も無い感覚。 あるいは、これを「感じている」と世間では言うのだろうかと、自問する。 蛮はスカートの中から顔を出すと、不敵に笑った。 「思ったより順応が早ぇな」 夏実の股間は、夏実が思っている以上に濡れてきているようだった。 蛮は夏実の胸元に両手を持っていき、ブラウスのボタンを外し始めた。 既に下の方を責められているのに、これでは順序が逆ではないかと夏実は思う。 だが、今になって気付くまで、まるでその事を気にとめなかった自分の思考を疑わしくも思う。 やはり、今日は何かがおかしい。 蛮に告白されてから、調子が狂ってしまっている。 蛮自身は、そこまで計算して作戦を実行しているわけではなかったが、都合は悪くなかった。 むしろ、彼女の冷静な思考回路が停止してくれれば停止してくれるだけ、自分は楽になる。 その分心理誘導をしなくて済むのだから。 ……などと二人の考えが交錯している内に、夏実の胸からは いつの間にかブラジャーも外され、取り払われていた。 むき出しになった控えめな乳房と、その先端には可愛らしい乳首。 蛮はゆっくりと口を近づけ、それからおもむろにその乳首に吸い付いた。 乳房の小さい女性は、乳首も標準よりやや小さい場合が多い。 それ故、蛮自身が楽しむには少し物足りないと感じたが、 それでも相手を満足させるだけなら、乳首の大きさなど然程関係は無い。 蛮は丁寧に、かつ荒々しく、ペロペロと彼女の乳首を苛めたおした。 やがてそれは硬くしこり始め、数分後には痛い程にカチカチに張り詰めていた。 「ま、こんなもんかな……」 蛮は小さく呟くと、もう片方の乳首も責め始めた。 こちらも感度は申し分無いようで、やはり程なくして、もう片方の乳首のように硬く仕上がった。 「そいじゃ、下の方も仕上げにかかるか」 蛮は夏実をゆっくりとテーブルの上に倒し、仰向けに寝かせた。 スカートを捲り、うっすらと染みたパンティを表に出す。 指をかけ、シールを剥がすように繊細に、太股に下ろしていく。 やがて、産毛も生え揃わない未成熟なヴァギナがあらわになった。 「やだ……あんまりジロジロ見たら駄目ですぅ……」 神に祈るように胸の前で腕を組む夏実が、涙目になって懇願する。 だが、今の蛮にとっては、もっと自分の恥ずかしいところを見て欲しいという哀願にしか思えない。 事実、夏実は見られたくないと思う反面、見られたいとも思っていた。 自己矛盾だが、恥じらいとはそういうものだ。 蛮はスカートのチャックを下ろして、そのままあっさりと脱がせてやった。 これで夏実は靴下と、足首にひっかかったパンティ以外は、何も纏っていない状態になった。 その状態でまんぐり返しの体勢にしてやり、股間が夏実自身に見えるようにする。 「やっ、ちょっ……!」 焦る夏実を無視して、蛮はそのまま夏実の膣を舐め始めた。 「ぴちゅ……じゅるっ……ぬちゅ……」 「やっ、やぁんっ! やだ、そんなのぉ……や、ふぅっ!」 男の舌に舐め回される自分の膣と、逆さに流れる愛液が、夏実の視点からはよく見えた。 舌がクリトリスに触れると、ショックで体が弓のように反り、つま先がピンと張った。 「ひぅっう! なにっ、やだ、これぇ……っ」 未知の快感が、夏実の全身を駆け巡った。 責められているのは股間だけの筈なのに、今や指先まで打ち震えている。 蛮は口を離すと、代わりに指を膣の中に挿入しだした。 異物が入ってくる感覚が、真新しい刺激となって彼女の思考を揺らす。 たったの一本の指が出し入れされる度に、脳天に小刻みに電撃が奔る。 電気椅子に座らされた囚人のように悶絶の表情を浮かべ、舌を突き出し、唾液を垂れ流す。 「上からも下からも涎がこぼれてきてんぜ?」 そんな蛮の言葉責めも、耳に入らない。 頭の中から理性が消し飛び、今や目の前の男の子を為したいという本能だけが働いていた。 これ以上やっては、本番前に夏実が絶頂に達してしまいそうだ。 そう思った蛮は、一旦クンニを中止し、夏実の越しをテーブルの上に下ろしてやった。 「はぁ……はぁ……」 断続的に吐息を漏らす夏実の呼吸が落ち着くのを待つ。 やがて息が整ってきたのを見ると、蛮は再び彼女の膣に狙いを定めた。 ただし、今度は舌ではない。 そそり立つ自らの男根をしっかりと手で固定し、その先端を目標に接触させる。 「入れんぜ、夏実ちゃん……」 「ふ、ふぁい……」 寝惚けたような虚ろな声で答える夏実の膣に、蛮の男根の先端が突き刺さった。 「い、ぐっ……ひぃ……」 ギチギチと音が響きそうな痛みに耐えながら、夏実は蛮を受け入れた。 幸い、思ったより抵抗も少なく済んだ。 処女ではあったが、一分程で挿入は完了した。出血も痛みも、大した事は無さそうだ。 「動くぜ……?」 「……うん」 覚悟を決めた夏実は、蛮の最後の問いに、ほぼ即答に近いタイミングで答えた。 本当ならここで、最低でも十秒。下手をすると数分は返答待ちになると、蛮は思っていたのだ。 しかし、せっかく容易く受け入れてくれるのだから、逃す手は無い。 蛮はゆっくりとピストン運動を開始した。 「ひゃあん! あん、やんっ! お、あ……そこ、そこぉおっ……!」 数分後、夏実の声は処女とは思えない程快楽に溺れていた。 ぱん、ぱん、ぱん……とスローペースで鳴っていた肉の音は、 今やパンパンパン、と一切の隙間無く部屋に響いていた。 そこそこ広い邸宅なので、近所にまで声が聞こえるという心配はほぼ無かった。 だが、夜なので声は響く。 「声抑えろよ……ご近所様に筒抜けだぜ?」 「あんっ、あんっ! やんっ、や、あ、あっ、あはっ、あぁ感じるぅっ、  あぁ、あっ、感じるよぉっ! あふんっ、んあぁあっ、気持ち良っ、ぃあぁっ!」 蛮の忠告も聞こえないのか、夏実は一心不乱に乱れまくった。 頭を左右に振り、時には仰け反る様に首をピンと張りながら、涙と涎を周囲に撒き散らす。 蛮が前傾姿勢になって唇を重ねてやると、頼んでもいないのに自分から舌を絡ませてくる。 両足を蛮の腰のあたりで絡ませ、相手のオスを離すまいとする。 両腕も彼の首の後ろを通って交差しており、蛮の首を拘束する。 ともすれば、自分の方が食われているのではないかと、蛮は錯覚しそうになった。 「くぅ……っそろそろ出るぜ! 夏実ちゃん!」 「あぁっ、うんっ、きて、きてぇっ! あぁぁあああぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁあぁぁ……」 夏実の足でがっちりと固定された蛮の下半身から、熱い汁が注ぎ込まれた。 ビクビクと痙攣する彼女の腹の中に、それは一滴残さず飲み込まれていった。 蛮と夏実は、それ以来恋人同士として接していた。 付き合っている事は周囲に内緒にしていたが、波児も銀次も薄々感づいているように思えた。 初めての夜を、思った以上に気持ち良く済ませる事の出来た夏実は、 そんな快感を与えてくれた蛮に、心底惚れ込んだようだった。 二人は、毎日のようにホンキートンクで顔を合わせ、時にはデートを楽しんだりもしながら、 夏実がホンキートンクの二階にに泊まって行かない日には、水城邸で交わったりもした。 まだ回数は多くないが、充実したセックスライフを満喫している。 どうやら、図らずも体の相性は良かったようだ。 夏実は蛮の子を産む事に何の抵抗も感じていない様子で、年齢の問題もそっちのけで 毎回ゴム無しを許容してくれている。 いい加減蛮の方が自制しないと、本当に妊娠させてしまいそうだ。 ともあれ、出来ちゃった結婚も悪くない。 要は、最終的に彼女の財産を利用出来るようになれば良いのだから。 だが、誤算が二つあった。 一つは、純粋に蛮を愛する夏実に対して、蛮が罪悪感を覚え始めた事。 それまで裏の世界で、どんな汚い事もやってきた自分が、まさか今更 道徳的な観念に支配されるとは思っていなかった。 ひょっとすると近い内に、お互いの気持ちがすれ違って、自然消滅するかもしれない。 そして、もう一つの誤算。それは…… 「え? ホンキートンクのドアの修理代ですか?  そんなの自分で働いて稼いで、自分でお支払いしたら良いんじゃないですかぁ?」 意外と、夏実が金に関してしっかり者だったと言う事だ。 「ちょ、おま……肩代わりしてくんねぇのかよ!?」 「だってそんな相談受けた覚えありませんしぃ。  仮にあったとしても、そんな事のためにお金払ってあげる気無いですよ?  ラッキーを奪還してもらった時とはワケが違いますからっ」 蛮の顔は、途端に青ざめた。 結局彼は、必死で働いて自力で借金を返す羽目になった。

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