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  • 1-

二人の出会いは、決してロマンチックなものではなかった。
男と女。互いにプロとしてのプライドを持つ、裏の世界の住人。
だが、そのプライドの中身に、正反対とも言える差異があった。
男は、プロ故にやりたい仕事を選んだ。好みでない仕事には見向きもしなかった。
女は、プロ故に仕事を選ばなかった。依頼された以上は、内容に関わらず引き受ける。
出会った二人は、最初から対立しあった。
「アンタもプロなら、仕事を選ぶなんて子供じみた真似はするんじゃないわよ!」
「子供じみてるのはどっちだか……大体、そんなのはお前が仲介屋だから言える台詞だ」
男の意見も、最もだった。
女の職業は、ただ仕事の仲介を行なうのみ。実務には一切ノータッチである。
どんなに危険な仕事でも、彼女には関係が無い。要は仲介料金を差し引けば良いだけなのである。
だが、男はそういうわけにはいかない。実際に仕事を行なうのは彼であり、危険に晒されるのも彼だ。
女は、男のそんなスタンスを臆病だと思い、非難した。
それに、彼が仕事の受注を渋れば、仲介屋である彼女の評判も下がるのである。
もっとも、男が仕事を選ぶのは、被るリスクだけが理由ではなかった。
「……そんなに、汚職政治家の依頼を引き受けるのが嫌なわけ?」
女は男を、まるで正義漢ぶった子供をなじるような口調で馬鹿にする。
だが、男はその程度では動じない。
「薄汚い狸一匹が得をするために、他の何人もの人間が犠牲になる仕事の
 片棒を担ぐ気など、俺にはさらさら無い。お前がどうしても狸に得をさせたいなら、他の奴を選べ」
その言葉に神経を逆撫でされた女が、くってかかる。
「ハン……あんたもプロなら、仕事はちゃんと引き受けなさい。
 引き受けた上で、誰も不幸にしないように、うまく事態を運びなさいな。
 それがスマートな仕事の仕方ってもんでしょう?」
男はため息をつき、呆れたように女に背を向けた。
「……EAT-MANでも読んだのか?
 コミックのような夢想じみた事を言うな。所詮は未成年という事か?」
男は、胸ばかり大きいくせに精神的には未熟なその金髪の女に、振り向きもせずに立ち去った。
「馬鹿みたい……あんたが引き受けなくても、誰かが狸の依頼を引き受けるのは変わらないのよ。
 仮に私が仲介しなくても、狸は他の仲介屋を探すでしょうし、そうなったら結果は一緒。
 ……どうして、敢えて自分が引き受けた上で、被害を最小限に食い止める手段を模索しようと思わないかしら」
だが、男が選んだ手段は、もっと直接的だった。
スマートではないかもしれないが、女が望む以上の結果をもたらした。
何があったのか、仲介屋の女が男に仕事を持ちかけ、断られたその翌日には
政治家は自らの収賄の証拠となる資料を持って、自首のために警察に出頭していた。
取調室で、政治家は「光が……光を纏った男が……」と、うわ言のように繰り返した。
警察はその証言にまともに取り合わなかったが、彼の体から薬物反応は出なかった。
こうして、署内では『人知れず現れて悪人を悔い改めさせる光の男』が、半ば都市伝説として広まった。
件の政治家が政治家としての仕事を続けていれば、もっと多くの人間が泣きを見ていたに違いない。
アンフェアな談合によって受注から外される建設企業に、
手抜き工事で建てられたマンションに住まされるであろう住人達。
上司の罪を被って無実の罪を背負って投獄される秘書。
だが、『光の男』が汚職政治家を自首させたお陰で、それら何十人もの、罪無き市民が助かった。
それは、仲介屋の言う『一旦仕事を引き受けた上で、誰も犠牲にしない方法を模索する』事よりも
はるかに多くの人間を救う結果となった。
女は男に連絡を取って、再び見える事となった。
「聞いたわよ、『光の男』の噂……どうやって、あの政治屋を自首させたのかしら?」
男は、我関せずといった表情で、ウェイトレスが運んできたコーヒーを飲んだ。
「……何の話だか、検討もつかん」
「ふふっ……相変わらず、スマートじゃないわねぇ」
仲介屋は、男がテーブルに置いたコーヒーのカップを手にとると、残りのコーヒーに口をつけた。
「でも、そういうトコ案外気に入ったかも……」
カップの縁に口紅の跡をつけ、間接キスをわざとらしくアピールする。
「……誰が飲んで良いと言った。代金は……」
「あら、当然私のオゴリよ。今日は気分が良いもの。マ・サ・キ!」
突然ファーストネームで呼んできた仲介屋に、光の男・来栖柾は呆れかえった。
ムシが良いというか、馴れ馴れしいというか……。
1
  • 2-

ピンポーン……
都内の、とある高級マンションの一室。
ヘヴンがバスルームでシャワーを浴びていると、玄関の呼び鈴が鳴る音が聞こえた。
「あら……今日はアポイントは無かった筈だけど。誰かしら?」
ヘヴンはシャワーを止め、バスタオルを体に巻いて、濡れた髪を軽くしばって、玄関へと向かった。
床に水滴がポタポタと落ちるが、後で拭けば済む。
「はいはい、どちら様?」
ドアを開けると、そこに立っていたのは天野銀次だった。
「あら、銀ちゃん? 今日は何の用……」
だが、銀次はその場で鼻血を噴出して倒れた。
「きゃあっ! 一体どうしたの銀ちゃん!」
「ヘ、ヘヴンさん……衝撃的過ぎるよ……その格好……」
ヘヴンは、よろめく銀次に肩を貸して部屋まで招きいれながら、苦笑した。
普段はもっと露出度の高い格好をしているのに、今更この程度で鼻血とは……。

「ん……あ、あれ? ここは……」
数分後、銀次が目を覚ました。呆けた頭を意識的にはっきりさせて、ここまでの経緯を思い返した。
「あ、そうだ……俺、ヘヴンさんのマンションに来て……」
起き上がろうとする彼の額に、温かな手がふんわりと添えられた。
「駄目よ、銀ちゃん。急に起きたりしたら」
銀次は、寝転んだままで、声の主の方を見た。ヘヴンが、自分を見下ろしているのがわかった。
「……って、あれ!? いや、膝枕? えぇ!?」
どうやら鼻血を出した後、辛うじて部屋には上がりこんだが、そこで意識を失ったらしい。
その内に、ヘヴンが膝枕で彼を寝かせてくれていたのだ。
巨大な乳房に隠れて彼女の表情は下からは見にくかったが、少しばかり湯気が立っているのはわかった。
それは顔からだけではなく、肩や背や胸からも立ち上っていた。
胸から下にかけては白いバスタオルで包まれており、彼女が湯上りだった事が銀次にも知れた。
「ごめんなさいね、こんな格好で。ちょうどシャワー浴びてたところなのよ。まだ昼間だけどね」
「いや、ご、ごめんなさい! そうとは知らず、アポも無しにいきなり来て……」
銀次は飛び上がるように起き、ヘヴンから目を逸らすようにした。
この程度の格好なら、見られても彼女は気にしなかったのだが、彼の方が気にするようだ。
「あ、あの……湯冷めとか、しないかな……大丈夫?」
そっぽを向いたままで、銀次が彼女の体を気遣う。
「鼻血出して気を失った人に、健康の心配されるなんてね……大丈夫よ。
 銀ちゃんを膝枕する前に、ちゃんと体は一通り拭いたから。寒い時期じゃないし、湯冷めはしないと思う」
ヘヴンはそう言うと、背を向けて床の上に座る銀次の背中に、ぴったりと自分の胸をくっつけて抱きついた。
体拭いたんなら服ぐらい着てよ、と言いかけた銀次だが、突然の事態に慌てふためいた。
「ヘ、ヘヘヘヘヘヘヴンさん! 胸、胸が……当たって……!」
「当ててんのよ」
彼女にとっては軽いジョーク交じりのスキンシップなのだが、この程度で慌てるとは、彼もやはり可愛いものだ。
「それで、今日はどんな用事かしら?」
何食わぬ顔で本題にを尋ねる。それも、耳元で、小声で。
銀次は、再び鼻血を出しそうになりながら、懸命に意識を保った。
「ふぅん……仕事が欲しいって、言われてもねぇ……」
あまりのシチュエーションに、銀次はしどろもどろだった。
それでも何とか要求を伝えたのだが、彼女の反応は思わしくなかった。
「携帯で連絡も取れないくらい貧窮してんのはわかったけどね……でも私だって、何か仕事があれば
 真っ先にゲットバッカーズに持ちかけるわよ。今は本当に、奪還業の人に頼む仕事が無いの」
バスタオル一枚のままで、彼女は部屋を歩き回り、二人分のハーブティーを淹れた。
椅子に座り、わざとらしく足を組み替えながら、一杯を銀次に手渡す。
「ところで、蛮君は今何してんの? 銀ちゃん一人で来たんでしょ?」
「蛮ちゃんは、今歌舞伎町で売り込みしてる。安くても良いから、女子高生とかから仕事を貰おうとしてるみたい」
そうは言っても、女子高生の払ってくれる金額など、せいぜい何千円かのレベルだ。
売春などで金を儲けている者ならば何万円か支払ってくれるかもしれないが、そう確率は高くない。
日雇いのバイトでもした方が良いんじゃないかと思ったが、ヘヴンはそれを口にしなかった。
「何か仕事が入ったら、すぐに連絡するから……と言っても、携帯止められてるんだっけ。
 その場合は、波児あたりに連絡するしか無いわねぇ……でも、最近は本当に奪還の依頼なんて無いから……」
ヘヴンとしても、二人が金銭的に困るのが、面白いわけではない。
仕事はきちんとこなすし、士度程でないにしろ、裏社会での信用は高い。
彼らが貧乏なのは、主に金運の無さと、蛮の浪費癖のせいだ。
自業自得に近い蛮は兎も角、せめて銀次くらいは、何らかの方法で労ってやりたいところだ。
「そうだ……」
ヘヴンは、悪戯半分のプレゼントを思いついた。
「ねぇ銀ちゃん。私とイイ事しよっか?」
「へ? 良い事?」
一瞬、意味がわからずに銀次が考え込む。程なくして、ヘヴンの性格と照らし合わせて、銀次は彼女の意図を理解した。
「そ、そんなの駄目ですっ!! 不純ですーっ!!!」
後ずさる程の勢いで否定するたれ銀に、ヘヴンはがっかりした。
ここで、もし冗談ででも話に乗ってきたなら、本当に一度くらい経験させてやっても良かったのだが……。
「相変わらず紳士ねぇ、銀ちゃんは」
ヘヴンはハーブティーを飲み干すと、クスクスと笑ってみせた。

ふと、気付いた。
銀次のシャツが汗ばんで、肌に張り付いている。
今日は良い陽気だ。空調のきいた室内だから何も感じなかったが、外は結構暖かいだろう。
ゲットバッカーズが根城にしているホンキートンクから、ここまでは何駅もある。
金が無いのだから、恐らく銀次は徒歩でここまでやってきた筈だ。
暑くはないとは言え、この陽気の中徒歩で何kmも歩いたという事になる。
しかも、平坦なばかりの道ではない。下り坂もあれば、勿論上り坂だってある。
「ははぁん……鼻血で倒れたのは、血が少しばかり足りてなかったからかしら?」
因みに筆者は、輸血した直後に煙草を二本程吸いながら急な上り坂を登っていると、十分程で貧血になって
家に着いた途端にその場に倒れこみ、しばらく立ち上がる気さえ起こらなかった事がある。
銀次は煙草は吸わないが、一時間以上に及ぶ徒歩行軍の末に、
ヘヴンに悩殺されたせいで、倒れてしまったというわけだ。
「とりあえず、汗は流した方が良いわね。帰りは私が車で送ってあげるから、シャワー浴びてきたら?」
ヘヴンは銀次に、先ほどまで自分が使っていたシャワーをすすめた。
「あ……そうだね。それじゃ、お言葉に甘えて……」
銀次は、最初は謹んで遠慮しようかとも思ったが、自分とヘヴンの仲なので、厚意に甘える事にした。
バスルームの位置を聞いて、そこへ足を運ぶ。
廊下と脱衣所を隔たる間仕切りを閉めて、彼は服を脱ぎ始めた。
ヘヴンは「あ……タオル用意してないや……」と独り言を呟きつつ、ティーカップを流しに持っていった。

頭から水流をかぶって、銀次は、体にまとわりついていたベタベタした感触が、ものの見事に流されていくのを感じた。
細胞が一つ一つ洗われていっているかのようだ。すこぶる気分が良い。
シャンプーもボディソープも、石鹸はおろかボディタオルさえも使わなかったが、構いはしなかった。
貧乏暮らしが身に染み付いているから、普段体を洗う時も、洗剤などはあまり必要としなかった。
生活必需品ではあるので、金のある時には買うが、無ければ無いで困るという程の事は無かったのだ。
濡れた前髪が額に張り付くのが嫌だったので、両手でガシガシと頭を掻き毟って、オールバックにする。
潤ったその髪は、室内の証明に照らされて、金色に輝いていた。
と、その時、脱衣所とバスルームを隔てるドアを、軽くノックする音が聞こえた。
「銀ちゃん、タオル持ってきてあげたわよ」
ヘヴンが、少しだけドアを開けて、隙間からバスタオルを差し出してきた。
「あぁ、ありがとうヘヴンさん……って、あれ?」
銀次は、手にとったそのバスタオルが、ほんのり湿っている事に気づいた。
「ヘヴンさん、これ……」
ふと目をやると、ヘヴンの体のラインが、ぼんやりとドアの擦りガラスに投影されていた。
銀次は違和感を持った。
ヘヴンはバスタオルを巻いているか、あるいはもう着替えていておかしくない筈だ。
にも関わらず、うっすらと見えるそのラインに、布地のような影は見当たらない。
加えて、極めてそのボディラインが、純粋な肌色に見える。
乳白色の服に着替えたというのでもなければ、答えは一つだ。
「ヘ、ヘヴンさん!」
ヘヴンは、全裸だった。彼女は、つい今まで自分が体に巻いていたバスタオルを、銀次に差し出してきたのだ。
「どう? 中々刺激的なサービスでしょ」
「いっ、良いからっ、そんなの! 新しいタオル用意しといてよ!」
「あらぁ? 人の家に上がりこんでシャワー浴びておいて、新しいタオル使わせろだなんて……」
まるで、銀次の方が非常識と言わんばかりに、ヘヴンは冷笑した。
もっとも、いくら学識の無い銀次でも、この場は自分は何も間違った事は言っていない自信がある。
「そんなサービスされても困るよ、俺……お願いだから、新しいタオル用意しといてくんないかな……」
銀次は、自分の裸を隠しつつ、ヘヴンの裸体から目を背けるように、ドアに背を向けた。
「もうっ……せっかくお姉さんがサービスしてあげようってのにぃ……」
ヘヴンは冗談めかしつつも、もう十分彼をからかう事が出来たと内心満足した。
そうして、素直に新しいタオルを用意しておいてやろうと思った。

だが、ドアの前から離れるその一瞬前、ヘヴンは懐かしいものをその目に捉えた。
正確には、それそのものが懐かしいわけではない。だが、かつて慣れ親しんだものと、面影が重なる。
それは、銀次の髪だった。
銀次は先程、濡れた髪を掻き揚げていた。
天を衝くように、その金色の髪を逆立てていた。
それはまるで、かつて無限城の薬屋ゲンの部屋のディスプレイでちらりと見た、あの雷帝のようであった。
湯気で視界がはっきりしないのも、その錯覚の一因だったかもしれない。
「……!」
ヘヴンは、言葉を失った。
雷帝を思わせる風貌に、あの時の恐怖や悲しみを思い出したからではない。
彼女にとって雷帝の姿は、もっと深い意味があった。
来栖柾。
雷帝と同じように髪を逆立て、雷帝と同じように眩い光を放つ、あの男……。
かつて愛し合ったあの男の後姿が、今彼女の目の前にあった。
「……ヘヴンさん? 早く、ドア閉めてもらえると助かるんだけど……」
その幼さの残る声に、ヘヴンは現実に引き戻された。
「あ……ご、ごめんなさい、銀ちゃん……」
そうは言うが、しかし彼女も、ドアを閉める気配は一向に無い。
もはや、その後姿に見とれていた。今一度、その背を後ろから抱きしめたいと思った。
銀次は来栖ほど広い背中でも無ければ、来栖ほど厚い胸板でもない。
だが、それでも彼女は、その腕に抱かれ、溶けるように埋没していきたいと思った。
例えそれが、来栖本人でなかったとしても……。
彼女は持っていたバスタオルをその場に放り出し、銀次の反対を無視してドアを開け広げ、バスルームに入って行った。
「ちょ……っ! ヘヴンさん! 駄目だってば!」
ヘヴンは、銀次の背中に再び自分の胸を当てた。今度はバスタオル越しでなく、直接に。
流れるシャワーが、体を拭いたばかりのヘヴンを、再び濡らしていく。
水滴が乳房の上を滑らかに流れ落ちる。
「ヘヴンさん! 当たってるってばぁっ!」
「だから、当ててるんだってば……」
ヘヴンは銀次の体に腕をまわし、掌を銀次の腹のあたりに持っていった。
そのまま、彼の鼓動を聞き取るかのように、左手だけ上に滑らせる。
銀次の左胸にあてがわれたその柔らかな掌は、平常時をはるかに上回る銀次の鼓動を感じ取った。
「駄目じゃない、銀ちゃん……ちゃんと、洗剤使って体洗わないと……」
ヘヴンは、ボディソープを自分の乳房の上に垂らし、素手で塗りたくった。
そのまま、銀次の背中にぴっとりとあてがい、上下左右に動かす。
「うふふ……背中、流してあげる……」
「ヘヴンさん……ちょっ、待っ……!」
そうは言うが、銀次も抵抗しようとはしなかった。
自分の背中に触れる、面積広く弾力もあるその乳房と、先端の乳首の感触を、手放したくないと思った。
乳首がズズズ……と縦横無尽に移動する時、彼はヘヴンの乳首が既に固くなっている事に気付いた。
「後ろは、もう良いかな……今度は、前ね」
そう言って、ヘヴンは銀次に回れ右させた。
銀次の前に立ったヘヴンは、両の乳房をその手で持ち上げ、うっとりした目で男を見上げていた。
見つめる先にいたのは、銀次ではなく来栖だったかもしれない。だが、銀次はそんな事は気にしなかった。
目の前で、陰毛すら隠す事なく淫靡な目を向けてくる女性に、もはや理性をきかせる気さえ起きなかった。
銀次は少し首を前に傾け、ヘヴンは逆に首を斜め上に向けた。
ちょうど、見詰め合う二人の唇がうまく重なる角度になった。二人はそのまま口付けした。
ヘヴンは唇を重ねながらも胸を持ち上げ、それを銀次の胸板に当てた。
そうして、隅々まで綺麗にするように、その乳房をグネグネと動かす。先程、背中にしたのと同じように。
銀次はヘヴンの肩を抱き寄せ、より彼女と距離を詰めた。
と同時に、遠慮なく彼女の口の中に舌を挿入させる。彼女も銀次の舌を受け入れ、更には自分からも舌を突き出す。
女の乳首が銀次の肌の上を移動しまくり、時折二人の乳首同士が擦れ合う。
勃起した銀次の陰茎は、足の長いヘヴンに対しては、ちょうど股間のすぐ下に接する形でフィットした。
キスのために彼女が少し爪先立ちしていたのも、その体勢になるのに一役買っていた。
ヘヴンは乳房についたボディソープを少しだけ指で掬い取り、それを自分の股間に塗りたくった。
「えへへ……銀ちゃんの、おちんちんもぉ……綺麗に、ひてあげるからね……?」
ヘヴンは、爪先立ちのままで素股を開始した。
と同時、胸も相変わらず激しく動かす。
無理な体勢だったが、銀次はそれを両腕で力強く支えた。
「ぎん……ちゃぁん……」
「へぶん……さん……」
二人は、お互いの唇と舌と唾液を貪ぼった。
体に悪くさえなければ、ヘヴンはこの唇や舌にも、ボディソープを塗りたくりたいとさえ思った。
ヌチャ、クチュ、ずりゅっ、ズププ……、ぐちょっ、びちっ……
ディープキスの音か、胸による愛撫の音か、或いは素股の音か。
どの音とも判別のつかない、それでいて全ての音が入り混じった不協和音が、
ザァァァァ……というシャワーの音の中に混じって微かに聞こえ始めた。
やがて、銀次の精液が、バスルームの内壁にピュピュッと飛び散った。

「んあっ! ら……っ! おっ、んおぉっ!んいぃ……っ! ひ、あ゙っ……!」
ヘヴンは、銀次の両手の指に、上の口と下の口両方を攻め落とされていた。
二本の指は口の中に無遠慮に進入し、その舌を、これでもかと蹂躙する。
下の口も、ボディソープを塗りたくられた三本の指で、ぐちょぐちょに掻き回されていた。
「ヘヴンさん、気持ちい良い?」
「んふぅ……っ」
彼女は壁に背を預け、膝をガクガクさせながら、辛うじて立っていた。
ヘヴンの膣は、最初の数秒は指一本でもきつい感じがしたが、
ボディソープをつけた指を挿入すると、すぐにほぐれて、指三本でも難なく入るようになった。
ボディソープがローションの役目を果たしているのもあるだろうし、
既に一度素股までしているのだから、ある程度濡れてほぐれていても、仕方のない事だった。
もっとも、それでなくとも彼女は経験豊富だったので、その器も既に相当使い込まれてはいたのだが。
銀次は指を抜くと、シャワーを取り外し、それでヘヴンの体の洗剤を洗い流した。
勿論、ただ湯で流すだけではない。
彼女の乳房や乳首に纏わりついた洗剤を、自らの手でもって、丁寧に手洗いしていく。
「んっ……ふ、あ……や……そうよ……そこぉ……」
銀次が乳首の洗剤を親指と人差し指で洗い落とす時、彼女の体はビクン、ビクンと反応した。
「もっと、念入りに綺麗にしてあげるよ、ヘヴンさん」
銀次はそう言うと、すっかり洗剤が落ちて綺麗になった乳頭に、舌を突き立てた。
そうして、ペロペロと舐め尽くしていく。あるいは口の中に含み、ちうちうと音を立てて吸う。
せっかく洗ったばかりなのに唾液を塗りたくっては意味が無い、
などという無粋な突っ込みは、ヘヴンも口にしなかった。
銀次は次に、シャワーをヘヴンの股間に当てた。
と同時に、やはり指を使って洗剤を落としていく。
「あっ、あぁ! や、ら……っ! ちょ、あぁっ! ひ、だめぇっ……!」
銀次は、彼女のビラビラした部分や、クリトリスまで、余すところなく愛撫した。
だが、彼の力加減が中途半端なために、ヘヴンはイく事が出来ない。
もっと激しく中を掻き乱してくれれば絶頂を迎える事も出来るのだが、銀次は敢えてそうしなかった。
「もっと……もっとぉっ! おねがい、もっと激しくっ! お願いだから、イかせてよぉっ!」
もはやそれしか頭に浮かばない程に焦らされ、ヘヴンは自分から折れた。
「そうだね……そろそろ、入れようか……」
銀次はヘヴンの体を腰から持ち上げ、挿入を開始した。
ヘヴンは、その両足を銀次の腰に回し、彼の背中側でX字に交差させた。
宙ぶらりんな彼女の体を銀次は両腕で支える。
ヘヴンの方も、銀次の首に両手をまわして、極力後ろに倒れないようにする。
背後の壁にもたれかかるようにすれば、姿勢は維持しやすかった。
ヘヴンは回想した。
光の男・来栖柾も、このように自分が動きの主導権を握れる体位を好んだものだ。
そして今、彼と同じくらいに眩い光を放つ帝王が、あどけなさの残る表情で、自分を抱いている。
だが、来栖と銀次では、決定的に違うものがあった。
それは、来栖の操るのが光である事に対して、銀次は雷・電流を操るという事である。
光、つまり可視光線は、特有の帯域の電磁波の総称である。
対して電流は、そこに熱や斥力を帯びる場合がある。
電気ケーブルの工事中に、ケーブルに触れたラジオペンチが事故で蒸発する事もある。
また、ケーブルの例を持ち出すまでもなく、誰しも一度は静電気によって細胞がピリピリした経験はあるだろう。
銀次は、少しだけ力を解放して、ヘヴンの膣に極めて弱い電流を流してみた。
……パリッ!
「!!!」
ヘヴンは、声さえも出せずに体を引きつらせ、ショック死しそうな程の快感を得た。
「ひ、ぁ……銀ちゃん……今のぉ……」
「どうかな……? ちょっと、痛かった?」
ヘヴンは首肯したが、だからと言って止めて欲しいとは思わなかった。
むしろ、この未知の快感を、もっと貪欲に貪りたいと思った。
「やめちゃ、らめぇ……もっと、もっとぉ……」
銀次は、要望通りに、もう一度電流を流してみた。下手をすれば膣内が火傷しかなねいが、そこは加減の問題だ。
「ひぎっ! ……あぁ、良いよぉ、銀ちゃん……突いてぇ……」
「うん……痛いし、熱いだろうけど……我慢してね、ヘヴンさん」
銀次は上下運動を開始した。
と同時に、様々なタイミングで電流を流し込む。
亀頭が奥に当たる時や、逆にカリが入り口あたりまで戻る時。或いは、その途中。
無作為に近いタイミングで放たれる電流は、ヘヴンに覚悟を構えるタイミングを絞らせなかった。
いつ襲ってくるかわからない快感が、彼女の神経伝達信号を伝って脳髄をシビれさせる。
「ひぎぃっ! ひっ、ひっ……! ひぁっ……! きっい! ……ぉおっ! ぅぐっあ……!」
ヘヴンは、今や白目を向きそうな程に意識が飛びかけ、舌を限界まで突き出し、涎を垂れ流していた。
本当なら、これは拷問であってもおかしくないプレイなのだ。
銀次の方も、感電によって収縮・痙攣する肉壁に陰茎を苛め抜かれ、限界近くまできていた。
「ヘヴンさん……そろそろ、イくよっ!?」
「う、かっ……ぎ、ぎん……ひゃぁん……! あたひ、しんじゃう……しんじゃうよぉおぉっ……」
膣内の襞が破れて出血してしまうのではないかと思える程の最後の電流に、ヘヴンは気を失った。
  • 3-

「ほら、ヘヴン……見えるか? この光が……」
「えぇ、よく見えるわ、柾……」
証明を消し、カーテンも締め切った暗い部屋のベッドの上で、ヘヴンと柾は繋がっていた。
柾はヘヴンの中に挿入した自分の男根を光らせていた。
光に指をかざした時のように、ヘヴンの下腹部の肌が、ぼんやりと赤く光って見えた。
スライドを開始すると、ヘヴンの腹の中で、光もやはりスライドしていた。
明滅するソレは、ペニスである事を忘れれば、ロマンチックでさえあった。
行為が終わった後、彼女の膣からこぼれ出る精液は、夜光塗料のようにほのかに明るかった。

そんな昔の事を思い出しながら、ヘヴンはベッドの上で、銀次のペニスをパイズリしていた。
「綺麗でしょ? 銀ちゃん……」
やはり証明を消した暗い部屋の中で、銀次は自分の男根をわずかに帯電させていた。
光に指をかざした時のように、ヘヴンの胸の谷間が、ぼんやりと赤く光って見えた。
やがて放たれた精液は、ヘヴンの顔や髪を、薄紫色に輝かせた。
「ヘヴンさん……綺麗だよ」
「やぁね。私は元から綺麗よ?」
わずかに帯電してピリピリするその幻想的な精液を、彼女は指ですくって、口の中に含んだ。
そうして、過去と現在、二人の『光の男』を心の中で見比べた後、
何を思ったか、妖艶に微笑んだ。