連日の他部局からの突き上げに辟易していたコム局長(当時)の元に朗報が届いた。開発チームがグラビウムを用いたコンピューターチップの開発に成功したのだ。さらにエネルギー源となる新合金グラビウムΔ…通称バードニウムが開発され、停滞していた転送型のCS開発は一気に進むことになった。
 また、この時期地球から新たな技術のデータがもたらされた。後に『星野システム』の名で知られるようになるそのエネルギー変換システムは、銀河連邦の技術力すらはるかに越えており、CSの転送技術に新たな革命をもたらすかと思われた。だが『星野システム』の全貌はとあるトラブルでバード星には届かなかった。
 トラブル…、そう、それはまさにトラブルだった。

 第4号の試作転送型CSで転送実験が成功したその日、銀河連邦警察最高顧問会議は転送型CSの開発の中止を決定した。地球技術不要を提言するハンターキラーのレポートを根拠として、サハラ長官(当時)を始めとする最高会議は全員一致でその決定を下した。コム局長(当時)は強行に抗議したが、決定が覆ることはなかった。
 決定を知ったDr.ジーナスはイオン星の実験基地からバード星のサハラ長官を訪ねて真意を質したが、結局対立は激化、ジーナスはその場で辞表を提出した。特捜6課はそのまま事後処理を拝命し、失意のうちに完成したばかりのギラン円盤の解体に取り掛かった。
 地球は保護惑星指定の取り消し検討の対象となり、総ては終わったかに見えた…。

 だが事態は劇的に変化した。
 星雲大学のタカセ教授第4次太陽系発掘の研究報告を発表したのだ。
 詳細は略すが、そのレポートによれば、地球には『伝説母星』直系の『原型人類』が生き残っていたのである。その他にも最初にボイサーと接触した特殊部隊がバイオ星人でなく伝説の民族・デンジ星人だったことや、その他にも暗黒銀河の暗黒勢力に滅ぼされたと言われる宇宙民族が多数子孫を残していることが判明したのだ。
 そして事態の変化に銀河連邦最高顧問会議が結論を出す間もなく、第二の報告が入った。消息を絶っていた宇宙刑事ボイサーからの第1級緊急連絡が回収されたのだ。その記録からボイサーの動向の総てが判明した。それによれば、ボイサーの宇宙船『アラーの使者』が破壊されたのは、ハンターキラーからボイサー行方不明の報告が入った時点より、かなり後であった。つまりボイサーが地球上で活動しているにもかかわらず、ハンターキラーはボイサーが行方不明であると報告したことになる。さらに『アラーの使者』を攻撃したのは獣星帝国マクーの機動部隊であることも判った。それは地球がマクーの攻撃を受ける可能性が高いこと、そしてマクーに『アラーの使者』の性能を教えた者がいることを示していた。その疑念を証明するように、ハンターキラーが姿を消し、その直後、彼がマクーの親衛隊の指揮を執っていることが判明した…。
 当然の話だが、銀河連邦警察は大混乱に陥った。特に最高顧問会議の受けた衝撃は激しかった、ハンターキラーの進言を受けて重大な決定を下した直後だったからだ。
 特命を受けた特捜1課の捜査官が急遽地球に派遣され、ボイサー、ハンターキラーの両名を捜索したが、手がかりはほとんどなかった。それでも以下の点が明らかになった。
 1つ、ハンターキラーは『地球平和守備隊』からの情報を止めていた。
 1つ、ボイサーはバード星との連絡を完全にハンターキラーに委ねていた。
 1つ、ボイサーは『星野システム』と呼ばれるオーバーテクノロジーを追っていた。
 1つ、地球にはすでに獣星帝国の先遣隊が潜入していた。
 1つ、ハンターキラーから銀河連邦警察の武器データが漏洩した

 ハンターキラーは次期銀河連邦警察長官の最有力候補でもあった。そのハンターキラーが造反したのである。銀河連邦警察は上を下への大騒ぎとなった。
 特に親友二人を同時に失ったコム局長(当時)の落胆は激しかったという。
 だがこの事件がコム局長(当時)と転送型CS開発チームにとっては朗報となった。






最終更新:2011年01月16日 15:57