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その日蛮と卑弥呼は家に二人きりだった。保護者である邪馬人は仕事で出かけていた。
連れていけとごねる妹をみて苦笑しつつ、蛮に子守りを頼むと言って家を出た。ますますむくれる卑弥呼。「そんなにおにーちゃんが恋しいか。ブラコン卑弥呼」
蛮がせせら笑うと卑弥呼は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「う、うるさい!…決めた、あたし今日はあんたと口利かないから!!」

びっ、と蛮に人指し指を突きつけて宣言すると、肩を怒らせて居間に行ってしまった。



仕方ねえな、とついていく蛮。卑弥呼はテレビの前に座りこんだ。蛮は後ろにあるソファに寝転がり、新聞を眺めた。「今の時間だと…おいチャンネルまわせ。12でエロい洋画やってる」
「………」
「『人妻の熱い肌』だってよ。キョーミねえ?」
「………」
いつもなら顔を真っ赤にさせて「変態!」と罵ってくるところだが、全く反応がない。面白くもないワイドショーを見つめたままだ。「おーい、卑弥呼。卑弥呼ちゃーん」
「……」
そんなにアイドルの不倫騒動が面白いのか。んな訳あるか。面白くないのはこっちだ。
蛮は微妙に腹が立ってきた。そんなに兄が居ないのが嫌なのか。
―俺が居るのに。
今自分が感じているものが嫉妬であることも気付かずに、蛮は卑弥呼の後頭部をを眺めてた。
ふと、髪から覗く耳が目にはいる。
形の良い耳。
そう思ったとき、人指し指でそっと触れていた。
ばっ、と振り返る卑弥呼。驚きと戸惑いを顔に浮かべている。
口が何かを言いたげに動いたが、自ら科した戒めを思い出したのか、結局何も話さないまま閉じられる。
再びテレビの方に顔を向けた卑弥呼だったが、先程よりも微かに肩が上がっている。警戒しているのか。
それを見た蛮は一転して笑みを浮かべた。
耳が弱いんだな、こいつ。邪な考えが笑みを更に深くさせる。
卑弥呼の耳に顔を寄せて蛮は囁いた。
「…なあ、卑弥呼」
卑弥呼にこれまでかけたことのない種類の、低い声音。吐息が耳に触れる。
卑弥呼はびく、と身を震わせた。があくまでも口は利かないつもりか、何も話さない。
―面白い。
「なら…俺が何をしようと、絶対に声をあげるなよ?」


すました調子でニュースを読みあげるキャスターの声が耳障りで、蛮は手を伸ばしてテレビのスイッチを消した。音が消えた分、空気の濃度が増した気がする。蛮は卑弥呼の耳に軽く口付けた。
「!」
異変を感じた卑弥呼が体をこわばらせる。身をよじるが蛮が腕をまわして捕えているため、逃げることが出来ない。
「な…」
に、と言う前に蛮の手が唇に触れた。
「俺とは口利かないんだろ?」
優しく諭すような笑みは、返って卑弥呼を戸惑わせた。
長い付き合いとは言えない。でも、短い付き合いではない。ともに仕事し、ともに暮らし、まるで本当の家族みたいに一緒にいた。
なのに。今の彼は、知らない人のようだ。

「おまえの耳、黒くてパンみてぇ。美味そう」
蛮は卑弥呼の耳を甘噛みした。パンの甘い味の代わりに、汗のしょっぱい味がする。
「…や、だ……」
漏れた声はあまりに弱々しかった。そして明らかな熱があった。
蛮は少し驚いて、舌の動きを止める。
「へえ…そんな声だせんだな」
まじまじと卑弥呼を見つめると、恥ずかしそうに顔を背ける。
その仕草に、予想外の「女」を感じる。
もっと見たい。
実験とばかりに蛮の舌が卑弥呼の耳の縁を舐める。円を描きながらねっとりと。
わざと音を立てながら、耳の奥へと舌を差し入れた。
「…ふっ、あ、や…」
卑弥呼は身をよじったが、蛮の舌が独立した一つの生き物のように執拗に追い掛ける。
蛮の舌ばかりでなく、舌が耳を這うくちゅくちゅという音さえ耳を犯しているように卑弥呼は感じる。
二人きりの部屋。舌が耳を食べる音。蛮の囁き声。…自分の変な声。
やめてと言おうとする声は、形に成らずに溶ける。
「…その声いい。そそられる」
何をされてるかもよくわからないが、蛮の声の調子で卑弥呼は、自分がすごく恥ずかしい声をあげているとわかった。
自分で決めた「口を利かないんだろ」云々はとっくにわすれていたが、
そんなことより自分の声を蛮に聞かれたくなくて、
卑弥呼は口を手で覆った。それでも声が漏れてしまうので、指の腹を噛んで堪えた。
もうやめてほしい。
声を出せない卑弥呼は、目で訴えた。
「…っおまえその顔はやばいだろ」
涙を滲ませた目がかえって蛮を煽っていると思いもよらない卑弥呼に、
蛮が焦った理由などわかるはずもない。
ただ激しさを増した舌の動きに、自分の名前を呼ぶ低い声に、
声をあげぬよう必死に耐えるだけだった。
と、力が入りすぎた歯が指を傷付ける。
「………痛」
卑弥呼の様子に気付いた蛮は、卑弥呼の口から手を剥がした。中指の腹から血が滲んでるのをみて、眉をしかめる。
「……アホ」
呆れたような口調とは裏腹に、優しく傷に口付ける。舌で擽るともう覆いのない卑弥呼の口から小さく声が漏れた。
「そんなに声出すの嫌だったら、俺の指でもくわえてろ」
左手の指を卑弥呼の口に入れる。
「噛んでもいいぜ?」
蛮の言葉に、少し間を開けてから卑弥呼は頭を振った。また予想外の反応に、蛮は笑う。
本当にこいつは面白い。
おとなしく指を舐める卑弥呼の頭を、労るような気持ちで撫でた。
「いい子だ」
こんなことをしながら、小さい子供にかけるような言葉。これほど場に合わないものもない。
それがかえって背徳感を煽る。瞳を閉じて蛮の指に集中する卑弥呼の表情は、いとしさと嗜虐心を同時に刺激した。
「ん…ふあ、は…」
たどたどしく動く舌が、蛮が耳を舐める度にはねて。
…やべえ。
まさか、耳いじくっただけで指舐められただけで…

蛮は慌てて指を卑弥呼の口から引き抜いた。
一瞬見えた物足りなそうな顔に、また煽られる。

だから、やばいんだって。
「…卑弥呼」
快楽に慣らされた体は、名前を呼ばれただけでびくりと身を震わせた。
「も、いーぜ。声出せよ」蛮は卑弥呼の唾液で濡らされた指を卑弥呼の左耳につっこんだ。右耳は再び舌を這わせる。
「…あっ、あっ、やあっ…は、ん…!」
もはや恥じらうこともなく、耐えまなく嬌声をあげる卑弥呼。
「出せっつったとたん、正直な奴…!」
からかうつもりではなく、本当におかしくて笑ったのだが、卑弥呼は涙目で蛮を睨んだ。
可愛い奴、と後ろから抱き締める力を強くすると、卑弥呼の体が震えているのに気付いた。
瞳を見れば、快楽を一杯に満たし、目の前にいる蛮を探すように揺れている。
「…ば…ん…」
ここにいる、と示すために、蛮は卑弥呼の手を自分の腕に掴ませた。
溺れている者のように、卑弥呼は蛮の腕を痛いくらい強く握った。
「…いいぜ、卑弥呼」
蛮は卑弥呼の耳たぶをガリリと噛んだ。
「イケよ」
その瞬間、卑弥呼は初めての絶頂を登りつめ、果てない快楽の波に、意識を失った…



後日、意識を戻した卑弥呼は全く事を覚えておらず、そのまま一週間風邪で寝込んだ。
卑弥呼が忘れてしまったことをラッキーとも惜しいとも思った蛮だったが、とりあえず卑弥呼の処女は誰にも渡さないと誓うのだった。