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&bold(){八綱弁証(はっこうべんしょう)}とは、四診によって集められた情報を整理するための弁証の一つであり、疾病の病態生理(証)を決定する[[弁証論治>弁証診断学]]の入口をなす。八綱弁証は病態全体を大まかに把握するために行われ、陰陽・表裏・寒熱・虚実の4つのパラメータに分けられる。それぞれのパラメータを個々に扱う場合は「陰証」「熱証」のように後に証を伴って用いられる場合も多い。 目次 #contents() *陰陽:病勢パラメータ ここでいう陰陽とは、「病勢の陰陽」である。日本漢方における陰証・陽証のように体質を分類する概念ではなく、どちらかというと西洋医学におけるgeneral appearanceに近い概念であるといえ、疾病が体に与えている影響および体の反応性のスペクトルにおいて疾病を分類するものである。つまり具体的には、 :陰|全身状態が悪化しており、十分な闘病反応が起こせない状態 :陽|全身状態は保たれており、激しい闘病反応が起こせる状態 といえる。例えば、高熱を出している人は病原に対する闘病反応が発熱としてあらわれているので陽証ととらえることができるし、長患いの末に消耗してしまい口をきくのもやっと、という人は陰証であるととらえることができる。 *表裏:病位パラメータ 疾病が体の浅い部位(表証)にあるか、深い部位(裏証)にあるかを判断する。 :表|体表部に近いところに病態の主座がある状態で、外から原因(邪)が入ってきている場合が多い -症候:発熱、寒気、身体痛、舌の白い部分が薄く白色である、脈が浮く :裏|臓腑や骨髄や血脈など体の深部に病態の主座がある病態で、外から入ってきた原因が中へ進んだか、中におけるアンバランスが見られる場合が多い -症候:表証でみられる以外の様々な症候 *寒熱:病性パラメータ 疾病の性質が寒、熱どちらかを判断する。ここでいう「寒熱」はあくまで患者の主観を元に判断するものであり、客観的な温度指標を用いるわけではない。 :寒|寒性の特徴を持つ病態 -寒がって温まるのを好み、分泌・排泄物は薄く量が多い -温めると症状が寛解し、冷やすと増悪する -体温に関わらず寒がる --治療方針:温法を用いて体を温める :熱|熱性の特徴を持つ病態 -暑がり冷えるのを好み、口が渇いたり、血色がよく、分泌・排泄物は濃い -温めると症状が増悪し、冷やすと寛解する -体温に関わらず暑がる --治療方針:清熱法を用いて体を冷ます 例えば、カゼでよく見られるような「体温計ではかると高熱が出ているが、本人は寒がって服を何枚も着た上に布団をかぶっている」状態は、寒証である。 *虚実:病因・病状パラメータ 虚実は本来ならば単純に「不足している」「過剰である」といった意味であるが、中医学においては特に「正気の虚」「邪気の実」を意味するとされる。この用語法には議論の余地があり、虚と実の主語が違うのはおかしい、とする意見も存在する。 :虚|発病因子である邪気に対抗できる正気が虚損している状態を指し、様々な身体能力の低下が見られる -鈍く緩徐な症状が多い -痛みがある場合、軽く押さえられると気持ちがよい --治療方針:補法を用いて正気を補う :実|何らかの過剰(特に邪による侵襲)による病態であり、その過剰な邪が正気より多くなっている状態を指す -鋭く急峻な症状が多い -痛みがある場合、押さえられると痛みが増す --治療方針:瀉法を用いて邪を取り除く 正気虚と邪実は同時に起こり得て、これを虚実挟雑という。正気と邪の関係を考えると、全ての疾病において結果的に虚実は挟雑すると言えるが、ここでは治療対象の疾病においてどちらが主たる病態をなすかを考える。 ---- (編集者:宮崎大学)
&bold(){八綱弁証(はっこうべんしょう)}とは、四診によって集められた情報を整理するための弁証の一つであり、疾病の病態生理(証)を決定する[[弁証論治>弁証診断学]]の入口をなす。八綱弁証は病態全体を大まかに把握するために行われ、陰陽・表裏・寒熱・虚実の4つのパラメータに分けられる。それぞれのパラメータを個々に扱う場合は「陰証」「熱証」のように後に証を伴って用いられる場合も多い。 目次 #contents() *陰陽:病勢パラメータ ここでいう陰陽とは、「病勢の陰陽」である。日本漢方における陰証・陽証のように体質を分類する概念ではなく、どちらかというと西洋医学におけるgeneral appearanceに近い概念であるといえ、疾病が体に与えている影響および体の反応性のスペクトルにおいて疾病を分類するものである。つまり具体的には、 :陰|全身状態が悪化しており、十分な闘病反応が起こせない状態 :陽|全身状態は保たれており、激しい闘病反応が起こせる状態 といえる。例えば、高熱を出している人は病原に対する闘病反応が発熱としてあらわれているので陽証ととらえることができるし、長患いの末に消耗してしまい口をきくのもやっと、という人は陰証であるととらえることができる。 *表裏:病位パラメータ 疾病が体の浅い部位(表証)にあるか、深い部位(裏証)にあるかを判断する。 :表|体表部に近いところに病態の主座がある状態で、外から原因(邪)が入ってきている場合が多い -症候:発熱、寒気、身体痛、舌の白い部分が薄く白色である、脈が浮く :裏|臓腑や骨髄や血脈など体の深部に病態の主座がある状態で、外から入ってきた原因が中へ進んだか、中におけるアンバランスが見られる場合が多い -症候:表証でみられる以外の様々な症候 *寒熱:病性パラメータ 疾病の性質が寒、熱どちらかを判断する。ここでいう「寒熱」はあくまで患者の主観を元に判断するものであり、客観的な温度指標を用いるわけではない。 :寒|寒性の特徴を持つ病態 -寒がって温まるのを好み、分泌・排泄物は薄く量が多い -温めると症状が寛解し、冷やすと増悪する -体温に関わらず寒がる --治療方針:温法を用いて体を温める :熱|熱性の特徴を持つ病態 -暑がり冷えるのを好み、口が渇いたり、血色がよく、分泌・排泄物は濃い -温めると症状が増悪し、冷やすと寛解する -体温に関わらず暑がる --治療方針:清熱法を用いて体を冷ます 例えば、カゼでよく見られるような「体温計ではかると高熱が出ているが、本人は寒がって服を何枚も着た上に布団をかぶっている」状態は、寒証である。 *虚実:病因・病状パラメータ 虚実は本来ならば単純に「不足している」「過剰である」といった意味であるが、中医学においては特に「正気の虚」「邪の実」を意味するとされる。この用語法には議論の余地があり、虚と実の主語が違うのはおかしい、とする意見も存在する。 :虚|発病因子である邪に対抗できる正気が虚損している状態を指し、様々な身体能力の低下が見られる -鈍く緩徐な症状が多い -痛みがある場合、軽く押さえられると気持ちがよい --治療方針:補法を用いて正気を補う :実|何らかの過剰(特に邪による侵襲)による病態であり、その過剰な邪が正気より多くなっている状態を指す -鋭く急峻な症状が多い -痛みがある場合、押さえられると痛みが増す --治療方針:瀉法を用いて邪を取り除く 正気虚と邪実は同時に起こり得て、これを虚実挟雑という。正気と邪の関係を考えると、全ての疾病において結果的に虚実は挟雑すると言えるが、ここでは治療対象の疾病においてどちらが主たる病態をなすかを考える。 ---- (編集者:宮崎大学)

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