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まがいものの自分には必要ないのに。
どうして欲望してしまうのか。
醜い、嫌らしい、汚れている。



「あぁ…っ!」
螺堂レンは幾度目かになる絶頂を向かえた。
真夜中のレンの自室。暗闇のなかうごめくレンの指は、自身の足の間にへばりついていた。
びくりびくり、陸にあげられた魚のようにレンの体は痙攣する。
はー。はー。
浅い呼吸を繰り返し。
レンは虚空に目を向ける。
焦点の合わない目は、欲望にあえいでいる。
躊躇いののち、レンの指が再び踊る。
「あ、ああっ、ゃあっ…ふ、ふあ…ああんっいやぁっ」
片方の手は自分の胸へ。
固くなりすぎた乳首にかすると、痛いくらい感じた。
「あっ」

いじるだけの単調な愛撫。
「あんっあんっやぁっ」

なのに失禁しそうなほどに感じてしまうのは。

「か…づき、さぁんっ」
固く閉じた瞼。
暗闇の中で、レンは愛しい人の愛撫を夢想していた。
あの人の指が。美しく細い指が。
あの人の舌が。美しく赤い舌が。

「ごめ…なさぁっ…かづきさ、ん…ごめ…
いやらしくて、ごめん…んあぁっ!」
美しい人を。
たとえ夢想の中でさえ、汚してしまう自分。
情けなくて申し訳なくて、けれど罪悪感すら欲望を煽るだけ。


「ふあ…も、だめ、また…きちゃう…やああん!」

レンの止むことのないあえぎ声。
誰に届くはずもない声を、聞いてしまっている人間がいた。

りん、と涼やかに鈴が鳴る。
細い細い糸を揺らして、麗人はくすりと笑った。




翌日。
レンは新生ボルツのもとへ薬を届けに来た。
「はい、これ…じっちゃんのつくった新薬。擦り傷によく効くよ」
「ああ、ありがとう、レン」
少年王は微笑みながら代金を支払った。
「それじゃ、帰るよ」
「あ、ちょっと待って。…花月、レン送っていってあげて」
「……!大丈夫だよオレ一人で帰れるっ」
「わかったよMAKUBEX」
「なにかあったら困るしね」
レンの動揺を気にすることなく、男二人は話を進める。
花月はレンの隣に来た。
「行こうか」
「……うん」



照れながらも、嬉しくて顔がにやけてしまうレン。
ばれないように必死で顔を引き締めるが、すぐにほころんでしまう。
「大丈夫?」
さりげなく花月の手がレンの肩に置かれる。
少しだけ力が入り、わずかに引き寄せられる。
「だ、だだだ大丈夫っ!」
いつもの違う大胆な花月の行動に、レンは顔を真っ赤にしながら答えた。
声がうわずっている。
花月はくすりとおかしそうに笑いながらも、レンの肩から手を退かさなかった。


レンは今日の花月になんとなく違和感を感じていた。
「ねえ、家に寄っていいかな?」

家に着いたときの一言で、その違和感は決定的になった。
なにかが起きる予感がする。
それを理解しながら、レンは拒否しなかった。



花月を家にあげて、レンは家の鍵を下ろした。
ガチン、という音が、やけに大きく響いた気がした。

祖父は薬の原材料を求めに街へ出かけている。
明後日になるまで帰ってこない。
そのことを改めて思い出し、そわそわしながら花月を自室に入れた。


「…散らかってるけど」
「そんなことないよ」
花月は穏やかに笑う。
いつもと変わらない笑顔。
急に恥ずかしくなってきた。
もしや、なんて。なんて馬鹿な勘違いを。
「ねえ、レン」
気付くと花月が顔を近付けていた。
「わわっ」
「そんな驚かなくても」
「ご、ごめんなさいっ!」
近距離で見た顔があまりに綺麗で。
レンの動悸は止まらない。
「これ、聞いてみて」
差し出された手には細い細い、糸。
それが花月の武器であることをレンは知っている。
なんだろうと糸を耳に近付けると。
「…わー」
音。
音。
音。
隣家の夫婦喧嘩。
遊ぶ子供の笑い声。
けたたましい騒音が耳に溢れる。
「すごいねー…」
花月の特技にレンはただただ感心した。
花月はただただにこにこと笑う。
「ね、面白いだろう?」
「うん」
「昨日の夜ね、もっと面白いものを聞いたんだ」



心臓が一瞬止まった気がした。



花月はにこにこと笑いながら続ける。

「ちょうど、このあたりで」
「あ…」
「僕を求める甘い声が」
「……いわないで」


「レンの声だったよ?」


優しい優しい微笑みで。
真実を告げる。


体中から血の気が失せて、次にさああっと赤くなった。
いたたまれなくてレンは顔を覆った。

聞かれてしまった。
聞かれてしまった。

「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

消えそうな声で呟き続ける。


そして花月はにこにこと笑いながら続ける。


「ねえ、僕の前でやってみせて」



レンはのろのろと顔をあげた。
そこにあるのは大好きな人の大好きな笑顔。
笑顔はそのままで、別の人になってしまったようだ。
でも花月であることには違いなくて。

花月である以上、レンは決して逆らえない。



「………はい」





下着を下ろすとき、ぬちゃっと嫌な音がした。
「………!」
花月は何も言わない。
ただその目が、面白がるように笑った。
いたたまれない。
レンは思わず花月から目を反らしうつむいたが、
「駄目だよ」
花月の手がレンの顎を持ち上げた。
「あ…」
「目を閉じても駄目だ。僕を見続けるんだ。いいね?」
す、と花月の手が離れる。
目が次を促していた。


おそるおそる、レンは自分の秘部に触れた。
そこはぐっしょりと濡れている。
「ひっ…!」
「さあ、レン」
「は、い…!」
親指と人差し指と中指で、二、三度擦る。
「ふあ、ふあ、やあっ!」それだけで面白いくらい蜜が溢れ出た。
ちゅぷちゅぷちゅぷ。
指が愛液と擦れ合いいやらしい音がする。
ますます蜜がこぼれて、音が大きくなる。
ちゅぷちゅぷちゅぷちゅぷ。


花月が自分を見ている。
自らを愛撫する姿を。
こんな恥ずかしい浅ましい姿を。
それだけでこんなにも。


「あひっ、ああっ!いやぁっ!ああん!」
「ねえ、レン」
場にそぐわない花月の落ち着いた声。
「足を開いて。よく見えない」
「…だめっ」
レンの制止を無視して、花月はやんわりとレンの足を開いた。
だらしなく、ずるりと蜜が垂れる。
「すごい濡れてるね。いつもこんなに?」
くすりとおかしそうに笑われて。
レンは消え去りたくなるような恥辱を感じた。
「いつもどんなことを考えてしてるの?」
花月の目がレンを射ぬく。
それだけは言うまい言ってはならないと理性が止める一方で、秘部をいじる指の動きがますます激しくなる。
「あ…かづき、さんの」
「僕の?」
「かづき、さんの、…ふぁっ、指が。
オレの、…ここを…」
「僕の指がレンのここを?」
「…さわっ…ああ、さわ、てんの、かんがえ…ひぅっ!」
言ってしまった。
レンの目から涙が一筋溢れる。
それを花月は面白そうに眺めている。
「さっき僕がレンの肩を抱いた時も顔を赤くしてたよね。
そんなことを考えていたの?」
「ちが…」
「僕と会う度、僕の手が君に触れる度、君は自慰の材料にしていたの?」
「あ…ちが………ごめんなさぁ…」

「レンはとてもいやらしい子だったんだね」

呆れたような、嘲るような。
どこまでも楽しげな声。
「…ごめんなさ、ごめんなさい、ごめ…」
花月は泣き出したレンの頭を撫でて、全てを許すような、これまでで一番優しい笑みを浮かべた。







「そんないやらしい手は縛ってしまおう」






しゅるりと花月の絃がレンの手に巻き付いた。
手首と拳。
突然の刺激の断絶。


「……あ?」
何が起こったのか理解できない。
レンは必死で拳を開こうとする。
けれど風鳥院の絃が易々と解けるはずもない。
動けば動くほどきつく食い込み、レンの手首に赤い痕を残す。
体の熱が解放されず苦しい。気が狂いそう。
「…あー、あー、あー」
もはやレンは意味のある言語を喋ることも出来ない。縛られた両方の拳を力なく振り回し、
目からも口からもだらだらと液をこぼしながら、懇願するように花月を見る。

花月はふいっと目を反らし、レンの足の間に顔を埋めた。
視覚の無いはずの足の間で、花月の視線をレンは強く感じた。
「…すごい、見てるだけでどんどん溢れてくる」
感嘆したような花月の声。
花月は舌を伸ばし舌先でそっと蜜をすくいとった。



「ーーーーーーっ!」



がくん、とレンの体がのけぞった。
ぶるり、と震えたあとは、声も出さず反応もない。

けれど花月はレンの異変にはさして気にも留めず。

「まだイクには早いよ、レン」

舌を動かし続けた。

「あっ、あっ、あっ…ーーー!」
ずるり、と音を立てながら液をすする。
口をつけるそばから溢れて、とても飲み干せそうにない。

「も、も、だめっ、ひいっ!あっー!おねが、ゆるし…あああっ」
「駄目」




何度いかされたか覚えていない。
途中から喉が枯れて声も出せなくなって、レンはおもちゃのようにがくがくと体を動かすだけになった。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
もうゆるしてください。

呟きは届かなくて。

「…レン、大丈夫?」
「ふぁ……」

解放され、半ば気絶しかけていたレンは、ゆっくり目を開けた。
ぼんやりとした視界に広がる愛しい人の顔。
心配そうに自分を見ている。
まるで先程までの責めが夢だったかのようだと、レンは錯覚した。

「…だい、じょぶ、…です」
「よかった。今度は僕の番だね」




花月はズボンを下ろした。
そそりたったものが現れる。

「……………」

レンは無言で、それを口にくわえる。

夢であるはずがなかった。
夢でなくて良かった。


レンの思考回路はいつの間にかショートしていた。

それが元からの欲望だったのか、花月に責められているうちに生まれた欲望なのか、
わからないまま、レンは花月のモノを舐めながら涙を流している。

喜びの涙を。



愛しい人のモノを、口いっぱいに頬張ってる。
自分の行為に反応して、固く大きくしてくれる。

自分の醜い、嫌らしい、汚れている欲望を、この美しい人が受け止めてくれる。

まがいものの自分を必要としてくれる。

幸せだった。





レンは口を離すと、あまり大きくない乳房で挟み込んだ。
谷間も無いので、両方の手で胸をぎゅっと押し付ける。
固い乳首で擦るように、体を上下させる。
その瞬間未知の快楽がレンを襲った。

「あ、ああっ……!」

胸が小さいため、体全体で花月のモノを包みこむような形になる。
全身で花月のモノを抱き締めているような感覚に夢中になる。
自分の汗と、花月の先走りの汁で体は濡れて、動く度にぬちゃりぬちゃりと音がする。


「レン、…」
かすれた声で花月がレンを呼んだ。
すぐにレンは動きを止めて、花月の言葉を待つ。

「…また自分ばかり気持ち良くなってるね」
呆れたように、怒ったように。
「…ご、ごめんなさい…っ」
目を伏せたレンのほほに、花月の手が触れる。
どこか躊躇いがちな仕草に、かえってレンは戸惑った。
「花月さん……?」
「…………」

手が、腕が、レンの背中に回り。
花月はレンを強く抱き締める。
同時に男根が侵入する。
指や舌とは比べ物にならない大きさに、体が悲鳴を上げる。
「ぐっ……」
「苦しい?」

尋ねる声は優しかった。
いつもの花月さんの声だ、とレンは思った。
優しくて心配性なあの人の声だ。


花月はなだめるようにレンの背中を撫でる。
肩胛骨を辿るように手が触れる。
それだけで苦しいくらい気持ち良すぎて。

「平気、だから…!」
「だから?」
「おねが、…もっと突いてぇ!!」
花月は驚いて目を丸くし、くすりと笑った。
「ああ」
レンの望み通り、腰を押し付けて深く深く突く。
「気持ちいい?」
「うんっうんっ…もっとぉ」
甘えるようにレンは花月に腕を巻き付けた。
腰を揺らして自ら求める。
「あっ……」
ある箇所を当たって、格段に違う反応を見せる。
「ここだね?」
ぐりり、と深く深く突く。
「だめぇっ!あ、ああ、そこはぁ…」
「ほら、もっとあえいで。求めて」
ぐちょり。
腰を離して、より深くを撃つ。
「ひああ」
「レン…」
「ふあ、ふあっ…そこ、も、もっとぉ…きもち、いいっ…!
あんっあんっあぁっ!!」







それから一週間後の夜。
花月はベッドに腰掛け、足をなげだし。
レンは膝まづいて、花月の足の指を一本一本丁寧に舐めていた。
桜貝のような爪に舌を這わし。
指の間も貪欲に舐める。
「…上手くなったね、レン」
かすれた声と頭を撫でる手が最高のご褒美。
レンは照れ臭そうに笑った。

二人の関係は続いていた。
レンは花月に突然態度を変えた理由を聞くこともなく、一心不乱に花月を求めた。





歪な関係が丁度いい。
もっとオレを求めて。
辱めて。
どうか、オレがここに居るって、現実に存在してるって、思わせて。
今だけは錯覚させてください。