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  • 1-

男性が思う以上に、女性は自分の身長を気にする。
何も180cmは欲しい、などとは思わないだろうが、ある程度背は高い方が、スタイルは映える。
スラリと伸びた長い脚に、くびれたウェスト。そして、全身のバランスを崩さない程度に豊かな乳房。
そしてモデルのような整った顔立ち。これらは全て、多くの女性にっとって一生の憧れである。
女性は特に乳房に最もコンプレックスを抱きやすく、どんな女性でも大抵、
自分の胸に10個ほどの悩みを抱えているものだ。男性には信じがたいが。

水城夏実は悩んでいた。
もっとも、傍目には彼女は悩みなど抱えていないように見えるのだが、
成長期の女子高生で悩みを抱えない者など、まずいない。
夏実はパジャマ姿で部屋の姿見の前に立つと、自分の身長と胸を交互に見比べた。
身長153cm。体重は45kg。スリーサイズは上から72、55、76。
身長から110をひいた数字が理想的な体重と言われるから、この点彼女は申し分無い。
問題は、そもそもの身長の低さと、胸の小ささである。
女性の平均身長は158.4cmと言われるから、夏実はこれより約5cm低い事になる。
バストもせめて75cm、欲を言えば80cmは欲しいところだ。
スタイルが良いとはお世辞にも言えない。まぁ、肥満でない事は救いだったが。

ふと、階段の方から足音が上ってきた。
「あれ、先輩。そんな一所懸命鏡なんか見て、どうしたんですか?」
ドアの向こうから現れたのは、風呂上りの仙堂レナだった。
艶を帯びたその髪は、中学生とは思えない色っぽさを纏っていた。
身長154cm、体重47kg。スリーサイズは81、54、80。
身長は夏実より1cm高いし、バストとヒップも夏実以上。そしてウェストは夏実より細い。
体重は夏実より2kg程重いが、そもそも身長(と乳と尻)が夏実より大きいのだから、当然である。
スタイルの良さを構成する要素の全てが、中学生にも劣るという事を、夏実は密かにコンプレックスとしていた。
「良いなーレナちゃん。中学生なのにスタイル良くって」
夏実はレナではなく、レナの胸に話しかけていた。
「何言ってるんですか、先輩だって……えーと……」
スタイルを褒められて気分の良いレナは、例え世辞でも、先輩を立てようと思った。
しかし外見上の事に関して、夏実がレナに賞賛されるような要素は、客観的に見てもゼロだった。
どこを褒めて良いかわからず言葉に詰まった後輩を見て、夏実は溜息を漏らした。
「そう言えばさぁ……胸って、揉むと大きくなるって言うよねぇ」
灯りを消した部屋のベッドの中で、夏実はレナに小さな声で話しかけた。
「い……いきなり何を言い出すんですか、先輩」
消灯してから15分程。
夏実としては半分独り言のつもりだったのだが、まさかレナがまだ起きていて、返事をしてくるとは思っていなかった。
両親を亡くしていた夏実は、二日続けてバイトのある日は実家に帰らず、ホンキートンクの二階で寝泊りしていた。
実家よりホンキートンクの方が学校に近い事も、理由の一つだった。
最初の頃は必要最低限の生活用具を鞄につめてお泊りしていたのだが、慣れてくると
マスターである波児の許可を得て、自分用のパジャマや歯ブラシなどを、常から部屋に置きっぱなしにしていた。
更に最近では、家に帰れないレナが、毎日同じ部屋で寝泊りするようになったので、部屋の中の荷物は増えていた。
レナの母親は我が子に、極端なまでに関心を払わないタイプだった。
家には殆ど帰って来なかったが、とりあえず娘は学校にはちゃんと通っているようで、
担任から何か言われる事も無かったから、放ったらかしにしていたのだ。
元々娘が三者面談の通知のプリントなどを渡しても「忙しいから」と言い張って、無視するタイプの母親だった。
勿論学校側はそれでは困るのだが、レナの担任自体が既に人格者ではない。
担任は、上に嘘をついて、書類も改竄して、レナの保護者とは面談を済ませたと偽っていたのだ。

夏実は「レナちゃんも、揉まれたから胸大きくなったの?」と聞きかけたが、その言葉を飲み込んだ。
レナが義父にレイプされた事は、本人から打ち明けられた事があるので、知っていた。
まだトラウマの癒えていない、何かあるとすぐ自殺を図るような彼女に対して
自分はあまりにモラルに欠けた発言をしてしまうところだった。
しばらく、部屋の中は沈黙が続いた。夏実は戸惑った。
胸の話題を切り出したのは自分の方なのに、それに続く言葉を発する事が出来ない。
どう言っても、レナのトラウマを抉ってしまいそうになる。
先に言葉を繋いだのは、レナの方だった。
「先輩……胸、大きくなりたいんですか?」
これには少々驚いた。普通の女の子の会話としては特別変わったものではないのだが、
レナ自身の口からこのような性的なニュアンスを含む言葉を聞くと、どうしても焦ってしまう。
「う、うん……そりゃ、誰だってスタイルは良くなりたいでしょ?」
だが、夏実のその問い返しに、レナは答えなかった。
再び、不気味な程部屋が静まり返った。
しばらくすると、夏実は隣で眠るレナの布団が、のそのそと動く気配を感じた。
不審に思って体を起こすと、布団から這い出て自分の方に寄ってくるレナの姿を、暗闇に確認出来た。
「レナちゃん……? 眠れないの?」
だが、レナはやはり答えなかった。黙ったまま静かに手をのばし、夏実の頬に触れてきた。
そして、おもむろに夏実の唇を奪う。
「……!」
驚いた夏実は思わずレナを突き飛ばそうとするが、力の入る体勢でなかったために、レナを押し返せなかった。
むしろ、最初から夏実を押し倒すつもりで気構えていたレナの手で、あっさりと布団の上に寝かされた。
仰向けになった夏実の上から、レナの暗い目が見下ろしてくる。
見下ろすと言っても、まだキスは続いているので、二人の目の距離は実に近かった。
本当ならキスというものは目を瞑ってするものなのだが、
いきなり女の子にキスされて、大人しく目を瞑る女の子もいない。
夏実はレナの目に気圧され、抵抗する気さえ起こさず、ただただ唇を吸われていた。
やっとの事でレナが唇を離し体を起こすと、夏実は彼女に問いかけた。
「い……いきなり何するのよ、レナちゃん……こういうの、困るよ……」
「だって、先輩が、胸揉んでほしそうだったから……」
「いや、確かに胸大きくなりたいけど……」
ゴニョゴニョと口ごもる夏実に、レナはそのまま畳み掛けた。
「胸を大きくしたいのなら、マッサージが効果的ですよ。
 私だって、いろんな人に揉まれてきたから、ここまで大きくなったんですから……」
爆弾発言だった。
夏実は言葉を失った。レナは、自分の男性経験の遍歴を、とうとうと語り始めた。
「最初は、お母さんの再婚相手……それから、当時の担任の先生。もっとも、この二人は既に殺しましたけど。
 それでも、殺すまでの間は地獄でしたよ。毎日家では義父に犯されて、学校では放課後、担任に犯されて……。
 いつ妊娠してしまうか、ヒヤヒヤしてました。
 それでも当時は、最初の一回目以外は、抵抗しなかったんですよ。抵抗するのが、何だか空しく思えたから。
 次に、サリエル……いえ、今はカケル君ね。彼とは、きちんと同意の上でしました。
 別に彼の事は好きじゃなかったけど、お互いに寂しさを補い合うような関係でしたね。
 彼も私も、愛情に飢えてたから……」
語りつつ、レナは夏実の胸に両手をあててきた。
「んっ……な、何するの、レナちゃん!」
慌てて暴れようとするが、仰向けのままではろくな抵抗は出来ない。
レナは構わず、夏実の胸を揉みしだいた。
「そう言えば……私まだ、女の子とヤった事、無いんですよね……」
  • 2-

仙堂レナの育った環境は相当劣悪だった。
快楽殺人者の多くは、幼少の頃に自分の親のセックスを目撃していると言われる。
レナの母親は淫売で、しょっちゅう違う男を部屋に連れ込んでは、昼間から情事にあけくれていた。
レナが小学校から帰ると、アパートの鍵は閉まっていて、中に入れないという事は日常茶飯事だった。
中からは、雌の本能をむき出しにした母親の喘ぎ声が聞こえた。
たまたま通りがかった近所の主婦は、同情と蔑みの入り混じった目をレナに向けてきた。
仕方が無いので、レナはランドセルを背負ったまま公園に行き、一人でブランコに座って時間を潰した。
右隣の部屋に住む独身の若い女性は、壁越しにレナの母親の喘ぎ声を聞かされていたために、ノイローゼになった。
レナがたまに会うと、女性はレナの頬をひっぱたき、完膚なきまでに当り散らした。
頬がこけ、顔の青ざめたその女性の顔を見ると、レナは申し訳なくなり、反論も出来なかった。
左隣の部屋に住む若い営業マン風の爽やかな男性は、レナの母親の『客』の一人となった。
母親の喘ぎ声を毎日聞かされていたせいで、性欲が抑えきれなくなったようだった。
平日は会社に出勤しているようだったが、土日はレナの家にあがりこみ、レナの母親と交わった。
男性は、本当はレナをも犯したかった。男性は元々ロリコンというわけでもなかったが、
小学生にしては発育の良いレナを見ていると、禁断の世界に足を踏み入れてみるのも悪くない、
などと考えるようになっていったのだ。
しかし母親が、「娘がいると興が殺がれる」といって、レナを部屋から追い出していた。
母親は別にレナを気遣ったわけではなく、ただ単に、本当に邪魔だったから追い出していただけに過ぎない。
しかしこの事は不幸中の幸いと言えた。
母親が追い出してくれていなければ、レナは小学生の内からレイプされる羽目になっていたのだ。
このような環境で育ったのでは、レナがルシファーの元で、
一時にしろ快楽殺人者になりかけたのも、納得がいくというものだ。

父親は、既に他界している。少なくとも、母はそう言っている。
本当はただ離婚しただけかもしれないのだが、幼かった頃のレナにはよくわからなかった。
今にして思えば、よくまぁ父はこんな女と結婚したものだ。
母の新しい男は、金回りが良かった。彼にも離婚歴があったが、母はそんな事は気にしなかった。
彼に対する愛情からではなく、単に金銭的・財産的な観点でしか男を見ていなかったのである。
新しい父親は良い家に住んでおり、レナは母親と一緒にその家に移り住む事になった。
ノイローゼ気味だった隣人に叩かれる事も、理性のいかれた隣人に厭らしい目で見られる事も無くなった。
しかし、新しい父親は、それ以上にひどかった。
彼は、自分の新しい女房が家をあけている隙に、まだ処女だったレナを押し倒し、犯し、ボロボロにした。
「お前の母親は、俺と結婚してからも、他の男と遊び歩いている。
 お前の母親の不貞が許されるんだったら、俺も許されて良い筈だ」
それが男の言い分だった。
実際、その時母親が外出していたのは、以前のアパートでつかんだ顧客と、セックスする為に他ならなかった。
その時レナは中学一年生だったが、今程でないにしろ、スタイルは既に良かった。
それがアダとなって、男を欲情させてしまったのだ。
レナは、帰ってきた母親の前で泣き崩れたが、母親は相手にしてくれなかった。
出かける前には所持していなかった筈の高級そうなアクセサリーから、母親が『客』からまた小遣いを稼いだのだと知れた。
そんな母親が、レナの涙を見て動揺する筈も無かった。
母親がレナを育てていた理由は、自分が稼げなくなった後に、
レナを商売道具にして小遣い稼ぎを続けようという魂胆でしかなかった。
担任は何らかの理由でレナの心が壊れた事には感づいたが、だからと言ってレナに親切にしようとはしなかった。
表面上は優しく接するふりをして、それを口実に、担任までレナを犯してきたのだ。
放課後の教室、成績は悪くないのに何故か居残りをさせられていたレナは、
目の前の担任の目つきが突然変わった事に、本能的に恐怖した。
既に義父にレイプされて男性恐怖症になっていたレナが、担任とは言え男性と二人きりで
放課後の教室に居残りをするのは、極めて恐ろしかった。
それでも居残りを甘んじて受けたのは、もし仮にここで担任に犯されるなら、それも悪くないと思ったからだ。
手首を机の上に押えつけられ、制服のまま臍を舐められたが、レナはあまり激しくは抵抗しなかった。
当時、それほどまでにレナの心は壊れていた。
『初めて』を特別なものにしたくなかった。彼女の『初めて』は、義父からのレイプだったからだ。
セックスとは、大好きな男性とだけするもの、という観念を捨て去りたかった。
ヴァージンとは、一生に一人しか体を許さない男性に捧げるもの、という美徳を忘れ去りたかった。
彼女は、大声で助けを求められないようにボールギグをかまされた。寒気がするほど用意の良い教師だった。
もっとも、彼女に大声を出す気はさらさら無かったのだが。
口に咥えさせられたものの穴から涎がこぼれ、レナの顎をテラテラと濡らした。
まだ慣れていなかったレナの秘所は、快感を得る事もなく、濡れる事も無かった。
担任は苛立ち、もはやなりふり構わず、濡れてもいないのに挿入してきた。
パン、パン、パンと、耳障りな音が教室に響いた。
この音を聞くと、レナは自分が『物』になったような気がした。
少なくとも義父は、自分を穴だとしか思っていない。この担任も同様だ。音は、それを強く思い起こさせた。
さすがに妊娠されては困るのだろう、最後に担任は、レナの腹の上に精液を迸らせた。
「血は出なかったな……何も知らないような顔して、本当はいやらしい子なんだねぇ、レナちゃん」
レナがレイプによって膜を破られた事を知らない担任は、下卑た目線をレナに向けた。

それから神の記述と出会うまでの期間、彼女は毎日犯され続けた。
ファーストキスもまだだったのに、義父には舌を入れられ、担任にはペニスまで捻じ込まれた。
二人を殺したくてたまらなかったが、彼女にそんな力は無かった。
結局膣の中はおろか、乳首の先端から足の爪先に至るまで、全てを汚された。
軽蔑していた母と同じような体になってしまった事に、自嘲した。
ルシファーに選ばれたのは、その頃だった。
後になって彼女は、何故もう少し早く自分の記述の力を与えてくれなかったのか、とルシファーに詰め寄るが
記述の力によって義父と担任を二人を軽く殺害出来たおかげで、ルシファーへの不信感は忘れ去った。
アバリアリティの世界で肉体を押しつぶされた二人は、現実の世界では脳溢血で倒れていた。
それから彼女は家に帰らなくなり、ルシファーの教会で過ごすようになった。
愛情に飢えていたサリエルとは、気があった。
それは、恋愛感情などではなかった。ただの、自分を棚にあげた同情。
今までひどい目にあってきたけれど、まだこの相手よりは、自分の境遇の方がマシだという、歪んだ優越感。
と同時に、やはりどう考えても、まだ自分の方が相手よりひどい目にあってきたという、捻じ曲がった劣等感。
お互いに相手を見下していた。
表立って不幸自慢するわけではなかったが、内心では「大した不幸を背負ってないくせに」と、相手を見下していた。
しかし、それでも二人はお互いを求めた。寂しさを埋めるのに、都合が良かったのだ。
記述の世界での情事は、二人にたまらない快感をもたらした。
こんな事に記述の力を使うのはいけない事だとわかっていたが、ルシファーは黙認してくれた。
アバリアリティの世界では、リアルをはるかに超える快感を得られた。
それに、頭ごなしに「妊娠しない」と思っていれば、例え危険日に中出しされても、子を孕む事は無かった。
母乳が出ると思い込めば母乳が出せたし、サリエルの精液の量もリアルを遥かに超えていた。
何度ヤっても萎える事は無かったし、飽きるまでセックスを続けられた。
思った事が現実になる、便利な世界だった。
もっとも、リアルの世界に戻った時に、サリエルの精液がまだ彼女の膣の中に残っていては
さすがに受精してしまうだろうという事で、ちゃんとアバリアリティの中にいる内に、精液は全て掻きだしていたが。

その日、何十回と交わって、その都度白濁の液体を浴びたレナは、体中を覆うその液体を
適当な家の庭の水道を拝借して、洗い流した。
アバリアリティの世界なので、どこもかしこも無人だった。
サリエルは既に服を着て、彼女の帰り支度が整うのを待っていた。
「そう言えば……私まだ、女の子とヤった事、無いなぁ……」
彼女の呟きがよく聞き取れなかったサリエルは「何?」と聞いたが、彼女は答えなかった。
  • 3-

レイプされた経験のある女性というものは、どこかが壊れているという。
それまでは平凡な女性だったのに、レイプされた事により、精神がマトモではなくなるのだそうだ。
そういった女性達は、普段はトラウマも癒えて、平気そうな顔で日常を過ごしていても
ふとした瞬間に、周囲の人間に「あぁ、この人は壊れている……」と思わせるような言動をとるそうだ。
恐らく本人には、然程の自覚は無いのだろう。無自覚なままに、他者に寒気を与える。
レナも、そういった類の女性の一人だった。

「やだ……駄目だよ、レナちゃんっ……」
夏実の口を塞ぐように、レナは再び唇を重ねた。
息をする事すらままならない夏実の頬に、温かい液体がこぼれた。
それは、レナの涙だった。
夏実から唇を離したレナは、頬を伝う涙を拭いもせずに、ただただ暗い目で、夏実を見下ろした。
それから自分の左手首に視線をうつし、そこに刻み込まれた幾筋もの傷跡を眺めた。
それは、かつて自らを傷つけた時の名残だった。
死ぬ気は無かった。
彼女は、自分が死ぬぐらいなら、むしろ自分を苦しめる相手を殺した方が建設的だと考えていた。
それでも、サリエルに埋めてもらうまで、途方も無い寂しさを常に抱えて生きていた。
誰も自分を支えてくれないのなら、自分で自分を支えるしかない。
彼女が選んだ手段は、リストカットだった。
傷跡を見ると、とりあえず生きて生活している事が自覚出来た。それを、安心感と錯覚出来た。
傷跡をつける事で、他者を見下せた。苦しい思いをせずに生きられる周りの人間達を、蔑む事が出来た。
あなた達は、自傷なんてしなくても良いような、気楽な人生で良いわねぇ。
私はね、可哀想な子なのよ。大切な体を、ゴミにされちゃったんだから。
今この中に、私より辛い人生を送っていると言える人、何人いるかしら?
大人が抱えているものは子供よりはるかに重いと、私にそう言える大人が何人いるかしら?
そんな事を考えながら、彼女は街を歩いた。
手首の傷は、その頃の彼女の、誤った安堵感の記憶をとどめていた。

「先輩……」
レナは夏実を見下ろしたまま、言葉を紡いだ。
「先輩は、死のうと思った事って、ありますか?」
夏実は、わけがわからないといった表情で、暗闇の向こうにいる筈の、後輩の顔を見上げた。
ポタポタと、後輩の涙が夏実の頬に落ちてくる。
「私はね……ありますよ。……当時は、本当に死にたいと、思ってた。
 でもね……今なら、それは錯覚だったと、思えるんです」
夏実はゆっくりと体を起こして、レナの言葉に聞き入った。
「人間って、本当に辛くなったら、生きるか死ぬかしか、考えないですよね。
 自傷なんて中途半端な事をするのは、死ぬ気なんか全然無いのに、辛いフリをしたいだけの証拠。
 ほら私は死ぬ程辛いんだよって、自分に言い聞かせるだけのもの。
 だって、本当に死ぬ程辛かったら、死ぬ筈ですものね」
実に極端な考えだ。
世の中には、本当に死にたくても、何らかの理由があって死ねない人間は、大勢いる。
自分一人が楽になる事と、自分が死んで周囲の人間に迷惑がかかる事を天秤にかけて
他者のために自らの命を、嫌々永らえる者もいるのだ。もっとも、そういった人間は、心が強いから自傷もしないのだが。
兎も角そういった諸々の事が、まだ所詮中学生であるレナにはわからなかった。
彼女が死んでも彼女の家族は全く悲しまないであろう事も、彼女の偏った考えに拍車をかけていた。
自殺を図る者の大半は、普通、死んで親や家族を悲しませる事が嫌だから、思いとどまるのである。

レナは、常日頃から、暗い表情を出さないように心がけていた。
ルシファーの配下だった頃はそうでもなかったが、ホンキートンクに来てからは
周囲に気を配って、なるべく陰鬱な空気を醸し出さないように努めていた。
それは、彼女が人間を好きになっていた証拠だった。
しかし、無理はするものではない。彼女は誰の前でも泣かない事で、逆に涙を溜め込んでしまっていた。
天然である夏実でも、その事には気付いていた。
レナ本人が席を外している時は、もっぱら波児と二人で、彼女の精神バランスの危うさを心配していた。
波児は、幼い者の泣き場所になってやる事も、大人の男の務めだと思っていた。
しかしレナが心を病んだ原因は、その『大人の男』なのである。
トラウマが癒える前から、迂闊に胸板を貸すわけにもいかなかった。
それをわかっていた夏実は、レナの泣き場所になるのは、自分の役目だと常から思っていた。
夏実は暗闇の中、手探りでレナの体に触れると、そのまま優しく抱きしめた。
レナにとっては、何年かぶりの温もりだった。
死んだ義父や、元担任に抱かれていた時も、そればかりかサリエルに抱かれていた時でさえも、温もりを感じる事は無かった。
体温は感じるが、それは体温でしかなかった。
そしてそれは、温かいというよりもむしろ生温い感触で、吐き気を催す事もあった。
だが、今は違う。
相手が女性だから安心出来るのか、それとも夏実が生来備えている母性故か、
レナは久方ぶりに、純粋な温もりを感じる事が出来た。
それは、かつて実父に抱きかかえられていた、幼い頃のあの温もりに近かった。
レナは、隣の部屋の波児にも聞こえんばかりの声で、しかしそれでも必死に声を抑えながら、夏実の胸の中で泣きだした。
「大丈夫……大丈夫だよ、レナちゃん……」
「うぅっ……うぇえん……ふっ……う……っ」
嗚咽は波児の枕元にも微かに聞こえていたが、彼は全てを夏実に任せて、布団から出る事さえしなかった。
「しんどいかもしれないケド、頼むぜ、夏実ちゃん……」
再び、レナは夏実とキスしていた。
思えば、舌を絡ませないソフトタッチなキスは、今日が生まれて初めてかもしれない。
カケルとでさえ、いつもディープキスが主流だった。
夏実は、もはや抵抗など微塵もしなかった。自分の愛で、レナを包んでやろうとしていた。
夏実の両手はレナの両頬に添えられ、二人の目はそっと閉じられていた。
しばらくキスを続けた後、夏実は一旦レナの唇から離れた。
「レナちゃん……」
「先輩……お願いします。先輩の手で、私の体、綺麗にして下さい……」
レナは、自分の体が汚れている事を、今でも悔やんでいた。浄化されたかった。
しかし、いくら信頼出来る男性と言っても、波児や蛮達には、まだ抵抗があった。
いつかは、彼らの内の誰かと交わって、体中を丹念に愛撫してもらって、すっかり浄化されたい……。
そう考えてはいたが、男性恐怖症は中々治るものではなかった。
その点、相手が夏実ならば申し分無い。
女性には恐怖心は感じないし、夏実個人の事も十分信頼している。
夏実はレナのそんな気持ちを察し、黙ってレナのパジャマのボタンを、一つ一つ外しにかかった。

「やっぱり、いつ見ても羨ましい胸だなぁ……」
露わになったレナの乳房を見て、夏実は感嘆の声を漏らした。
「でも……えぇと、その……小さい胸の方が、感度は良いらしいですよ?」
レナは夏実を気遣ったが、およそフォローになっていなかった。
「むー……皮肉られてるようにしか聞こえないなぁ」
「でもでもっ、男性には喜ばれますよ?」
そう言うと、レナは夏実の控えめな乳房を、再び揉んでみた。
「あぅ……やだ、レナちゃ……んっ……」
レナの言う通り、夏実は簡単に色っぽい声を出してしまった。
「ほら、私の言った通りでしょ? 私でさえ、初めての時は少しも気持ちよくなかったのに」
「うぅ……恥ずかしい……」
夏実は、逆襲のつもりでレナの胸を鷲づかみにした。そうして、そのまま強めに揉みしだく。
「あぁ……せ、先輩……」
既に開発されきっていたレナの性感は、夏実のテクニックの前に早くもガードを下げ始めた。
さすがに女性だけあって、夏実は今までレナを犯してきたどの男性よりも、的確な攻めを展開してきた。
掌から指先に至るまでの全ての力加減が絶妙で、今までオナニーとアバリアリティの世界以外では
一度も勃った事の無かったレナの乳首が、段々としこり始めてきた。と同時に、乳房そのものが弾力を増してくる。
夏実はレナに口付けると、そのまま舌をレナの口内に侵入させた。
さすがの夏実もディープキスには慣れていない様子だったが、今度は逆にレナがリードしてみせた。
お互いの舌が相手の舌の上下左右をくまなく這いずり回る。
時折、突き出された相手の舌を上下の唇だけで噛み、そのまま唇をズルズルと前後に動かす。
さながら口が女性器で、相手の舌が男性器のようなモーション。それをお互いに交互に繰り返した。

夏実は十分にレナの唇を『浄化』してやると、次は頬、次いで額にも丹念にキスをしてやった。
耳朶を甘噛みし、首筋や鎖骨にも口付け、乳房や乳首から臍や指先に至るまで、丁寧に舐め回していった。
勿論錯覚なのだが、レナは夏実の入念な舌使いによって、本当に体が綺麗になっていく気がした。
そしてとうとう、最後の標的。もっとも汚されているであろう、女性器に夏実は照準を定めた。
「いくよ……レナちゃん」
「はい……お願いします、先輩……」
夏実はレナの内腿の間に顔を挟むと、もうすっかり濡れそぼってオアシスをたたえたその秘所に、ゆっくりと舌を伸ばした。
ぴちゃ……ぷちゅっ……ちゅぅ……ちゅっ、じゅる……
わざとらしく音を立てながら、夏実はレナの襞に口付け、舐め、吸った。
的確なポイントを刺激する度に、レナの体がビクンッと反応した。陰核の包皮を剥き、直接そこを舐める。
「ひぃいっ!」
一瞬獣のようにレナの体が打ち震える。指で同じ場所を摘み、コリコリと引っかき、押し込む。
レナの体はもはや継続的な電気ショックに晒されているかのごとく痙攣し続けている。

「それじゃ……最後に、奥の奥を、綺麗にしてあげるからね」
夏実はそう言うと、指を三本ほど、レナの膣に挿入した。
一本の指はGスポットに、もう一本の指は膣の出入り口付近の、Gスポットの次に感じる部位に、
もう一本の指は満足のいく太さを得るために、それぞれあてがわれた。更に、挿入されていない親指も、陰核にあてがわれる。
夏実はレナの膣内で縦横無尽に指を動かし始めた。
「あっ、あはぁっ!はぁっ!あぁあっ!」
レナの膣からは大量の愛液が飛び散り、声は最早波児の部屋まで突き抜けていた。
「うわぁ……やってんなぁ、夏実ちゃん……」
中学生の喘ぎ声は、三十路半ばの波児には良い回春剤になりそうだった。
「ひぇ、ひぇんぱい……ひぇんぱいぃっ……!」
レナは呂律もまわらない程に口を大きく開け、その舌は何かを吐き出すように虚空に突き出されていた。
涎は途方もなく溢れ、滝のようであった。
なおも夏実の攻めは続く。次から次へと溢れ出てくるいやらしい汁を、かきだすように指を動かす。
レナは体を弓のようにしならせ、白目さえむきかけた。
しかし攻められてばかりでは悔しい。レナは必死で意識を保って、腕を夏実の乳房に伸ばした。
「ぅあっ……れ、レナちゃぁん……」
先輩に綺麗にしてもらう代わりに、先輩の胸、大きくしてあげますから……
そう言いたかったが、レナはまともに口をきく余裕すら無かった。
だが、やはり乳房だけを攻められている夏実と、膣を直接攻められているレナとでは、勝敗は明らかだ。
「あぁ……イく……イくふぅっ!!」
レナは早々に絶頂を迎え、そのまま意識を失って布団の上に倒れこんでしまった。
次に目を覚ました時は、朝だった。
汗ばんだ全裸の格好のままで、レナは丸一晩寝転がっていた事になる。
カーテンの隙間から朝日がこぼれていた。
膝元には、同じく全裸のままで、すやすやと寝息を立てる夏実がいた。
「先輩……ありがとう、ございます……」
レナはそう言うと、敬いつつも今では愛しく思える先輩の可愛らしい乳房に、返礼の意味で口付けた。