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「お前…それで俺の親友だと何年も言い張ってたのか?」

 親友の嫌味な責め句に、曖昧に笑うしか出来なかった。

夏を目の前に 2話



 僕、枢木スザクは学生だ。それもまだ、高校生。
 一応今年で3年だけど、大学までエスカレーターで進めるから、自分を含め周囲も、受験を意識せずに伸び伸びと高校生活を謳歌している。
「知らなかったことは彼女にも謝ったし、謝罪する義務を感じたから君にもこうして話してるんじゃないか」
 昼休みの屋上で、買い込んだ袋一杯のパンを親友と囲む。
 無二の親友であるルルーシュ・ランペルージは、婚約者であるヴィクトリア・ヴィ・ブリタニアの異母兄でもある。8年前に皇室を飛び出してから、ランペルージ姓と名乗るようになり、今は学校を経営するアッシュフォード家の保護を受けている。訪日時以来の友達だ。
「…自分から聞くのは癪だが」
「なに?」
「ヴィーは……ヴィクトリアは俺に似てただろ?」
 まじめな顔をしてたずねてくる親友に、思わずぷっと噴出した。
「何がおかしい!」
「…だって、君、綺麗だけど、妹とはいえ女性と比較して俺に似てただろ、ってどういう自意識過剰なわけ」
 まじめにそう突っ込むと、不機嫌に顔をそらした。
 ふふふ、と人当たりのいい笑みを浮かべてやると、
「で、どうなんだ」
と、ツンデレをしながらもしつこく聞いてきた。
 だから、あっさりとそれを認めた。
「まぁそうだね。ちゃんとルルみたいに髪のお手入れすれば、そっくりにみえるのかな。髪が長くて。いきなり行って、綺麗に整ってなってなかったから、そういう点でちょっとマイナスに見えたけど、顔立ちとかお肌は綺麗だったよ。目も、ルルと同じ紫だったし」
 機嫌が直ると思って認めたのだが、細かく認めていくとルルーシュの眉が更に険しくなったので、そこで打ち切った。
「なに怒ってるの?」
「怒ってない。ただ、腹立たしかっただけだ」
 どっちも同じ意味だよ、と突っ込みをせずにいると、青空を見上げて一人語りをはじめる。
「あいつの母親と俺の母さんは姉妹でさ、外見はそっくり、年どころか誕生日や血液型までも一緒の俺たちは、宮廷でも気味悪がられたもんだった」
 昔を思い出すような、恍惚とした表情になり、目を閉じる。
 その一歩間違えたら怪しい人間に思われそうな状況と、付き合いの経験から、彼の意識が美しい庭園で駆け回るナナリーと自分、そして似ていると自他共に認めた妹を想像しているのだろうと結論付ける。
「どんな難問も阿吽の呼吸で乗り越えられるような……まぁ、おかしい妹だったよ。ドッペルゲンガーってのはきっとあぁいうのをいうんだろう」
「君…仮にも妹だろ」
「うんざりを通り越してドッペルゲンガーだって思い込むほうがましなくらいなんだ。あいつは」
 憎悪の皺が顔に刻まれる。
 わかっている。ルルーシュが妹を本心からそう憎んでいることはないのだと。ルルーシュが憎める存在なんて、世の中にそう多くはない。
「まじめな話としてはさ、彼女が日本に送られるような事情が知りたいんだ」
 食べきった4つめの焼きそばパンの袋を丸めて、買ったときにパンが詰め込まれていた大袋にゴミとして放り込む。
 隣でようやくひとつめのメロンパンを食べきった親友が、首をひねっていた。
「俺が家を出たのは母さんが死んだ8年前だし…その後のことはあまり、な」
「彼女のお母さんは?」
「もっと前に亡くなっている。あいつは才能はあったから、一人で味方を作っていた。俺たちよりは余程安全だったはずだ」
 音に聞く、ブリタニアの兄弟姉妹の泥沼の権力闘争。
 皇帝を直接的に狙う男兄弟ではないにしろ、母親という最大の庇護者をうしなって、子供一人で生き抜けるような環境ではないことは想像できる。
「……才能って?」
 彼が絶対手をつけない、安さの象徴あんぱんを半分に割りながら、何気なく聞いたことを、その答えで後悔する。
「……軍事指揮の才能」



「お姉さまは、いつもコーネリアお姉さまと一緒に、どこかに出かけていらして、一緒にいられる機会があまりなかったのを覚えています」
 放課後。
 クラブハウスに戻るナナリーに、生徒会で忙しい兄に代わって付き添う。
 車椅子にのる盲目の少女は、8年前に光を失った。
 だからこそ、彼女の向こうでの記憶というものが薄れることもなく、語られるのだ。
「今から思えば、出かけていた先というのが、軍なのでしょう」
「普段はそういう雰囲気はなかったの?」
「子供心に恐怖を感じるとか、そういうことはありませんでした。ごく普通の方だと思っていましたし、外で何か役目を任される身近な存在として、憧れてもいました」
 誰にも会わなかった時間に、彼女が内面を年相応に昇華できたとはとても考えにくい。それでもあの対応。昔からそうであったと考えるのが妥当だ。
 あの子供らしくもない、大人びた性格だったと。
「そういえば、お兄様がシュナイゼルお兄様以上に苦手にしていたのは覚えています」
「へぇ」
「私にはわからないんですが、チェスで戦っても後味が悪すぎるとか」
 校内チェス大会で余裕のぶっちぎり連続優勝を成し遂げているルルーシュの腕を、スザクが知らないはずはない。
「強いのかい?」
「勝っても犠牲が大きすぎるから、後味が悪いんだそうです。シュナイゼル兄さまは、鳩同士の戦いに見えるよ、って仰ってましたが…」
 鳩同士の喧嘩が、凄惨を極めることは有名な話。
 チェスという盤上の喧嘩が、死屍累々の戦場になることを、潔癖なルルーシュが嫌ったとしてもおかしくはない。おそらくは、駒が本当になくなるギリギリまでお互いを潰しあうような、戦略も戦術もない戦場が最後に待っているのだろう。
 それこそ、たがいの駒ひとつとキングが、何もなくなった場所に立っているかのように。
「それより、お姉さまがスザクさんのお嫁さんになるなら、スザクさんをお兄様とお呼びしないといけませんね」
 笑顔でそう言うナナリーに、足を止める。
『…考えても見なかった』
 確かに、そういう平和的な関係の変更事項があっておかしくはないというのに。
「え…あぁ。そう、なるんだよね。関係は」
「いいなぁ。お姉さまがうらやましい。こんなに優しいスザクさんのお嫁さんになるんだ…」
 そこまでの行程とか、冷たい現実を伝えることが出来ずに、どうしていいか困ってしまう。知らず冷や汗が伝う。
 優しいだろうか、自分は……そして日本は………
「どうしました?」
 立ち止まったまま、無言のスザクをナナリーが振り返る。
 我に返って、ぎこちなく笑って、歩き出す。
「なんでもない…なんでも……」




 翌週。また僕は婚約者の姫君がいる本領を訪ねた。
 雨が降っていること以外は、何一つ変わらない。終わりかけの花菖蒲の庭。
 先週と変わらず、鍵を開けて重い扉を開くと、同じように食べ終わった昼ごはんと思われる箱が玄関にひとつ。
「こんにちは、スザクです」
 傘をたてかけて、中に向けて声をかけたが、やはり変わらず音はしない。
 さすがに同じ場所にいることはないだろうから、同じように一階を回って、二階へとあがる。
 一階には、おそらくあまり使われていないだろうキッチンと、バス、小さなダイニングがあって、生活観は微塵も感じられなかった。想像だが、おそらくそのキッチンには刃物類は置いていない。形だけ整えられた空間。



『なんで』
 声がしたときに思ったのは、それだった。
 まさか、二度目の訪れがあるとは思っても見なかった。
 寝床も兼ねた二階の書斎で固まってしまう。
 階下を見て回っている足音と雨音が、心音を駆け足にさせる。
 二階へと上がってくる階段の音すら…怯えるに値する。
「こちらですか?開けますよ」
 返事を待つことなく、襖が動く。
 そこにはやはり、あの男が立っていた。



 失礼かなとおもったけれど、絶対返事はないと踏んで、襖を横に引く。
 雨で薄暗い室内。一箇所だけ明かり取り用に紙が貼られていない場所があり、その前の文机に、彼女はこちらに背を向けて座っていた。
 紙の代わりに張られたガラスに、直接は見えない固まった表情が写っている。
 怯えと困惑の入り混じった、綺麗な顔。
『頑固で頭がいい割に、突発的なことには弱いんだよね…ルルも』
 うっとりと魅入りそうになる。
 そこを“落とす用の笑顔”に切り替える。
「こんにちは」
 持ってきた紙袋を手にしたまま、一歩部屋に踏み入れると、拒絶のように、
「何故また来た」
と鋭い声が返ってきた。
 弱弱しい可憐な姫という印象の外見と似合わない、地を這うような獣の威嚇。
「僕自身の意志を、改めて伝えに」
 ジャケットを脱いで、片腕にかけると、文机の側に座る。
「僕は、貴女との関係を紙の上だけにしたいとは思っていません」
 肩が揺れた。


「馬鹿だろう、お前」
 甲斐甲斐しく茶を準備して、紙袋から有名洋菓子店のマカロンを取り出していると、彼女がつぶやいた。
 弱弱しい癖に、女王様然とした雰囲気のかけらを感じる。支配し、傅かれることを知っている人間の空気なのだろう。
「馬鹿かどうかは、死ぬときにならないとわかりませんよ」
 口調だけは丁寧だが、切り返しの方法は親友に向けるそれ。
 いや、彼女の反応こそが、親友のそれなのだが。
 しかし、親友と同じ反応だといっても、彼女は根本的な部分で僕を拒絶することは出来ないはずなのだ。
『婚約者、って便利な関係だな……』
 連絡も無くやってくる僕を、拒むことは出来ないのだ。人道的な部分を除くと、僕らの関係は、ある意味所有者と持ち物の関係に近いのだから。
 それを良しとしないから、こうして時間をとってきた。
「この間、貴女の兄君や、妹君とお話しました」
 一応相手を驚かさないように、ワンクッション置く。
 根が生えたように動かないどころか、座っている向きさえ変えない彼女の前、文机の上に紅茶とマカロンを差し出す。
「といっても、二人とも学校の友達なので、改めて貴女との結婚話をしたら、呆れられましたけど」
 毒でも警戒しているのか、頑なに手を着けようとしない。
 そこまでは予想済み。知らない相手と食事をするとき、ルルーシュやナナリーでもすることだ。出した人間、周りの人間を警戒し、納得できてから食事を始める。
「そのお菓子、ルルーシュと一緒に買いにいったんですよ」
「え…」
「食べやすいから、ナナリーにも勧めやすいね、って、ここに持ってくる分と、ナナリーへのお土産と、二箱買ったんです」
 視線だけ、こちらに向けられた。
 名前を出すことを、二人は了承してくれている。そうでなければ、本国では死亡扱いにされた二人のことを、簡単に外で話すわけにはいかない。
「…二人は、元気か?」
「元気ですよ」
 そうかと、呟きが聞こえた。
 初めて、薄く微笑んでいた。



 ルルーシュと買いに行ったのは本当だ。
 それは、彼に対してのある意味の口実で、本当はもっと別の意図があった。
「お前、俺を馬鹿にしてるだろ」
 不機嫌な彼を連れ込んだのは、女性向けの服を多く扱った流行の巨大ショッピングモール。
「いいじゃないか。君、ナナリーの服買ってるじゃない、いつも」
「それとこれとは話が違う! なんだよ、俺がモデルって」
「背格好だってそっくりなんだから、できるでしょ?モデル」
「そっくりだって、できるわけないだろ。男の俺が女物の試着なんて!」
 凹んでいる。それも壮絶に。
 拒絶している。全力で。
「拒否したらどうなるか…わかってるよね?ルルーシュ」
 びくりと盛大に怯える彼の目の前に、小型のデジカメをひらりと見せ付ける。
「ミレイさんに見せたら、喜ぶとおもわない?ルルーシュのじょ…」
「やめろ、それ以上はいうな!」
「…じゃあ、わかってるよね?」
 にこりと笑みを浮かべてやると、恥ずかしげに彼が目を伏せた。
「大丈夫。君がちゃんと協力してくれたら、後でデータは消すからさ」



「…そういって、これを買ったのか?」
 呆れた声。
 プレゼント用の包みを解いた中にあったのは、親友が文字通り、身体を張って選び出した服一式だった。
「細かいサイズはさすがにどうかな、と思ったんだけどさ。組み合わせたときの雰囲気が見たくてね」
 見ますか?とカメラを出してみると、眉をわずかに歪めて顔を横に振っていた。
『まぁ、これはこんな反応が妥当か』
 細い腕からして二の腕が入らないとか、そういう細かい悩みは絶対ありえないと考えての決行だった。
 恥ずかしがりながらも、妹のためにと身体を張れてしまうあたりは、ルルーシュが真症のシスコンたる所以だ。目測で大体服のサイズ類がわかる自分も大概だと思うが、ルルーシュのあぁいう恥の捨て去り方も大概だと思う。
 白を基調としたワンピースに、丈の短いお嬢様風のジャケットをつけて。コサージュや鞄も、全て彼が試着した。
 当初の想定以上にルルーシュがあれやこれやと口を挟むものだから、一式の買い物に喧々諤々の口論となり、結局丸一日を費やしてしまった。
「最初の贈り物にしてはちょっと多いかと思ったんだけど、せっかくルルーシュが頑張ってくれたし。出かけることを想定して君の服が選ばれているとはどうも思えなくって」
「それは…否定しない」
 皇族の服飾感覚からすれば、庶民のそれはだいぶ違うのだろうが、似合わないものは買わなかったという自信だけはあった。
「外にでる機会が作れたら、それ着てくれる?」
 穏やかにそう尋ねる。
 しかしみるみるうちに顔が強張り、その一言が言ってはいけない禁句だったことを悟るまで、そう時間はかからなかった。
「いけ、ない…」
「ヴィクトリア様?」
 後ずさりして、僕から離れようとする。
「外はだめだ、そんなの、許されるはずがない…」
 外。
 7年間ここにいた彼女にとって、完全に未知の空間。
 その言葉に、マカロンさえ口にして、開きかけた彼女の心が閉じてしまうとは、思いもしなかった。
 美しい顔に張り付く恐怖に、笑顔が戸惑いになる。

「すまない…帰ってくれ……」


搾り出すようなその声が、雨音に解けた。




きっとこの話のスザクとルルーシュは、スザクの襲い受、、、

主導権は完全にスザクなのに、きっと「痛いって聞くし、ルルーシュにそんなことさせられないよ!」とか言って、攻めを譲ってるんだよ、、、


※R217話をみて、この設定で書き進めるプロットの後半を大改造しました☆
本当は「ブラックリベリオンでスザクは行方不明に。1年後に黒の騎士団として姿を現すスザク。ルルーシュ=ゼロだと知っているヴィクトリアは ルルがギアスでスザクを篭絡したものと思い込んで、ルルへの復讐とスザク奪還 を誓う」とか考えてたんですよ。。。


でも、なんていうのですかね。。。

これ確実にヴィクトリアの死にフラグが外せないので、結末が見えないのに、プロットを改造して、もっと男カプに絡まざるをえない嫁の男難を書いて行きたいと思います。

基本的に、ルルの嘘は17話のスタンスで、スザクは今は優しいけど後半酷い感じで、、、、うひ。