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7年前のあの日。
日本はブリタニアと戦った。

勝ったとも負けたともいえない中に。
沢山の屍と共に。

日本は生き残った。


夏を目の前に 1話




 いずれあるであろうことを、唐突に、しかも断りようもない状況で持ち出されるということは、さすがに18歳なりたての男心を打ち砕くために十分すぎた。
「狂ってる……」
 自分の性格がいいものじゃないってことは十分承知だ。
 時々“お前は枢木じゃなくて黒るぎか狂う気だろ”って突っ込まれることだってある。
 肩書きと、生まれのよさを醸し出す余所行きのスマイルに、打ち抜けない女は居ないだろう、なんて、悪友にいわれたこともある。
 高校卒業までは自由に遊んでいられると思っていたのに。
「くそ親父。。。」
 7年前から婚約者を軟禁している。
 頭が真っ白になるかとおもった事実。
 ふっとぶなんていう次元じゃないだろ。のしつけて返すにしても時間がかかりすぎだ。
 義務教育を折り返しもしていなかった頃に、決まっていたというのか。
 いや、さすがにそんな時代に婚約者なんてものを持ち出されても、まともに相手にできたかは怪しいが。
 どうしようもない。
 ほんとうに……
「はいりますよ、母さん」
 そういって、乱暴に母親の私室の引き戸をひいた。



 本領を日々預かる執事と、普段はトウキョウの屋敷にいる母親(それも、実母ではない、父の後妻)。
 二人と面と向かうのは、父親に会う以上に久々だった。
「なんで父さんが来なかったんですか」
「ゲンブさんは、今日もご公務です。こんな田舎に戻ってこれる時間なんて、会期中にあるはずないでしょう」
 父親は、総理大臣。もう何年もだ。
 別にそれを責めているわけではないし、嫌っているわけじゃない。
 ただ、会っていないから馴染めていないだけだ。
「スザクももう18です。向こうの国とは双方が18になってから結婚、という話になっています」
「この間の電話でそれは聞いたよ。なんでそんな大事なことを誕生日過ぎてから言うのさ!!」
 一人息子の結婚だ。義理にしても女親として、もっと普通は気合を入れた準備とかをするんじゃないのだろうか。
 7年も息子の嫁になる人間を、軟禁していた事実を、公私共に支えているこのファーストレディが知らなかったはずはないのだ。
「別に、あなたにとっては大事な話ではありませんよ」
 理解できぬ感覚と理論。
 電話越しに淡々と話をしていた父親では埒が明かないと、実家で話をしようと約束を取り付けたのは一週間前だった。父親が一週間で予定を空けてくれるとは半ば思ってはいない。さっきの言葉は、ある意味駄々をこねたうちにはいる。
 本領を指定したのは、せめて執事の男がまともな感覚で間に入ってくれればいいと思ってのセッティングだったが、彼は同席はしても、口を挟むつもりはないらしい。
「紙の上の関係だけでいいの。それで双方丸く収まるのだから。むしろ、関係が深まれば困ったことになる。だから、あなたに恋愛感情を求めるような相手ではないわ」
「相手じゃない、って……ブリタニアの皇女様だよ、仮にも。事情を説明してよ」
「それはまたお前の心の整理がついてからします」
 ため息すらもう出ない。
 表沙汰になって、ブリタニアに糾弾されたらどうするつもりだろう。弱みを見せればどうなるか、知らないはずはないのに。
「現状維持であれば、ブリタニアとの関係に問題はありませんよ。結婚は、“戦利品”を丸く言っただけのことです。ただ、お互いの外聞がありますから、少し言葉を見繕ったに過ぎません」
「向こうもこういう扱いを承知して差し出してきたってこと?」
「そう。だから向こうの心配はしなくてもいいの」
 なんということだろう。
「年明けに、一応婚姻届を書かないといけないから、サインの練習だけはしておいてね。あとは何もないわ」
 心の底が冷えるのを感じた。
「……彼女は今どこにいるんですか」
「分家の離れだけれど…会っていくつもり?」
「一応。元々それも兼ねて約束の場所をこっちにしたんです」
「やめておきなさい」
 母親は、こちらの言い分を聞かなかった。
 だから、母親の言うことは無視した。



 枢木の本領は広い。
 小京都を思わせる一族だけの里は、完全な私有地として、外部からの“他人”の出入りを妨げている。四方は水路で遮断されており、完全に閉鎖された空間とも言える。
 彼女を預かっていると聞く分家は、ほとんど面識もないような人と場所にあった。
 連絡を入れてから、本家の人間である僕が訪れると、怯えるように道を開けた。
 分家の女主人は、
「全てお申し付け通りにしておりますっ…」
と、ヒステリックに引きつった、か細い声で言ったきり、何も言わずにで離れの鍵を渡した。
 手入れのされた散り際の花菖蒲たち。池の中央、木製の橋の先に、それはあった。
 無骨な鉄扉。窓という窓には鉄格子がはまり、二階建てのそれは奇妙に自然の中で浮いていた。
 橋の袂で一度それを一望してから、進んでいく。
 あまりに庭の美しさに馴染まないそれは、自分の踏み入れる運命のようなものなのかもしれない、と一瞬だけ思った。



ずっと一人だった。

贖罪の道に、ただ一人立っていた。

何年も一人だった。
 外から隔離されたそこは、自分を生かして置く空間。云わば、鳥かごか動物の檻。
 ガラス張りで外は見えるが、それは防弾ガラス。外側には鉄格子。ショーケースと呼ぶには無骨すぎるかとおもう。
 何年も、おそらくは決まった時間にだけ、食事やら必要なものが届き、決まった周期で時折掃除の手が入るだけ。冷たいショーケースの中の、手入れをしに。
 当たり前だ。自分はモノ同然なのだから。
 そう思って、ここにいた。


『誰だろう』

 ドアの鍵をいじる音がして、うつらうつらとした夢から目を覚ます。
 昼の食事は先ほど終わったばかりで、世話人がくる時間ではないはずだ。機械仕掛けの時計はないが、薄曇の向こうの太陽も、それほど夕方近いとは思えない位置。
『どこかに出かけるから、早くに持ってきたとか……そんなところだろうな』
 前にも無かったわけじゃない。
 だからそういうことだろうとおもって、再び昼の空気にまどろもうとしていた矢先。
「こんにちは、ごめんください」
 階下の玄関から、他人行儀な声がして、身を起こした。

 出て行くべきだろうか。でも、運命に招かれざる客なら?

 出て行くべきではない。でも、客を放っておくのか?

 堂々巡りをしていると、玄関で靴を脱ぐような音がして、身を硬くする。
『あがってくる、のか?』
 息を殺して、動かずに居ると、一間しかない一階をさらりと見て、階段を軽く駆け上がってくる音がした。
 とんとん、と音がして、二階にやってきたのは、見覚えのないミドルティーンの少年。くるくるでふわふわの茶髪。深い翡翠のような瞳の…日本人。
 タオルケットとクッションを持ち出して、廊下の片隅に座り込んでいた私と目があうと、ぴしりと動きを止めた。
 二人の距離は、数歩。見下ろしてきた瞳が、久々に見た他人だった。



『どうしよう・・・』
 しっかりとした内装は、軟禁場所とはいえ美意識のある枢木家御用達の建築屋の仕事で。木目の美しい階段をのぼりって見渡そうと振り向いたところ、廊下の隅に人がいた。
 切りそろえられていないが、艶のある長い黒髪。じっとこちらをみつめる紫玉。顔立ちは、隙のない完璧さの美人で。日焼けのない真っ白な肌。
 こんな美人とは、想像もしていなかった。
 それ以上に予想外だったのは、自分を見つめる厳しい瞳。
『警戒の仕方が、プロだな。さすが皇女様かな』
 じっと、動物同士が間合いを計るときのような、見つめあいが続いた。
 先に沈黙を破ったのは、向こうだった。
「誰だ」
 短い言葉だ。でも、簡潔ながらにも、向こうが日本語を解することを理解する。
『言葉が通じなくて、でてこなかったのかと思ったけど、意思疎通はできそう、かな』
 向こうの母語で込み入った話が出来るほどの、首相の息子として褒められた学力ではないのは自覚している。
 胸をなでおろしながらも、警戒している相手との会話をはじめた。
「枢木スザクといいます。ヴィクトリア皇女殿下ですね?」
「枢木……枢木首相の血縁者か?」
「一応、息子です」
 身分を明かすと、一瞬身をひいていた。
「色々お話しなければならなくて、今日はきました。姫、日本語で話をして平気ですか?」
「…本国で日本語の会話は修学してきた。使う機会がないので、変になっているかもしれないが……」
「わかりました。なるべく簡単に、話します」
 誠意をみせなければならない。
 おちない女は居ないと言われた、会話の技量をフル活用してでも。
「いくつか確認したいことと、僕から謝っておきたいことがあります」
「あやまる…?」
「先週まで、僕は貴女がここにいることを知りませんでした。ずっとお一人にしたことを、まずは謝罪させてください」
 両親の狂気とも思える方法とはいえ、知らなかったから責任0と胸をはれるほど、自分の神経は図太くはない。
 女性には誰であろうと誠心誠意、まともな感覚でつきあうのが流儀なのだ。実家が実家だけに、相手にまで枢木のやり方を認めろというつもりは、持っていなかった。
 頭を下げて、返事を待ったが、身動きする音すらしない。不審におもってゆっくり顔を上げると、困ったように彼女は自分を見ていた。
「お許しをいただける状況ではないのは、理解しています。枢木家が尋常ではないもてなしをしていることは…」
「分相応」
「………え?」
「違ったかな…たぶん、分相応、であっているはず」
 謝るだけ謝ってから、建設的な話し合いに持ち込むつもりだったのに。
 彼女は滑らかな日本語で、そう言った。
「私は、私が日本にした仕打ちの、正統な評価を受けてここにいる………謝らなければならないのは、私のほうだ」
 うちひしがれたような、深い悲しみに紫が沈む。
「問われた責任を果たすことが出来ないから、こうして償っている。枢木スザク、あなたの落ち度など、些細なことです。気にしないで頂きたい」
 視線を逸らされて。
 まるで誰かを喪ったような表情で、俯く彼女に、わけがわからなくなった。
「責任?なんのことです…?」
「聞いていないのか?私には、償っても償いきれない責任がある。七年前、日本にも、ブリタニアにも、命でも贖いきれないひどいことをしたんだ」
「七年前……」
 ブリタニアが日本に攻め込んで来たのは、彼女が来た年と丁度重なる。いや、彼女の来日の方が半年くらい遅かったかもしれない。
 真夏の開戦。3ヶ月にも及ぶ激戦の末、一千万人近い人の死を乗り越えて、日本は生きながらえた。攻め落とすことの出来なかったブリタニアは、諸国から声高に悪を唱えられ、その代償として、日本の復興補助をはじめとした、様々な償いをすることとなった。
「ここに来ることが許されたというなら、あなたが私の名目上の婚約者ということなのだろう? 紙切れの上で、これからあなたの様々な自由を阻害することになるかと思う。私は…それをずっと謝っておきたかった」
 自分の自由は皆無なのに、他人を気遣う少女。
 なぜこうなったんだろう。
 知らない過去が、奇妙に重く、色濃く、激しく、自分をひきつけている。
 弱らされておきながら、未だにこれだけ美しい姫君。
 手を出すことを禁じられた、未来の花嫁。

 一歩踏み出すことなど、造作もなかったはずなのに、しばらくそこに立ち尽くしていた。




R2真っ盛りに、、、R1な時間軸です。

そのくせ、スザクが18になっていたり、この後はラウンズが出てきたり、ロロもそのうちでてくるし、R2フレーバーな気分R1。。。

誕生日だからこそ、スザクをいじめる話なんじゃないか?ってくらい設定がジノスザより遥かにイタイデス。

ヴィクトリアには優しいんだけどねぇ、、、こっちの設定、、、、


たぶん!