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第五章




5.
ある日の帰り道、僕は吉岡と話をしながら歩道橋を登っている途中だった。すると何を思ったか吉岡はこんな事を言い出した。
「なあ、俺たち今序々に太陽に近づいてるよなあ・・・。」
何を言い出すかと思えば・・・。
「・・・間違っちゃあいねぇけど。なんか間違ってないか?」
確かに間違ってはいない。
「いや、でも確実に太陽に近づいてるからこんなに暑いんだよ!間違っちゃあいねえ!」
間違っている、何かが間違っている…その時、ふとある疑問が僕の頭に浮かんだ。
「じゃあなんで山とか高いとこは寒くなるんだ?」
すると吉岡は少し考えてこう言った。
「さあ?」
「さあ!?」
結局、結論が出ないまま僕たちは歩道橋をわたり終えた。
不意に吉岡が、
「そういやもうすぐ夏休みだなぁ」
なんて言い出した。
「今年も宿題に悩まされるんだろうな」
「俺はもう、しない事を前提に夏を休もうと思う」
「居残り頑張ってくれ」
そんな調子で一日一日が過ぎていき、中学最後の夏休みへと入った。
まぁ夏休みに入ったからといって特にすることも無かった。
ただ、毎日が日曜日になっただけだった。
夏休みに入って一週間したかしないかくらいに、吉岡が俺の家に来た。
「どーかしたか?」
「いや、1ヶ月も休みあると暇でね」
「まぁいいや、とりあえず中はいれよ」
「おう」
 部屋に入れると吉岡が、
「はい、お土産」
 といって、缶ジュースをくれた。
「やけに羽振りがいいな」
「まぁたまにはな」
 しばらく話をしていると吉岡が、
「そういやお前、明後日の夏祭り行くのか?」
「ん~どうだろうな、気分しだいかな」
 もう明後日に控えたこの街の夏祭りは何故かいつも人が多い。いったい何処から沸いてくるんだろうか…
「俺、今年旅行とかぶっちまって行けないんだよ」
 そういいながら吉岡は深いため息を吐いた。
「そこまで残念がるほどのモンでもないだろ」
「いや、なんかもったいないぞ」
 もうこの街にきてから10年ほどたった所為かもう屋台などは殆ど見飽きてしまった。
しばらく吉岡と話し込んでいたら母親が帰ってきたので吉岡は帰るといった。
「長々と話し込んじまったな」
「まぁ別にいいだろ」
「あ、俺明日から明々後日までいないから」
 さっき言っていた旅行の日程だろう。
「ああ、分かった」
「お土産にでも期待しときな」
「あいよ」
 そうして俺は吉岡を見送った。う~ん、祭りねぇ…。顔だけ出して誰もいなかったら帰ろう。
二日後の夏祭り当日。何故か俺は桐嶋といる。
気合入れてるのか浴衣だし。
「何で浴衣?」
 と聞くと、
「いや、やっぱ祭りはコレでしょ」
 とのこと。俺にはよー分からん感覚です。

二日前、丁度吉岡が帰った後に入れ替わるように桐嶋が俺の家に来た。
「やっほー、暇してるぅ?」
「ええ、とてつもなく」
まぁそんな他愛も無い話をしていた時、桐嶋が夏祭りのことを聞いてきた。
「アキラ今年は夏祭り行くの?」
「たぶん行かない」
「んじゃあたしと一緒なら?」
「もう騙されません」
「この間のだって別に騙した訳じゃないわよ」
「んーまぁ、何も予定なかったら行ってもいいぜ」
「ん、じゃあ明後日また来るね」
で、結局予定が無かったという訳だ。

「ま、屋台でも回るか」
「うん」
 人波に埋もれながら俺たちは屋台を回る。
「人波ってたのしいねー」
「たのしくねーよ」
そんな事を言いながらしばらく色々と飲み食べしていた。
しかしまぁ、屋台も物価が高くなっただけで代わり映えがしないなぁ。
そういえばいつだったかドネルゲバブとか言う怖い名前の屋台があったがあれはなんだったんだろう。
そんな疑問をぶつけて見ようと振り返ると俺の右後ろに居たはずの桐嶋が居ない。
「あれ・・・?」
いつの間にかはぐれたようだ。
しばらく探し回っていたがこうまで人が多いとどうにも見つからない。
人ごみから離れた所でしばらく待っていると幼稚園くらいの女の子が俺の前に立っていた。
じーっとこっちを見ている。
「俺は不審者じゃないよ」
「これあげる」
そういって俺にガチャポンを一つくれた。
「そりゃどーも」
「じゃあね」
「バイバーイ」
一体なんだったんだ?
それからも桐嶋は来なかった。
仕方が無いので帰ることにした。
「ただいまー」
「おかえり」
何故か家に桐嶋が居た。
「人が心配して探し回ってたのにお前は人の家で何をしてるんだ?」
「あたしも随分探したけど見つからなかったから帰ってきた」
「自分の家に帰れよ」
「なんか勿体無いじゃん」
「あーそーですか。あ、これお土産」
「ガチャポン?」
「なんかちっこい子に貰った」
「ふうん」
それから色々とまた世間話をしていた。ときどきチラチラ見える太ももが気になった。
「じゃ、そろそろ帰るね」
「今度は自分の家に帰れよ」
「はいはい」
「送っていきなさい」
急に耳元で声を立てられた。
「うお」
「送っていきなさい」
母親だった。
「ガキじゃねーんだし大丈夫だろ」
「いいから送っていきなさい」
「へいへい」
これ以上小うるさいのも勘弁して欲しいからな。
桐嶋を送っている途中は何故か無言だった。
あらかた話しつくしたからだろうか?などと考えている間にもう桐嶋の家の辺りまで付いていた。
「ここでいいよ」
「そうか?」
「こんな可愛い子がデートしてあげたんだからもうちょっと笑顔でいなさいよ」
「可愛い子ねぇ」
「・・・」
「なんもない」
「そ、じゃーね」
そう言って手を振る桐嶋の手にはガチャポンが握られていた。
それを見たら何かおかしくなって吹き出してしまった。
「はは、またな」
何がおかしいのか不思議がってる桐嶋を背にして俺は家へと戻った。

数日後、旅行から吉岡が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「あ、コレお土産ね」
 と、なにやら細長い包みを渡された。
「お、サンキュー」
「じゃあな」
「おう」
 吉岡を見送った後、部屋に戻って包みを開けてみた。中から一振りの木刀が出てきた。
「コレじゃ何処行ってきたかわかんねーじゃん…」




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