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***第十二章 12. 次の日、俺は放課後ではあったが、学校に行った。 向かったのは美術室。 教室のドアを開けると高島先生が一人で紅茶を飲んでいた。 「俺にも紅茶くれない?」 先生は少し驚いていたがニコッと笑い、紅茶を出してくれた。 俺はポツポツと昨日の夢の話をし始めた。 アイツが大丈夫そうなこと。 俺も大丈夫だということ。 それだけ伝えて俺は帰る事にした。 「明日からは授業にも顔出すよ」 「そう、それじゃ気をつけてね」 そのまま俺は家へと向かった。 その途中、俺はボーっとしていた所為か右から車が来ているのに気づいかずに道路を渡ろうとして車とぶつかった。 幸い怪我はかすり傷程度だったのでたいしたことは無かった。 走馬灯を見た。だけどこの事故のお陰でハッキリと思い出した。 俺がまだ幼かった時の思い出を。自分の思い通りに世の中が進まないと思い知らされたあの瞬間を。 あれは俺がまだ、小学校に入る前の4,5歳のときだ。俺はその頃、父親の仕事の関係で引越しをした。 その日は引越しの作業が終わり、母親に連れられて近くの公園へ出かけることになった。 公園の中では俺と同じぐらいの子供が遊んでいた。母親は、 「ちょっと買い物してくるからここで遊んで待ってなさい」  と、言い残して足早に去っていった。一人残された俺は仕方がないので、一人で遊んでいた。 そして、一人の女の子が俺に声をかけてきた。たった一言、 「一緒に遊ぼう」  と、それからよくその公園でその女の子と一緒に遊んでいた。けれど、そう長くは続かなかった。 父親の勤務先が変わりまた別の場所へ引っ越すことになった。俺は仕方なく公園へと向かった。 あの子に伝えないといけない。だけど公園にあの子の姿はなかった。俺はしばらく待つことにした。  そして、ブランコで遊んでいた時だった。突然、僕の体は宙へと舞った。 ゆっくりと景色が通り過ぎていく。そして、俺の体は地面に叩きつけられた。腹が痛かった。 辺りの子供たちが少しずつざわめきと共に集まってきた。すると、俺の名前を呼ぶ声がした。 「アキラくん!」  俺はなんとか顔を上げた。そこにはあの女の子が立っていた。 「アキラくん!」  ただ、俺の名前を呼び続けるだけだった。なんでお前のほうが涙目なんだよ。けれども声が出ない。 すると女の子は突然走り出していった。俺にはもう訳が分からなくなっていた。 その後、俺は偶然通りかかった母親に抱えられて病院へ向かった。 幸い、体に異常はなかったがそんな騒ぎの所為で結局女の子に俺がこの街からいなくなることを伝えられなかった。 せめて、さよならと一言だけでも言いたかった。そして俺は風間町を去った。 そのときの女の子と名前が「さき」 岩城と一緒だったのだ。これで色々とつじつまが合う。 岩城が風間町に住んでいたこと。 俺の見た夢。 桐嶋の言う思い出さなきゃいけないこと。 すべてはそういうことだったんだ。 次の日、俺は学校で岩城を捕まえた。 「放課後、話がある」 「何?」 「放課後話すよ」 「・・・?わかった」 そして放課後、岩城が俺のところに来た。 「話って何?」 「あのさ、俺思い出したんだよ」 岩城は黙って俺の話を聞いていた。 「岩城は覚えてたのか?」 「うん、アキラ君がその子かなって最初に会ったときに思ったけど、なんだか言い出しにくかった。」 「そうか」 「でも、やっと会えて嬉しいよ。なんか安心した」 そういうと岩城は自分の鞄のキーホルダーを俺に見せた。 「これ覚えてる?」 全部思い出したからな。 「覚えてるよ、俺が昔渡したんだよな」 それは古いヒーロー物の色が剥げたキーホルダーだった。 それから俺は昔、さよならをちゃんといえなかった事、あの日のことを岩城に話した。 「そっか、そんな事があったんだね」 それからは昔話をずっとしていた。学校の管理人さんに怒られるまでずっと。 怒られて俺達は顔を見合わせて二人で笑った。 帰り道、岩城と別れてからなんだか清々しい気分になった。 もう2月も終わりに近い。もう卒業なんだなと思った。 少し経ってから卒業式の練習なんてのが始まった。 相変わらず行事ごとは苦手だ。 その日の帰り、岩城と2人で帰っていた。 「卒業したらみんなどうしてるのかな…?」 岩城が唐突に口を開いた。 「どーせ、なんだかんだ言ったって何にも変わりゃしねぇよ」  俺のその台詞に岩城は少し困ったような顔をして俺と目を合わさなかった。 しばらく静かな帰り道を二人で一言も話さずにぽつぽつ歩いていた。 すると急に岩代の足が止まった。なんとなく、俺の足も止まる。 「あたしね、卒業したらまた引っ越すんだって…」  ポツリと岩城が言った。 俺はあんまりに突然のことにどんな顔をしたらいいのか分からなかった。 「あたしもう、2度目はいやだよ…。やっと思い出したのに。楽しかったこともたくさんあったよ?それなのにまた、今度はあたしが別のところに行くなんて…」  岩城は涙をこらえきれず片方の目から一筋の涙が頬を流れた。 「生きてりゃまた会える」  それくらいの事しか言えなかった。俺だって、今まで忘れていたこと全部思い出してさよならも言えずに別れた岩城とまた会えたんだ。 まさか一年に二度も人と別れることになるとは思ってなかった。 あんまりにも不意打ち過ぎる。 「最後の一年でえらいことになったなぁ…」 なんか…かなり色々あった最後の一年だったな…。 ちょっと俺には多すぎたのかもしれない。特に耐え切れないことが。           [[第十三章へ>http://www30.atwiki.jp/iwaki/pages/25.html]]
***第十二章 12. 次の日、俺は放課後ではあったが、学校に行った。 向かったのは美術室。 教室のドアを開けると高島先生が一人で紅茶を飲んでいた。 「俺にも紅茶くれない?」 先生は少し驚いていたがニコッと笑い、紅茶を出してくれた。 俺はポツポツと昨日の夢の話をし始めた。 アイツが大丈夫そうなこと。 俺も大丈夫だということ。 それだけ伝えて俺は帰る事にした。 「明日からは授業にも顔出すよ」 「そう、それじゃ気をつけてね」 そのまま俺は家へと向かった。 その途中、俺はボーっとしていた所為か右から車が来ているのに気づいかずに道路を渡ろうとして車とぶつかった。 幸い怪我はかすり傷程度だったのでたいしたことは無かった。 走馬灯を見た。だけどこの事故のお陰でハッキリと思い出した。 俺がまだ幼かった時の思い出を。自分の思い通りに世の中が進まないと思い知らされたあの瞬間を。 あれは俺がまだ、小学校に入る前の4,5歳のときだ。俺はその頃、父親の仕事の関係で引越しをした。 その日は引越しの作業が終わり、母親に連れられて近くの公園へ出かけることになった。 公園の中では俺と同じぐらいの子供が遊んでいた。母親は、 「ちょっと買い物してくるからここで遊んで待ってなさい」  と、言い残して足早に去っていった。一人残された俺は仕方がないので、一人で遊んでいた。 そして、一人の女の子が俺に声をかけてきた。たった一言、 「一緒に遊ぼう」  と、それからよくその公園でその女の子と一緒に遊んでいた。けれど、そう長くは続かなかった。 父親の勤務先が変わりまた別の場所へ引っ越すことになった。俺は仕方なく公園へと向かった。 あの子に伝えないといけない。だけど公園にあの子の姿はなかった。俺はしばらく待つことにした。  そして、ブランコで遊んでいた時だった。突然、僕の体は宙へと舞った。 ゆっくりと景色が通り過ぎていく。そして、俺の体は地面に叩きつけられた。腹が痛かった。 辺りの子供たちが少しずつざわめきと共に集まってきた。すると、俺の名前を呼ぶ声がした。 「アキラくん!」  俺はなんとか顔を上げた。そこにはあの女の子が立っていた。 「アキラくん!」  ただ、俺の名前を呼び続けるだけだった。なんでお前のほうが涙目なんだよ。けれども声が出ない。 すると女の子は突然走り出していった。俺にはもう訳が分からなくなっていた。 その後、俺は偶然通りかかった母親に抱えられて病院へ向かった。 幸い、体に異常はなかったがそんな騒ぎの所為で結局女の子に俺がこの街からいなくなることを伝えられなかった。 せめて、さよならと一言だけでも言いたかった。そして俺は風間町を去った。 そのときの女の子と名前が「さき」 岩城と一緒だったのだ。これで色々とつじつまが合う。 岩城が風間町に住んでいたこと。 俺の見た夢。 桐嶋の言う思い出さなきゃいけないこと。 すべてはそういうことだったんだ。 次の日、俺は学校で岩城を捕まえた。 「放課後、話がある」 「何?」 「放課後話すよ」 「・・・?わかった」 そして放課後、岩城が俺のところに来た。 「話って何?」 「あのさ、俺思い出したんだよ」 岩城は黙って俺の話を聞いていた。 「岩城は覚えてたのか?」 「うん、アキラ君がその子かなって最初に会ったときに思ったけど、なんだか言い出しにくかった。」 「そうか」 「でも、やっと会えて嬉しいよ。なんか安心した」 そういうと岩城は自分の鞄のキーホルダーを俺に見せた。 「これ覚えてる?」 全部思い出したからな。 「覚えてるよ、俺が昔渡したんだよな」 それは古いヒーロー物の色が剥げたキーホルダーだった。 それから俺は昔、さよならをちゃんといえなかった事、あの日のことを岩城に話した。 「そっか、そんな事があったんだね」 それからは昔話をずっとしていた。学校の管理人さんに怒られるまでずっと。 怒られて俺達は顔を見合わせて二人で笑った。 帰り道、岩城と別れてからなんだか清々しい気分になった。 もう2月も終わりに近い。もう卒業なんだなと思った。 少し経ってから卒業式の練習なんてのが始まった。 相変わらず行事ごとは苦手だ。 その日の帰り、岩城と2人で帰っていた。 「卒業したらみんなどうしてるのかな…?」 岩城が唐突に口を開いた。 「どーせ、なんだかんだ言ったって何にも変わりゃしねぇよ」  俺のその台詞に岩城は少し困ったような顔をして俺と目を合わさなかった。 しばらく静かな帰り道を二人で一言も話さずにぽつぽつ歩いていた。 すると急に岩代の足が止まった。なんとなく、俺の足も止まる。 「あたしね、卒業したらまた引っ越すんだって…」  ポツリと岩城が言った。 俺はあんまりに突然のことにどんな顔をしたらいいのか分からなかった。 「あたしもう、2度目はいやだよ…。やっと思い出したのに。楽しかったこともたくさんあったよ?それなのにまた、今度はあたしが別のところに行くなんて…」  岩城は涙をこらえきれず片方の目から一筋の涙が頬を流れた。 「生きてりゃまた会える」  それくらいの事しか言えなかった。俺だって、今まで忘れていたこと全部思い出してさよならも言えずに別れた岩城とまた会えたんだ。 まさか一年に二度も人と別れることになるとは思ってなかった。 あんまりにも不意打ち過ぎる。 「最後の一年でえらいことになったなぁ…」 なんか…かなり色々あった最後の一年だったな…。 ちょっと俺には多すぎたのかもしれない。特に耐え切れないことが。           [[第十三章へ>http://www30.atwiki.jp/iwaki/pages/25.html]]  

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