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予想外な事が立て続けに起こる日というのは、あるものだ。
それが良きにつけ悪しきにつけ。

夏実にとってその日最初の予想外は、男達にナンパされた事だった。
ホンキートンクの買出しで出かけた、その帰りの事。
数人の若い男達にいきなり周囲を囲まれ、声をかけられた。
「よぉ姉ちゃん、今暇?」
「俺等と良いコトして遊ぼうぜ」
夏実は買い物袋を提げているのだから、普通なら暇に見えるわけがない。
これは、ただの切り口に過ぎない。
どの道彼らは、問答無用で夏実を拉致して犯して捨てる気なのだ。
目の前にいるのは、そういう男達だと知れた。
夏実は、自分で言うのも悲しい話だが、貧相な体型をしている。
だから街を歩いていても、男に声をかけられた事など無かった。
生まれて初めてのナンパがこれでは、人生を呪いたくもなるものだ。

だが、彼女にとってその日二度目の予想外が起こった。
「……私の連れに何か御用でしょうか?」
もう春も深まって、日中は暑さすら感じる日があるというのに、
足元まですっぽり覆うような黒衣を纏った優男が、傍を通りがかった。
その奇異な服装に、ナンパ師達も一瞬呆気に取られる。
だが、夏実はその男に見覚えがあった。
男はナンパ師の一人に視線を投げかける。
極めて温厚そうな、柔らかな眼差し。
だがその視線を受けたナンパ師は、途端に寒気を覚えた。
「お……おいっ、帰るぞ!」
「はぁ? 何言ってんだよお前、こんなヒョロい男にビビってんじゃ……」
「良いからっ!!」
その視線に向こう側に『死』そのものの恐怖を読み取ったナンパ師が
他の仲間達を半ば無理矢理引っ張って連れて行き、結局夏実は事なきを得た。
「お怪我はありませんか、ホンキートンクのお嬢さん」
「あ、ありがとうございます……赤屍さん」


そこからは、予想外の連続だった。
予報には無かった通り雨に降られた事も予想外なら、赤屍と相合傘になる事も
……というより、赤屍が傘を出した事そのものが、予想外だった。
「……おや、雨ですね」
「本当だ。私、傘持ってきてないや」
雨脚は秒速で強くなっていく。雨宿り出来る場所も、パッと見た限り見当たらない。
赤屍は空に向かって手を突き出すと、にっこりと微笑んだ。
「お貸ししましょう。赤い傘(ブラッディ・アンブレラ)」
まるで夜中に布団の中で思いついたギャグのようなネーミングを伴って、
赤屍の右手の掌から、瞬く間に傘が出現した。
骨組みや持ち手の部分まで真っ赤な、何とも悪趣味な傘だった。
せっかくメスはちゃんと白銀色に生成出来るのだから、
傘ぐらい普通の色にしてやれば良いものだが、これも彼の趣味なのか何なのか。
「どうぞ、構わず使って下さい。使い終わったら、道端にでも捨てておいて下さい。
 その内勝手に消滅するか、気がむいたら私が体内に回収しますので」
一般人が聞いたら、彼が何を言ってるのかわからない事だろう。
夏実も本来一般人なのだが、周りにGetBackersなどがいるものだから、
妙な体質の人間には慣れっこだった。
「ありがとうございます。
 ……赤屍さんは? 傘ささないんですか?」
「お気遣いには及びません。私は雨ぐらい平気ですから。
 では、これで失礼し……」
「そんなの駄目ですよ! 私だけ傘借りておいて、貸してくれたご本人が濡れ鼠だなんて!」
世界広しと言えども、赤屍が喋っている最中に割り込める一般人は、夏実ぐらいのものだろう。
久しぶりに怖いもの知らずな女性と会ったものだと、赤屍は少し心が弾んだ。
まるで、初めて銀次に敗北した時のような高揚感だ。
「私、知ってます。赤屍さん、自分の血でいっぱい物が作れるんでしょう?
 だったら、ご自分の分の傘も、作れば良いじゃないですか」
「あまり血を出したくないんですよ」
もっともな返答だ。
普通の人間なら、これだけの量の血液を一度に体内から排出すれば、下手をすれば失血死だ。
超越者という概念を知らない夏実でも、何となく赤屍は死なないだろうと思っていたが、
彼とてあまり血を流したくない事には変わりないのだろう。

夏実は一頻り考えた。
ナンパから助けてもらった礼もしたい。喫茶店で働く彼女に出来る返礼は、すぐに思いついた。
「赤屍さん、今暇ですか?」
まるで先程のナンパ師のような口上で、夏実は赤屍に言葉をかけた。
「よろしかったら、ホンキートンクにいらっしゃって下さい。
 コーヒー、ご馳走しますから」
赤屍は、夏実の好意を読み取った。
頑なに傘を使おうとしない自分を、それでも傘に入れてやるために彼女が選択した方法がこれだ。
赤屍は――彼にとっては珍しい事だが――少しだけ苦笑いすると、
彼女の言葉に甘えて相合傘で、ホンキートンクへと向かった。


店にはいつもの通り、波児とレナとGetBackersがいた。
雨が降っているので、奪還屋達も歌舞伎町に営業に行くのは控えたらしい。
案の定、赤屍を伴って帰ってきた夏実に、二人は心底驚愕した。
「てめぇジャッカルゥ! 夏実を人質にとろうたぁ良い度胸だ!」
「卑怯だぞ、赤屍ぇ! 夏実ちゃんを離せっ!」
勘違い甚だしい怒声に、赤屍が機嫌を損ねるより先に、夏実がキレた。
「二人とも、赤屍さんを悪く言わないで下さい!
 私、赤屍さんに助けてもらったんですから!」
夏実はいきさつを四人に話し、納得してもらった。
飲み込みの早い波児と、赤屍に対する予備知識の少ないレナは、すぐに彼を受け入れた。
ここで殺人でもされない限りは、店にとっては良い客だ。節度も弁えている。
むしろGetBackersの方が、客としては迷惑なくらいだ。
そのGetBackersは、片方は赤屍の姿に苛つきながら、
もう片方は恐怖しながら、それぞれ我慢してカウンター席に座っていた。
隣には、コーヒーを待つ赤屍の姿。
「それじゃマスター、赤屍さんにとびっきりの淹れてあげて下さいっ」
夏実は波児にコーヒーを頼み、自分は買出してきた食材を冷蔵庫に仕舞いに行こうとした。
が、波児がそれを引きとめた。
「そっちは俺がやっとくから。コーヒーは、
 夏実ちゃん自身が淹れて差し上げた方が、良いんじゃないか?」
それもそうだ。
夏実が礼をしたいのだから、夏実が淹れるのが当然だ。
この店で一番うまくコーヒーを淹れられるのは波児だから、彼に任せようと思っていた。
しかし、旨いとか不味いとかの話ではない。自身で礼を尽くす事が大切なのだ。
そう思い直した夏実は、精一杯心をこめて、会心の一杯を淹れてみせた。
「どうぞ。マスターのよりは、美味しくないかもしれないけど……」
赤屍のように黒いそのコーヒーは、落ち着いた良い味だった。
波児から習ったのだから、それもそうだろう。
苦味の中にも人を安心させる、安らぎが溶けていた。
赤屍にとっては安らぎとは、実に久しい感覚だった。
「ほう、これは……」
一口すすって感心した赤屍は、その後ゆっくり時間をかけて、夏実のコーヒーを味わった。
猫舌というわけでも、夏実のコーヒーが口に合わないわけでもない。
ただ、数秒で飲み干すのが勿体無いと思えただけだ。


「へぇ、赤屍さんって、AB型なんですね! レナちゃんと一緒だ」
赤屍が自身の血液から武器を作り出せるという話から始まって、
いつしか日本人にとって最もポピュラーな話題の一つ、血液型に話題は発展していた。
「知ってます? AB型の人って、O型と相性良いんですよ。
 因みに私もO型です。あと銀ちゃんも!」
自分の名前を出された事に、銀次は心の底からビビった。
赤屍がいるこの場所で、うかつに自分の名前を出してほしくなかった。
クス……という耳慣れた声に混じって、赤屍がちらりと銀次を一瞥するのがわかる。
「あ、あのさぁ夏実ちゃん。血液型なんて、迷信でしか無いと思うし、その……」
一般的な血液型占いに対する批判を、銀次もそのままなぞってみた。
少しでも、話題が自分に触れるのを嫌がったのだ。
だがここで、夏実にとっての何度目かの予想外が起こった。
何と、夏実が反論するより先に、赤屍が銀次に異を唱えたのだ。
「良いじゃないですか、銀次君。科学的な考察は、あなたらしくありませんよ。
 あなたと私の相性が良いと言うだけでも、私にとっては愉快な話です」
正直、赤屍にとって血液型など、輸血の際の指標に過ぎない。
だが銀次が慌てふためく様を見るのは、非常に面白い。
そして銀次にとって更に不幸な事に、今度ばかりは蛮も赤屍サイドに回ってしまった。
「傑作だなぁ、銀次。お前と赤屍が相性抜群だとよ!」
「……だから、そんなの迷信だってば。日本人だけでしょ、血液型云々言ってるの」
「いや、あながちそうとも言えないぜ。
 確かに血液型だけで性格の全てが決まるとは思わないが、個々人の性格・性質に
 血液型ごとの偏りが見られるのは、統計的に明らかにされてる事実だ。
 そもそも血液型学は、学問としてまだ歴史が浅い。医学界でも中々認知されちゃいないが
 マレーシアや東欧といった辺りでは真面目に研究もされてて、書物まで出版されてる。
 アメリカやドイツが否定してるからって、それが正しいとは限らねぇだろ?」
こんなものは屁理屈だ。
事実として血液型が性格に影響を及ぼすかどうかなど、蛮にも興味は無い。
単に赤屍同様、銀次が慌てる様を見て楽しみたいだけなのだ。
結局その日はずっと、血液型の話で終始盛り上がっていた。(銀次以外)


122 :名無しさん@ピンキー:2007/05/10(木) 11:54:09 ID:5BLrXn6p
血液型別の相性を論じるのは、真剣に血液型学を専攻する者にとって、愚でしかない。
心理学もそうだが、相性などという小賢しい遊びのために研究されているわけではないのだ。
それゆえ、市販されている心理テストの類の書籍は、心理学者から嫌われている。
あんなものは、心理学ではないというのが、彼らの主張だ。
だが、それでも敢えて血液型ごとの相性を語るならば、
確かにAB型とO型は相性が良いのかもしれない。
赤屍は銀次を気にいった時と同じく、夏実の事もすぐに気にいった。
思わず殺したくなる(おい……)程の愛らしさは、タレ銀に通じるものがある。
一方、B型の蛮とAB型の赤屍が、決して良いとは言えない相性なのも、納得がいく。
やたらとAB型の多いこの漫画を見ていると、各キャラの血液型は
案外かなりわざと設定されているのではないか、とさえ思えてくる。
雨が上がり、赤屍がコーヒーを飲み終える頃には、
赤屍と夏実は、すっかり打ち解けていた。
「それでは、私はそろそろ帰りましょうかね。
 コーヒー美味しかったですよ、夏実さん。近い内にまた、頂きに来ます」
最初は水城さんと呼んでいたのが、いつの間にか夏実さんになっている。
蛮の事でさえ、赤屍は美堂君と、苗字で呼ぶのにだ。
夏実の人当たりの良さもあってか、彼らはもうそれ程までに仲良しになっていたのだ。
もっとも赤屍と仲良くなるという事がどれ程危険か、銀次はわかっていたのだが。
「あ、待って下さい赤屍さん。私もバイト上がりですから。
 途中まで一緒に帰りましょう!」
「ちょっ、夏実ちゃん止めた方が良いって! 殺されるよ!?」
「ご心配無く、銀次君。
 あのコーヒーが飲めなくなるのは惜しいですから、殺しはしませんよ……まだ」
……まだぁ!?
最後に付け加えられた物騒な言葉に、銀次は過剰に反応した。
それが本気の言葉なのか、赤屍一流のジョークなのかは、検討もつかなかった。


かつてGetBackersが鬼里人と戦っていた時。
夏実は、赤屍が人を殺す瞬間を、その目で見ている。
ホンキートンクの床に飛び散った血を綺麗に落とすのは、中々骨が折れたものだ。
だが、夏実はそれでも、今まで不思議と赤屍に警戒心を抱けなかった。
夏実には、彼が好き好んで殺人を犯しているようには、見えなかったのだ。
確かに仕事の中で、敵対する相手を殺す事もあったろう。
或いは迂闊に彼を挑発する雑魚を、ゴミのように殺した事も。
だが、何もしていない人間を殺したという話は、一度も聞いた事がない。
本当に殺人が趣味というならば、運び屋などせずとも、
気が向いた時に通行人を適当に殺せば良いだけの話なのだ。
仕事の過程を楽しみたいのであって、オフの時に通行人を殺しても意味は無い、
と言われれば、確かにそれまでだが……。
「ねぇ、赤屍さんって、本当に人殺しが趣味なんですか?」
神経を逆撫でしかねない危険な質問を、夏実は赤屍にぶつけた。
彼が殺戮衝動に至った理由など、本人と銀次と、ブレイントラストしか知らない事だ。
赤屍としても、いくら打ち解けたからと言って、そう易々と教える気にはならなかった。
言葉を濁して、曖昧に答える。
「……弱い人間を殺す瞬間に、快感を覚えるんですよ。
 破壊衝動は誰しもが保有する。私はそれを、オープンにしただけです」

雨上がりの水溜りの上で、夏実の足が水音を立てて止まった。
赤屍も立ち止まり、少女の方を振り向いた。
何故立ち止まったのか、その真意を探ろうするような……
或いは、獲物を見定めるような、抉るような視線。
目が合っただけでも、眼球を裂かれそうにさえ思えた。
夏実は今日初めて、赤屍に寒気を感じた。
「私も……」
意を決して、言葉を紡ぐ。
「私も、弱い人間の一人ですよ。戦えないし、喧嘩も出来ない。
 ……赤屍さんにとっては、私も標的の一人なんですか?
 私の事も、いつか殺したいと思ってますか?」
せっかく仲良くなれた相手が、自分に対して殺意を抱いているかもしれない。
それは夏実にとって、想像だにつかない不安だった。
恐怖とも違う、言葉に出来ない感覚。
昼間、血のように赤い傘に頭上を覆われた時のような、微妙な圧迫感。
好意と嫌悪感が、ない交ぜになっていく。
態度を明確にして欲しかった。
殺したいと思っているのか、優しくしたいと思っているのか。
赤屍の二面性の奥で、自分はどのように映っているのか。
獲物か、友人か。

赤屍はそっと夏実の肩に手を置いた。
一瞬、夏実の肩が強張って震える。
努めて優しい声で、赤屍は本音を口にした。
その笑顔は、反則と言いたくなる程に暖かかった。
「……殺したいですよ」
それは、笑顔で放つような言葉ではなかった。
肩に置かれていた手が、ゆっくりと頬に添えられる。
今にも、その掌から刃物が飛び出して、夏実の顔を串刺しにしそうだった。
「切り裂いて、血まみれにして、背骨を素手で引きずり出して、
 内臓を砕いて、肉を壊して、子宮をバラバラにして、路上に捨てたいくらいに……
 あなたの事が、好きですよ」
歪んでいる。
狂っている。
こんなものが、彼の親愛の情なのか。
こんなものが、彼の愛情表現なのか。
友情とも、恋愛感情とも違う何か。
恐らくこれは、人類愛に近い感覚なのだろう。
その表現方法が、イエス・キリストの場合は弱い者を助け、親切にする事であり
赤屍の場合は、弱い者を傷つけ、殺す事……ただそれだけの、違いなのかもしれない。
現に彼がヘヴンの依頼を受けて、ヘヴンを来栖柾の元まで運んだ時など
やっている事は親切だったが、そこには優しさなど欠片も感じられなかった。
むしろ誰かと戦っている時の方が、まだ人間らしい健やかな表情を垣間見られる程だ。
やはり赤屍はAB型だ。
物の本に、AB型が内面で考えている思考は宗教がかっていて、常人には理解出来ないと書いてあった。
まさに、その通りだ。表面から察する事はおろか、内面を知ってさえ、理解が及ばない。

「あなたを見ていると、銀次君を思い出します。
 彼もあなたのように、天真爛漫で、実に輝いてらっしゃる。
 壊して差し上げたくなる程に、ね……」
赤屍はそう言うと、夏実を壊しにかかった。
そっと瞳を閉じ、顔を近づけ、唇を奪う。
ファーストキスを捧げながら、夏実は思った。
あぁ、私、今日、この人に殺されちゃうんだ……。

都内某所にある、赤屍の部屋。
簡素で、家財道具は殆ど置いておらず、室内はすっきりしていた。
しかし、その事が逆に、夏実には窮屈に感じられた。
赤屍は手袋をつけかえてから、ベッドで待つ夏実の元に戻った。
「その手袋……さっきまでのと、違いますね」
「えぇ。ラテックスという素材で出来ている、外科手術用のものです。
 ラテックスというのは、コンドームにも使われている素材でね……
 こちらの方が、趣があるかと」
悪趣味だ。
だが、赤屍らしいと言えば赤屍らしい。
彼は一瞬で右手にメスを出現させ、それを一振りした。
途端に夏実の服が裂け、裸体が晒される。体には傷一つつけられていない。
「凄いですね。服と下着だけ切るなんて」
「手術とはこういうものですよ。癒着部分を切り落とすのに、1ミリ横にある臓器は傷つけられない」
赤屍はラテックスに覆われた手で、全裸の夏実をベッドの上にそっと寝かせた。
殆ど膨らみのない乳房に手を置き、その感触を確かめる。
ただの愛撫の筈なのに、赤屍に揉まれると、触診されているような錯覚さえ感じた。
「ふむ、心音が少し高まっていますね。緊張しているんですか?」
まるで問診だ。夏実は素直に、小さく頷いた。
赤屍は彼女の胸や腹を撫で続け、体調を診ていく。
「腸の調子は良さそうだ。しかし息が少し乱れてきていますね」
赤屍は姿勢を落とし、夏実の乳房に舌を突き出した。
円を描くように、ゆっくりと舐めずり回していく。
ビクン、と夏実の体が震え、「んっ」と声が漏れた。
だが、夏実の反応をうかがう赤屍の目は、戯れる恋人の目ではなく、
実験動物を見るマッド・サイエンティストのようだった。

赤屍はラテックスの指を、夏実の陰部に這わせた。
コンドームと同じ素材のこの手袋は、清潔で安全だ。
ラテックス・アレルギーでもない限り、相手に害を及ぼさない。
その滑らかな肌触りが、夏実の陰唇と陰核を、柔らかく崩していく。
「ひっ……あっ、ふぁ……っ」
「気持ち良いですか、夏実さん。痛くありませんか?」
そう尋ねる赤屍の声は、あくまで問診中の医者のようだった。
さながら、患者の腹を押してみて、その痛み具合や硬さから、腫瘍を見つけるかのようだ。
赤屍は腫瘍を探るかのように、陰核を重点的に責めた。
「ここ、硬くなってますね。大丈夫ですか?」
「ひぅ、くっ……やぁあん、もうっ、あぁっ……」
「……おや、粘液が分泌されてきましたね。正常な反応です」
処女の夏実が、短時間の愛撫で愛液を漏らすなど、余程のテクニックだ。
「な……なんで、こん……なに……上手いんです……か? 赤屍さん……」
「経験則という奴です……私程になると、どの女性の、どのポイントが
 感じるかなどが、手に取るようにわかるんですよ……」
「あっ……す、ごいですね……」
溜息交じりに、途切れ途切れにしか話せない夏実と違って、赤屍は余裕気な表情だ。
夏実にはそれが、殊更悔しかった。だが、赤屍に勝てよう筈も無い。
諦めてこの場は彼の掌の上で鮪になっていようかと考えていると、
夏実の下半身を異変が襲った。
「うっ……ま、ちょっと待って、赤屍さん……」
「おや、どうしました?」
夏実は、しどろもどろになりながら答えた。
「そのぅ……オシッコしたいから、トイレ貸してくれませんか?」
バイトの休憩時間にコーヒーを飲んだのがまずかったかもしれない。
利尿作用が働いて、こんな時間になって尿意を催したというわけだ。
赤屍はM字開脚で彼女を抱きかかえて、バスルームまで向かった。
「やっ、ちょっ……赤屍さん!?」
「ついでです。採尿しましょう」
夏実は有無を言う暇もなく、バスタブの前で足を広げさせられた。
剥き出しになった赤屍の陰茎が夏実の尿道に擦れ、刺激を与える。
「ひぃっ、ぃや、ちょっと、待っ……あ、だめ、あぁ……」
夏実は堪えきれなくなって、空の浴槽に聖水を垂れ流した。
高度があったために、音はジョボジョボ……といった控え目な音ではなく、
ビチャビチャビチャと、やや激しいものになった。
夏実は真っ赤になった顔を両手で必死に隠して泣いた。
「うぅっ、うえぇ……ひっく、ふぐ……見ないでぇ……っ」

一度失禁してしまった夏実に、もう恥じらいなど無かった。
ベッドに戻ると、泣きはらした顔をろくに拭いもせず、黙って自ら股を開いた。
赤屍は夏実の腰を持ち上げて固定すると、そのまま挿入を開始した。
「それでは、注射をしましょうか」
「……あぁっ!」
「大丈夫ですか、夏実さん。まだ先端が入っただけですよ」
「あ、あ……かはっ……」
「痛かったらすぐに言って下さいね。もっとも、抜く気はありませんが」
「い゙、痛っ……ァ゙」
ゆっくりと時間をかけて、赤屍のモノが夏実の中を壊していった。
抵抗の膜を引き裂き、赤い血が滴り落ちる。
夏実は今や汗まみれになり、息も絶え絶えな状態だった。
「それでは、液を体内に注入しましょうか。
 各種のミネラルやビタミンを含んだ、栄養価の高い液体ですよ」
夏実が痛がるのも気に留めず、赤屍はピストンを動かし始めた。
「あっ……痛っ、痛いっ……い、あっ、はっ……あはぁっ……いぎっ」
吐き出される大量の二酸化炭素に混じって、痛みに耐える少女の声が聞こえる。
だがこれも、すぐに快感に溺れる中毒患者のような声にかわる。
赤屍は経験則から夏実のGスポットの正確な位置を割り出し、そこを重点的に狙った。
「あぁん! やんっ! あふぅ! んやっ! ふあ、はっ、んあぁ! んにゃあぁ!」
いつしか夏実の声は、人間でない何かになっていた。
乳首をビンビンに勃たせ、仰け反り、シーツをぎゅっと握り締めて、上下の口から涎を飛ばす。
もはや痛みなど、欠片程しか感じていなかった。
そしてその痛みすらも、快感を助長する要素に過ぎなかった。
「あっ、かはっ、赤屍……さぁん……」
「もうそろそろオルガズムのようですね……では、射精して差し上げましょう」
「あぁっ、イク、イっちゃぅぅぅぅぅぅ!!!」

赤屍の腕枕に頭を預けて、夏実は心地よい余韻に浸った。
「赤屍さん……なんで、私を殺さないんですか?」
夏実は、てっきり行為が終われば、自分は赤屍に殺害されると思っていた。
しかし、いつまで経っても赤屍は自分に手を下さなかった。
「申し上げた筈です。あのコーヒーが飲めなくなるのは、惜しいと」
赤屍は――彼らしくない事だが――夏実の頭を、そっと優しく撫でて答えた。
夏実は、女性のように冷えた赤屍の胸に額をつけて、甘えるように眠りに落ちた。
赤屍は思った。
本当に、この少女と天野銀次は似ている。
血液型だけの問題ではない。気質そのものが似通っている。
ひょっとするとこの少女は、天野銀次の代わりに壊せるよう、
アーカイバが自分に寄越したプレゼントなのでは……とさえ思える。
赤屍はメスを取り出し、そっと夏実の乳首に当てた。
無論、そのまま切り落とすような事はしない。
だが、いつかは……

それまでは、天野銀次の代わりに、この肉体を蹂躙し続けてやろう。
いつか精神崩壊し、元の水城夏実は死んだも同然のような、性奴隷に仕立て上げてやろう。
それが、この少女を殺すという事だ。
赤屍は手袋を外した素手で、弄ぶように夏実の乳首を指先でプニプニと押してみた。
気づかずに眠りこける少女の寝顔は、間抜けな程に可愛らしかった。