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声に出ない押し殺した心の叫び。
聞こえるはずのないそれが、何度も耳を打つ。
受け流せていたそれが、苛立ちに替わり、ふつふつと黒い感情を生み出す。

我慢の限界はあっけなく訪れた。


鉄鎖の主



 ブリタニア本土に着くまでの数時間。

 何度も彼女に問いかけたが、一切彼女は口を利こうとはしなかった。

 本土上空で迎えたアヴァロンに着艦してから、矢継ぎ早にいくつもの指示を与えてから、無言になってしまう。

 一言も、口を利いてはくれない。自分には答えてくれない。

 知りたいのに。今彼がどうしているのか。

 知りたいのに。今彼が無事なのか。

 何度も心の中で叫んでいた。

 せっかく平和な場所に、もう仮面をかぶらなくてもいい場所に居るというのに、何故彼なのかと。

 目の前で平然と座っている彼女に、その叫びを押し付けることができないのはわかっている。

 だから、何度も、問う。

「……ヴィクトリア。ルルーシュは無事なのか?」

 何度目かわからない問い。

 何度目かわからない無言。

 完全に僕を無視した態度で、アヴァロンは静かにペンドラゴン近郊の軍用地にたどり着こうとしていた。



 しかし何度目か数えることもやめたそれに、苛立ちを抱えたまま降りる準備を始めようと立ち上がったところで、彼女は応じた。

「そんなにお前はルルーシュが大事か?」

 見下したような、冷たい問いだった。

「売ったくせに」

 冷笑。

 自嘲のようにも見える、感情の無い笑み。

 あのときの彼と似ていた。神根島で、僕と対峙したときの、割れたマスクから出てきた感情と。

「…知って」

「知っている。知らないと思っていたか?」

 驚きをもって聞き返したことが、すんなりと肯定される。

 声が出なかった。

 冷淡なその視線が、心の奥底に刺さる。

「愚かなスザク。だからお前は、守るべきものを見失う」

「何だとっ?」

「ルルーシュルルーシュルルーシュ。お前の頭の中にはそれしかないのか?力を持ちながら…馬鹿馬鹿しい。噛み付くことしか出来ない癖に。守るだと?自分から突き出した罪人を!」

 問う声が、フラッシュバックのように思い出させる。

 暗い部屋の中。レッドカーペットにこすり付けた彼の頭の感触。

 記憶を失う直前の、彼の悲鳴。

 その後…彼は、僕は……

『だまって跪け』

 するりと足の力が抜ける。

 どこかで…鳥が嘶いたようなきがした。



 どすっ。

 みっともない音を立てて、僕は気がつけば、彼女の足元に座り込んでいた。

 早鐘を打つ鼓動。止まらない汗。

「案外早く意識を取り戻すのだな。未熟者かと思ったが、さすがは枢木」

 僕を罵倒していたときのままの、深々と椅子に座ったままの姿勢で、静かに彼女の冷えた視線は自分に向けられていた。

「君は、僕に何を…」

「何を?何も知らないお前に、一体どこから話せばよいのだろうな」

 カラカラに乾ききった喉の奥から声を絞り出して、どうにか問いかけにした。全身にかかる例えようのない圧力が、彼女のあらゆるものからふりかかっているようなきがした。

 口調すら変わっている。

 他人をあからさまに見下して、楽しんでいる。

 自分の知っているヴィクトリアではない。

 自分の知っている…ルルーシュじゃ、ない。

「そうだな…お前は枢木の家の意味を、スザクという名の意味をしっているか?」

 スザク。

 日本語で、漢字で書けば朱雀。

 神代の時代の鳥の名前。今では信じる人も居ないだろうが、方位の神でもあったと聞く。

 しかし、それがなにか?

「その顔だと、知らないのだな。そうだろう。十で伝承者である父の口を塞いだのだから。父から真実の1%でも聞かされておれば、今も日本はブリタニアに立ちふさがり、我が願いを阻止せんと日夜戦っておっただろうに」

 あぁそれが嫌だったのだったか?と遠く尋ねられて、心臓が鷲掴みにされたような気分だった。

 事実、まともに上半身を起こしていられず、俯き、平手を床について荒く息をはいている有様だ。彼女の、ラウンズお仕着せの黒いブーツ以外に、視界に入るものはほぼない。

「知っていれば…ルルーシュなどさっさと抹殺し、私も苦しまずに死ねただろうに」

 なんでもないことのように言われたその言葉に、問いをかえしたくて無理やりに顔を上げた。

 僕が、ルルーシュを、殺す?



「あなたも、まさか、ギアスを…」

 今にも本気で爪を立てて胸を掻き毟ってしまいそうなほど、きつく両手で服の胸元を握り締めている。

 先ほどから、一切気を抜かずに本気で押さえ込んでいるというのに、気を失うこともなくまだ縋ってこようとしている。

『そこまでルルーシュが…』

 見当違いの想像をしながら、苦しみに耐えているスザクをみていると、自然と笑みがこぼれた。

「おやおや。その話はしたがらないのかと思っていた。ずっとルルーシュのことも、黙っているから」

 子供をあやすように言ってやると、見上げてきていた視線が殺気を帯びる。

 苛々する。

 剣でもないのに、相手を殺そうとする愚かしいスザク。

 だから、立ち上がり、より高い場所から彼を見下ろした。

「私はギアスは使わない。そんな半端なものは、持たない」

「半端って…ギアスの力は……」

「ギアスは願いの断片。こうありたいと願う願望が、歪んだ形で具現化したもの。絶対万能じゃない」

 見上げる翡翠は、わずかに赤く染まり、その瞳の向こう側で、小さな姿のスザクが、ナイフを手にこちらをみていた。

『これが今の、スザクの心の姿…』

 父殺しの、子供。

「教えてやろうか?スザク。世界がどれほど単純で、どれほど醜いものかを」

 死を覚悟した瞳の中の“スザク”は、ついにペンドラゴンに着くまで、ギアスを越えてくることはなかった。



 降船用のタラップに降りる。

 夜間照明はそれほど多くはなく、周囲に軍人の姿はなかった。

 だから、タラップの下で跪き自分を待ち構える一人のラウンズの姿だけが、白くよく目立った。

 白い外套の、片目をわざと閉じた男。

 ナイトオブワン。ビスマルク・ヴァルトシュタイン。

 テンポを乱さずに、“紅”の外套を翻して、彼の前に降り立つ。

「出迎えご苦労」

「車のご用意をしてございます。陛下がお待ちです」

 元々畏まっていた彼がわずかに更に深く頭を垂れたのをみて、まっすぐにそのまま歩き出す。

「枢木が、何かいたしましたか?」

 後ろをつかせて歩かせてきたスザクと私の間に、ビスマルクが割り込んで後ろを歩く。

 答えないで歩いていると、

「姫様…」

「…御父様がお待ちなのだろう?」

 話をして時間を取りたくないと暗に匂わせれば、ビスマルクも黙る。

 黙って、車までの時間が過ぎた。



 歩かされていた。

 車までの間、船内とは違った圧力が、僕を動かしていた。

 喋ろうとする喉を押さえつけ。

 駆け寄ろうとする脚を等間隔にしか動けないようにし。

 肩へ伸ばそうとする腕を、外套の下でぶらりと下ろしたまま。

 鉄の戒めを受け、鋼の糸で操られているかのように、一切己の自由にならない体。

 操り人形を持つ主人は、一切振り返ることもせずしっかりとした足取りで前を歩いていく。

 ちらちらとヴァルトシュタイン卿はこちらを振り返ってはきていたが、その瞳には若干の哀れみが浮かんでいた。

 そのことや、会話の状況から、この人も全て知っているんだと理解させられた。

 二台用意された黒塗りの車。ヴィクトリアは前の一台にヴァルトシュタイン卿のエスコートを受けて乗り込む。

 操り人形のような所作で、僕は後ろの一台に乗り込んだが、更にヴァルトシュタイン卿がこちらに乗り込んできて、車はすぐに動き出した。

 そこでふっと圧力が消えて、座っていたはずなのに、体のバランスを崩した。

「災難だったな、枢木」

 運転手との間には、防音も兼ねた防弾ガラスが張られており、声が通らない作り。

 それがわかっているのか、身体を立て直した僕に、ヴァルトシュタイン卿は無表情ながら労わるような声をかけてきた。

「ヴァルトシュタイン卿、彼女は一体…」

「姫様は、特別な御方だ。強大な力を御しておられるのだ。今後、お怒りにふれる発現は慎め」

 そうでなければ死ぬ、そう言われて、あらためて前の車を凝視する。

「あの力は一体なんなのですか?」

「巫女の力、と呼ばれている」

「巫女?」

「詳しくは落ち着き次第。お前も無関係な話ではないから、冷静になって話をしたほうがいいだろう。あまり下手なことを言うと、この距離では今の姫様に殺されかねん」

 ギアスではない、得体の知れない力を恐れるナイトオブワン。

 帝国最強と謳われる男が、静かに彼女を恐れていた。



 車の行き先は、ペンドラゴン宮の本殿ではなく、若干距離を置いた離宮のひとつだった。

 外灯もほとんどない真っ暗な離宮の裏口に、静かに降り立つと迷いなく彼女は入り口の指紋認証に自分の素手をかざした。

 自動で扉が開き、彼女はどことなく急いだような歩調で、先に進んでいく。扉の、更に先。廊下の奥にわずかに開いた扉が見えた。

 後ろをヴァルトシュタイン卿とゆっくりと歩いていくと、とびらを一度開けて、中を確認し、ほっとした様子の彼女の横顔が明るみにうつる。

「遅くなって申し訳ありません。只今戻りました」

「うむ…」

 ここ数時間の頑なな態度を微塵も感じさせない、穏やかな声。

 そして、返答も待たされていたとは思えないやや満足げなもの。

 それらに数秒遅れて部屋の入り口にたどり着くと、ようやく琥珀色の光の中の光景が見えてきた。

 古めかしい燭台の灯りに照らされたテーブルに座っていたのは、声に違わず、神聖ブリタニア帝国第98代皇帝、シャルル・ジ・ブリタニア本人であった。





皇帝登場('д')



ここでの皇帝の設定ですが、公式通り、パパはしっかりマリアンヌラブで、子供ラブです。

まぁ、ラウンズ版ヴィクトリアは、公式ルル以上に屈折しておりますが、屈折の原因はやはりパパ。

ヴィクトリアは、公式で言うところのマリアンヌの死の真相は知りません。
皇帝のやっていること、V.V.の存在は知っているとは思いますが、悪いことだとは思っていない。むしろ父親のやっていることは全て良いことだと信じているかんじ。

ちなみに、ヴィーのママはやはりいません。。

同腹の兄弟もいないわけで、正確な肉親はパパ一人なのです。


敢えて言いましょう。ラウンズ版ヴィクトリアはファザコンであると( ̄― ̄)



でも、パパはツンデレなので構ってもらえないヴィクトリアは、たまの逢瀬を楽しみに待って居たりするわけですよ…


それを護衛についているビスマルクが不憫だなーとか思いながら尽くしちゃっている。。。

でも、ラウンズ自分一人しかいないしね、って時期も長かったので、本格的に父親役にもなれず、宙ぶらりんな立場になっていたり。


な、なんだこのビスマルクのあわれっぷりは( ´△`)



そして全然ジノが出てくる隙がない…


なぜだ。。。どこへ行ったプロット…



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