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第四章




4.
相変わらず心地のよい天気が続く7月。
もうすぐ夏休みだなあとぼんやり考えていた頃、桐嶋が俺のところに来た。
「ねぇ、アキラ」
「なんざんしょ?」
「今度の休みとか暇?」
これが噂に聞くデートか。
「すごく暇です。朝から晩まで」
桐嶋は少し首を傾けながら話を続けた。
「そっか、なら市立の体育館知ってる?」
「おう」
「ならそこに8時で」
「朝の?」
「当然」
遅刻魔の俺になんて口の利き方だ。
「がんばる・・・」
「んじゃねー」

当日、俺の横には何故か岩城がいる。
そして体育館の周りには何故か他の学校の生徒がかなり居る。
「楽しみだねー、あたしこんな所来たのはじめて」
岩城がヘラヘラしてるのが憎らしい。
事の真相はこうだ。
今日は桐嶋の剣道部の試合だそうだ。
それを何を勘違いしたのか俺はデートだと踏んだのだ。
「自分が情けないです」
岩城は俺が何を言ってるのか分からないといった顔をしている。
何か無性に腹が立ったので岩城のほっぺたをニューンとして遊んでいると桐嶋が来た。
「おはよ、ホントにアキラが来るなんて思ってなかった」
「君は将来、詐欺師に近い職業に付くでしょう」
「アホか、まぁ2人とも会場入って待っててよ」
「へいへい」
会場に入ると応援団みたいなのやら父兄団体みたいなのやら結構な人がいた。
岩城は目をキラキラさせてる。何が楽しいんだか・・・。
しばらくすると桐嶋の試合が始まった。
すると岩城が口を開いた。
「ねぇ…」
「どーした難しい顔して?」
「真弓どっち?」
「右のほうだ。区別くらいつくだろ」
「だって顔見えないんだもん」
 あたりまえだ。
相手もなかなかやるようでかなり競り合っていた。
が、見事に相手の一本が決まってしまった。
「やった、勝ったよ!」
「バカ、負けたんだよ」
 岩城は未だに桐嶋がどっちなのか分かっていなかったようだ。

試合も終わり、剣道部も解散してから俺達は桐嶋と合流した。
なんだか声が掛けづらかった。
「残念だったな・・・」
「まぁ、相手の方が一枚上手だったって事だね」
困ったような顔をしながら言った。
「飯くらいおごってやるからよ、元気出せよ」
「ありがと」
しばらく黙っていた岩城が口を開いた。
「パーッと行きますか。アキラ君のおごりだし」
「待て、何故俺がお前の分まで持たなければいけない?」
「おごるっつったじゃん」
横から桐嶋が、
「往生際悪いよ?」
なんていうもんだから結局俺が全部持たされる事になってしまった。

ファミレスでギャーギャー騒いだ後、店を出てそれぞれ帰路に着くことにした。
しばらく他愛も無い話をしながらすっかり蒸し暑くなった道を歩いていた。
「じゃ、また学校でね」
桐嶋がそう言いながら別の道へと歩いていった。
「またな」
「ばいば~い」
岩城と2人で話しながら歩く。
「でも残念だったよねー」
「桐嶋のことか?」
「引退試合だったもんねー」
その言葉にハッっとした。
「今日が引退試合だったのか、アイツ」
「知らなかったの?」
「知らなかった・・・」
ほどなくして岩城とも別れた。
「またな」
「学校でねー」
引退試合だったのか、悔しかったろうな。
そんなことを一人思いながらとぼとぼと家路へと向かった。




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