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「スザクっ」

舞台上の空気が変わる一瞬。

自分たちパペットが認識できるか否かのタイミングで、彼は立ち上がり叫んでいた。


永久の碧:下




 一瞬とは、ときに人の思考を混乱させるものだとそのとき実感していた。

 どれほどの時間がそこに実際は在ったのかはわからない。

 でも、一瞬であった。それは前後の周りの表情を見れば推測はできることだった。

 巨大な風が舞台の上で唸り、剣と共にスザクを粉砕しようとしていた。

 それを防いだのは、よく知る少女だった。

「そこまでだ。ナイトオブラウンズ」

 それが止んだとき、彼の腕が剣を砕いたその瞬間の角度のまま、剣が下ろされるのを片腕で留めさせる彼女がそこにいた。

「C.C.…」

 碧の髪をいささかも乱さずに、彼の剣と腕の動きを彼女の腕と警棒が、僕にふりかかってくるのを防いでいた。

 会場はしんと静まり返っていて、誰もがあっけに取られていた。

 僕もジノも、動けずにいると、C.C.が面倒くさそうに行司の方をふりかえって言った。

「たしか、武芸会ではお互いが決めあったルールを違反した場合、公式に失格となるんだったか?行司」

「そ、その通りです」

 とっさのことに動けずにいた行司が、辛くも返事をかえす。

「だ、そうだ」

 あっさりとそう言って、C.C.がジノを開放し、すたすたと舞台を降りていく。

 あまりにあっけない幕切れに、ぱたりと僕は座り込む。

「スザク!」

 C.C.と入れ違いに、カレンが駆け上がってきて、僕の側に膝をつく。

「よくやったわね」

「今の、は…」

「ジノの十八番。彼をラウンズにならしめた魔力、旋風よ」

 旋風。

 ブリタニア人にのみ、扱えるとされる数々の奇跡の力のうち、魔力はそのひとつだ。

 ブリタニア人なら誰でも使えるといわれるパペットと違い、魔力の発現は個々の生得的な才能によると言われる。

 しかし、それは剣技では勿論ない。

「剣技以外の力を、とっさとはいえ使ったんだから、勝負はついたわ」

 誓いに反した行いは、騎士道に背く。

 カレンの自信に溢れた笑顔が、僕の勝利を物語っていた。

 皇帝騎士の魔力。それを喰らいそうになって、生き残り、勝った。

 奇跡のような、一戦だった。



 よろけながら、再び椅子に座り込む皇子の背を、手を添えて支える。

 一言も発することも無く、天を仰ぐ姿が、疲れきっていた。

「お飲み物をお持ちしましょうか?」

 試合が始まってからスザクの名を呼んだ一瞬まで、彼はじっと舞台の上を見続けていた。

 あの叫びが、決勝という場で、張り詰めていた緊張の糸が、限界まで引き伸ばされた瞬間だったことは、自分にもわかっている。

 だから、全て終わった今、彼には休息が必要なはずだった。

「いや、いい」

 短く答えた皇子は、酷く疲れた顔に嫣然と笑みを浮かべて…側にいた私にだけは、それが作り笑いだとわかっていた。

 立ち上がり、観客の歓声に答える。

『無理をしている』

 この人は、無理をしている。

 側にいた私だけが、そのときそう感じていた。



「虎の子を出してきてこれとはな…私の目もまだまだか」

 悔しさをにじませながらも、納得している様子の姉皇女を見送りに、別れの挨拶に皇子はたった。

 姉姫に振り返る頃には、すっかりいつもどおりの仮面だったが。

「隠し玉は、隠しておかねば意味がありませんからね。この程度で姉上の目を欺けたのであれば、隠しておいた甲斐がありましたよ」

「意地悪いな……約束だ。エバーグリーンを渡そう」

 小箱に収められた翠玉を、ギルフォード卿が確認するように皇子の前で一度開いてみせ、また再び閉じて、恭しく差し出した。

「ありがたく頂きます。姉上」

「今度はもっと勝機のある賭けを申し込むとしよう」

「簡単に負けてはさしあげませんよ?」

 意地悪く笑った皇子に対し、優しい微笑を向けた姉姫はそのまま毅然と去っていった。

 コーネリア皇女殿下のお供の人々が全ていなくなると、皇子はその笑みを深くした。




全然ジノが書けなかった('д')

ジノカレに期待してくださったお嬢様方のために、出来れば次回はジノカレとルルスザを特盛で御出迎えしたいです。。。