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ある少女の死

1622年・カルマニア

少女はもくもくと食事を続けている。
(なにかまずいことをいったかな、さっきから一言も口をきいてくれない。)

ワラビはちょっと間をおいて切り出した
「困った‥‥‥。ぼくは何をしたらいいんだか‥‥‥‥‥‥。ぼくに何かしてほしいことはない? ぼくは君の力になりたい。このままじゃあ体をこわしてしまうよ。とにかくとても心配でたまらないんだ。」

少女は黙ったまま食事を続けている。
(まだ怒っているのかな?)
「なんで話してくれない。ぼくのことが嫌いなの?」
「--------------好きよ。‥‥‥‥‥‥‥悪い?」
「じゃあどうしてさ!。仕事がつらいからって僕にやつあたりしてもしかたないだろ!。」
「----------------!!」
少女の顔が蒼白になった。信じられないというような顔でワラビを見ている。
空気を求めて口が喘いで、閉じた。
しかしワラビは気づかず、ふたたび下を向いて食事を続けた。

ガタン

ワラビが顔を上げると少女はきびすを返して席を立っていた。
そのままつかつかと外へ飛び出して行く。
「ちょっと!まてよ!」
足早に逃げる少女をなんとかワラビはひきとめた。

「話を最後まで聞けよ!。
 ぼくは君が心配なんだってば!
 ぼくになにをしてほしいんだよ、いってくれれば‥‥‥‥‥‥。」

少女の瞳が揺れた。ひとすじの流れが頬をつたう。

「わたしは-------------娼婦なのよ!
それが、‥‥‥‥‥‥自分から‥‥‥そんなこと‥‥‥‥‥‥言える‥‥‥わけ‥‥‥‥‥‥な、ないでしょ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
少女は声を立てずにしゃくりあげている。ときおり押さえきれなくなった鳴咽が、息を飲む音になってもれる。
ワラビは少女の体を抱き寄せると強引に唇を奪った。
少女の抵抗はあったが、まるであきらめたかのように体に力が入っていない。
「君が好きなんだ。離したくない。」
少女は最後の望みをかけるようにワラビをまっすぐみている。
「ね、元気を出して。お願いだから。」
ワラビはそういって少女の肩に手をおいた。
少女の顔に陰りがおちた。すこしいやいやをするように首を振る。
少女の瞳にはもうなんの表情も認められなかった。

「もう、大丈夫。」
うつむいた少女は明るくしゃべりだした。ワラビを見る目は笑っている。
「ごめんね、困らせて。」
「‥‥‥え?」

少女はやんわりとワラビの腕から抜け出すと、すこし居住まいを正した。
「もう、大丈夫だから。」
「あ、うん。」
「今日は帰る。------次はいつ会えるかな。」
「また、時間ができたらいくよ。」
「うん、‥‥‥‥‥‥さよなら。----------バイバイ。」
 少女は軽い足取りで夜の街へ消えていった。ワラヴィは狐につつまれたような顔をしてしばらく立ち尽くしていたが、ひとつため息をついて宿舎に向かって歩き出した。

 次の日の朝、川に飛び込んだ女性がいるという報告を受けてワラビィは部下達をつれて現場へ向かった。
(可哀相に。この季節では助からない。)


 全裸で打ち上げられた少女の躯は、青白く、透きとおるような美しさだった。

ワラビィはただ立ち尽くしていた。

Fin

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