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第十六話:邂逅×攪拌×因果

■ 21 名前: なゆた :2004/06/26 22:02:36
最終話・・執筆中

■ 22 名前: OKM :2004/06/27 02:49:19

錯綜:最終シーン/アルフェサイド

「さぁ、決めなさい。」

優しい笑顔、少し困ったような…諭すような…父さまの表情。
私の心の中そのままの、父さまの。

私はノートに目を落とした。
最後に書かれているのは、牢屋の扉が外された時の記述…どうやら、どこに書いた物でも”ペンで書かれた事”が書かれるようになっているらしい。
『ファイネーは生きていた』の記述がないところを見ると、失敗は記載されないようだ。
いやはや、あんなせっぱ詰まったラクガキが残っていなくて本当に良かった。

「さぁて、どうしたものですかねぇ?」
このままノートを渡す事は論外。
彼らがこれを奪うような事をしない以上何か記述されてしまうという危険は無いように思えるけれど…警戒するに越した事はない。
だとすると、何かを記述してノートを終えるのが妥当ですが…さて、何を書きましょう?

願いはない。

実験結果は自分の経験で導き出さなければならないから。
正しくなかったとしても、それが…父さまの存在意義、私の存在意義につながる。
そして今、私が生きている理由。

願いはない?

刹那的な願い、でも恒久的な。
私はだから、ただの凡人なのだと肩をすくめるような…記述が心に浮かんだ。

『アルフェニートはファイネーと、いつまでも幸せに暮らしました。』

なんて決まり文句!
それこそ物語の終わりにふさわしい締めくくりの言葉!
そして、私もファイネーさんもペンの事は忘却し…

ペン。

…支配のペン。
私には不相応で物騒でさえあるこのペンを、私が後生大事に今の今まで持っているのは。
もしかしたらファイネーさんと…もう少しだけ…一緒にいたいからかもしれない。
どんなに酷い別れ方をしたとしても、私の事など忘れてもらえば…傷つけずに済むでしょう?

『いつまでも幸せに』

私は幸せですよ、あなたと居られるのなら!
以前にも同じ事を言った気がしますがね。
でも、ファイネーさん、あなたは…?

…実験結果が出るまででいい。
きっとうまく騙してみせるから…もう本当の事を言って困らせたりしないから…その幸せは私との間には成り立ちませんかね?
私の傍らでは…無理ですか?
クスリに酔っていた時、最後までは言ってはくれなかったけれど…私の事、嫌いというわけじゃないでしょう?
『イリスさん』
森の中で優しく響いた…その名前。
…イリスさんはもう居ないのだから、私でもかまわないでしょう?

私はペンを握り直し、ファイネーさんを見た。
すいませんねぇ、ファイネーさん。私は根っからの小悪人なんですよ。

”ごめんなさい”は…私の方でしたね。
一呼吸、私はペンを…

「アルフェニートさんのこと、憶えていたいから。」

…!?

…本当に、本当に、このひとときたら。
どこまで私の調子を狂わせれば、気が収まるんですかね!?
苦笑。
しかも、こっち向いてないし。
今まで求愛された方の実に70%に『忘れたい』って言われた私ですがね(笑)

ねぇ、ファイネーさん。
あなたは本当に、興味深い人だなぁ。

…私はノートにペンを走らせた。
『天上で選択を迫られたファイネーだが、その選択によって害される事はなかった。』

ノートに文章が定着した所を見ると、受け入れられた?
…しかし、空白が埋っていません。
これは…
…!…私の事で終わらないと、つまり私がちゃんとペンの事を忘れ去らないと、終わらない!?

ぱたん。
私はノートを閉じる。
「書きたい事は書きました。」
ファイネーさんが無事ならそれでいい。
これでもし、私が生き残れたら…ファイネーさんの変な夢を見る能力をなんとかしよう。
あんなもの、ファイネーさんには悩みの種が増えるだけでしょうし。
私が巻き込んでしまったんだから、私がけりをつけなきゃいけませんよねぇ?

そしたらペンはもう要らない。
私の事を適当に書いて、ノートを終わらせてしまおう。
腕を折ってしまうのもいい…結局書き物なんてしなくても、私の研究は進められるのだから。
もしもそれで今までの事まで忘れてしまうとしてもかまわない。

何でこんなに『楽しい』のか不思議。
なのにいつか感じたように、鼻がツンと痛んで、目頭が熱くて。
ずっと忘れていたのに、ずっと無くしていたのに…

…何で私は『泣く』のをこらえているんだろう…?

ファイネーさん。
…あなたが覚えていてくれるなら…


錯綜:支配のペン~アルフェニートサイド~了

http://elder.secret.jp/img0ch/rq/img/1022391395/663.jpg (14KB)
錯綜:最終シーン/アルフェサイド(イラスト)
ファイネーさん。

■ 24 名前: ののの :2004/07/22 02:36:49

最終シーン/ファイネーサイド

「いい加減、夢を見るのは止めなさい、さあ、目を覚まして戻ってきなさい。」
一番上の姉さんの、懐かしく、凄みのあるその声は、
とても魅力的に僕の頭に響いた。

全てがご破算になる。

変な世界へ飛ばされていきなり変な槍が頭につき刺さったり
変な奴に問答無用でお腹を刺されたり
変な祭壇に縛り付けられてブルーに全身刺されたり
変なルナーの兵隊に閉じ込められたり追っかけられたり
しなくなる。

心機一転、僕はカーシーに戻って、イサリーズの外交官を目指して新たなスタートが切れる。
滞っていた勉強だってできる。隊商に乗っていろんな国をめぐり、人々と出会い、いろんなものを見聞きする。
充実した〈まっとうな人生〉



ほんとに?

どうも座りの悪い気持ちに襲われて、
僕はじっと手を見つめつつ、
いつしか、そのあたりがどうも、もはやどうでも良くなっていることに、
なんの実感もなくなっていることに気付いた。

いつからだろう。

そう、それはあの時だ。
イリスに攫われたあのとき、
それまでとは比べものにならない
深い、深い〈夢〉に誘われた、
あの日からだ。


僕は
100万回生きて、100万回死んだ。
あるときは、大司祭になって寺院の頂点に立ち、
またあるときは、外交官として諸国を飛びまわり、
商売が大成功して大金持ちにもなった。
海の狼の奴隷となってガレーの漕ぎ手で一生を終えた。
カーシー侵攻のルナー兵に斬り殺された。
死んだで神様に約束された地に行って、また生まれ変わり、また姉さんたちにこき使われて…

あるときは西方の異国の英雄となり、
召喚されたイリスと契りを結んで極寒の荒野を旅したこともあった。
探し当てた昔の恋人は、既に自分のことを忘れていたけど、
なんとかそれを許すこともできた。

あるときの僕は、望み通りアルフェニートさんと結婚して、幸せな家庭を築いた。
共に歳をとり、僕はアルフェニートさんに見取られながら、
またアルフェニートさんは僕に見取られながら死んだ。


あらゆる起こり得ること、あらゆる可能性。
あらゆる過去とあらゆる未来。
だれもが、無限とも思われる可能性のなかから、
どれかを選択して生きていくことを「義務付けられている」
選択はできるけど、与えられる選択肢は選べない。
どれを選択したらいいのか、神様だって教えてくれない。
選択しないことは許されない。
選択した結果はどんなに辛くても受け入れなければならない。
そして、その選択は終わることなく、未来に終点は無く、過去は繰り返されないとは限らない。

その無数の人生を生きた長い夢の中で僕は、
生きていくことの喜びとその何倍もの苦痛、その重苦しさ、
そして無限に対する今この瞬間の軽さと虚しさを知った。
そしてそれは逃れることはできず、永遠に続くことも知った。

知ってしまった以上、それから逃げることはできない。
忘れてしまったとしても、見えない振りをしても、それに囚われていることには変わりが無い。
生きていることの苦痛、虚しさ。
それを永遠に生きていくために、自分の人生を愛することはできるんだろうか。
無限の中で押しつぶされそうな
今のこの瞬間を愛することができるだろうか。

いまこの瞬間の気持ち…
アルフェニートさんを大事に思う気持ち。
一番いま生き生きしている想い。

夢から覚めるとペンが言ったなら、
夢がペンから始まった以上、
恐らく、ペンのことは忘れてしまうだろう。
そして、ごく当たり前のように、アルフェニートさんのことも、一緒に過ごした日々のことも、跡形無く消し去るだろう。

それでいい?



いや、
それだけはダメだ。

アルフェニートさんと一緒に居たい
苦しいことも悲しいことも含め
いま一番自分が生きていると想えるこの瞬間
これを掴み取りたい。

忘れたくない
アルフェと出会ったこと
一緒に旅したこと
一緒に夢を見たこと
全てね
大事なんだ。

ひとが永遠に生きること、
無意味に無目的に、苦しみつつ永遠に生きざるを得ないことを知り、
存在のこの耐えられない軽さを知った僕が、
生きることの虚しさに克ち
いまなお生きていて良かったと想うために
アルフェニートが必要なんだ。


それだけなんだ。

Re:最終シーン/ファイネーサイド(イラスト)
http://elder.secret.jp/img0ch/rq/img/1022391395/667.jpg (83KB)


■ 62 名前: なゆた :2004/06/26 22:21:30

最終話:夢オチ?
お疲れ様でした。
マスターとしては『疲れる』キャンペーンでしたが、いかがでしょう。いくばくかでも楽しんでいただけましたでしょうか。
かなり無理のあるネタですけど、プレイヤーに恵まれたのを見計らって、これでもかとばかりに突っ走ってみました。
多重世界モノというかなんというか、最後が夢オチに近くなるのはやむなし。なゆたグロランサの「在り様」をダイレクトに表現したつもりです。
キャラクターに愛を注いでもらった人にはゴメンナサイ。
でもキャラクターへの愛とその遺棄なしには味わえない話。
まあ、そんなつもりです。ありがとうございました。

■ 63 名前: azathoth :2004/07/03 22:26:11

面白かったがゆえに
参加メンバー各位+マスター
お疲れ様でした+疲れました。
マスター
味わい深い話をありがとうございました。
苦労もしましたが、面白かったです…いろいろ。

セッション後プレイヤー達で食事をしましたが、その場で皆、何かいいたげな、だけどうまく言葉にならないような、不思議な雰囲気がありました。
そこで「今日のセッションはどうでしたか?」と聞いてみました。
そうしたところ、OKMさんとのののさん共通の回答は「落ちを自分でつけたかった」でした。面白いセッションで、キャラクターへの入り方も十分だっただけに、なんとも微妙な終わり方だったようです。
九郎さんは楽しかったようですが、自分のキャラクタープレイに対する色々な思いが湧き出ていたようで、こちらも複雑な心境であるようでした。
竜さんは体調のこともあり、食事はご一緒できませんでしたが、帰り道に「全部なかったことになるんかー!!」と、やや心外といった雰囲気でした。

何はともあれ、重厚な(多層な?)お話し、ありがとうございました。

でも、アイテムはつらいぞ、と。(笑)


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