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顔を背けたひまわり


 深夜の執務室。

 完全な人払いのされたそこに、元父と娘が対峙していた。

 尋問のような父の問いに、娘であったヴィクトリアは淡々と答えを並べる。

「エリア11のあれは、未だ輝きを増す気配はない。間もなくお前の側の布陣は整うな?」

「枢木スザクとはどのような形にせよ、あちら側とよりはましな関係を築きつつあります。ジノ・ヴァインベルグの手綱も、変わりありません」

「枢木は、あれが信頼し、あれを裏切った、最も大切な存在だ。お前も空気でわかろう?ヴィクトリア。枢木があれをどう思っているのか、どうしたいのか…」

「はい…」

 枢木スザクの、顔を合わせてから一週間の行動は、激しく裏表のある奴だということだった。

 ジノに甘えがあるのは、ジノが刷り込んだことだろうから、問題にはならない。あれがひとを甘やかすのは一種の癖だ。他人を甘やかして構われることに喜んでいるのだから。

 ところが枢木は、ジノとアーニャ以外には、それこそ“騎士の中の騎士”という仮面で誰彼構わず温和な様子を見せる。

 それも、ヴィクトリア以外に。

 これは初対面ではなく、意図的に避けているな。女の勘がそう告げていた。

「陛下。枢木スザクが、鍵への最後のスイッチ…と考えてよろしいのですね?」

「そう焦るでない、ヴィクトリア。時が来ればいずれ、道は定まる。それまで二人の手綱は離すな」



「枢木卿。ファランクス特務総監からだ」

 手渡しで仕事をしていた彼のもとに分厚いファイルを届ける。

 見上げてきた顔が、一瞬おびえたようになるのを見逃さない。

 この男は、私に怯えている。同じ円卓につくというのに。

「あ、りがとうございます…」

 消え入りそうな声で、例を言うと、ぎこちなく首を元に戻して机の上の端末に顔を向ける。

 隣の椅子に座ってみると、わずかに身体を離して座りなおした。

「ベアトリスが嘆いていたぞ。書類の整理がうまくないと」

「すみません」

 視線は端末の画面からちらりとも離さない。

 キータイプの指がもつれている。

 私が側にとどまることに、明らかに動揺している。

「私に謝られてもな。今度ベアトリスに甘いものでも差し入れてやるといい。あれは見かけによらず甘党だから」

「そうなんですか?」

「あぁ。さっきもどこぞの殿方から山のように差し入れられたとかで、食べきれないからと分けていただいてきた。枢木卿は甘いものは?」

「大丈夫ですよ」

「なら、すぐにお茶を入れてこよう。休憩をしないと、能率が落ちる」

 そういって席を立つと、拒絶されていたはずの彼の意識が、私の気配を追っているのがわかった。だてにナイトオブツーを拝命しているわけではない。

 皇族として生まれ、人並み以上に注目を浴び、人並み以上に命を狙われてきた。

 暗殺にあいそうになったこともあるし、自ら取り押さえたこともある。

 談話室備え付けの給湯室から、カップとお湯をとっていると、

「手伝います、自分も」

と、避けていたはずの男がそこに居た。




 ナイトオブツー、ヴィクトリア。

 円卓の騎士に任じられたのは、4年前と聞く。

 この一週間で仕入れた情報を整理すると、皇帝が最も可愛がった皇女という切り口が大勢の認識だった。

 ルルーシュの母、皇妃マリアンヌと、ヴィクトリアの母親は姉妹で、同じく庶民の出。

 皇妃マリアンヌの暗殺後、ルルーシュたちは日本の僕の家へ。

 ヴィクトリアは、皇帝の手厚い庇護の下、12でジノを選任騎士に抱え、14で自我を押し通し皇籍を離脱した。

 その条件として、皇帝はナイトオブラウンズになる実力を彼女に求めた。

『どうりでルルーシュにそっくり』

 気持ち悪いくらいにそっくりなのだ。

 詳しく調べれば、誕生日から血液型、チェスの腕前まで、僕の知るルルーシュそっくり。

 最初は、皇帝が自分に嘘を吹き込んでいるのかとさえ思った。

“ルルーシュは、最早ゼロとなることはない場所に隔離してある。お前が心を削ることはない”

 偽りの記憶でも、自分のことを忘れても。

 愛した彼が、無事に人並みの人生が送れれば、自分が修羅の道を選んだ甲斐がある。

 しかしながら、ルルーシュではないと頭の中に言い聞かせても、彼女と接するのは、骨が折れることだった。

「砂糖はひとつでいいよね、る……ヴィクトリア卿」

「あぁ、すまない。ありがとう」

 危うく友の名を口走りかける。

 相手も知らぬはずはない名前だけに、ぼろを出してしまえば、相手に失礼を与える。

 後ろ盾はあのロイド・アスプルントただ一人。一応シュナイゼル殿下も後見のひとりではあるが、皇帝に帝位争奪の競争で一切甘えを許されていないシュナイゼルと、皇帝から鶴の一声を引き出せる立場にあるヴィクトリアでは、危ない橋を渡りかけかねない。

 アッシュフォード学園生徒会で、書類整理の合間に茶をたしなんでいた彼と、寸分違わぬ造形美の彼女を前に、手が震えるほど、自分は緊張していた。

「枢木卿」

「は、はい!」

「砂糖…入れすぎではないか?」

「ふえっ!?」

 思考さえしどろもどろになっていたのだ。

 懐かしい彼に重ねたがる自分と、冷静に7の席に座る自分と、理性的に彼女を見るべきだと諭す自分。

 三つ巴の争いが終止符を打たぬ間に、ティーカップに角砂糖のピラミッドを築いていた。

「う…」

 さすがに、これは飲めない。

 きっと下のほうではすでに砂糖がドロドロで、ティースプーンで掬えるほどの飽和状態で間違いない。

 せっかく手ずから彼女に入れてもらったものだったが、カップを持ってシンクに向かおうとたちあがりかける。

「まてまて枢木卿。捨てるつもりか?日本の文化では、もったいないとかいうのではないか?」

「でもこれでは甘過ぎて…」

「とりあえず、上に乗ってるやつをどけろ。私が半分飲んでやるから」

 困った笑顔。優しくゆるむアメジスト。

 懐に入れた人間には、とことん甘い彼の、自分だけが独占していた笑み。最愛の妹ナナリーは、彼のそれは見られないから…僕だけの至宝だった。

 彼女は、出したカップの中身を作業的に飲み干すと、僕の激甘紅茶のカップから、半分だけ、溶け残りのドロドロ砂糖まできっちりと、ティースプーンを使って書き出す。そして、ティーポットからまだ暖かいストレートティーを継ぎ足した。

「まだちょっと甘いけど…まぁ飲めなくはないだろう」

「すみません」

「謝るな。こんなことで、私たちは…同じラウンズだろう?」

 ぴくりと肩が揺れる。

『俺たち、友達だろ?』

 同じ声音、同じ口調で紡がれた言葉。

 もう…聞くことはないだろう、優しい言葉。

 注がれた紅茶が、見る間に涙でゆがんでいった。

「く、枢木卿?私は何かおかしいことを言ったか?」

 何が起こったのかよくわかっていないのだろう。

 当たり前だ。あの言葉は、僕とルルーシュだけの言葉なのだから。

「名前」

「なに?」

「スザクでいいですよ。むしろスザクと呼んでください。その代わり…」

 名前で呼べ、様はつけるな、姫と呼ぶな。

 初めて会った日から、ジノに向かって口酸っぱく彼女が言っていた。

 アーニャなどは、気にせず呼び捨てだ。

 でも、彼女はまだ“枢木卿”と、距離を置く。

 置かせていたのは、たぶん余所余所しい態度を取り続けた自分だろう。

 だからすこしだけ申し訳なく。そしてせめて、と甘い夢が誘う。

「ヴィクトリアと、お呼びしてもいいですか?」

 友達…にはなれないかもしれない。

 でも、気の置けない同僚くらいにはなりたいとおもう。

 彼そっくりの顔を目の前に、どうしても他人行儀ではいられない。

 耐えかねてすがったその一言に、彼女はあっけなく、

「別に構わない。……スザク」

と呼んでくれた。

 戸惑いがちな小さな響きの自分の名前。なんと久しく甘美な声か!

『今ならランスロットの無謀な実験に付き合っても生きていられる気がする!』

 舞い上がっていると、今度は変なものを見たときのような顔のしかめ方で、

「…今日は変だ。砂糖入れすぎたり、急に泣き出したり…。調子が悪いのか?」

と、変な方向へ勘違いをされてしまう。

「大丈夫です。ちょっと煮詰まっていただけなので…お陰ですっきりしました」

「それなら、いいんだが」

 完璧なまでにかつての恋人そのままの彼女に、スザクは溺れかけていた。



『手綱は放すな、か』

 父の望みが何なのか。

 ヴィクトリアにとって、こうして宛がわれる男たちに、何をしてやればいいのか。

 幼い頃から、理解に苦しむことは多々あった。

 おそらくそれは過去形ではなく、現在、未来に連なることなのだろう。

 しかし、枢木スザクの表情を見ると、その結末ももうすぐ見えるようなきがするのだ。



 ひとり泣く日々は、残り短い。



スザク、ヴィクトリアの罠に落ちる(笑)

ジノスザはどこにいったんだよw
あんなに友達とジノジノ言い合うメールしてたのにwww

まぁ…次回がありますよね。次回が。

以下、全く関係アリマセンが。

今日、某牛丼屋チェーン店で、丼モノに半熟卵つけて頼んで…自分失敗したなと思いました。

自分以外店内男だけの空間で、白っぽいナニカがかかった豚丼にがっつく女一匹。


絶対エロかったね、自分!卵割ってかけてみて、自分でひいてたもん!!!


今度はスザクにやらせるかな。。半熟卵プレイ…どんなだよ。