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敗戦の責任。一見重苦しくて、見栄えのいい理由。

スザクがブリタニアに送りつけられたのは、そんなことがきっかけだった。

嵐の前の静けさ


スザクが生まれ育った国は、小さいがそれなりに豊かな人間の国だった。そこで純真な少年としてまっすぐに育てられた彼は、強国ブリタニアの軍が近づいてくる少し前に、父親が国王であることを知る。

相続権のある男子に恵まれなかった国王の、庶子ながら唯一の男子として、スザクは国民に紹介された。それが、もう若くは無い国王の世継ぎを立てることで、ブリタニアへの抗戦意欲を国民から引き出す目的であるとは知らされずに。

ブリタニアが彼の国に迫ったとき、スザクは徹底抗戦を主張する父を殺した。

平和的解決を訴えた国王代理のスザクだったが、国は半ば蹂躙され、スザク自身は、『敗戦』の責任を問われて、ブリタニアへ人質として出されることとなった。



「人質だと?」

あがってきた報告を盤遊戯をしながら聞いていたルルーシュは、不機嫌そうに一瞬手を止めた。

「はい。表向きには、ブリタニアへの臣従の証として。でも、裏の合意文書では、国内では身の危険があるために保護をしてほしいとか・・」

「単なる厄介払いだろう。愚鈍な人間はブリタニアには必要ない。追い返せ、カレン」

報告をしていた赤髪の少女は、困ったように眉をひそめる。

「でも殿下。以前他のエリアでシュナイゼル殿下が似たようなケースを処理しています。そのときは人質と一度謁見し、騎士とした上で、殿下の代理人として統治を任せたと聞きます。一度会って本当に愚鈍かどうか確かめてからでも…」

一瞬巡らせた視線が明らかに怒りを帯びていたので、カレンは一度萎縮する。

しかし。

「一応会っておけ。その愚鈍さのお陰でこんなに早く仕事が終わったんだ。礼の一つくらい言ってやれ」

盤をはさんだ向こう側で、無表情に遊戯の相手を務めていたC.C.が役目の終わった駒を指で弄ぶ。

「そうか?」

「追い返して万が一、向こうの言い分通り命を狙われてみろ。抗戦熱が再燃して、再侵略ということになりかねない」

「なるほどな。戦いはスマートに手堅く決めるのが一番だ」

そう言いながら、ルルーシュがにやりと笑い、盤上の駒をひとつ動かす。

情勢が傾いた一手に、C.C.が不機嫌そうに盤上にかじりつく。

有利になったルルーシュは、優雅に微笑んで、

「わかった。カレン、その人質と謁見を行なう」

「えっ」

「相手は仮にも交戦国の元王子。本人の口からブリタニアへの臣従の言葉を誓わせれば、国内の反逆者は皆、王子の敵。反逆を目論む者が現れても、彼らは国を取り戻すという目標を使うことができない。元あった権威を取り込むことで、反逆者はブリタニアの敵となる。美しい構図だ。それに俺も皇帝を目指す王子の一人。小国ひとつ落とすのに、手間取ることもあるまい。敗者にそれなりの恩情をみせる場面は、王の器をみせるにはふさわしい」

「わかりました。謁見の準備をします。それから、送られてきた“血族”の縁者ですが、確認のほうをお願いします」

カレンが退室していくと、腕を組んで悠然と、今度はルルーシュが駒を弄ぶ。

盤上を睨むC.C.は、ぽつりと、

「正直、あのタイミングで担ぎ出された子供だ。お前が愚鈍と思うのもわからなくはない」

とつぶやく。

「だが、愚鈍なら流れを変えるようなまねをするとおもうか?あのタイミングで父親を殺せるものか?余程の大馬鹿でなければ無理だ」

「その余程の大馬鹿でないという保証は無いが」

「保証は無いが、確率は高い。万が一にも国王の跡継ぎに指名したんだ。庶子でな。カレンの話では、あの国は庶子に対してかなり厳しいらしい。それを承知で担ぎ出したとなれば、そのあたりの批判を無視できるほど出来ると判断するほうが利口だ」

C.C.が白を動かす。

「人間がいかに利口でも、血族の魔術を前にしては無力。俺にはC.C.が何を気にしているのかわからないな」

「私は長い稼動経験を踏まえた上で・・」

「とりうる最善策を言ったまで、か」

押し黙るC.C.の前で、黒のナイトが鮮やかに白のクイーンを討ち取る。

「最善では駄目なことも世の中には沢山ある。パペットとはちがい、人間はより上に行く為には、最善では足りないこともある」

クイーンの背後にいたポーンがナイトを討ち返し、更に黒側からはルークが突進してくる。

眉をひそめるC.C.が次の手を考えはじめる。

「皇帝の椅子は、騎士侯以上の貴族たちによる投票で決まる。その投票結果で選ばれたものが、神に認められたとき、次代の皇帝となる。シュナイゼルが代理統治を認めたのは恩情ではない。シュナイゼルを後ろ盾にもつ騎士を、投票権を持つ人間を一人でも多く抱えることが、奴の目的」

「なるほど。二番煎じか」

「短期的には最善の手だが、長期的には喉から手が出るほど欲しい駒だろう。打たねばならない、最高の一手だ」

C.C.はひとしきり盤上を眺めた後で、ひとつ大きく溜め息をつく。

「遊びはやめだ。お前も謁見の準備があるだろう」

「俺の勝ちだな」

「勝ちを譲っただけだ。次は確実に首を取る」

ルルーシュは軽く笑いながら立ち上がり、椅子にかけてあった上着に袖を通した。

そのときはまだ、その謁見が彼の人生を大きく左右する出来事であろうとは知らずに。