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中学生ぐらいの年頃の子供の話題と言えば、随分と限られる。
即ち、部活に、勉強。そして、恋愛。
しかし仙堂レナにとっては、その三つは須らく無縁な存在だった。
喫茶店でバイトしているために部活動には所属しておらず、
頭の出来は良いので勉強など苦にならず、
恋愛に至っては……過去のトラウマから、受け付ける事さえ出来なかった。

「あぁ、素敵なカレシ欲しいなぁ……」
放課後、学校の帰り。隣を歩く友人がそう呟く。
友人は、レナが被レイプ経験者である事を知らない。
対人恐怖症のレナにとって、いかに友人と言えど、まだ他者を信じる事は適わなかった。
どんな目で見られるかだろうか?
腫れ物を触るような扱われ方をするのではないか?
そう思うと、打ち明ける事もままならなかった。
「やっぱさぁ、初めては好きな人が良いよねぇ?」
何も知らない友人は、悪気無くレナにそう話しかける。
嫌いな男と初夜を迎えたいなどと考える女は、いないに決まっている。
レナも、どんなにか友人の言葉に頷きたいと思ったか知れない。
「うん、そうだね」
レナは、首を縦に動かさず、言葉だけであっさりと返した。
何事も無いかのように澄ました表情でそう答えるのは、たまらなく辛かった。
「夏休みなのに童貞のままとか、有り得なくなぁい?」
二十時を過ぎたあたりでかかる二流のテレビ番組で、
顔にモザイクのかかった女子高生が、臆面もなくそうはやし立てる。
モザイク越しでも、その女子高生の顔が不自然に茶色いのがわかる。
平成大不況を過ぎた未だに、ガン黒などというDQN丸出しのファッションを好む少数派はいるものだ。
「アタシなんか中1ん時にもうバージン捨てたしぃ~」
別のモザイクDQNがそう言う。
司会を務める芸人が、苦笑いの奥で呆れをひた隠しにしているのがわかる。
隣でテレビを見ていた水城夏実が、気を遣ってレナの顔色を伺ってきた。
けれど、直接的に何か疑問をなげかける事は出来ない。
こんな番組、見てて平気?
そんな風に尋ねられたらいっそ夏実も楽だろう。
だが、被レイプ経験者に対して、そんな端的な尋ね方では、傷を抉る結果になるかもしれない。
レナにとっては逆に、そんな不自然な気の遣い方をされる方が迷惑なのだが、
夏実にはその匙加減がわからない。
そして、レナの方もそれをわかっているから、やはり夏実を責められない。
無言でレナの顔色を伺う夏実に対して、首を縦に振るか、横に振るか。
その程度でしか、彼女も自分の気分を答えられない。
レナは少し困ったように微笑みながら、それでもやはり首を横に軽く振った。
それを見て夏実も、慣れた手つきでチャンネルを切り替えた。

夜の帳が下りて幾時間か経った頃。
布団の中で仰向けになっていたレナは、暗い天井を所在無く見つめた。
クラスの友人の言葉が胸に刺さる。
『素敵なカレシが欲しいなぁ……』
『初めては好きな人が良いよねぇ?』
深く溜息をつくと、レナは美堂蛮の事に想いを馳せた。
「素敵な人、か……」
いないワケじゃ、ないよ……。
心の中で、友人にそう呟く。だが、詮無い事だ。
どの道自分には、愛する人に貞操を捧げる事はもう出来ない。
あの日……強姦されたあの日。
体が腐っていくような気がした。
相手の汚らしい舌に、卑猥な指使いに、おぞましい男根に、
自分の唇が、舌が、歯が、首筋が、乳房が、乳首が、臍の穴が、陰唇が、膣が、子宮が、そして心が。
ことごとく腐って取れるか、溶けるかしてしまいそうな気持ちだった。
いや、いっそ溶けてくれたらまだ救いがあったろう。
穢れた部分が、この身から削ぎ落とされてくれれば、楽だったかもしれない。
だが現実には、自分の体は汚れた部分を纏ったままだ。
頬を伝う透き通った涙すらも、淀んで黒ずんでいるような気がしてくる。
「奪られたら、奪り還せ……か……」
レナは、自分が敬愛する男の信条とするフレーズを口に乗せた。
奪られても、奪り還せないものだってあるんですよ、蛮さん。
何度そう言いたくなった事か。
けれど、自分のような汚れた、下らない女の言い分で、彼らのポリシーまで汚したくなかった。
「お前のバージン、奪還してやろうか?」
蛮がレナにそう言ったのは、買出しの手伝いをしてもらった、その帰りの事だった。
「な……は、何……何、言ってるんですか……?」
レナは戸惑った。
常から自分の穢れた体を気に病んでいた自分の心を彼が読み取ったのか。
それとも、夕暮れ時の坂道を仲睦まじく下校する小学生の男女を
羨ましそうに眺めていた自分が迂闊だったのか。
理由は判然としないが、しかし兎も角、蛮は彼女の想いを、ある意味で代弁した。
叶わないと知りつつも、どこかで望んでいた願望。
「今さ、小学生が通って行ったろ?」
もう既に背中が遠くなった無邪気な子供達を、蛮が指差す。
レナは答えなかったが、無言でいる事は肯定に等しかった。
蛮は構わず話し続ける。
「今のお前……老けてたぜ?」
「なっ……」
女性に対して何と失礼な事を言うのか、とレナは思った。
しかし、彼女が何か言う前に、蛮は小学生を指していたその指を
振り向いてそのままレナの片目にターゲッティングした。
「目だよ、目。人生見限った大人の親父みたいな目ぇしてたんだよ、お前」
レナは唖然とした。
周囲から見て、自分はそんなに重症だったのか……と。
「お前のトシでそんな目つきは似合わねぇんだよ。
 ……お前は俺みたいになるんじゃねぇ」
そう言うと、蛮はレナが持っていた買い物袋を取り上げた。
彼自身、既に重い方の買い物袋を一つ、片手に提げていたので、合計で二袋持つ事になる。
手ぶらになったレナは、申し訳なさそうに縋った。
「じ、自分で持ちますよ! お客さんに荷物全部持たせるなんて、そんな……」
だが、蛮は買い物袋をレナに返そうとはしなかった。
夕映えに溶け込みそうな……先程のレナなどよりも遥かに人生を見限った
老人のような瞳で、蛮はレナに呟いた。
「荷物なんざ、一人で担ごうとするもんじゃねぇよ」
一人で担ごうとするな、か……。
でも、それじゃあ、蛮さんはどうなの……?
あなたの過去は知らないけれど、あなた自身、全てを自分で背負おうとしてるんじゃないの……?
私はおろか、銀次さんにも、工藤卑弥呼さんにも、誰にも何も甘えようとしないで……。
それなのに、今尚、私を甘えさせようとするの……?
そんなの、あなたの荷物が増えるだけじゃないの……?
それでも、ねぇ……
私は、あなたに甘えて良いの……?

ラブホテルの一室。
レナの頭の中は、これから起こる事への不安と、そんな不安を抱えた自分を
優しく受け止めようとする憧れの男性への、複雑な想いでいっぱいだった。
奪られたら奪り還せ。
今宵、美堂蛮は本当に、彼女の処女を奪り還そうとしていた。
少なくとも、彼はそれが出来ると言った。
そして不思議と、彼ならば本当にそれが出来るのではないかと、レナも思った。
それでも、不安は残る。
処女を喪失したという事実は無くならない。
時間が逆行しようとも、記憶が残っていては意味が無い。
そして、仮にレイプされたという記憶が無くなり、手術か何かで処女膜を再生出来たとしても、
大切なのはそういう事ではないのだ。
今彼女に必要なのは、時間を誤魔化す事でも、物理的な処女膜の再生でもない。
有った事は、無かった事には出来ない。
必要なのは、全てを受け止めた上で、前を見る事だ。
レイプされたからと言って、いつまでも男性恐怖症、対人恐怖症ではいられない。
何かあればすぐ自殺を図るような虚弱な精神を、克服しなければならない。
この体のままでも大好きな人と満足のいくセックスが出来るのだと、確信する事だ。
愛を育む事が出来るのだと、強く信じられる事だ。
そして、その事を彼女以上に理解していたのが、蛮だった。
蛮はシャワーを浴び終えて、部屋に戻ってきた。
いつもはウニのように撥ねている髪も、湯に濡れて大人しく重力に身を任せている。
「次はお前の番だぜ」
レナはこくんと頷くと、穢れは払えないまでも、せめて汗ぐらいは落とそうと、シャワールームに向かった。
十分程経過しただろうか。
レナは、一日の汗を充分に洗い落とすと、バスタオルを体に巻いてシャワーを出た。
貞操感覚は既に欠如しているので、今更裸体を見られる事など大したものではない。
頭ではそう思っていたが、しかし何故か今夜だけは、強い恥じらいを感じていた。
「お……お待たせ」
精一杯気丈に、声を投げかける。
蛮が無言で手招きするので、レナはそそくさとベッドに向かって歩いて行った。
「ン……ちゅ……ッ」
ベッドに上がったレナを待っていたのは、蛮の優しい口付けだった。
彼のイメージにそぐわない、けれど彼らしい、ソフトで軽やかなキス。
バスタオルで体を隠したレナの、最後の心の壁を取り払っていく、不似合いな程紳士的な唇。
舌を入れられる事も、わざとらしく唇を擦れさせる事も無い。
ただ実直なまでに、柔らかく互いの唇を重ねあうだけ。
それは、双方にとって儀式的な意味合いがあった。
穢れない純情な恋なのだと、言い聞かせるように。
まるで、本当にこれから初めての夜を迎えるのだと、認識するように。
レナは今宵、何もしなくて良い。
初夜を迎える乙女は、自分からは何もしないものだ。
ただ相手に身を任せる。よがる事も、喘ぐ事も無く。
そう、それこそ、体を隠すバスタオルすらも、取り払うのは相手の男でなければならない。
「あ、あの……」
蛮がレナのバスタオルを脱がせようと手を伸ばした時、彼女は最後の挨拶を投げかけた。
それは、この場の通過儀礼のようなものだった。
「や……優しく、して下さいね……?」
まるで、本当に処女だった頃のようなトキメキを、彼女は感じた。
蛮は優しく彼女の頭を撫でると、その額に口付けした。
「心配すんな。全部俺に任せな」

たっぷり一時間程は経った頃。
その一時間の間、蛮はレナに、キスしかしなかった。
裸の彼女を抱き寄せたりする事もあっても、舌を入れる事も、胸を揉む事さえもしなかった。
処女に対して焦るのは禁物だ。
ただひたすらに、心が解れるまでソフトタッチなキスを繰り返す。
それは、レナが今まで味わった事の無い優しさだった。
あぁ……初めての夜って、こういう風なんだ……。
半分怯えながら、うっすらと開けた目で、彼女は蛮の顔を見つめた。
照明のトーンは落としてあるため、はっきりとは見えない。
だが、柔らかな顔つきをしている事だけは、触れればわかる。
しばらく考え込んだ後、レナは覚悟を決めた。
「あの……良いですよ、その……セ、セッ……!」
恥らいを知る乙女は、その言葉を口に乗せる事さえ躊躇われる。
今レナは、本当に処女だった頃の感覚に戻っていた。
最後まで言い切れない彼女の心を代弁するかのように、蛮が今一度彼女に口付ける。
そうして、唇を離してから、再確認する。
「痛かったり、気分悪くなったら、すぐ言えよ?」
「は……はいっ……」
非処女相手に「痛かったら」とは、彼一流のギャグのようだ。
だが、本当に破瓜の痛みを感じる事になるのだと、レナは間もなく知る事になる。
蛮の舌が、レナの口中をねっとりと這い回る。
恐れるように引っ込む彼女の舌の先端を、歯を、歯茎を、頬の内側を、遠慮なく舐め回す。
レナにとって、それは慣れた感覚の筈だった。
しかし、まるで初めて味わったかのような感覚に囚われる。
「ディープキスって、こんな感じだったっけ?」と思うよりもむしろ、
「これが、大人のキスかぁ……」という驚きの方が強い。
自分が今更そんな事に驚くというのが、自分でも理解出来ない。
恐る恐る自分からも舌を伸ばしてみようかと考えるが、どうしてもその勇気が出せない。
続いて繰り出される、蛮の乳房への愛撫も、
まるで初めて男性に揉まれたような、何とも言えない恥ずかしさがあった。
しかも、全く気持ちよくない。
蛮はテクニシャンだし、レナも一応経験者だ。
快感を得ておかしくない筈なのに、不思議と何も感じない。
指先が触れているという触覚は感じるが、それだけだ。
快感も何も無い。未知の体験への期待と、ほんの少しの不安があるだけだ。
彼女は今や、完全に処女の体に戻っていた。

蛮が執拗に乳首を攻める。
しかし、レナの乳首は勃つどころか、少しも硬くなる気配を見せない。
蛮は彼女の陰唇を指でなぞるが、やはり濡れてこない。
かすかに断続的な溜息を漏らすだけで、一向に快楽を得る事が出来ない。
「すみません……何か、私今日、調子悪いのかな……?」
中学生に不釣合いな巨乳の先端に吸い付きながら、蛮が答える。
「気にすんなよ。初めてだから、緊張してんだろ」
初めて……。
そっか、私。今日が、初めてなんだ……。
不思議と、心の底からそう思えた。
陰唇に触れる蛮の舌の感触も、生まれて初めてのものだと思えた。
わざとらしくチュパチュパと音を立てるその舌使いは、完全に未知の感覚だった。
「やだ……そんなトコ、汚いです……」
今更隠すようなものではない。
処女とは、頑なに自分の下半身を見られる事に恥じらいを感じるものだ。
しかし非処女であれば、感じる恥じらいは処女のそれ程ではない。
にも関わらず、レナは処女特有の恥じらいを、全身に染み渡らせていた。

下の毛の手入れは、ちゃんとしたかしら?
手入れし過ぎて、普通の女の子より薄くなってはいないかしら。
それとも手入れが足りなくて、剛毛だと思われたりしないかな。
こんないやらしいビラビラしたところ、じろじろ見て欲しくないなぁ。
暗いから平気かな。
どこまで見られてるんだろう。
尿道口は、勿論見られちゃってるよね。不潔だなぁ。
私のクリトリス、変な形してないかなぁ。
お尻の穴とか、見てほしくないなぁ。
処女が感じるそれら諸々の不安と恥じらいを、レナも今まさに、感じていた。
下半身を露わにする事への抵抗は、レイプ時にも感じた事だが、全く種類が異なる。
レイプ時のそれが恐怖と侮蔑であったのに対し、今蛮に対して思うのは、純粋な恥である。
それは、あんな形で処女膜を破られたレナにとって、一生実感する事がないと思われていた感覚だった。
「っしゃ……そろそろ良いか?」
蛮は、自らの唾液で充分にレナの秘部を濡らすと、部屋に備え付けてあったコンドームを取り出した。
不安で目をきつく閉じていたレナが、うっすらと目を開けてみると、
そこには立派に剛直した蛮の男根がそびえ立っていた。
見慣れたものの筈なのに、何故か初めて見たような感覚だった。
「うわぁ……男の人のって、結構グロテスクですね……」
「うっせぇよ」
蛮は手際よくコンドームを装着し、胸の前で両手をきつく組んだレナの股のあたりに狙いを定めた。
レナは、蛮の両手が誘導するがままに、両足を開脚させた。
「もうちっと腰浮かせてくれや」
「あ……うん……」
蛮は彼女の陰唇を指で左右に拡げ、自分の男根に手を添えて、少しずつ先端を挿入していった。
2cmも入っていないあたりで、レナが苦痛の表情を浮かべた。
「あ、あれ……? 痛い……っ」
疑問を口にする彼女に、蛮は優しく額を撫でる事で、無言の答えを返した。
初めてなんだから、当たり前だろ? そう言っているかのようだ。
「抜いて欲しくなったら、すぐ言えよ。無理はすんじゃねぇぞ」
そう言うと、蛮はもう少し力を込めて、挿入を深くした。
「いっ……あ゙ぁ……っい、痛……」
レナは瞳の両端に涙を浮かべ、下唇を噛んで痛みに耐えた。
バツン、と何かが千切れるような感触がした。
目を開けてみると、蛮の男根の根元に、血液が付着している。
それは、彼女の破瓜による出血だった。
「そうだよね……初めてなんだもんね……」
痛みを堪えて微笑むレナに、蛮も微笑みで返す。
十五分程かかったが、とうとう蛮の男根はレナの奥まで到達した。

「さすがにキツいな……巨乳でも中学生は中学生ってか」
「やだ、もう。子供扱いしないでよ……」
レナの口調は、まるで愛しい恋人とのお喋りのようだった。
バイト先の客でも、頼れるお兄さんでもない。
この瞬間だけでも、蛮は紛れも無くレナの初恋の相手であり、初夜の相手であった。
「動くぜ……?」
「え? あ、は……っ」
彼女が答えるより先に、蛮はピストン運動を開始した。
ずっぷ、ずっぷと、男根が膣で擦れる音がする。
パンパンと肉がぶつかり、ポタポタと血が滴る。
しかしやはり、彼女自身は全く気持ち良くなかった。
段々良くなってくるかと思ったが、一向に快感を得られない。
飛び散り、腹の上に迸る、蛮の汗。
そして、今尚静まる気配の無い破瓜の痛み。
それだけが、彼女が感じられるものだった。
「どうよ、レナ……気分はよぉ……?」
ハァハァと荒い息を吐きながら、蛮が尋ねる。
「全然……っ気持ち……良く……んくっ……ない……ですっ……ん……」
蛮はなおも腰を打ち付けてくる。
「でも……はぁっ……痛くて……凄く……痛くって……い、あっ……」
「痛くて……何だ……?」
レナは、恥じる事を捨てて正直な感想を述べた。
「痛いから……こそっ……蛮さんを……強く、感じ……るぅっ……!」
蛮はラストスパートをかけた。
「わたしぃっ……初めての、相手が……蛮さんで……良かっ……!」
最後の瞬間、レナの中で何かが弾けた。
オルガズムでは、無い。
それは、目の前のブラウン管が割れたような、そんな音だった。
次に目を覚ました時は、もう翌朝だった。
蛮は一足先に起きて顔を洗っていた。
「よう、寝覚めは如何? お嬢さん」
レナはノロノロと起き上がると、ベッドサイドテーブルに置いてあったサングラスを取って
それを手練の手品師に手渡した。
「蛮さん……男性なのに、よく処女の痛みとか感覚とか、わかりましたね?」
昨夜の性交は、全て邪眼の中の出来事だった。
処女としてのセックスをレナに味わわせるために、蛮が組んだ芝居だった。
そしてレナも、途中からその事に気付いていた。
「別に。自分の感じた事の無い痛みや感覚でも、邪眼を使えば相手に植え付ける事は出来るさ。
 それが出来なきゃ、核爆発なんて幻覚を見せる事も出来ねぇしな」
レナは、彼が何の話しをしているのか、ちょっとわからなかった。
しばらく考えて、それは以前彼から聞いた武勇伝の一つ、
無限城の少年王MAKUBEXにかけた邪眼の内容だったと気付いた。
なるほど、確かに自分の味わった事の無い感覚でも、相手に味わわせる事が出来るようだ。
魔術か何か知らないが、『神の記述』のドミネーターだったレナには、飲み込めない話ではない。
だが、昨日の出来事が、客観的にはただの幻だったとしても、何も問題は無い。
他者から見れば、欺瞞や誤魔化しと、何も変わらないように思えるかもしれない。
だが少なくとも、レナにとってはあれが「本当」なのだ。

「まだ、チェックアウトまで二時間くらいありますよね?」
「あぁ」
蛮は時計を見て時間を確認した。正確には二時間と十三分ある。
それまでは、この部屋を使っていて構わないのだ。それだけの料金を払っている。
「それじゃ今度は、幻なんかじゃなく、本当に私を抱いて下さい」
レナは、積極的に蛮の片腕に組み付いた。
昨日までの、男性恐怖症の彼女からは考えられないアクションだった。
「お、おいお前……」
蛮には、それを断る事は出来なかった。
そもそもレナが蛮に抱かれたいと思った事の目的は、このレイプされた体のままでも
大切な人と普通に愛し合えるという事を、確信する事だった。
蛮はそれに、レイプではない、愛のある初エッチの感覚をプレゼントする事で答えた。
レナにとっては、蛮が味わわせてくれた初夜こそが、本当の初夜なのだ。
過去にはレイプも確かにされたが、今ならそれも乗り越えられる。
邪眼は、欺瞞や誤魔化しなどではなく、「彼女にとっての」真の初夜を、彼女に与えたのだ。
そうとなれば、当初目的を達成しようと思うのは、彼女にしてみれば当然の事である。
当初目的。
即ち、大切な人と、普通に愛し合う事。

「ちっ……これだからセックス覚えたての猿はよぉ……」
蛮は、懐く子供の頭を片手で抱くと、そのままベッドに彼女を押し倒した。
「言っとくがな、俺はユメん中ほど優しかねぇぞ?」
レナはにっこりと微笑む。
「大丈夫ですよ。私、こう見えてもエッチ慣れしてるんですから。
 少々の事では痛みなんて感じませんっ。」
レイプされた事実すらも、今では笑い飛ばす事が出来る。
他人から見れば、歪んだ満足感かもしれない。
心の傷に目を背けて、無理矢理笑い話にしているように映るかもしれない。
確かに、苦い過去ではある。
だがそんな過去も、これからは少しポジティブに捉えられるかもしれない。
何と言っても、レイプされていたお陰で今、蛮と、痛みなどの邪魔な感覚に阻害される事なく
純粋に快楽を貪る事が出来るのだから。
レナは蛮の首に両腕を回し、積極的にディープキスを求めた。
蛮が指を這わせると、レナの陰部は既にほんのりと湿っていた。
「ガキのくせに……」
「何か言いました?」
「何も……」