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***第七章 7. 夏休みも終わり、また学校が始まった。 昼休み、相変わらず俺と吉岡は未だに終わらない夏休みの宿題と格闘を強いられていた。 「だぁー終わんねぇ!」 「右に同じ」 それもこれも真人が突然来るからだ、と心の中で叫んでいた。 「諸君、元気にしてるかね?」 部活も引退して余裕顔の桐嶋が教室にやってきた。 「元気はあるんだが頭が足りないようなんだ」 吉岡が馬鹿なことを言っている。 「こんなことしなくてもいい気がするんだがなぁ」 俺がそうこぼすと桐嶋が、 「あたしだって勉強が好きな訳じゃないけど、『今、辛いのを乗り切って頑張らないと』ってやってるわよ」 「俺そんなに単純バカじゃないからね」 「あんたよりは賢いわよ」 「よーく考えてもみろよ。今つらいの乗り切ったって長い人生、テストなんかよりずっと辛いことが待ってんだぜ?だから俺はその日のために体力を温存しておく」 「たとえば?」 「・・・闘病とか?」 「あんたなんか肺ガンですぐ死ぬわよ」 「酷い事言うね・・・」 「タバコは駄目よぉ」 『わっ』  横から高島先生が割って入ってきた。 「どっから出てきたの?」 「次あたしの授業なんですけど?」  そういわれて時間割に眼がいく。確かに次は美術の授業だった。 「夏休みの宿題なんて夏の間に終わらせなさいよ」 授業の用意をしながら高島先生が言った。 「終わらなかったからこうなってる訳で」 「情けないわねぇ」 「そういう先生は中学生の時やってたの?」 「やるわけないでしょ」 なんかこの先生、先生としてじゃなく人として駄目だ。  その日の帰り、吉岡が、 「そういやもうすぐ修学旅行だな」 なんて言い出した。 「いつだっけ?」 「9月の終わりくらいだろ」 「モロ修学旅行シーズンだな」 「つーかよ修学旅行って学業を修める旅行なんだよな?」 「字的にはな」 「9月に修まってるとはどーにも思えんのだが?」 「むしろ忙しい時期だな」 「修まるといいなー」  吉岡の目は遠く空を見ている。 「俺まで悲しくなるからその目はやめろ」 「すまん、つい…」 「んで、今年って何処行くんだ?」 「あー、確か・・・沖縄?」 「マジかよ!?」 「ホント」 「金あるなぁ・・・」 「そうだな」 「なんでだろ?」 「話が作りやすいからだろ」 「え?」 「なんでもない。さっさと帰ろうぜ~」 「吉岡君、キミは何かよろしくないことを知ってるね」 そんな調子で修学旅行当日。 「結構、早かったな」 「大分、はしょったからな」 「え?」 「なんでもない。ほら、沖縄が呼んでるぞ~」 「やっぱり知ってるね…」 で、飛行機に揺られて2時間ほど。ホテルに荷物を置いた俺たちはクラスごとに分かれて海に行った。俺の横では元気に吉岡が叫んでいる。 「沖縄!」 「沖縄だな」 「アツイ!」 「クソ暑いな」 「海!」 「海だな」 「…なまこ」 「なま…なまこ!?」  急いで吉岡のほうを振り向くとどこからもってきたのか、両手には相当な大きさのなまこがプルプルしていた。 「うふふふふふ」  足元をよく見ると、こぶし大のなまこがゴロゴロと…。吉岡は妙な笑い方をしながらじりじりと近づいてくる。 「やめろ、キモチ悪い!」  急いで吉岡から離れるが吉岡も物凄い勢いで追いついてくる。そのとき、何を思ったのか吉岡が手に持っていたなまこを俺に向かって投げた。 ピタンという音とともになんとも言えない生臭い匂いが漂ってきた。つまり顔にクリティカルヒットしたわけだ。 「うふふふふふふふ」  それでも尚、吉岡は妙な笑い方でもう片方のなまこも投げようとしている。…死ぬ。このままでは死んでしまう。 俺はとっさにクリティカルヒットしたなまこを吉岡に投げ返した。ピタン。今度は吉岡にクリティカルヒット。何故か凄く気持ちいい。 こうして果てしなき「なまこ合戦」が始まったのだった。しばらくの攻防を繰り広げた後、吉岡が砂浜に足を取られ、ぐらついた。 ここぞとばかりになまこを投げる。が、それを吉岡は避けた。はっと気づいてなまこのベクトルの先を見る。 まずいと思ったが時既に遅し。俺の投げたなまこは見事に桐嶋にクリティカルヒット。 「やべっ」  少しの間顔に張り付いていたなまこがペロンと落ちる。なまこの下にあった顔が俺のほうをゆっくりと向く。 桐嶋はさっきまで顔にあったなまこを踏み潰している。なまこからは内臓らしきものが飛び出ている。グロテスクです、桐嶋さん。 ゆっくりと桐嶋が俺のほうへと近づいてくる。 「あの、桐嶋さん、コレはその違うんです。吉岡が…」 と、吉岡のほうを見るが吉岡は既に海へと逃げていた。ああ、終わった・・・ 「いや、吉岡君。僕は初めて走馬灯ってやつを見ましたよ」  結局あの後、桐嶋に水攻めを食らうハメになった。 「見てたけど凄かったな!桐嶋の顔人殺しの目だったぞ」 「もう海水は飲みたくない…」  吉岡は俺の話なんか殆ど聞かずにケラケラとまだ話している。 「知ってたか、桐嶋水攻めしてるとき口元だけ笑ってたぞ?」 「あんたもされたいの?」  後ろから急に桐嶋の声がした。 「え、いや、あのホラ、俺、海水アレルギーだし」 「ふうん、真っ先に海に飛び込んで逃げたのにねぇ?」 「…?」  吉岡は物凄くぎこちなく訳が分からないという顔をしている。 「ったく、なんで「なまこ合戦」なんてしょーもないことしてんのよ」 「いやなんていうかその、年の功ってやつで」 吉岡、お前は一体何を言ってるんだ。 その後、夕飯も終わり、各々部屋へと戻った。 一日目の夜は旅の疲れとなまこの所為か、すんなりと寝てしまった。 二日目は観光名所らしきところを回ったり、サトウキビ狩り体験みたいな事もした。 夜は吉岡と二人で酒盛りもした。 夜も更けて吉岡も俺も疲れて眠った。 岩城が俺の目の前で胸を自慢している。 「すごいでしょー」 「う~ん、どれくらいあるんだ?」  岩城はまだ胸を突っ張っている。 「触ってみるか」 「触ったらチクビーム出すよ?」 「へ?」  しかし俺の手はもう既に岩城の胸に触れている。 「チクビーム!」  突然辺りが真っ白になった。 「うわっ!」 「いい顔が取れたよ」 「なにしてんの?」 「みんなの寝顔とって回ってるの」 どうやらフラッシュを焚いているらしい。 「そうか、俺はてっきりチクビームかと…」 「チクビーム?」 「いや、なんでもない」 変な夢を見た。 三日目はもうお土産を買って帰るくらいしか時間はなかった。 一応、親に買っておくか。 「吉岡はお土産何か買うのか?」 そう言って見た吉岡の手元には木刀が握られていた。 どうやら好きらしい。 俺は商店街の様な所でパイナップルを二つ買って帰る事にした。 そして、空港で俺はお土産にパイナップルを選んだことを後悔した。 荷物検査用のX線にデカデカとパイナップルのレントゲン写真が・・・。 吉岡は横で大爆笑している。 飛行機内では何事も無く、無事帰宅した。 「おかえり、どうだった?」 家に着くと母親が出迎えてくれた。 「まぁ楽しかったよ。はい、お土産」 ポンとパイナップルを母親に手渡した。 「こんな子に育てた覚えはないんだけどねぇ」 俺もそんな風に育てられたつもりはない。 こうして、意外と短かった修学旅行は終わった。  
***第七章 7. 夏休みも終わり、また学校が始まった。 昼休み、相変わらず俺と吉岡は未だに終わらない夏休みの宿題と格闘を強いられていた。 「だぁー終わんねぇ!」 「右に同じ」 それもこれも真人が突然来るからだ、と心の中で叫んでいた。 「諸君、元気にしてるかね?」 部活も引退して余裕顔の桐嶋が教室にやってきた。 「元気はあるんだが頭が足りないようなんだ」 吉岡が馬鹿なことを言っている。 「こんなことしなくてもいい気がするんだがなぁ」 俺がそうこぼすと桐嶋が、 「あたしだって勉強が好きな訳じゃないけど、『今、辛いのを乗り切って頑張らないと』ってやってるわよ」 「俺そんなに単純バカじゃないからね」 「あんたよりは賢いわよ」 「よーく考えてもみろよ。今つらいの乗り切ったって長い人生、テストなんかよりずっと辛いことが待ってんだぜ?だから俺はその日のために体力を温存しておく」 「たとえば?」 「・・・闘病とか?」 「あんたなんか肺ガンですぐ死ぬわよ」 「酷い事言うね・・・」 「タバコは駄目よぉ」 『わっ』  横から高島先生が割って入ってきた。 「どっから出てきたの?」 「次あたしの授業なんですけど?」  そういわれて時間割に眼がいく。確かに次は美術の授業だった。 「夏休みの宿題なんて夏の間に終わらせなさいよ」 授業の用意をしながら高島先生が言った。 「終わらなかったからこうなってる訳で」 「情けないわねぇ」 「そういう先生は中学生の時やってたの?」 「やるわけないでしょ」 なんかこの先生、先生としてじゃなく人として駄目だ。  その日の帰り、吉岡が、 「そういやもうすぐ修学旅行だな」 なんて言い出した。 「いつだっけ?」 「9月の終わりくらいだろ」 「モロ修学旅行シーズンだな」 「つーかよ修学旅行って学業を修める旅行なんだよな?」 「字的にはな」 「9月に修まってるとはどーにも思えんのだが?」 「むしろ忙しい時期だな」 「修まるといいなー」  吉岡の目は遠く空を見ている。 「俺まで悲しくなるからその目はやめろ」 「すまん、つい…」 「んで、今年って何処行くんだ?」 「あー、確か・・・沖縄?」 「マジかよ!?」 「ホント」 「金あるなぁ・・・」 「そうだな」 「なんでだろ?」 「話が作りやすいからだろ」 「え?」 「なんでもない。さっさと帰ろうぜ~」 「吉岡君、キミは何かよろしくないことを知ってるね」 そんな調子で修学旅行当日。 「結構、早かったな」 「大分、はしょったからな」 「え?」 「なんでもない。ほら、沖縄が呼んでるぞ~」 「やっぱり知ってるね…」 で、飛行機に揺られて2時間ほど。ホテルに荷物を置いた俺たちはクラスごとに分かれて海に行った。俺の横では元気に吉岡が叫んでいる。 「沖縄!」 「沖縄だな」 「アツイ!」 「クソ暑いな」 「海!」 「海だな」 「…なまこ」 「なま…なまこ!?」  急いで吉岡のほうを振り向くとどこからもってきたのか、両手には相当な大きさのなまこがプルプルしていた。 「うふふふふふ」  足元をよく見ると、こぶし大のなまこがゴロゴロと…。吉岡は妙な笑い方をしながらじりじりと近づいてくる。 「やめろ、キモチ悪い!」  急いで吉岡から離れるが吉岡も物凄い勢いで追いついてくる。そのとき、何を思ったのか吉岡が手に持っていたなまこを俺に向かって投げた。 ピタンという音とともになんとも言えない生臭い匂いが漂ってきた。つまり顔にクリティカルヒットしたわけだ。 「うふふふふふふふ」  それでも尚、吉岡は妙な笑い方でもう片方のなまこも投げようとしている。…死ぬ。このままでは死んでしまう。 俺はとっさにクリティカルヒットしたなまこを吉岡に投げ返した。ピタン。今度は吉岡にクリティカルヒット。何故か凄く気持ちいい。 こうして果てしなき「なまこ合戦」が始まったのだった。しばらくの攻防を繰り広げた後、吉岡が砂浜に足を取られ、ぐらついた。 ここぞとばかりになまこを投げる。が、それを吉岡は避けた。はっと気づいてなまこのベクトルの先を見る。 まずいと思ったが時既に遅し。俺の投げたなまこは見事に桐嶋にクリティカルヒット。 「やべっ」  少しの間顔に張り付いていたなまこがペロンと落ちる。なまこの下にあった顔が俺のほうをゆっくりと向く。 桐嶋はさっきまで顔にあったなまこを踏み潰している。なまこからは内臓らしきものが飛び出ている。グロテスクです、桐嶋さん。 ゆっくりと桐嶋が俺のほうへと近づいてくる。 「あの、桐嶋さん、コレはその違うんです。吉岡が…」 と、吉岡のほうを見るが吉岡は既に海へと逃げていた。ああ、終わった・・・ 「いや、吉岡君。僕は初めて走馬灯ってやつを見ましたよ」  結局あの後、桐嶋に水攻めを食らうハメになった。 「見てたけど凄かったな!桐嶋の顔人殺しの目だったぞ」 「もう海水は飲みたくない…」  吉岡は俺の話なんか殆ど聞かずにケラケラとまだ話している。 「知ってたか、桐嶋水攻めしてるとき口元だけ笑ってたぞ?」 「あんたもされたいの?」  後ろから急に桐嶋の声がした。 「え、いや、あのホラ、俺、海水アレルギーだし」 「ふうん、真っ先に海に飛び込んで逃げたのにねぇ?」 「…?」  吉岡は物凄くぎこちなく訳が分からないという顔をしている。 「ったく、なんで「なまこ合戦」なんてしょーもないことしてんのよ」 「いやなんていうかその、年の功ってやつで」 吉岡、お前は一体何を言ってるんだ。 その後、夕飯も終わり、各々部屋へと戻った。 一日目の夜は旅の疲れとなまこの所為か、すんなりと寝てしまった。 二日目は観光名所らしきところを回ったり、サトウキビ狩り体験みたいな事もした。 夜は吉岡と二人で酒盛りもした。 夜も更けて吉岡も俺も疲れて眠った。 岩城が俺の目の前で胸を自慢している。 「すごいでしょー」 「う~ん、どれくらいあるんだ?」  岩城はまだ胸を突っ張っている。 「触ってみるか」 「触ったらチクビーム出すよ?」 「へ?」  しかし俺の手はもう既に岩城の胸に触れている。 「チクビーム!」  突然辺りが真っ白になった。 「うわっ!」 「いい顔が取れたよ」 「なにしてんの?」 「みんなの寝顔とって回ってるの」 どうやらフラッシュを焚いているらしい。 「そうか、俺はてっきりチクビームかと…」 「チクビーム?」 「いや、なんでもない」 変な夢を見た。 三日目はもうお土産を買って帰るくらいしか時間はなかった。 一応、親に買っておくか。 「吉岡はお土産何か買うのか?」 そう言って見た吉岡の手元には木刀が握られていた。 どうやら好きらしい。 俺は商店街の様な所でパイナップルを二つ買って帰る事にした。 そして、空港で俺はお土産にパイナップルを選んだことを後悔した。 荷物検査用のX線にデカデカとパイナップルのレントゲン写真が・・・。 吉岡は横で大爆笑している。 飛行機内では何事も無く、無事帰宅した。 「おかえり、どうだった?」 家に着くと母親が出迎えてくれた。 「まぁ楽しかったよ。はい、お土産」 ポンとパイナップルを母親に手渡した。 「こんな子に育てた覚えはないんだけどねぇ」 俺もそんな風に育てられたつもりはない。 こうして、意外と短かった修学旅行は終わった。           [[第八章へ>http://www30.atwiki.jp/iwaki/pages/20.html]]  

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