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第十章






10.
桐嶋の葬儀の日、珍しく吉岡が暗い顔をしていた。流石に友達が死んだとなると笑ってもいられないらしい。
俺の隣では女子生徒たちがずっと泣いている。ただ自己満足がしたいようなそんな泣き方だった。お前らはそこまで桐嶋のために泣いてやる必要はない。
そんな気持ちが俺をイライラさせた。ここにいても腹が立つだけなのでとりあえず外に出るしかなかった。
 外に出ると岩城がいた。
「よお」
それくらいの挨拶しかできなかった。
「…ねぇ、場所変えない?」
岩城は俺の返事も聞かず一人で歩いていった。俺は仕方なくついていった。
 岩城が立ち止まったのは公園だった。ベンチに座った岩城は何も言わずただ黙り込んでいるだけだった。
「場所変えて何がしたかったんだ?」
 そういって岩城を見ると静かに泣いていた。
「何で女ってそう泣くんだ?」
「たぶん情け無いから。でも、分からない…。何で泣いてるのかが分からないんじゃなくて、どうしていいか分からないから」
俺は黙って岩城の話を聞いていた。
「あたし今まで知り合いが死んだことがなくて、こんなときどうしていいのかが分からない。
そんなことも思いつかない自分が情けなくて泣いてると思う…人が一人居なくなった事がどんなことかも分からなくて…」
そこで岩城の言葉はつまり、それ以上喋ることは無かった。
なんとなく桐嶋の葬儀にもどるとそこにはまだ吉岡が暗い顔をして突っ立っていた。
「何してんだよ」
「ああ、アキラか・・・」
「そんなシケた顔すんなよ」
「ちょっと考え事してたんだよ」
「どんな?」
「死んじまったらどうなっちまうんだろうなぁって・・・」
「さぁな、でも俺は死んだ後の自分よりも他の人のほうが気になるな」
「他の人?」
「ああ、死んだら誰が悲しんでくれるんだろう?ってこと」
「確かに、なんか嫌な事言われてたらそれこそ死に切れねぇよな」
「そんなこと気にしながら死んでくのかな、俺?」
「さーなぁ・・・」
 それっきり、吉岡は黙り込んだままだった。俺は考えた。桐嶋もそんなことを少なからず考えながら死んでいったのだろうか。
けれども、そんないつもの突拍子もない思いつきに答えてくれる桐嶋はもういないのだ。しばらく黙っていると吉岡が涙声で、
「修学旅行の時とかさ、無茶苦茶馬鹿やってたりしたじゃん?」
「ああ」
「なんかそうこと思い出すと駄目だな。なんか、すげー悲しい」
そう言ったきり、また吉岡は黙ってうつむいた。
なんとなく、吉岡に掛ける言葉が見つからなくて俺はそのまま会場のほうを見ていた。
ちょうど高島先生がでてきたので俺は声を掛けた。
「高島先生」
「湯浅君・・・」
「俺さ、もう何をしたらいいか分かんない」
「辛いわね」
「たぶん、もうしばらくしたら大丈夫かも知れないけど、今は・・・」
「また元気になったら教室にいらっしゃい」
「また、紅茶入れてください」
そういうと先生は少し困ったような笑顔で
「ええ」
とだけ言って去っていった。




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